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Mixed Reality Tale  作者: 紺野トーリ
6/6

やっと落ち着きました

俺は今、寮にある自分の部屋にいる。間取りは8畳1K、風呂トイレは別。冷暖房完備で、ウォークインクローゼットまで付いている。色々あったけど、ようやく寮に入ることができた。寮に着いて、鍵を受け取って、自分の部屋の番号を聞いて、簡単な寮生活の注意事項なんかを受けて……。気がつけば、もう17時を過ぎていた。夕飯の時間が18:30ということを考えると、そこまでゆっくりしている時間はなさそうだ。とはいえ、実家から送られて、すでに部屋に搬入はんにゅうされている荷物を、簡単にでも片付けなくては……。


「……」

「……」

「……ズズッ」

「……で、なんでみんないるんだ?」

そう、みどり紅音あのん瑠璃るりちゃんが、なぜか俺の部屋にいるのだ。


「私は、そうくんが、色々教えてほしいって言ってたけど、教えてあげられなかったから、その続き?」

「お兄ちゃんがこっちの島に来た理由を詳しく聞くため?」

「私はみどりちゃんの付き添いです?」

「なんで、瑠璃ちゃんまで疑問系?!」

みんな、好きなことを言って俺の部屋に居座っているのだ。瑠璃ちゃんに関しては、まったくもって意味がわからん!とにかく、このままじゃ部屋の片付けも出来ないし、くつろぐことも出来ん!


「これは……、終わるまで帰る気ないな……」

「そーゆーこと♪」

「であれば、俺の疑問を全部解消してもらうか……。まずは、なぜあそこでモンスターが出てきたのか、ということだ。施設なんだから、普通のゲームだったら、モンスターは出てこないはずだろ?」

俺は、少し落ち着くために、コーヒーを一口。うん、うまいな。さすが、紅音。


「通常のモンスターは、もちろん街中などには出てきません。ただし、先ほどのような特殊なモンスターも存在します。ある程度大きな場所さえあれば出現するので、完全に気を許していると、やられてしまいます」

「そうだね。今回は、なんとか撃退出来たけど、次はどうなるかわからないよ……」

「なるほど……。ああいったことはどこにでも起きうるってことか……」

とはいえ、さすがに個人の部屋には出没しないようだ。そりゃそうだよな。寝ることも出来ないんじゃ、システムとしてありえないし。だいたい、立ち回り出来ない場所に出てきたら、狩り放題になるか、やられるかの2択になりそうだしな。


「次にアイテムだな。あれ、実際に飲んでるわけじゃないのに、なんで味がするんだ?」

「それはわかりません。恐らく……「それに関しては私の出番ですね♪」

瑠璃ちゃんの説明が突然遮さえぎられたと思ったら、フェアが出てきた。えっへん! なんて言ってるところが、なんだか憎たらしい……。ってか、俺、フェア出てくるようにしたっけ?


「マスターの疑問に答えるのが、私の役目ですからね♪ だからこうやって飛び出してきたわけです♪」

「ツッコミどころが満載なんだが……。つまり、フェアは自分の意思で俺の目の前に出てくるってことか?」

「無意識のところで、私を呼んだんですよ♪ 私はAIなので、意思があるか、と言われれば疑問が残りますが、必要とわかれば出てきますよ♪」

「便利なんだろうけど、ふとした時に出て来られるのはアレだな……」

ふと周りを見ると、3人ともフェアを見ていた。なんだか目を見開いている。


「お兄ちゃん……フェアってナビゲーションシステムだよね? ヘルプのところで出てくる……」

「そうだぞ? みんなこんな感じじゃないのか?」

「……私のはとても機械的で、こんな風に会話が出来ません。私の意思でやることを伝えない限りは何もしてくれませんし……」

「私もそうだよ。さっきナビしてくれてた時も思ったけど、自由過ぎる感じだよ……。そもそも、自分の意思で飛び出してくるなんて、聞いたことないよ……」

3人ともそれぞれに思っていることがあったようだ。フェアに関しては、俺もよくわかってないからなぁ……。ただ、みんなの反応を見る感じ、普通ではないようだが……。


「マスター? 続きを話してもいいですか?」

「あ、あぁ……。お願い……」

マスターと呼ばれていることは、もう諦めよう。きっと、そういうシステムなんだろう……。


「そもそもMRは、VRとARを足したようなもの、というのは理解されていると思います。なので、五感に作用させることは可能なんです。今回使用したポーションには、初期設定としてリンゴジュースのイメージを設定してあります。口に含むことで、そのイメージが展開されて、舌ざわりで感じ取ることができる、というわけです」

