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Mixed Reality Tale  作者: 紺野トーリ
3/6

戦ってみました

「バトル?どういうことだ?」


俺は困惑して、紅音あのんを見た。紅音は、どこか諦めた表情をして、俺のほうを向きながら答えてくれた。


「バトルっていうのは、MRSランキングに直結するものなの。上位に行くと、色んな特権があったりして、みんな1位を目指しているの。だから、こうやってバトルを申し込んでくる人がいるんだけど……」

そこまで言ったところで、2人組が近付いてきた。二子石ふたごいし学園の中等部の制服を着ている。髪をちょこんと頭の上で結んでおり、リボンが付いているからリンゴみたいになっている。紅音と身長はそこまで変わらないようだが、髪型のせいか小学生に見える。


「なにか?」

「……いや、なんでもないよ……」

なんか物凄いにらまれた。俺の考えてることが、読まれたのか? いや、また顔に出てたんだな……。気をつけよ……。


「どちらにしても、ここじゃバトル出来ないので、場所移動しませんか?」

視線を紅音に向け直して言った。見た目とは裏腹に、落ち着いた雰囲気の声だ。沈着冷静、表情をおもてに出さず、淡々と物事を進めていきそうな印象を受けた。


「わかったわ……。でも、1つ教えて? なんで、私とバトルしようと思ったの?」

「……言わなくては、いけませんか?」

「……ゴメン。言わなくてもわかるわ……」

そう言って、2人は俺を見てきた。


「2人ともゴメンな。コイツのせいだろ?」

俺は、ヒザの上に乗っているコレを指差した。コレは、ニコニコした表情をこちらに向けている。ヒザの上に乗っているのに、何故か向かい合っているのは、体の正面が俺の方を向いているからだ。まるで恋人同士のイチャイチャする現場になっている。

あー! もう! 頭を振るな! ツインテールが俺の顔にピシピシ当たる!


「んーー!! お兄ちゃん、なんで島に着いたこと教えてくれなかったの!? 言ったら迎えにいったのに!」

「言わないよ! みどりに言うとこうなることがわかってたからな! とにかく降りろ! そして頭を振るな! 痛い!」


ブンブン!!


「痛い痛い!」

俺はたまらず、顔を仰け反らせ、ツインテールという攻撃の射程範囲から離脱する。その体勢のまま、翠の両脇に手を入れ、たかいたかーい! の要領で軽く浮かし、そのままヒザの上から横へスライドさせた。翠は不満そうな顔をしていたが、今度は怒った顔をして、紅音の方を向いた。


「お兄ちゃんに言い寄るなっ! お兄ちゃんは私のだ! って言ってるでしょ!!」

「言い寄ってるわけじゃないって言ってるのにー。 いつも信じてくれないんだからー……」

本気で怒ってる翠とは対照的に、お姉さんらしく、紅音は微笑ましくやりとりをしている。それが気に入らないのか、ムキーっ! って怒ってるよ。もう少しおしとやかにしてもらいたいもんだ。


「そろそろ他のお客さんの迷惑になるので、場所移動しませんか?」

その言葉に、俺、紅音、翠は店内を見回した。いつのまにか、目立っていたようだ。そんな中、案内をしてくれたメイドさん、もとい、ウェイトレスさんがこちらに近付いてきた。


「お客様、周りのお客様のご迷惑となりますので、あまり大きな声を出さないでいただけますか?」

「「「すみませんでした!」」」

はい、3人でしっかりと謝りましたよ。さすがに騒がしくしたことは、自分でもわかってたし。いや、ホント申し訳ない……。

俺と同じ考えだったのか、紅音も翠もショボーン……となっていた。ま、一番の原因は翠なんだけど、一緒になってしょんぼりするあたり、紅音はお姉さんの気持ちなんだろうなぁ。翠は俺の妹だけどね。


