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ゲームをしたら女になった件  作者: シロツミ
現実帰還と身の回り
16/72

その頃の誠也

今回は誠也パートです。

もう少し続けようかと思ったけど、切りどころ良いし、続けたら今日中に投稿出来なそうだったのでここまで。

《誠也side》


俺は今、自転車を全力で漕いでいる。

その理由は単純だ。

やっと、やっと雅良叔父さんから、奈津希に関する連絡が入った。

俺から叔父さんに、奈津希の状態を、ログアウトボタンがなくなっているなんていう異常な状態を報告してから数えると、丁度1週間を迎える今日にやっとなのだ。

ーーーまあ、自分も悪いのは分かってるけど…。


そう、最初は叔父さんも俺に報告してくれていたのだ。

だけど、俺が叔父さんが出した条件、絶対に再ログインするなという条件を、奈津希が意図的に手塚清秀に閉じ込められたということを知った途端、そんなことは知らなかったようになんの躊躇もなく破ってしまった。

そこから叔父さんは俺に情報をくれなくなった。

ーーーあの時の叔父さんは怖かったなぁ…。

「お前がやらかすだけならまだいいぞ。

もちろん本当はダメダメだけど、あくまでお前の人生だ。どんなことがお前の身に起ころうとも、お前が痛い目を見るだけだ。

だけどな、今回のお前の行動は俺まで怒られるんだからな。本当にやめてくれよ。」

こちらの方を睨みつけるように強く見つめながらそう言ってくる叔父さん。

言葉では俺の行動自体はまだOKと言っているが、本当はそうでないことが叔父さんの続く言葉から伝わってくる。

叔父さんは、自分が怒られるからという言い方をする事で、他人に迷惑をかけてはいけないと相手に意識させて、もう2度とやらないと自分の意思で決めさせようとしているんだ。

ーーー他のことだったらこんな言い方、叱り方はダメかもだけど、警察がダメって言っていることをやるなんて、叔父さんが関わっていないとやらない、むしろやれないからいいのだろう。


そんな叔父さんから連絡してきたのは、奈津希の今の居場所。奈津希が入院している病院、病室の番号だった。

ーーー奈津希が、手塚清秀の犯罪、完全なる性転換を成し遂げようとした計画の本番に巻き込まれていることは知っている。

叔父さんが俺に情報をくれなくなった後も、俺は事件の情報を掴むことを諦めたわけじゃないのだ。

もちろん、俺は未成年で夏休みではあるもののまだ学生だ。資金面でも行動範囲という面でも、限界というものはある。

それでも、毎日ネットニュースの確認、図書館へ行き新聞、週刊誌もしたし、自転車、電車で行ける範囲で手塚の行方を捜してみたりした。

ーーーあ、これ叔父さんに言うと、また怒られそうだな。


それでも、ほとんど手塚の情報は掴むことはできなかった。

得られたのは、今じゃ日本中誰でも知っている、手塚の起こした事件の内容、手塚自身が発表した手塚の過去、計画を思いつくに当たった理由、その結果、それだけなのだ。

あとは、俺が知っている奈津希が閉じ込められたという情報と組み合わせることで、奈津希が被害者、手塚の実験の被験者になってしまったということぐらいだ。


ーーーあいつは、奈津希は一体どんな思いでいるだろうか。

ただでさえ、『奈津希』という女の子のような名前を気にしてたのだ。今はさぞ、つらい気持ちでいるだろう。

俺は自分の両頬をパシンと叩く。

ーーー漫画やドラマなんかで、頬を叩いて気合入れるシーンはよくあるけど、これあんま痛くないから気分をリセットすることにはならないな。

そんなことを思いながら、漕いでいた自転車を止めて、病院の中へと走っていった。

ーーー入った直後、巡回していたナースさんに「病院の中は走るな!」と注意されるとも知らずに。



◆◆◆◆


途中でナースに注意されたりなんかしながらも、誠也の足はしっかりと一歩一歩、普段よりも少しばかり早いペースで奈津希の病室、205号室に向いていた。

ーーー俺は、アイツに何て声をかければいいんだろう。

アイツは、まず間違いなく手塚により性転換手術(手塚のやり方が手術と表現できるかは分からないが、とりあえずは現存する方法と同じような表現を用いている)を受けている、それはつまり女の子になっていることだろう。

そんな状況で、俺はアイツに何て声をかけるべきだろうか?

今、世間では暴走した反政府団体がなんか性別転換者保護団体なんてものを作ったりしているが、それは奈津希の元には伝わっているんだろうか?

伝わっているとしたら、俺はお前を応援してるからな、のような発言はむしろアイツを傷つけることになるんじゃないだろうか?

なら、どういう発言をするべきか。

アイツを傷つけず、俺とアイツの間にわだかまりを作らず、普段と同じ関係を再構築する方法…。


ーーーそうだ、普段通りアイツに話しかければ良い。

そうすれば、アイツの身構えた、俺すらも態度を変えるんじゃないかという不安を打ち消すことができるし、普段通りの関係にすぐに戻れるかもしれない。

ーーーうん、これがいい。


そう心を決めるも、俺の頭の中に1つの疑問が浮上した。

『今のアイツ、どんな姿なんだろう?』と。

ーーー俺の頭に浮かんだのは、黒髪のプロレスラー体型の女性だった。

そりゃ当然だ。アイツの身体はとても筋肉質で、肩幅なんかとても広く、がっちりしている。

そんなアイツの姿から予想されるのなんて、そんなのばかりだろう。


そんなものしか浮かばない頭だったからこそ、俺はアイツの姿からひどく衝撃を受けたのだ。


◆◆◆◆


扉を開けると、そこにいたのは銀髪碧眼の、最早幻想的という言葉が似合う、少女の姿だった。

その姿に見惚れ、さっきまで考えていた話しかける時の話題なんかどこかへ吹っ飛んでいき、そのままフリーズしてしまう。

一体何秒たっただろうか、その姿があるものと結びついた。

ーーー手塚清秀は完全フルダイブ型のVR技術を完成させた。それは間違いない。

だが、その技術でも、視界に映るのはあくまでもポリゴンでありプログラム、現実に敵うものではなかった。

それでも、俺たちはその世界に魅了された。


そう、目の前の少女は、向こうの世界で見たことのある姿をしていたのだ。

いや、これだけでは不十分であろう。

向こうの世界よりも、もっと輝きを増して、現実に、この世界へと存在していた。


ーーー奈津希、奈津希なのか。


俺は奈津希の姿があまりにも衝撃的だったこと、奈津希の、元は男の姿に見惚れてしまったこと、自分の予想なんかとは大いに違ったことなんかが混ざり合い、「ええーーーー!!!」と声を上げてしまった。

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