↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮の底で復讐を誓う  作者: 村上 優司
関わる者としての時間
98/140

日常 受付と成長

投稿ボタンを押し忘れました(汗)

 日の出の時刻が早く、鶏の声と蝉の声が鳴り響く、夏の朝らしい朝が訪れジョセフは目覚めた。ジョセフは目が覚めるとすぐに起き上がり洗面台行き顔を洗った。顔を洗いながら髪の寝癖を直し、着替えをすませるとそのままは台所に向かった。


 台所に着いたジョセフは早速竈に火を入れた。竈の火がついたところ確認すると買い置きのパンを食べやすい大きさに切り分けた。そして、トリスから貰った冷蔵庫から牛酪(バター)乾酪(チーズ)、卵などを取り出した。この冷蔵庫を貰ってから夏場でも夏場で傷みやすい食料が長期保存できるのでジョセフの家では重宝されていた。


 ジョセフが手慣れた手つきで朝食の準備を終え、テーブルに二人分の朝食がされるとジョセフの母親が起きてきた。


「おはよう、ジョセフ」

「おはよう、お袋」


 ジョセフの母親は眠そうな目を擦りながら自分の席に着いた。ジョセフの母親は朝が弱い。ジョセフが小さい頃は母親が朝食の準備をしていたが、ジョセフが火が使えるようになってからは朝食の当番はジョセフに代わった。


「「いただきます」」


 二人が揃ったのでジョセフと母親は手を合わせ朝食を食べ始めた。朝食を食べながら二人は今日の予定と他愛のない雑談をした。母親の職場のこと。近所の人達との付き合い。ジョセフの交友関係のこと。他愛のない日常会話だが母親と過ごすこの時間がジョセフにとって一番落ち着く時間だった。




 朝食を取り終えたジョセフは母親とともに家をでた。母親は職場に行き、ジョセフは冒険者組合に向かった。まだ朝だというのに外は暑い。あと一ヶ月もたつとこの暑さが頂点となり『塔』に挑むのが困難になる。ジョセフはそうなる前になるべく金を稼ぎたいのでトリスの家での訓練は控え単独(ソロ)で『塔』に挑むことにしていた。


 冒険者組合に着いたジョセフは早速貼り出してある依頼票を見た。依頼票が更新されるのはお昼過ぎと決まっているのでめぼしい依頼はその日のうちになくなり、次の日の朝にある依頼は大概は不人気の依頼だ。苦労する割には報酬が少額だったり、高額な報酬ではあるが危険が伴うなどの依頼が残っていた。


「ジョセフくん、こんな依頼を受けていいの?」


 ジョセフが複数の依頼選び、受領して貰うために組合の受付に持っていくと顔見知りのミリアがいた。ミリアに依頼を受けることを伝えるとミリアは驚きながら依頼を受領した。


 ミリアはジョセフのことを冒険者になったときから知っている。正確に言うとジョセフとは小さい頃からの付き合いなのでジョセフのことや家庭環境をよく知っている。だからジョセフが割に合わない依頼を受けるのを驚いた。


 ジョセフの家は母子家庭だ。父親はジョセフが幼い頃に亡くなり母親が一人でジョセフを育てた。ジョセフの父親の友人であったミリアの父親がジョセフの母親に仕事を紹介し、ジョセフ達は母親の給金で生活している。お世辞にも裕福な家庭とは言えない。ジョセフも冒険者として活動するようになってからは報酬のよい依頼を受けるようにしていた。


 それなのにここ最近ジョセフが受ける依頼は報酬のよい依頼ではなかった。


「まあ、確かに内容の割には報酬額は高くないが大丈夫です」

「それならいいけど…… 何か困っているなら力になるよ!」

「大丈夫です。今調子がとってもいいんです。冬になる前にはC階級(ランク)になるから応援してください!」


 ジョセフは言うとおりここ最近の彼の調子はよい。去年は何度もC階級(ランク)の昇級試験に落ちていたが今年はあと少しで受かりそうな雰囲気だ。


(ヴァン君やエルちゃん、ナルちゃんに触発されているのかな? あの子達も最近調子が良いし……)


 ジョセフと仲の良い冒険者たちも軒並み調子を上げている。ヴァン達もジョセフと同じように今年中にC階級(ランク)の昇級試験に合格できそうだ。顔見知りの冒険者達が調子が良いのはミリアにとっても嬉しいことだ。


