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迷宮の底で復讐を誓う  作者: 村上 優司
強者としての時間
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大都市アルカリス 布告と真相

今日は二回投稿します。まずは二回目です。


「エドモス、生きていたのか。」

「五体満足とは言えないがこうして生きていたよ。」

「なぜ、今更戻って来たんだ。しかも偽名まで使って。」

「決まっている。復讐するためだよ。」

「ふ、復讐だと。モンテゴ・・・ルセーヌに復讐するためか?」

「そこでルセーヌの名前が出ると言うことはカドル、お前も関与していたんだな。」

「違う。俺は関与していない。知ったのは事件の後だ。ルセーヌを問い詰めて白状させた。」

「じゃあ、何故あの日はどうして来なかった。そもそもお前が受けた依頼だったろ。」

「金を、金を貰ったんだ。前日にルセーヌから報酬の倍の金額を渡されたんだ。俺が当時金に困っていたのはお前も知っているだろ。」


カドルはトリスの問いに素直に答えた。二十年以上前に死んだ筈の仲間と再会できたのにカドルの心の中では恐怖しかなかった。もし、エドモスが生きていたらと考えたことは何度かあった。普通なら生きていたことに喜ぶ筈だが、カドルはエドモス殺害の片棒を担いでいたことが罪悪感となっていた。


「そうか、やっぱりそうだったか。」


カドルの言葉にトリスは改めてモンテゴが衝動的に殺害に走ったのではなく、計画的に自分を殺害するために行動していたことが判った。


「それで、カドルは何処まで知っている? 素直に話せば俺に危害を加えようとした事は見逃してやる。」

「ほ、本当か?」

「ああ、俺の事は秘密にして今後は関わらないことが条件だが、どうする?」

「それでいい。俺の知っていることは全て話すから見逃してくれ。」


カドルはそう言うとルセーヌがエドモスを殺害しようとした理由を話し始めた。カドルが独自に調べたことだがその内容はトリスが予想していたことと同じだった。


組合(ギルド)の後ろ盾が欲しく、エドモスに嫉妬していたルセーヌ。

地位と権力を欲し、決して自分の手を汚さないダール。

自分の保身の為に平気で他者を切り捨てるジェテルーラ。

全ての元凶であり、師匠を迷宮に追いやったワノエルィテ。


この人物達がトリスの復讐の対象であることが間違いなかった。トリスは改めてこの者達への復讐を誓った。




「全部話したから足をどけてくれ。」

「ああ、すまなかった。約束通り解放しよう。」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()カドルはトリスに開放するように懇願した。トリスもこれ以上はカドルに用事もないので言われた通りにカドルの背中から足をどけた。カドルはトリスの足がどけられると直ぐに立ち上がりトリスから距離をとった。


「そんなに脅えなくても無いもしないさ。短剣(ダガー)も返す。」


トリスはそう言うと短剣(ダガー)をカドルの足元に投げつけた。床に刺さった短剣(ダガー)をカドルは慎重に抜きながらトリスを警戒した。口では手を出さないと言っていたがトリスを完全に信用することは出来なかった。


短剣(ダガー)を回収したならさっさと帰れ。玄関からは帰るなよ。家の住人に見つかったら厄介だからベランダから出ていけ。」


トリスはベランダに出る為の窓を指差した。ここは三階だがカドルの身のこなしなら家の壁を凹凸を利用して降りることが出来る。そのことを知っているトリスは敢えて窓から出ていくように言い放った。カドルも異論はなく、小さく頷くと直ぐに窓から出ていき振り返ることなくトリスの家の敷地から出ていった。




トリスの家を出たカドルは振り返ることなくトリスの家を離れた。まさかトリスがエドモスだったとは今でも信じられなかった。だが、あの顔、あの声は間違いなくエドモスだった。それにカドルが仕掛けた戦法は冒険者時代にエドモスと一緒に特訓した技だ。カドルが考案して、技が身につくまで何度もエドモスが特訓に付き合ってくれた。だから、あの戦法がトリスに先読みされていたことも納得がいく。


だけど、それよりもあのエドモスはあんな冷たい眼で人を見る様な人物だったか。カドルが知るエドモスはお人好して誰にでも好かれる人物だった。人をあんな冷たい眼でみるような人物では決して無かった。トリスとエドモスが同一人物であることは間違いなかったが、昔の面影を失くしてしまった仲間にカドルは恐怖していた。


