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プロローグ4

短いです。

このバグ、ただのバグじゃないのか?

不安が、俺の胸を締め付ける。

徐々に、徐々に、徐々に徐々に徐々に、恐怖が胸に広がって行く。

ーーー怖い、怖い怖い怖い怖い。


そんな思考を止めるため、大きく深呼吸をする。

すーはー、すーはーとラジオ体操をやるが如く大きく、大丈夫、絶対大丈夫。ただそう自分に言い聞かせながら。

すると段々と呼吸が整ってくる。

それに従い、気持ちも恐怖が薄れ、落ち着いてくる。

大丈夫と思いながら深呼吸する、たったそれだけなのに意外と落ち着くのが不思議だなぁ、と思う。



取り敢えず落ち着くことはできたが、何をしていよう。

心臓が慌ただしく動いたと思ったら、今度はすることがなくなった。

ーーあぁ、暇になった。何していようか?


少し悩んだあと、アーツシステムの練習でもしようと思い立つ。

現状、ゲームの世界に閉じ込められているのは確定なんだ。それならば、少しでも楽しまなくちゃ。

そう思い、再びモンスターの出る場所まで歩いて行こうとしたが、途中で止める。

理由は単純だ。アーツシステムの練習の為に必要なものが足りないからだ。

現状、アーツシステムの練習に足りていないもの。

ーーーそれは、武器である。

『いや、短剣2本買ったって書いてあっただろ?』と思ったそこの君、間違っていない。

だが、用途の関係上新しく買う必要があるのだ。

以前買った短剣2本は、あくまでも柔道の技を活かす為、対人戦の為の武器なのだ。人型モンスターを相手にする時は、別にこれでいい。

だが、動物型モンスターを相手する時にはこうはいかない。

今、俺の身体は女性アバターとなっているのだ。

ただでさえこの身体は、現実の身体と比べて、はるかにリーチが短い。

だというのに、短剣なんて得物を使ったことのない俺が、使いこなせるなんてはずもない。

そんな俺が、うまくこなせるわけがない。


また、武器の重さというものも考慮に入れないわけにはいかない。

このゲームでは、プレイヤー間の実力の差を少しでも減らす為に、アバターの能力はレベルごとに決まっている。

また、武器間の上位関係も出来る限り少なくする為に、『重量感知システム』というシステムを設けている、らしい。

『重量感知システム』とは、例えばリーチの長い大剣などの武器の使い手とリーチの短い短剣などの武器の使い手が戦う際、同じ速さで武器を扱えるならば、当然前者の方が有利である。

その差を是正するために、武器の重さによってアーツシステム使用時の武器の速さ、アバターの通常能力を変動させるシステムを組み上げた。

それが『重量感知システム』という欄である、らしい。

(ついさっき誠也に聞いたばっかりなので実感はない。)


小柄なアバターになってしまったからには、小柄なアバターを活かすしかない。このゲームの場合、それは『重さ』の軽い武器を使用する事で、素早く動けるのと、当たる面積が小さいのの相乗効果を得ることだろう。

けれども、攻撃のためにリーチの長い武器も欲しい。

うーん、と相反する2つの思いに悩んでいると、1つの武器を見つける。

ーーーそれは、『小太刀』だ。



ーーー『小太刀』、端的に説明すれば短い刀で、脇差しとして扱われていたものであり、どのように使われていたかは分かっておらず、女性や子供用の武器だったと言われる説もある。

まあこれはあくまでゲームなので、普通に扱えるであろうし、長さも短いおかげで短剣2本装備した時と『重さ』の値も大差ないので、これに決める。

ーーー1番の理由が『刀がかっこいいから』なのは内緒だ。



せっかく武器を和風にしたので装備もそれに合わせようと服屋へ行き、これまた悩んだ上で、上が緑、下が黒の袴に変える。

このアバターは銀髪なので和服は少し合わないかな?などと思ったが、違和感なく合っている。

やはり顔がいいと何でも合うのだろうと、自分の姿を自画自賛する。(アバターだから自意識過剰じゃない)


くだらない自己自慢(アバター自慢?)を終え、試し斬りに向かおうと再度街の外に出ようとすると、誠也のアバターがログインするのを見かけた。

え?そんな時間経った?とメニューウィンドウを開き、時刻を確認すると22時。アイツと別れてから2時間も経っていた。

その事にびっくりしつつも誠也に声をかけようとする。しかしその前に、アイツの方が此方の存在に気づいたらしく、此方へダッシュで近づいてきた。


「はぁ、はぁ、奈津希、ここにいたのか。」

「おいおい、ここでは《マナツ》だろ。」


現実での名前を出してくるので焦って小声で訂正する。

しかし、それに対して誠也はそんなこと、雀の涙ほども気にしていない様子で、俺たちの間に沈黙が流れる。

それによって、俺たちの間になんとも言えない、少し冷えた空気が広がる。

ここまで俺と誠也の間に、緊迫した空気が流れたことが過去にあっただろうか?

ーーーそれもこんな真剣な雰囲気で。


少しばかり思い出してみるが、そんな記憶はない。

そのことが、俺の不安を増大させる。

誠也は下を向きどこか口を開きにくそうにしている。



そんな状態がしばらく続いた後、誠也が口を開いた。




「奈津希、大事なことだからよく聞いて欲しい。

お前がログアウトできないのは、誰かが意図的にお前を現実に帰さないようにしているからだ。」


どうでもいい裏話


最初は誠也パートと奈津希パートを同時に進める方式で書こうと思ったが、視点の交換が多すぎるのと、誠也パートが書くの難しすぎたのでこの長さになった。

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