 調子のいいジョセフにこれ以上何か言うのも気が引けたミリアは依頼票の受領印を押した。


「ジョセフ君、依頼は受領したから頑張ってね」

「ありがとうございます。じゃあ、これから『塔』に行ってきます」


 ジョセフはそう言うとミリアに一礼して『塔』に向かった。


(何だかここ最近急に大人っぽくなったぁ)


 最近のジョセフは礼儀正しく誰にでも優しく接している。去年までは余裕がなく周囲とのトラブルが多かった気がする。それなのに大人の貫録と言うか、余裕と言うかそういった雰囲気を最近のジョセフからミリアは感じるようになった。




「これで依頼内容達成! 昼を過ぎた直後なのにもう依頼を終えたぜ!」


 ジョセフは採取したキノコを魔導背嚢(マジックバック)にしまいながら今日の依頼が完了したことに喜んだ。ジョセフが受けた依頼は『塔』の中でしか生息しない薬草やキノコの採取だ。薬草やキノコが生息している場所に行くまでに多くの魔物が要るため魔物との戦闘を考えると割のいい仕事とは言えなかった。


 しかし、ジョセフは『身体強化の魔術』の応用で体内の魔素の循環を制御している。これを行うと魔物から認識されにくくなり魔物との戦闘が激減する。魔物との戦闘がなければジョセフが受けた依頼はかなり報酬がよい依頼となっていた。


「トリスさんのおかけだよなぁ」


 トリスの指導を受けたことにより『身体強化の魔術』の他に身体能力が向上し、魔物との戦闘における戦術も向上した。ジョセフは見かけほど体幹の感覚が良くなかった。そのため身体への余分な力が加わり、身体に負荷がかかり体力を消耗していた。魔物との戦闘も攻めの一手で防戦や撤退などはしていなかった。


 トリスにそれらを指摘され修正するための指導を受けた。最初はトリスの言葉を疑っていたが、目に見えて成果が上がっていったので今ではトリスの指導を積極的に受けるようになっていた。今回の依頼に関してトリスからの助言でもあった。


 一ヶ月後のことを考えそれまでに現金を蓄えたいと相談すると、一日おきに冒険者組合の依頼を受けるように言われた。依頼の内容も魔物の素材確保などではなく、植物の採取を主体にする。植物の採取なら体力の消耗は激しくない。『身体強化の魔術』で体内の魔素の循環を抑えれば魔物との遭遇も激減する。魔物との戦闘が回避できれば採取系の依頼はかなり報酬が良くなるとトリスが教えてくれた。


 ジョセフはトリスの助言に従い、採取の依頼を主体にすると思った以上に稼げた。一日に複数の依頼をこなせ、依頼の植物の採取する際に他の換金できそうな植物も採取できるのでかなりの金額を稼ぐことができていた。


「一年前の俺は無駄に過ごしていたなぁ」


 ジョセフは休憩しながら一年前の自分を思い返していた。一年前もジョセフは同じように『塔』へ挑んでいた。只々我武者羅に『塔』に挑んでいた。金を稼ぐために魔物を倒しそのその素材を売ることが一番利益があると信じていた。しかし、ジョセフはパーティーを組んでいなかったために一人で魔物と戦った。


 その結果、魔物は討伐できるが換金できる皮や角などの部分は傷が多すぎて商品価値を落としていた。簡単な植物の採取ならできると思いそちらに手を出した。しかし、魔物と遭遇すると撤退などはしなかったために目的地に着く前に体力を使い果たしていた。


「結局、回復薬や装備に金がかかって大して稼げなかったんだよなぁ」


 母親が楽できるように生活費を渡したいのにそれができず不平不満が溜まる一方だったが、トリスと出会い彼から学ぶことによって今は母親と同額がそれ以上を稼ぐことができている。ジョセフは今度トリスにあったらもう一度感謝の言葉を伝えと思い都市に戻ることにした。


「あれは……」




「金貨一枚の報酬になります」


 ジョセフは依頼にあった品物を冒険者組合に持っていき報酬を受け取った。報酬は依頼の品の他に道中で見つけた薬草やキノコなども一緒に渡した。その結果の報酬は金貨一枚。たまたま手に入れた薬草が緊急で購入したい人がいて金額が跳ね上がったのだ。一日でこれだけ稼ぐことができてジョセフは大いに満足した。