そして、一刻も早くこの都市から離れることを決めた。この先、トリスのモンテゴが衝突するのは火を見るよりも明らかだ。そうなればカドルも巻き込まれる可能性がある。そんなのは御免だとカドルは思い早くこの都市を離れること決めた。


だがそれは叶わなかった。


「がはぁ。」


後ろから突き飛ばされる様な衝撃をカドルは受けた。前のめりに倒れようとしたが腹に何かが当たっているのを感じた。カドルは直ぐに腹に手を当ててみると信じられないことが起きていた。


「ぐはぁ。な、なんだこれは。」


腹に手を当てた瞬間に生暖かい物が手にまとわりついた。それが自分の血液だとは直ぐに気が付かなかった。だが、手から伝わる生暖かい感触と鉄の匂いでカドルは血液だと気が付いた。自分が怪我を負ったと認識すと腹から焼けるような痛みに襲われた。


カドルの身体には背中から木材が刺さり、腹を突き抜け、腹を突き抜けた木材は地面に突き突き刺さりカドルを奇妙なオブジェにしていた。何とかこの痛みから逃れようとカドルは足掻いたが血を大量に失ったことで力が上手く入らなかった。


そして、出血多量によりカドルは足掻くことすらできなくなった。足の力が抜け、カドルはその場に倒れようとしたが腹に刺さる木材が身体を支える役割をしていた為、カドルは倒れることはなく命を落とした。


(俺は一体誰に殺されたんだ。どうしてこんなところで死なないといけないんだ。)


カドルの最後に誰に殺されたのかすら判らないままその生涯の幕が閉じた。




「まず、一人目。」


屋根の上に登ったトリスはカドルを逃げた方に目を向けながらそう呟いた。カドルを見逃すようなことをトリスは言ったがそれは嘘だった。知らなかったとは言え、カドルはエドモスを殺すことに加担し、さらにトリスの命を狙ったのだ。敵対した者を見逃すほどトリスは甘くなかった。


「それにしてもいい布告になった。」


眷属粘性動物(ファミリア)から送られてくる感覚共有(パス)でカドルの死体を確認しながらトリスは満足に笑っていた。




翌朝、カジノオーナーであるカドルが死体が朝早くに見つかった。死体を発見したのは毎朝の散歩に出かけた老人で、散歩の道を歩いていると木材を抱えた人を見かけた。


老人は朝早くから仕事をしている職人かと思い気軽に声を掛けたが反応が無かった。それどころか全く動かないことが気になり近くによって見るとそれは死体だった。木材を抱えているのではなく、背中に刺さった木材が腹を突き抜け死体を支えていたのだ。


老人は直ぐに憲兵の詰め所に行き自分の見た物を憲兵に伝えた。憲兵は老人の話した内容を聞くと直ぐに一班を向かわせて現場に急行した。老人の言った場所に行くと確かにそこには男の死体があった。憲兵達は直ぐに現場の確認と死体の身元を捜索した。


そして、死体はカジノオーナーである、カドル・ガッスパーだと昼過ぎには判明した。




カドルの死を知ったルセーヌ、ダール、ジェテルーラ、ワノエルィテの反応はそれぞれ違っていた。ルセーヌは煩わしいカドルが死んだことに安堵し、ワノエルィテは役に立つ駒が無くなったことに遺憾し、ジェテルーラは自分の秘密を握っていた者が死に狂喜し、唯一カドルの死を嘆いたのはダールだった。


もっともダールが嘆いたのは知人が死んだことによる悲しみでは無く、出資者だったカドルが死んだことに嘆きだった。市長選挙では金が必要になる。その金を出してくれていたのがカドルだった。カドルが金を出す見返りにカドルの店を流行らせる手伝いをし、カドルに罪がいかないよう様々な工作をしていた。


その苦労が全て無になったことと来年に行われる市長選挙の対策を一から考え直さなければならないことにダールは嘆いたのだ。




カドルの死の犯人については様々な噂が飛び交った。表の顔を知っている人はカジノオーナーだった為にカジノで負けた客が逆恨みし殺したなどの噂が流れた。裏の顔を知っている人は密偵だった為に知らなくていい事まで知った為に始末されたと推測した。


本当の死の真相を知っているのは自ら仲間をだった者を殺した一人の復讐者だけだ。



これでこの章は終了です。

次回からは新章と言うかトリスが迷宮から脱出した後、漁村リズに訪れた話です。


いつも通り、誤字脱字の指摘や感想などを頂けるとありがたいです。

評価やブックマークをして頂けると嬉しいのでよろしくお願いします。



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