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迷宮の底で復讐を誓う  作者: 村上 優司
流れ者としての時間
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大都市アルカリス 疑惑の男

新章突入です。なので二話更新しました。

一回目です。

「それでは私とフェリスのD階級(ランク)へランクアップとジョセフ、エル、ナルのC階級(ランク)のテスト合格を祝って、乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」


クレアの乾杯の音頭の後にヴァン、フェリス、ジョセフ、エル、ナルが唱和し、それぞれのグラスを互いに打ち付けた。今日はクレアとフェリスがD階級(ランク)へランクアップしたお祝いとジョセフ、エル、ナルがそれぞれのC階級(ランク)のテスト合格をしたことに対する祝いの宴だ。


トリスの家で行われる祝いの宴に主役の五人とヴァンは普段の冒険者の服装では無く、気軽な服装になっていた。


「これでようやく冒険者だって胸を張って言えるね。」

「そうですね。一部の人にとってE階級(ランク)の冒険者は見習いと認識されていましたから肩身が狭かったです。」


この中で唯一E階級(ランク)だったクレアとフェリスはようやく新米冒険者のレッテルが取れた事に安堵した。同じパーティーのヴァンは既にD階級(ランク)なのでクレアとフェリスのサポートをしていた為にランクアップもC階級(ランク)のテストへの受けることも無かった。


「俺たちは苦手だったテストがようやく合格が出来て一安心だぜ。」

「そうそう、本当に大変だった。」

「最初の頃はどんどん合格できたけど、後半から全然だめだったよね。」


ジョセフ、エル、ナルはそれぞれC階級(ランク)に上がる為のテストを受けていた。C階級(ランク)に上がる為のテストは数多くあり、その中から冒険者組合(ギルド)から指定されたテスト受けることになっていた。


ジョセフ達は最初の頃はスムーズにテストを合格出来ていたが後半からはテストを合格出来ずにいた。もっともそれはジョセフ達の実力と言うよりテストの種類がジョセフ達の相性と一致しないかったのが原因になる。


冒険者の業種は主に討伐、採取、調査の三つに分類さる。冒険者組合(ギルド)からの依頼もそれらに分類さる為に、テストはそれに従った項目が幾つか用意されている。これらのテストを単独(ソロ)で行わなければならない。


討伐は指定された魔物の討伐になるが、魔物を討伐するだけでなく、損傷を少なくさせ魔物の素材を良質に多く取れるかが肝となる。

採取は指定された薬草や鉱物を指定数を納めること。納める際の品質なども評価の対象になる。

調査は指定された塔の内部にある洞窟や地域(エリア)などの調査を行う。この時に如何に状況を正確に報告するのが趣旨となる。


これらのテストを受ける際に順番は決まっていない為、どうしても自分が得意な項目を先に行い、苦手な項目は後回しにしてしまう。その為に大概の冒険者は後半のテストは受かり難く傾向になっていた。


テスト中は組合(ギルド)の試験官の監視の元に行うので不正することは出来ない。もっとも世の中には必ず不正をする者と不正を見逃す者がいる。試験官を買収する冒険者もいるし、買収を受け取る試験官もいる。だが不正でC階級(ランク)に上がったとしても実力が無いために早々に冒険者を辞めることになる。


怪我で済めばまだ良い方で、生涯癒えない傷を負う者や命を落とす者もいる。実力主義の冒険者家業は不正で暮らしていける程甘くは無いのだ。そして、ジョセフ達は不正をすることなく実力でテストに合格出来たので喜びもそれに比例して大きかった。




「それにしてもここで稽古をつけて貰ってからどんどん自分の実力が上がるのが判るぜ。」

「本当だよ。最初は『魔術による身体強化』を習う筈だったのにいつの間にはそれ以外も身についていたから驚きだよ。」


ジョセフの言葉にエルは賛同し、ナルも首を何度も縦に振った。『魔術による身体強化』を目的でトリスの指示を乞うていたが、トリスは指導はそれだけでなく冒険者に必要なことも指導してくれていた。身体の使い方や武器の扱い方は勿論、各々にあった特性を生かす指導や苦手なことに対しての対策などをトリスはしてくれていた。


