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初日5

執筆ペースが凄い落ちてきた…。

やばい…。

「なっちゃん、料理部に入ってくれない!?」


由佳のセリフに、思わず呆然とする。

ーーーえ、料理部?

あまりに突然の展開に、そこで思考が止まってしまう。


「ダメ、かな?」


そんな思考が止まった中に飛んできた、由佳の確認の言葉に慌てて返事をする。


「いやいや、別にダメってわけじゃないです。

ただ…。ーーーーー」

「「ただ?」」


由佳と鈴香が声を重ねながら聞いてくる。


「ーーーただ、活動内容が分からないから、判断できないなっていうのと、何で私なんかをそんなに熱心に誘ってくるのか、疑問に思いまして…。」


そう、俺の頭には、料理部って言われても、料理部の活動内容がほとんど浮かんでこないのだ。

ーーーもちろん、料理部というんだから料理をするというのは分かる。

でも、文化部でも部活として成立している写真部や美術部なんかは、大会やら評論会やらがあったけど、料理部にはそんな大会はあるのだろうか?

もし仮にそんなようなものが料理部にもあった場合には、普段袋ラーメンとチャーハンしか作らない俺は、全くもって戦力になんか慣れないから、正直邪魔にしかならないだろう。

ーーーまあ、料理部に大会があるのかは分からないけど。

正直、料理部の大会があると言われても、ジャンプで連載していた食◯のソーマの食◯や、テレビ番組の料理対決企画のようなものしか連想できないし。


「というか、何で私なんかを勧誘するんでしょうか?

はっきり言って私、料理なんてほとんどしてないんで戦力にはなれないですよ?」


そんな俺の声を聴くと、由佳はどこか焦ったように口を開く。


「あ、いや、なっちゃん今敬語使ったり、やっぱり壁を感じるじゃない。

だから、同じ部活に入ったら、喋る機会も増えるし、仲良くなれるかな、なんて思ってね。」


あまりに焦って口にする様子は、明らかに正常ではない。

それを見て、鈴香は苦笑いしながら口を開く。


「実はね、今料理部って由佳1人しか部員がいないんだよ。」

「え?」


由佳が、鈴香の言葉に「あっ。」という声を漏らす。

ーーーどういうこと?

部活なんてものは、ある程度人数がいないと部が存続できないはずだ。

中学時代、男子バレー部がそれを理由に廃部になっていたし、俺の所属していた柔道部も廃部になりたくないから、みんな必死に勧誘していた。

なのに、部員1人で存続できているってどういうことだ?

疑問を含んだ視線を由佳に向けたものの、由佳は鈴香の言葉を聞いてから、下を向いてしまって、俺の視線に気づく様子はなかった。

それを察してか、鈴香がまた話をしてくれた。


「もちろん、ずっと1人だったって訳じゃないんだよ?6月までは部員は6人だったんだよ。」

「はあ…。」

「でも、その6人の部員が、由佳以外はみんな3年生でね?

料理部の大会ってのはもちろんテレビでやってるような料理対決みたいなのもあるんだけど、メニューとレシピを書いてそれに写真を添付して出すだけのもあるんだ。

まあ、それも最終審査まで行ったら12月とかに実際に料理作らないといけないらしいんだけど、最終審査なんてよっぽど通らないから、先輩たち本来は来月頭にある文化祭まで残ってるんだけど、早めに辞めちゃってね。

それで、現在は部員は由佳1人、このままだと文化祭終わりに廃部になる予定なんだ。」

「それで、廃部回避のために私を誘ったってことですね。」


なるほど、全部理解できた。

食◯とかテレビ番組みたいな大会って本当にあるんだな、なんてどこか話と噛み合ってない思考を一部頭に浮かぶも振り払い、思ったことを口にすると、由佳が先程よりももっと焦ったように素早く顔を上げて、両手を大きく動かしながら口を開いた。