「さて、移動してバトル、ってのもアリなんだけど、注文もしてるし、少し話してからでもいいか?」

そんな提案をしてみる。俺としては、必要な情報が足りなさすぎて、いきなりバトルをやる!って言われても、何も出来ないはずだ。システムをもう少し聞いておきたい。


「お兄ちゃんがそう言うなら……。るりちゃんもいい?」

「私は構わないわよ。バトルをするって言い出したのはみどりちゃんのほうだし」

「話終わったらやるの! 今度こそ、紅音ちゃんと決着付けるんだから!」

「はいはい……」

全員が落ち着いたところで、相席にしてもらうよう、ウェイトレスさんにお願いした。もう騒いだりしないで下さいね! とお叱りを受け、再度反省したところで、俺たちの席に翠たちが移動してきてくれた。

紅音が気を使って俺の横に移動しようとしたが、翠が問答無用で俺の横に座ってきたので、苦笑いしながら、元の場所に座った。


「さて、その子とは初めてだな。改めて、初めまして。玉井たまい そう、翠の兄です。よろしく」

「ご丁寧にありがとうございます。私は、羽柴はしば 瑠璃るりと言います。みどりちゃんとは、1年生の頃から同じクラスで、同じギルドに所属してます。よろしくお願いします」

と言うと、丁寧にお辞儀してくれたよ。どっちが丁寧なのやら……。


「よろしくね。羽柴さん、でいいのかな?」

「瑠璃、で構いませんよ。みんなそう呼んでますし」

「じゃぁ……瑠璃ちゃん、よろしく」

「はい、よろしくお願いします」

ホント冷静だよなぁ。感情が見えない……。ま、翠と一緒なら話す機会も増えそうだし、これから仲良くなればいいか。

ん?なんか隣のお嬢さんから冷たい視線を感じるぞ……。うん、気のせい、気のせい……。


「私は、金石かねいし 紅音あのん。蒼くんとは、小学校も中学校も一緒で、二子石学園には、今年から通うんだよ〜!よろしくね♪」

「紅音ちゃんのことは、覚えなくていいよ、るりちゃん。どうせ、すぐいなくなるんだから……」

「怖いこと言わないでよー! 昔みたいに仲良くしよーよー!」

紅音はさっきから苦笑いしかしてないな。翠は、さっきより険しい顔になってるし。ホント、昔は仲良かったんだけどなぁ……。


「ところで、バトルはなんとなくわかったんだけど、どうやって戦うんだ? まさか、直接殴り合いするわけじゃないよな?」

そんなのただの暴力だし。女の子にそんなことさせるのは違うし!

なんて考えてると、瑠璃ちゃんが説明してくれた。


「バトル自体はMRSを使って戦います。なので、直接怪我をすることはほとんどありません。もちろん、走ったりするので、転んでしまったり、何かにぶつかってしまったら、どうしようもありませんが……。装備に関しては、MRSを起動して装備します。メニューがありますので、そちらから選択してみてください」

言われた通りに、メニューから装備を選択する。武器、服、装飾品などなど、いろんなのがあるみたいだ。

ま、俺は起動したばっかりだし、初期装備であろう、ロングソードを装備しているだけだ。


「バトルするって聞かない人もいますし、そろそろ行きましょう」

「ありがとう。実際にやってみないことにはわからないことが多そうだね」

そう言って、俺たちは喫茶店を後にした。

え?いつパフェとか食べたかって? 俺に聞かないでくれ……。気が付いた時には、もう食べ終わっていたよ。隣に座った翠にも、パフェをおごらされたけどね……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


喫茶店から出ると、隣の建物に入った。『演習場』と書かれているところをみると、バトルが出来るのだろう。瑠璃るりちゃんが先導してくれている。恐らく何度もここを利用してるんだろうな。