その成果が実り、今まで合格出来なかったテストが合格出来たとジョセフ、エル、ナルの三人は思っていた。


「みんな頑張っているね。僕もそろそろ本気で上を目指さないとクレア達に抜かされるね。」

「ヴァンさんならきっと大丈夫です。私達よりもずっと強いんですから。」

「ありがとう、ナル。」


今までクレアとフェリスのサポートに回っていたヴァンは次は自分だと気合を入れるとナルはヴァンを激励した。ヴァンにお礼を言われたナルは頬を赤く染めながら嬉しそうに微笑んだ。そんな二人の様子に周りの人間はため息をつく。


ナルはヴァンに好意を持っており、その事を直接本人の口から聞いたのはエルだけだがクレアやジョセフ達も何となくその事を察している。ヴァンもナルに対していい感情を持っているのは皆が知っている。それなのに知らないのは本人達だけであるため、本人達よりも周りが歯がゆい思いをしていた。


「皆さん、お待たせしました。」

「お待たせしました。」


そんな歓談をしているとフレイヤとベネットが料理を運んできた。二人は出来立ての料理をテーブルの上に並べていった。料理からは食欲をそそる匂いがたちまち食堂に漂い、皆の胃袋に刺激を与える。


今日の料理はクレア達がそれぞれ希望した物をフレイヤとローザが作ってくれた。本当ならこの様な宴は都市の食堂や居酒屋で行うのだが、トリスからのお祝いで場所とフレイヤ達を貸してくれた。料理や飲み物の材料費だけで済む為、懐事情が寂しいクレア達にとっても何よりも嬉しいお祝いだった。


「あたしの料理もできたよ。」

「お酒の追加も持ってきましたよ。」


今度は朔夜とローザが料理と酒を運んできた。朔夜もジョセフ達のお祝いをするためにわざわざ来てくれていた。しかも今回の宴にあった料理を朔夜自らが厨房で作ったくれたのだ。朔夜は自分が作った魚のスープをクレア達に配った。


「この料理に使っている魚は出世魚と言うんだ。あたしの父親の故郷では縁起が良い魚とされて門出を祝う席や昇進した時の宴の料理として出すんだ。今回の様な宴にはピッタリの料理だろう。」

「朔夜さんのお父さんって確か大陸の東部の方ですよね?」

「そうさ。あたしもまだ行ったことは無いけど独特の文化を持っている国と聞いている。さあ、それよりもせっかく作ったんだから食べてよ。」


クレアの質問に朔夜は答えながら自分の作った料理を皆に進めた。クレア達もせっかく朔夜がわざわざ作ってくれた料理を食べない訳にいかないのさっそく口を付けた。


「美味しい。」

「美味しいです。」


エルとナルは食べると直ぐに感想をいい、ジョセフやフェリスは夢中で食べた。クレアも初めて食べる魚料理に心を奪われていた。


「とっても美味しいです。こんな魚のスープは初めてです。村の皆にも教えてあげたいです。」

「確かヴァンの出身はここから西にある漁村だったよね。」

「はい、リズと言う小さな漁村です。」

「確かに変わった作り方をしているから後で教えてあげるよ。」


朔夜の料理の他にフレイヤとローザが作った料理も食べ始めたクレア達は大いに満足しながら今日の宴を楽しんだ。料理を運び終わったフレイヤ達もテーブルに付き、クレア達の冒険の話を聞きながら一緒に食事を取った。




「ただいま。」

「戻りました。」

「ただいま、戻りました。」


宴が中盤に差し掛かった頃に玄関の扉が開き三人の声が聞こえてきた。声の主はダグラスとザック、ロバートであった。彼らはトリスと出掛けた筈だがこの家の主であるトリスの声は聞こえなかった。フレイヤとローザ、ベネットが玄関に迎えに行くと戻って来たのはダグラス達だけでやはりトリスの姿は無かった。


「おかえりなさい。トリスさんはどうされました。」

「トリスさんは今日は帰らない。だから俺達だけが先に帰ることになった。詳しい事はみんながいる前で話す。後、これはトリスさんからの差し入れだ。」


フレイヤの質問に答えながらダグラスは大きな包みをフレイヤとローザに渡した。中身はこの都市で有名な菓子屋の品だった。食後にデザートにとトリスが事前に予約していた物だ。前々から食べてみたいとクレア達の話を聞いていたトリスがわざわざ用意してくれたのだ。


「では、食後に用意しますね。」

「もう、始めているからダグラス達は着替えて来て。」


フレイヤとローザに言われ、ダグラス達は直ぐに各自の部屋に戻った。食堂から漂ってくる匂いにダグラス達も胃が刺激されていたのだ。


部屋で着替えてきたダグラス達が食堂に行き、挨拶もそこそこに済ませダグラス達も早速料理を食べ始めた。ダグラス達にも朔夜の魚のスープは好評でトリスにも食べさせたいと思った。健啖家のトリスは美味しい食べ物には目が無いので帰って来れないのは残念だとダグラス達は思った。




