12:情報庁・上
【2-12】
「……ヤバっ!!」
ネズミ捕りがパチンとなるように、そこから跳ね起きる。
白で統一した部屋は窓からの光を受けて、だいだいに色づいている事に俺は青ざめた。
デスクの上のスマホを掴む。
現時刻のすぐ下に小さく4月4日 “土曜日”とあったのだ。
土曜日。つまり学校も無ければバイトもひとつもない。
俺は文字の通り胸をなでおろした。
声の入った大きなあくびを10畳にぶちまけ、目尻が涙で濡れる快感を味わう。
いざベッドに向かわんとした時だった。
「……?」
デスクに半分に折られた一枚の紙が置かれている。
何も考えずにそれを開き文面に目を通す。
眠気が瞬時に引いた。
切符を手に、昼夜問わず真っ暗な外を見呆ける。
最後に地下鉄を利用したのはいつだったか。
手紙にあった目的地まであと4駅だ。
この前にJRも利用している。往路1000円超えに関しては初めてかもしれない。
地下鉄に揺られている間、昨日の事件がフラッシュバックする。
銃撃の音、血の匂い・熱、少女の手に握られた拳銃……
そもそもその少女、神代紅水はどこに行ったのだろうか。
昨日いきなりうちに住むと決まったが、家にその姿はなかった。
正直、会ったところで何を話せばいいか思い浮かばない。
それにその時に聞かなかったとしても、いつか必ずみ吉野さんのことを聞かなければいけない。
俺はまだ彼女とコミュニケーションを取りたくない。
自分が何を言ってしまうか、分かったものじゃないから――
課題はそれだけじゃない。み吉野さんの事、遺言の事……
あのメッセージは遺族に伝えるべきなのか、もしそうだとしたら早めがいいだろう。
幸い、彼の住所は薬をもらった時に聞いている。
「(明日も暇だし……明日行こうかな)」
とにかく昨日の午後の出来事は、処理にかなりの時間を要するのは間違いなかった。
電車アナウンスが流れる。
『次は情報庁前、情報庁前です。お出口は……』
続く。