受付を済ませると、部屋の中へ入った。ちょっとしたダンススタジオというか、体育館をちょっと小さくしたような、そんな部屋だった。


「さて、それでは実践……といきたいところですが……」

紅音あのんちゃん! バトルだよ! 真剣勝負だよ!」

「やっぱりそうなるんだね……。蒼くん、ちょっと待っててもらってもいいかな?」

「あ、あぁ……。よくわからんが、2人とも怪我するなよ?」

そう言って、2人は準備を始めた。手慣れた手つきで操作を行なっている。みどりはわかるんだが、紅音はなんであんなに慣れてるんだろ……。


「紅音ちゃん、こっちに来たばっかりだからって手加減なんてしないんだからね!」

「もちろん! ランキングかかってるなら、負けるわけにはいかない!」

準備が終わったのか、2人の間には “30“ と数字が出ると、カウントダウンが始まった。さっきまでのえがおはどこへやら……。徐々に2人の表情が真剣になって来ている。翠は、弓のようなものを持って、紅音に向けて構えている。紅音は、短剣だろうか。両手に持って、腰を落としている。

2人ともサマになってるなぁ……。


「……」

「……」

カウントダウンが10を切った。2人の緊張がこちらにまで伝わってくる。横で見ている瑠璃ちゃんも、どこか緊張している感じがする。クラスが一緒ってことだし、翠のことが心配なんだろうな。


…3…2…1


GO!


合図と共に翠は、構えていた矢を放った。紅音に向かって一直線だ。紅音は弓をサイドステップでかわすと、翠に向かってダッシュしていた。短剣を持ったまま走る姿は、まるでアサシンのようだ。矢が紅音に向かって飛んでくるが、器用にステップしながらかわしている。


「あれって、そんなに簡単にかわせるものなのか?」

「いえ。そもそも、MRSを使用しても身体能力が上がるわけではないので、紅音さんの元々の力でしょう」

「なるほど……」

ま、どこか納得いった感じだな。運動神経はバツグンだし、何をするにもうまくやるからなぁ。


「紅音ちゃん! とっとと死んじゃえ!!」

「っ!! そんなこと言わないで、よ!」

翠からは、何やら不穏な言葉と共に、矢が放たれていくが、紅音はそれをキッチリかわしながら、距離を詰めていく。翠が矢を放った次の瞬間、紅音が真っ直ぐ突進していった。当たる!


「っ! よしっ!」

「!?」

当たったと思った矢は、紅音の顔のそばを通り抜けていった。実際には、通り抜けたんじゃなくて、首を傾けてかわしたんだろう。驚いた翠が、一瞬攻撃できなかった。そんな絶好機を見逃すはずもなく、紅音は一気に攻勢に出た。

翠は、弓を使いながらうまく防御している。武器同士が当たる音が聞こえ、激しさを増してきた。

徐々に対応が遅れ始め、翠はバランスを崩し、後ろに倒れそうになっている。


「もらった!」

紅音は右手を振り下ろした。決まった! と思ったら、翠はバク転の要領で、紅音の攻撃をかわしながら顔を狙う。それを紅音は、体をひねってかわした。


「さすがみどりちゃん。一筋縄ではいかないね……」

「紅音ちゃんもね。とてもまだ数日しか使っていないとは思えないくらい動けてる……」

2人の攻防は、一進一退だった。


その後も、お互いに決め手を欠き、決定打がないまま、時間切れとなった。

引き分けとなってしまった2人は、悔しそうな顔をしている。


「くーやーしーいーーー!!」

「みどりちゃんに勝てなかったかー。私も、もっともっと強くならなきゃ!」

戻ってきた2人は口々にそう言った。悔しそうな顔をしてはいるが、どこか清々しい顔をしている。

とはいえ、体は正直なようで、その場に座り込んでしまった。


「2人ともお疲れ様。……今度こそ教えてもらえるかな?」

「はい。それでは、参りましょう」

さて、2人のバトルを見て色々とわかったこともあるし、いっちょ頑張ってみますか!

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