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帰り道と特訓

最近、忙しくなってきて投稿ペース遅れています。

ゆっくりながらも書き続けてはいくので、これからも読んで下さると嬉しいです。

「お、誠也。来たか。」

「おう、待たせて悪いな。」


西棟と中央棟の間にあるベンチに腰を掛けて待っていると、誠也が遅れてやってきた。

なぜ、こんなところで待ち合わせしていたのかと言うと、今日は2人とも部活があったために時間が合い、一緒に帰れるので、少し早く終わった俺が『早めに終わったから、中庭のベンチで待ってるね。』と、メッセージを飛ばして待っていたのだ。


「いいっていいって。んじゃ、帰ろうぜ。」

「分かった。

ーーーって、奈津希お前、周りに人気(ひとけ)がなくなったからっていきなり油断しすぎだろ。

口調、元に戻ってるぞ?」

「うわっ、やべ。

ゴホンーーーこれでいいかな?誠也。」


そう俺が言うと、誠也はびっくりして目を見開いた。


「いいけどさ…。

お前、敬語主体じゃなくてもそういう喋り方、いけるんだな。」

「まあ、練習したからね。

ただ、まだ練度がかなり低いから、あんまり人が多いところじゃ使えないかな。」

「そこまで練度低いんだったら、今使う必要なかったんじゃないのか?」

「まあね。でも、誠也のことをからかってやろうと思ってさ。」

「からかうって…、流石に目の前で口調変えてるの見たら、照れるなんてことにはならないから、からかえる材料ないぞ?」

「いや、私の病室だって分かった上で入ってきたのに、私の姿に見惚れるような誠也ならいけるかなって思ってさ。」


俺の言葉に、誠也は声を詰まらせる。

そんなくだらない会話を続けながら、俺たちは家へと足を進め始めた。


「そういえば、料理部の活動日分かったよ。」

「え、本当か?」

「うん、火曜日、金曜日と土曜日だって。」

「そうか。じゃあ、一緒に帰れるのは火曜と金曜と、俺も部活がない水曜だけか。」

「そうなるのか。」


そんな話をしながらも、俺は何か忘れてるような気がしていた。

ーーーうーん、何だったかなぁ。


「うーん、何だったかなぁ。」

「ん?奈津希、どうした?」


ーーーあ、やべ。声に出てた。

出してしまったものはしょうがないので、とりあえず今の状態のままを口に出す。


「いや、何か宣言しようと思ってたんだけど、忘れちゃってさ。」

「へー、何か宣言ねー。」


ーーーあ!話してたら、思い出した。


「思い出した!誠也、私、明日から朝、ランニングする!」

「ーーへ?ら、ランニング?」


忘れたと言ったそばから、いきなり思い出した宣言に、誠也も驚いていた。

その後、一度咳払いをしてから、再度誠也が口を開く。


「ランニングって、どうして急に?

お前、走るのなんて大嫌いだっただろ?」

「いや、確かに大嫌いなんだけど、今日の体育で、流石にやらないとまずいなって思ってさ。」

「あー…。」


誠也は少し口を開けたまま、動きを停止させる。

ーーーまあ、動きを止めるといっても上半身だけで、歩みは止まっていないが。


「走るのは嫌いだけど、最低限、クラスの半分辺りまでには入りたいから。

ーーーもう、あんな醜態晒したくないし。」


ーーー体育の授業で、まるで24時間マラソンの走者がゴール直前のように、浴びた応援の声。

あくまであれは、俺の今の設定が病弱だった、というものだったのも相まってはいるだろう。

それでも、あんな状況はとても恥ずかしいし、もう味わいたくはない。

ーーーだから、これから朝早起きしてランニングして、長距離走の授業が終わるまでには、ある程度走れるようになるんだ。

そう思っていると、誠也から予想外の言葉が飛び出した。


「じゃあ、俺も早起きしないといけないな。」

「ーーーえ?」


ーーー何で?何で誠也が、今の流れで早起きすることになるんだ?


「えっと、何で誠也も早起きするんだ?」


分かんなかったので、疑問に思ったことをそのまま口に出す。


「え、だってさ。俺たちが朝一緒に登校するようになった理由って覚えてるか?」

「え、俺たちが朝一緒に登校するようになった理由?」


誠也につられて『俺』と言ってしまいつつも、考える。

ーーーん?なんだっけな?

