プロローグ5
筆が乗らなくてうまく書けなかったけど読むのやめないで…。
「お前がログアウトできないのは、誰かが意図的にお前を現実に帰さないようにしているからだ。」
ーーー思わず呼吸を忘れる。
思考回路が麻痺し、頭がフリーズする。
つい先程まで考えていた小太刀に対する感情や、試し斬りにどこへ行こうか、なんて思考なんか、もう心のどこにも存在していない。
考えられない、理解できない恐怖が思考が思考を埋める。
分かっていた。
ーーーーーー明らかに異常な事態だという事に。
分かっていた。
ーーーーーーでも、理解したくなかった。
はっきり言って、自分でもそうでないかと思うこともあった。
でも、そう思ってしまうと最悪の事態を考えてしまう。
最悪の事態を考えてしまうと、恐怖が心を埋め尽くし、立ち上がれなくなってしまいそうだった。
だから、第一に外に行って戦うのではなく買い物を選んだ。
想像出来ていたから、戦うということに対して恐怖も少しあった。
でも、買い物を選んだ理由はそんなことではなく、戦う いという区切りが頻繁にあるものではなく買い物といういくらでも悩める、続けられるものを選択した。
心が不安に満たされる。
過呼吸のような状態になるも、なんとか落ち着かせる。
ーーー怖い。
そう思っていても、思っているだけでは何も始まらない。そう心を決め、誠也に問いを投げかけた。
「現状は、元の世界の俺はどういう状態なんだ?」
「もうすぐお前の身体を仲山総合病院に運ぶらしい。仮想世界に幽閉なんて事態初めてだから警察も医療関係も即座に行動するのは難しいんだそうだ。取り敢えず総合病院に運ぶことでどんな状況にも対応できるようにするのが精一杯だそうだ。」
「俺をこんな風にした犯人は、分かっているのか?」
「ああ。それが出来るのは日本中、いや世界中探したって1人しかいない。
ーーーー手塚清秀。あいつが犯人だ。おじさん、あぁ俺の親戚の警察官のこと、によると警察は今、手塚の身柄を追っているらしい。」
しばらく沈黙が続く。
そのあと、誠也が笑顔を見せながら口を開いた。
「ははは、笑っちゃうよな。本当にこんなアニメやゲームにしかないような事態、実際にあるもんなんだな。まあ、巻き込まれちゃったぶんには仕方ないな。ゲームの世界なんだし、遊ぶぶんには困らないし、戻れるまでてきとうに時間を潰してるか?」
「ふざけんな!!」
笑顔でそんなことを言う誠也。それに対して怒りを露わにしてしまう。
「仕方ないだって…。お前はいいよな、普通にログアウト出来るんだもん…。こっちはお前と違って不安でいっぱいいっぱいなんだよ!!なのに仕方ない、なんてテキトーな言葉吐くんじゃねえ!!元はといえばお前がこんなゲーム誘うから!!」
言い切った後、失言をかましたことに気づきはっとする。誠也は悪くないのだ。誠也はただ、一緒にゲームをやろうと誘っただけ、失言こそあったかもしれないが、ログアウトできないのには一切関わっていない。
しかも、よくよく見てみれば誠也が作った笑顔はどこか引きつっていた。
それは、誠也自身も不安や恐怖、罪悪感に直面し押し潰されそうになっているということを意味しているのだろう。
それでも、俺を少しでも励まそうと笑顔を作ってくれたんだ。
それなのに、怒りをぶつけてしまった。
本当何言ってんだ、俺。
「あっ…。ご、ごめん。」
「別にいいって。」
俺の反省の濃さとは裏腹に、誠也は軽く流した。
「お前の前で言うのも何だけど、実は俺もお前と同じ考えになってたんだ。俺がいなければ、俺が誘わなければ、お前がこんな状況に陥ることもなかったってな。だから、逆に言われてすっきりしてるんだ。」
笑顔で、誠也はそう言う。
ーーーでも、
「そんなわけないだろ!!
さっきのは俺がカッとなって言っちゃっただけで、お前が悪い要素なんてないだろ!!」
「いや、そうじゃない。」
そう言い、俺を一旦落ち着かせた後、もう一度口を開く。
「確かに客観的に見た場合、俺が悪い要素はあんまりないのかもしれない。でも、それじゃ俺が納得出来ないんだよ。お前をこんな状態にした最後の要因は、間違いなく俺だって、俺の中で決着がついてるから。
ーーーだからさ、医者や警察じゃどうにも出来なくて、どうしようもなくなった場合は、俺が何年何十年かけたってお前を元に戻すよ。」
誠也は、普段話すようなテンションではあるも、俺の目から一切目をそらすことなく、はっきりとそう告げた。
その時、俺の目から涙が溢れ出してきた。
ーーー安心したんだ。
不安で仕方がなかった。もう一生このまま閉じ込められたままなのかもとすら思った。
そんな恐怖に押し潰されそうな状況を、誠也の言葉は変えてくれた。
誠也はただの高校生だ、学力だって飛び抜けて良いといったこともない。真面目という表現が似合うことも無い。
普通なら、そんな奴にこんな壮大とも捉えられること言われたって信用ならないだろう。
ーーーでも、俺は違った。
アイツは俺に対して嘘をつくことがなかったから。
勿論、100%言ったことを実行出来たわけじゃないし、冗談でなら嘘をついたこともある。
でも、心の底から思ったことを口にした場合、アイツはそれを絶対成し遂げようと努力する。
だから、俺は誠也の言葉に絶対の信頼を置くことができる。
その場で下を向き泣きじゃくる俺に、誠也は背中に手を当てていてくれた。
ちなみに、誠也はログアウトした後、無茶苦茶怒られています。(危険だと分かっているゲームにログインしたため)