土曜日 2
長くなったので分けましたが、当初の予定では前話と合わせて1話の予定でした。
なので、改めて前話と一緒にたのしんでいただけると嬉しいです。
その後、俺たちはフードコートでそれぞれ自分が食べたいものを取りに行った。
ーーーそう、取りに行ったはずなのだが…。
「あの、何でみんな、私と同じラーメン屋の列に並んでいるんですか?」
ーーーそう、席を確保していてくれる石田先生を除いて、全員が俺の後ろに並んでいるのだ。
そんな状況に俺はついツッコミを入れてしまう。
「いや、なっちゃんの話聞いてたら、私たちもラーメン食べたくなっちゃってね。そうだよね、鈴香?」
「そうそう。ラーメンって、お家で袋ラーメンとかならともかく、外で食べるなんて機会はなかなかなかったからね」
ーーーおう…。なんか、無理やり合わせてくれてる感がすごいな…。
「ーーー別に、私に無理に合わせなくてもいいんですよ?みんなが好きなものを選べばいいんですから」
俺がそう言うと、鈴香がニヤッと笑った。
「別に、なっちゃんに合わせてるわけじゃないから大丈夫だよ。確かに、なっちゃんの影響が0かって言われたら違うけど、それはなっちゃんの話を聞いてたら、私も久しぶりに食べたいなって思っただけだから」
そこまで言った後、由佳に「そうだよね?由佳」と声をかけると、由佳も「うんうん、その通りだよ」と声をかけてくれる。
ーーー本当に、良い子たちだな。
分かっていたことだが、改めてそう実感する。
そうして、俺たちはそのまま列に並び、ラーメンを買い、美味しくいただいた。
◆◆◆◆
「そういえば、3人で休みに出かけたことってなかったよね?」
帰り道の車の中で、鈴香がふと口にし、それに対して由佳が返す。
「ああ、なっちゃんが来てから毎日が充実してたから、気づかなかったよ。まだ、なっちゃんと会ってからまだたった2週間だもんね。だから休みとか一緒に出かけたことはなくてもおかしくないか」
2人の言葉に俺も思わず驚く。
ーーー2人とは、学校ではずっと一緒に行動していたのだ。
そのおかげで、どんどん2人とも仲良くなっていき(自分でいうのもなんだが)、毎日が充実していた。
その期間が、まだたったの2週間ということに驚きを隠せない。
「じゃあさ、また今度一緒にモールにでも買い物に行こうよ」
鈴香がそう口にした。
ーーーやっぱり、いくらスポーツが好き、運動が好きと言っても、鈴香も女の子なんだな。
遊びに行く、出かける場所がモールということで、そのことを実感して少し笑みがこぼれる。
「はい。ぜひ行きましょう」と口にしようとした時、あるものが頭によぎった。
ーーーあれ?これ危険なんじゃないか?
確かに学校でずっと一緒にいるから、遊びに行った程度ではバレないかもしれない。
でも、今回は遊びに行く場所がモール、ショッピングモールなのだ。
そんなところに行くのだから、やることは当然ショッピング、服を買うに決まっている。
ーーーつまりは、俺のあまりの女子力の無さ、女性的ファッションセンスの無さを、2人に対してさらけ出すことになるのだ。
ーーーやばくないかな?