しばらく考えると、ようやく1つの答えが出てきた。


「確か、母さんが俺が1人で登校するのが大丈夫か、不安になって頼んだんだよな?」

「おう。」


なんか、その時を思い出して、嫌な気分になってきた。

ーーー俺、曲がりなりにも柔道経験者で、黒帯まで持ってたんだぞ?

なのに、身体が縮み、筋力も低下したとはいえ、誰かに守ってもらわないと不安だなんて、失礼にも程がある。


ーーーって、何で俺と誠也が一緒に登校する理由が、俺が朝走るのと関係があるんだ?


思ったことをそのまま口から出し、誠也に質問を投げる。

すると、誠也は「あー、分かんなかったか。」と口にしながら、説明を始めた。


「いや、お前のお母さん、亜里沙さんは、姿が変わって力とかが弱くなったから、1人で登校するのは危険がないのか不安になって、俺に一緒に登校するよう頼んだんだろ?」

「え?まあ、多分そうだと思うけど。」

「だったら、早朝に1人でランニングするのは大丈夫なのか?」

「え?」

「だって、早朝は人気(ひとけ)がないから、不審者がよく現れるって言うし、もし不審者に遭遇したら、周りに人がいないから、助けを求められないし、朝の登校中なんかより、よっぽど危険だろ?

逃げれるだけの足があるならまだしも、今のお前は長距離走、女子じゃドベだし、しかもランニングするんだから、ヘトヘトになったところに不審者が現れたら、どうすることもできないだろ。

これだけ危険なのに、亜里沙さんが1人で走りに行くのを許可すると思えないんだけど…。」


ーーー俺は、誠也に対して頭を下げ、朝、一緒に走ってくださいとお願いし、誠也は快くOKサインを出してくれた。


◆◆◆◆


この後、家へと無事にたどり着き、翌朝ーーーー


「おはよう、誠也。

隈、やばいぞ?」

「うるせぇ。無理やり早起きしたから、若干寝不足なんだよ。」


時刻は午前6時、登校の時待ち合わせた公園に俺たちは集まった。

ーーー誠也は、目の下に大きな隈を作った上で。


「本当に大丈夫か?

無理そうなら、今日はこのまま解散で、明日以降からでもいいんだぞ?」

「もう、大丈夫だって。

時間がもったいないから、さっさと始めようぜ。」

「ーーお前がそう言うなら、それで良いけど…。」


そんなやり取りを経て、準備体操を始め、俺たちは走り始めていた。

ーーージョギングで。


「なあ、こんなにゆっくりで本当に体力つくのか?

もっと早く走って、追い込まなくて良いのか?」


ーーそう、今の俺たちの走るペースというのは、このように、走りながら会話が出来るほどゆったりとしたものなのだ。

思わず疑問を持つ俺に対して、誠也は真面目な顔を維持したまま、口を開く。


「これはアップも含んでるからこれで大丈夫だよ。

そういうキツいのなら、この後やっていくし。

ーーーそれに、このペースでも、長い距離走るとキツいぞ?」

「へー。」


誠也の言葉に、無感情で相槌を打つ。

ーーーんなわけないだろ。こんだけゆっくりなんだ。

このペースなら10kmぐらい走っても、余裕がありそうだぞ?

そんな俺の疑問は、この後すぐに解消された。


◆◆◆◆


「はっ、はっ、はっ、はっ。」

「大丈夫か、奈津希?」


ーーー自分が馬鹿でした。

ジョギングで走り始めて2kmぐらいで、俺はダウンした。

ーーーこんなに、こんなにジョギングでも、体力って使うんだ。

俺自身、体育で測っていた1.5km以外は長距離はあまり走っていなかったため、それ以上一度に走るのは、初めての体験だった。

そういうこともあってか、圧倒的に押し寄せてくる疲労に、驚きを隠せない。


「本当に大丈夫か?

今日はこれだけでやめておくか?」


真剣にこちらを心配した目で、誠也のやつが言ってくる。

ーーーバカ言え。ここで終わったら、全然体力なんかつかないままだろうが。

そう心に鞭を打ち、「まだまだ!」とヒューヒューという音を交えながら宣言する。

ーーーああ、これは止めてもやめる気はないな。

誠也の目が、そんな感情を表した後、「分かったよ。流石にこの状態で続けるわけにはいかないから、あと10分休んだ後でな。」と口を開いた。


10分後、一気に身体を追い込みたいという俺に合わせて、短距離ダッシュを繰り返したところ、先程ほどではないものの、またもやヘロヘロになり、地面に寝転がった。

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