「ジョセフ君、絶好調じゃん」

「ミリアさん、ありがとうございます。それと今日はもう終わりですか?」


 ミリアは冒険者組合が支給している受付用の服ではなく私服に着替えていた。


「うん、今日はもう終わり。ジョセフ君も帰るんでしょ?」

「はい」

「じゃあ、久しぶりに一緒に帰ろうか?」


 ミリアはそう言いジョセフに一緒に帰ることを提案した。ジョセフも断る理由がなかったのでミリアの申し出を受けた。


「夕方なのに暑いね」

「そうですね。よければ氷菓でも食べていきますか? 奢りますよ」

「おっ、太っ腹だね。じゃあご相伴にあずかります」


 ジョセフとミリアが冒険者組合を出ると外は夕方なのにまだ暑く少し歩くだけで汗が出てしまう。


「それにしても一日で金貨一枚も稼ぐなんて凄いね!」

「運が良かっただけです」

「……」


 ミリアの言葉にジョセフは謙遜するがその態度にミリアは少し驚いていた。


「どうかしました?」

「…………ジョセフ君、最近急に大人っぽくなったね。他の人と揉め事を起こさなくなったし、私以外の人にも敬語もきちんと使っている」

「そうですか? ならトリスさんのおかげです」

「トリスさんの?」

「はい、トリスさんに稽古をして貰っているんです。トリスさんの家にはトリスさん以外にも大人がいます。その人たちと接しているから目上の人に対する言葉使いを自然に覚えたんだと思います」

「そうなんだ…… 何かちょっと悔しいな」

「悔しい?」

「ジョセフ君は私にとって弟みたいなものだから。そのジョセフ君が急に大人っぽくなった原因を知らないのが何か悔しいと思ったの」

「……」

「黙らないでよ。別に怒ってないから」

「怒っていないと言っている割には不機嫌そうですよ」


 ジョセフはそう指摘するがミリアの顔は不機嫌ではなかった。いや、他の人から見れば不機嫌ではないように見えるが、付き合いの長いジョセフはミリアの微妙な変化に気が付いた。こうなったミリアの機嫌を元に戻すのは至難だとジョセフは今までの経験から導き出した。


「ミリアさん、ちょっといいですか」


 ジョセフそう言うと担いでいた魔導背嚢(マジックバック)を地面に下ろし、魔導背嚢(マジックバック)からある物を取り出した。本当なら母親の土産にしようと思っていたのだが、いつも世話になっているミリアに渡すことにした。


「これを受け取ってください」

「こ、これは……」


 ジョセフが取り出したは朱色と黄色が混ざった綺麗な羽だった。ジョセフが『塔』で休憩を終えるときに見つけた魔物の羽だ。羽を渡されたミリアはその綺麗に羽に目を奪われた。


「今日『塔』の中で見つけた物です。迷惑じゃなければ受け取ってください」

「め、迷惑じゃないよ。それにこんなに綺麗な羽なら高く売れるでしょ。私が貰っていいの?」

「ミリアさんには日頃からお世話になっているので受け取ってください」

「あ、ありがとう」


 ジョセフの言葉にミリアは嬉しく素直にお礼を言った。ジョセフの顔を見てきちんとお礼を言ったときにミリアはあることに気が付いた。見慣れたジョセフの顔がいつもと違って見えたのだ。夕日の所為なのかそれとも別の要因なのかは判らないが、目の前にあるジョセフの顔が男の人の顔に見えた。


 普段とは違うジョセフの顔にミリアは驚き、そして胸の鼓動が少し早くなった。


「どうかしましたか?」

「ど、どうもしないよ。それよりも早く氷菓を食べに行こう。お店が閉まっちゃう」

「わ、判りましたから押さないでください!」


 ミリアは慌ててジョセフの背中を押してお店に向かうようにせかした。本当なら並んで歩きたかったが今の自分の顔をなぜだかジョセフに見せたくなかった。


誤字脱字の指摘や感想などを頂けると嬉しいです。

評価やブックマークをして頂けると嬉しく励みになりますのでよろしくお願いします。


最近は修正が止まっていますが、過去の投稿もちょくちょく修正を行っていこうと思っています。

設定などは変えずに誤字脱字と文章の校正を修正しています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。