そう思うものの、この流れで断るのはおかしい。
なんとかしようと頭を回し、1つの方法を見つけることができた。
「私の服、お母さんに買ってきてもらったものばっかりなんで、ファッションについていろいろと教えてくれると嬉しいです」
ーーーよし、何も間違っていないから嘘はついていないし、これならあまりにファッションセンスがなくても変な目で見られないだろう。
そう思った矢先、というかその瞬間というか、2人に思いっきり変な目で見られた。
「え?なっちゃんって、何回くらい自分で服買いに行ったことあるの?」
「えっと、1、いえ3回か4回ですね…」
1回だけというのはあまりにおかしいので、これは相手を安心させるための嘘だからセーフと自分を納得させつつ、少し誇張表現を加えて話す。
だが、多少の誇張は意味を成さなかったようで、2人は、いや運転している石田先生を含めると3人が、「え!?それだけ!?」と声を上げて驚愕を表した。
ーーーいや、いくら病弱設定だからって、女の子が自分で3、4回というのはおかしいよな…。
俺の発言を聞いて、「時間が出来たら絶対一緒に行こうね!」と先ほどよりも更に意欲を出した誘いを貰って、「は、はい」と反射的に返事をしてしまった。
◆◆◆◆
学校につくとすぐ、俺たちは行動に入った。
というのも、購入したフランクフルトは冷凍食品、調理を開始するためには解凍することが必要だ。
俺はよくわからないのだが、冷凍されているものを解凍するのも、冷蔵庫に入れて徐々に解凍するのがベストらしいのだ。それにはなんと、8時間から10時間もかかるのだ。
最悪の場合、パックごと湯煎すれば、10分から20分で解凍できるそうなのだが、本番で提供するのは冷蔵庫解凍のものだ。味比べをするのだから、出来るだけ同じ状況にしたい。
しかし、8時間もの間待っているわけにはいかないので、今回は袋ごと水に浸けて解凍をする。その場合、1時間ちょっとで解凍できるらしい。
8時間という数字に比べると小さいが、それでも時間がかかってしまうため、慌てて作業へと入っのだ。
ただ、解凍し始めると、俺たちはすることがなくなってしまったので、みんなで椅子に腰をかけて、談笑をしながら解凍が終わるのを待った。
◆◆◆◆
解凍が終わると、俺たちは早速調理に入った。
ーーーといっても、やることはごくごく単純だ。
フランクフルトの調理で何をするかと言えば、お肉本体に串を刺す、焼く、ケチャップとマスタードで味をつけるの3行程に、今回は衛生面の対策として下茹でを少しするのを加えた4行程だ。
というわけで、流石の俺と由佳でも、それだけの行程では何の問題も起きずに調理することができた。
その後味見に入り、どれがいいかみんなで選び、1種類のものに決定した。
◆◆◆◆
そうして部活を終え、俺たちは帰路に着いたーーーのだが。
「あ!そういえば、教室に筆箱忘れてたんだった!」
ーーーそう、実は俺、昨日教室に筆箱を忘れてくるという凡ミスをしていたのだ。
昨日は亜希のものを借りてどうにかしたのだが、流石に2日連続で借りるのは妹いえども申し訳ない。
ーーーまあ、こんな考え、今思い出すまで忘れてたんだが。
「じゃあ、なっちゃんが戻ってくるまで待ってるね」
鈴香がそう言ってくれたのだが、流石に待たせるのは申し訳ないので、「いや、流石に2人に悪いから、2人は先に帰ってて」と言って2人は先に帰らせて、俺は再び校舎の中へと入っていき、さらにその中にある自分たちの教室へと入っていった。
ーーーよし、あった。
自分の机の中を確認すると、自分の筆箱を見つけることができた。カバンを開けてそれを中に入れると、用事は終わったので、すぐさま俺は教室を出ていった。
そうして急いで出てきたのだが、校舎の外に出るともう周りは暗くなっていた。
ーーー当然だろう。もう今は10月、日が暮れて暗くなるのもどんどん早くなっている。
「うわー、もう真っ暗だ」
思わず反射的に声を上げながら、足を進める。
すると、校門前に、誰かが立っているのを見つけた。
そんな人影に、知り合いが立っているなんてことはないとわかりつつも、ついつい誰だろうかとその人の顔を見てみる。
「あれ?広瀬くん?」
「ん、え?西山さん?」
立っていたのは、まさかの知り合いで、以前俺に告白してきた広瀬くんだった。
累計30万PVありがとうございます。
これからも頑張ります。
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