「ということは、触覚で感じただけ、ということか。人によっては、イメージが変わりそうなもんだけど……」

「それに関しては、未だ改良中です♪ なので、実験島なんて言われてるんですよ♪ 使用した感じなんかをアンケート形式で統計を取ってますので、どんどん改良されてより設定したものになりますよ♪」

なんだかすごいな……。まだまだ発展途上のMRとはいえ、ここまでのものなら、世間一般にもっと出回ってもいいようなものなんだけどな。


「後、気になってたのは装備だな。なんでみんな制服じゃなくなったんだ?」

「……蒼くんのエッチ……」

紅音が、胸を隠すように腕を交差させている。

「ちょっ! 俺は何も悪くないぞ!!」

そりゃ、しっかりバッチリ見たけど! 男なんだから仕方ないだろ!

「お兄ちゃん、紅音ちゃん見る目がいやらしかった……」

翠がジト目で見てくる。

「そ……それは……」

これは反論が出来ん。追い詰められる……。

「お兄さんに見られる前に装備解除できてよかったです……」

「うん……。俺が悪かった……」

無表情で言う瑠璃ちゃんに心が折れた……。もう何も言うまい……。3対1。俺に勝ち目はない……。


「ふふっ。いじめるのはこれくらいにしておくね♪ 」

紅音が笑顔でそう言った。あぁ、こういう時、付き合いが長いとわかってくれるからホント助かる……。ま、だから俺もこの後どうすればいいのか、なんてのもわかってるんだが……。


「蒼くん、素材の話したでしょ? そこから装備を作ることが出来るんだよ。モンスターからドロップしたり、採取で入手したり出来るんだ♪ ちなみに、私は宝箱から手に入れたんだー」

「モンスターには、装備を使った方がいいってことか」

「そうだよ。武器なら攻撃力が、防具なら防御力が上がるんだけど、結局は自分の動き次第だから、蒼くんみたいに初期装備でも問題ないんだー」

なるほど……。だから、大型モンスターにも俺の攻撃は通用したってわけか。ゲームの中ってわけじゃないから、敏捷性は自分の運動神経にかかってるということになる。野球やってて良かった……。


「で、その素材ってのは、どこで手に入るんだ? そもそもモンスターが出てくる場所もわからんし……」

「そこでフェアの出番ってわけですよ、マスター♪ もちろん、全部取りに行けるわけではありませんが、レベルが上がれば、どんどん範囲も広がります♪」

「もちろん直接取りに行くこともできるよ! お兄ちゃん、今から一緒に行こ♪」

言うが早いか、翠が俺の腕を掴んで引っ張り始めた。こーゆーところ、昔から変わらないよなぁ。

俺は立ち上がり、翠と一緒に玄関へと向かった。まだまだ知らないことはいっぱいあるし、きっとやることもたくさんあるだろうけど、せっかく入学したんだし、頑張っていきますか!


「よし! 行くか! 案内よろしくっ」

「うんっ!」

俺は翠とパーティを組み、玄関を勢いよく飛び出して行った。ふと玄関を振り返ると、部屋の中から紅音と瑠璃ちゃんがいってらっしゃーい、と手を振っている。


「!? ちょっと待て!」

俺は、玄関が閉まる直前に手を入れた。紅音が「ちっ……」と言う顔をしたのを見逃さなかった。危ない……。よくよく考えたら俺の部屋だ。危うく俺の荷物を全部見られるところだった……。


「紅音、ってか瑠璃ちゃんも……。とにかく俺の部屋から出ようか……」

「別にいいんだよ行ってきても♪」

「うん、何か企んでるようにしか見えないから、みんなで行こうな……」




俺の部屋からみんなが出る頃には、夕飯の時間になってしまい、そのままご飯を食べに行くことになった……。やることはわかってきたけど、やらなくてもいいことまでわかってきたのは、いいことなんだろうか……。

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