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迷宮の底で復讐を誓う  作者: 村上 優司
聖者としての時間
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故郷スーサ 病の原因 参

本日3回目の投稿です。

エデモス・ダンテはこの村で生まれた。マーサの友人のメルの息子で元気のよい子供だった。父親は領主の護衛を務めていたがエデモスが二歳の時に亡くなった。


スーサ領の近くに盗賊が住み着き当時の領主すなわちマルクの父親はダリスに援軍を求めダリスの兵と共に盗賊の討伐に向かった。盗賊は見事に打ち取ることが出来たが犠牲者が数人出てしまいその中に領主の護衛をしていたエデモスの父も含まれていた。


エデモスの父は領主の身代わりに盗賊の毒矢を受け命を落とした。領主はそのことを大層気に病み護衛の妻、即ちエデモスの母親を自分の館で雇い遺族が路頭に迷わないよう支援した。


それからエデモスは十五歳になるまでこの村で生活をしていた。だがエデモスが十五歳になった時に母親が流行り病にかかりそのまま他界した。エドモスはそのまま母親の弟の家に引き取られるかと思ったが彼は冒険者になる道を選んだ。


父親が領主の護衛だったため父親の同僚たちがエデモスを気にかけ会いに来ていた。その時の父親の昔話をするついでに剣術をエデモスに教えていた。エデモスは父親の同僚達からいかに父親が勇敢だったと聞かせれいつの頃からか父親と同じように領主の護衛を夢に見ていた。


だがマルクの父はそれを良しとしなかった。もし親子二代で領主の護衛で犠牲になった時のことを考えると悔やみきれないのでエデモスには慎ましく穏やかな生活を送って欲しいと願っていた。


しかし現実はそうはならなかった。領主の息子でマルクの弟であるルセーヌがエデモスを冒険者になることに誘ったのだ。ルセーヌはマルクが領主となるとマルクを補佐するかどこか違う土地の貴族へ婿入りするしか道が無かった。だがルセーヌはそれを嫌がり冒険者になる道を選んだ。


一人で冒険者になることに躊躇いを覚えていたルセーヌは、幼い頃より剣術を学んでいた一つ年下のエデモスに目をつけ、言葉巧みに誘いエデモスを冒険者になるよう勧めた。エドモスは護衛になれないとうすうす感づいていたので別の方法で自分の実力を試したいと思っていた。そしてルセーヌの誘いに乗り二十年以上も前にスーサ領を旅立った。


旅立って数年間は従兄妹のスミ宛に手紙が届き、冒険者として一人前になったら必ず帰郷すると手紙には書いてあった。だが今から二十年前にエデモスは『塔』で行方不明になり帰らぬ人となったとルセーヌから知らせが届いた。その知らせを聞いたマルクの父やスミ、他の村人は大いに嘆きルセーヌから送られた遺品を丁重にエドモスの家の墓に埋葬したのだ。



「あんたエデ兄ちゃんの知り合いだったのけ!?」

「はい。二十年以上も前に彼に助けられたことがありもし機会があれば故郷を尋ねて欲しいと言われました。私も今まで事情があり今日まで訪れることが出来ず心苦しかったのです。」

「じゃあエドモスが亡くなったことも知っているのかい?」

「風の噂で聞きました。」

「そうかい。」


エドモスの話題になり部屋は若干重苦しい雰囲気に包まれた。

マルクにとっては父親の恩人の息子。

マーサにとっては友人の息子。

ムージにとっては妻の従兄。


二十年以上も前のことだがそれぞれにエドモスに関連があり、また故郷の危機に彼の知人が助けに来てくれたのは何よりの僥倖と言える。だがそれ故彼の死が重く圧し掛かる。


「皆さんにとってエドモスがどのように関わるかは知りませんが今は新薬の作成を優先しましょう。」


重苦しい雰囲気を打ち消すようにファリアは新薬の話しを進めた。


ファリアはまずは子供達から採取した寄生虫に効果のある新薬を徹夜で作ることを伝えた。自分の持てる知識とマーサの薬の知識を使い明け方までに新薬を作成する。その為には被験者を何人か用意する必要があるので成人男性もしくは成人女性を提供して欲しいと伝えた。


新薬が明日の朝までに完成するば新薬を他の村に朝一で配ることができる。ここから他の四つの村までは半日かかるので昼過ぎには各村に新薬を届けることができる。今は過去の事よりも現在(いま)やるべき事を考える時だ。


「ファリア殿の言う通りだ。マーサさん、サポートを頼む。必要な薬品は後で私が払う。」

「判った。場所はワシの家を提供しよう。薬の備蓄はある。」

「ムージは私と村に行き、被験者を集めマーサさんの家に運ぶぞ。あと子供達の治療方法は誰にもしゃべるな。新薬が完成しなかった時に暴動が起きるかも知れない。」

「判っただ。」

「では、皆さんよろしくお願いします。」


ファリアの合図に皆席を立ちそれぞれやるべき事に向かった。




マルクとムージは村の広場に行き村人たちに事情を説明した。これからファリアとマーサが新薬を作り、早ければ明日の朝には完成することを伝えた。だがその為には被験者が必要で協力して欲しいことも伝えた。当初は誰もやりたがらないと危惧していたが意外と大勢いた。


ツキ達が既に完治していたことが功をそうしたのか被験者の人数に困ることは無かった。マルクは成人男性七人と成人女性三人を選びマーサの家に運んだ。


マーサの家ではファリアとマーサが早速新薬の開発に取り掛かった。

まずは子供達から採取した寄生虫に通常の虫下しを投与した。すると寄生虫に効果がないどころか寄生虫は毒を分泌し始めた。


これにはファリアとマーサも驚いた。寄生虫は魔獣化することで思いもよらぬ進化を遂げているようだ。次にファリア達は毒の成分を解析して解毒剤を寄生虫に投与した。虫下しが効かずとも毒を打ち消す効果がある解毒剤を投与すれば患者の容体が改善すると思い行った。