「いや、そういうのもあったっていうのもあるけど、1番はなっちゃんと一緒に部活をして、もっと仲良くなれたらなってなの。」


あまりにも両手を大きく動かして表現する由佳に、そこまで慌てた様子を見せられる思っていなかったので、思わず笑いが漏れてしまう。

俺は少し笑顔を残したまま、口を開く。


「大丈夫ですよ。別に、部員補充のためだけに私に声かけたなんて思ってないですから。

ーーー私、料理部に入ります。

戦力にはなれないかもですけど、よろしくお願いします。」


ーーー正直、この2人を逃したら俺、女友達他に作れるとも思えないし。

そんなことを思いながら口を開くと、由佳はしばし左手で口元を押さえた後、俺の右手を両手で固く握り、「ありがとう。」と何度も繰り返した。

ーーーこうして、俺は料理部に入部することになった。







「そっか、なっちゃんが入るんなら、私も料理部入ろっかな?」

「「え?」」


予想外の言葉に、思わず俺と由佳の驚く声が重なる。


「何でよ!鈴香、あんた前誘った時は入らなかったじゃないの!

あんた帰宅部だったから期待してたのに!」


由佳は、そう言い鈴香を糾弾する。

そんな言葉に、鈴香は頰をポリポリとかき、苦笑いをしながら答えた。


「いや、私も最初は冗談で断って、後から入って由佳を驚かせようと思ってただけなんだよ。

ただね、ーーーーー」

「「ただ?」」

「ーーー小中から始まって高校まで一緒、なおかつ高校では2人っきりの部活だなんてなったら、できてる(・・・・)って疑われるんじゃないかなって思っちゃってさ。」

「「お、おお…。」」

「私、小中はサッカー部で男子と混じってやってたから、料理部なんて性に合ってないなんてのは同じ中学の人にはバレてるから、その上で入ったりなんかしたら本気で疑われちゃうかなって思っちゃって、入るの躊躇しちゃったんだ…。」

「「…。」」


ーーーもう、なんとも言えない。

料理部の存続の事情なんて、7月まで普通に男子生徒としてこの学校に通ってた俺の耳に一切入って来なかったんだから、大半の生徒はそんな事情知らないだろう。

事情を知らない同じ中学の生徒が、中学まで男子に混じってまでサッカーをやっていたなんていう運動大好きな鈴香が、ずっと仲の良かった由佳と、性に合わない料理部なんて部活で、2人きりで活動なんかしていれば、冗談半分でそんな噂を流す人もいるだろう。

たとえ噂が間違ったものだったとしても、良い気分にはならないし、学校生活を送りにくくなることは間違いないだろう。

ーーー俺は、2人を労わろうと思い、2人の肩にポンと手を置いた。


こうして、料理部は部を存続させる最低人数である3人を満たしたのだった。


◆◆◆◆


「『今日は入部届を出した後、そのまま部活には参加せずに帰るから、先に帰ることになると思う。

だから、帰りは1人で帰るね。』っと。」


2人に「ちょっとトイレに行ってくるね。」と言って女子トイレの個室へと入り、1人になったところで、ささっと先日買った女用のスマホを取り出し、誠也にメッセージを送る。

あいつが母さんに頼まれていたのは、俺の送り迎えなので、こう送っておかないと、誠也のやつは今日部活に行っていいのか迷うはずだ。

ーーーちなみに、誠也が高校で入った部活は写真部だ。

いつか話題になったこともあったと思うけど、誠也は中学時代、文化祭で何人もの生徒を巻き込んではしゃいだことがあり、それがきっかけで教師に目をつけられた。

そんなことがあったため、誠也は「高校ではもう目をつけられたくない!」と、文化祭体育祭で周りを仕切るような仕事を貰わないように、最初から仕事が決まっている写真部に入部したのだ。


そんなことを思いつつ、トイレから出て教室に戻ろうとする。

すると、見覚えのある人影を見つける。


「翔平!」

「え?あれ、西山さん?」


そう、男の時(・・・)柔道部で一緒だった秋山翔平が廊下を歩いていたのだ。

そんな姿を見つけて、いつものように(・・・・・・・)翔平の肩を軽く叩きながら声をかける。

ここまでやっておいて、ようやく俺は自分の失態に気づいた。

ーーーあ、やべ。俺、今女の子だった。

そう、今の俺は女の子。先日まで入院していて、この学校の生徒とは以前から知り合っていた誠也ぐらいしか面識がないはずだ。

特に、翔平となんか、女の子になってからはまともな会話なんかしていない。


ーーーやばい。


俺は、間抜けな凡ミスにより、正体がバレるかもしれないピンチに陥ってしまった。

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