空腹から人心地が付いたダグラスはトリスが帰って来ないことについて話し始めた。


「今日、トリスさんが出掛けたのはラロックさんとの商談とロバートを従姉のリーシアさん達に逢わせるのが目的で、俺とザックは二人の護衛だった。」

「順調にいけばトリスさんも最初は俺らと帰って来る予定でしたけど思わぬ人がこの都市に来ていました。」

「思わぬ人ですか?」


ダグラスとザックの話にフレイヤが問う。ダグラスも静かにその人の名前を伝えた。


「サリーシャの前領主であるガゼル様と奥方様だ。」

「「「「「!?」」」」」


トリスとガゼルの事情を知らない朔夜達は驚いた。サリーシャの領主はこの都市とは違い世襲性で領主はこの国の貴族になる。サリーシャはこの国の要である港街なのでその領主となると貴族の中でもかなり地位の高い人物だ。しかも前領主であるガゼルは名君として名が知られているのでその人物とトリスが知り合いなのは流石に驚きであった。


「トリスさんもガゼル様達がこの街に来ることは知っていたがもう暫く先だと思ったいた。だが、ガゼル様達は旅行でこの都市に来られたのだ。」

「それでトリスさんはガゼル様達と夕食をすることになり、そのまま向こうの宿に泊まることになりました。俺やダグラス、ロバートは流石に居ても気疲れをするだけなのでトリスさんが気を使って帰宅させてくれました。」

「正直、いきなり貴族の方と対面するのは正直辛かったです。」


一般人が貴族に無礼をして罰せられるのはよくある話だった。ガゼルは横暴な貴族とは違い一般人にそのようなことはしないが、ガゼルの事をよく知らないロバートにとっては生きた心地がしなかった。話を聞いていた朔夜達も災難だったとロバートを慰めた。


「それにしてもトリスの交友関係はどうなっているんだい? 貴族様と食事をする様な間柄なんて冒険者の中でも一握りしかいないよ。」


朔夜も天元槍華のサブリーダだが貴族の知り合いは数人しかいない。朔夜は積極的に貴族と関係を持とうとはしないが、それでも何度か顔を合わせた事はあった。だが、その関係も食事を一緒にする様な間柄ではなく、貴族が欲しがる魔物の素材や鉱物を売り買いする依頼人と請負人に留まっていた。


「トリスさんは本人の意図とは別に色々な事に巻き込まれますから。そこから色々な人と繋がるんです。」

「私たちの時もそうだったね。」


一年前にサリーシャで起きたことを思い出しながらフレイヤとクレアはガゼルと会った日の事を思い出していた。


「色々な事にねぇ。一体どんなことをしていたのか興味があるよ。」

「なら、トリスさんに出会った順番に話しをすれば大体の事は判るではないでしょうか?」


朔夜の言葉にベネットが答えるように提案した。確かにベネットの言う通り皆が出会った経緯をまとめるとトリスが何をして、何に巻き込まれた事が判ってくる。


「それなら僕が一番最初に出会ったことになるね。」

「そうなのか?」

「そうだよ。トリスさんは僕と出会った時に師匠以外の人と二十年ぶりに会ったと言っていたから。」


ヴァンはジョセフの質問に答えながらトリスと出会ったことを思い出した。


「それは興味あります。」

「是非、聞いてみたい。」


ナルとエルは興味津々でヴァンに話しをせがんだ。ヴァンもトリスとの出会いについては誰にも話したことが無かったのでいい機会だと思い、トリスとの出会いを話し始めた。


「僕が最初にトリスさんに出会った時はとにかく恐怖しかありませんでした。」

「恐怖ですか?」

「ベネットが疑問に思うのは無理はないけど、トリスさんは今でこそ初対面の相手には礼儀を尽くして接しているけど、僕と初めてあった時は殺気をまき散らす恐ろしい人でした。話しかけるのにも一苦労で、あの時のトリスさんに話しかけるくらいなら野生の熊や猪と戦った方がまだマシです。」


ヴァンはそう言いながら出会った日のことを皆に話し始めた。



予告通り新章が始まりました。少しづつでありますが評価やブックマークされて嬉しいです。

誤字脱字の指摘や感想などを頂けるとありがたいです。


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