虫下しの様に解毒剤を投与すると今度は寄生虫が急に暴れ出した。暫く寄生虫は暴れると今度はそのまま動かなくなった。ファリアが寄生虫を見てみるとどうやら解毒剤の影響で死んでしまったようだ。


解毒剤がこの寄生虫に効果がある薬と思い違う寄生虫に解毒剤を振りかけてみたが今度は効果がなかった。ファリアとマーサは首を傾げながら幾つかの実験を繰り返した。試行錯誤した結果寄生虫を駆除するには通常の虫下しを寄生虫に与え毒を分泌したところで解毒剤を投与すると駆除できる事が判明した。


早速被験者に薬を投与することにした。まずは体力的に問題が無い成人男性に虫下しを飲ました。ファリアが魔術で男性の状態を常に監視して虫下しが寄生虫に到達するまで時間を計測、薬が寄生虫に到達した際に人体に与える影響を観察した。


寄生虫に虫下しが到達すると寄生虫は毒を分泌し始めた。この毒は速効性があるが毒性は弱い。その為直ぐに死ぬ用な事は無いが不整脈や消化不良、免疫力の低下を促す。直ぐに解毒すれば人体に大きな影響は無いが解毒せずに毒を摂取し続けると衰弱して死にいたる。


魔術で被験者の状態を確認してみたがやはり予想していた通りだった。毒が分泌されても被験者は直ぐに死ぬことはなかったが毒が分泌されたことで脈や呼吸に乱れが生じた。ファリアは直ぐに解毒剤を被験者に飲ませ先ほどのと同じように被験者の状態を監視した。


解毒剤が体内の寄生虫に到達すると寄生虫はもがき苦しみ始めた。その際に寄生虫が体内で暴れるために被験者は苦痛に顔を歪めるが暫くすると寄生虫が死にそれと同時に被験者の容体が楽になった。その後寄生虫の死骸と卵を排泄するため下剤を投与し被験者が何度か排泄を繰り返すと容態は改善された。


ファリスとマーサは次の被験者から薬の量と飲む時間を確認するため何度か治験をした繰り返し治療方法を確立させた。まず虫下しを飲み、暫く時間を開けて解毒剤を飲む。そのあとに症状が緩和したら消化の良い食べ物と下剤を投与して寄生虫の死骸と卵を排出する。これで寄生虫を完全に駆除できる。


ファリスととマーサがこの治療方法を確立した時と同じ頃に朝日が登り初めていた。



ファリアとマーサが治療方法を確立すると直ぐに領主へ連絡が行った。寝ずに報告を待っていたマルクは受けたこの報告を受け歓喜した。直ぐにファリアとマーサの元に駆けつけた。二人は備蓄している虫下し、解毒剤、下剤ではスーサ領の患者に行き渡らせる事が出来ないと判断し薬の作成を行っていた。


幸いな事にマーサが所持している物とファリアが持ち込んだ薬の材料があった為に薬の材料に困る事はなかった。二人は徹夜明けで体力は低下していたが完治方法が見付かったことで気力は十分にあり黙々と薬を作りつづけた。


「じゃあ、私が西の村。お前さんが東の村に行くよ。」

「判りました。」


昼前にファリスとマーサは東と西にある四つの村を手分けして診察するために各村に向かった。

治療方法が見つかったところでマルクはさっそく領主の村の患者を治療し始めた。ファリスとマーサにはそのまま薬の作成を行って貰い、指示のあった通りの方法で患者達に薬を飲ませた。

何か問題があった時にはファリスとマーサに容体を診て貰うつもりだったがそれは杞憂に終わった。


昼前には他の四つの村の分の薬の作成が終わりこれから各村へ搬送する。ファリスとマーサは薬と一緒に各村を見て回る。ファリアとマーサは馬を操る事が出来ないのでファリアはムージの荷馬車に乗り、マーサは領主マルクと共に馬車でそれぞれ村に向かった。




東の村に着いたファリアは村の状況を確認した。この村と隣接する村の患者は既にこの村に集まっておりこれから薬を患者に投与するだけだ。薬のことは既に連絡が来ていたのでファリア達が到着すると村の代表者達がファリアを患者のところへ案内した。


ファリアが患者を診た限りは重度の患者はおらず皆薬を投与することで体調が改善されていった。唯一の懸念点はこの村には妊婦の患者が二人いた。胎児に影響がでて流産することになったら大変なので二人の妊婦はファリアが直接診察しながら薬を少しずつ薬を投与して治療を行った。


その甲斐があり翌朝には患者達は皆容態が改善していた。西の村の方でも治療は概ね成功したが後でマルクに聞いたところ今回の病で亡くなった者は一人だけ。西の村に住んでいた高齢の方で治療は成功したが体力が低下していた為そのまま亡くなってしまったのだ。


マルクはファリアのせいでは無いと言いこの件はこれ以上話されることは無かった。




数日後、村人たちが全員回復したのを期に領主のマルクが盛大に宴を行うと各村に伝えた。今回の功労者であるファリアに感謝するために開いたのだ。


今回は初めて時間指定を行ってみました。21時に投稿されるかドキドキしています。


いつも通りに誤字脱字の指摘や感想などを頂けると幸いです。

評価やブックマークをして頂けるととても嬉しいです。


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