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偵察にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年〇七月十三日


 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯)


 雨は明け方には上がったが、森に一段とムワっとした湿度を置いていった。

 ロッジを消すとサウナのような空気に包まれた。

「にゃあ、これはダメにゃん」

「ダメだね」

 防御結界の空調をONにした。

「これはネコちゃんの魔法馬がなかったらアウトでしたね」

「格納しても防御結界が利用できるなんて優れものすぎます」

 魔法馬の防御結界は格納時も有効だ。

「これでは鍛錬にならぬから空調は切るべきではないか?」

「「ヤメてください!」」

「いくらアーヴィン様のお言葉でも従えません」

「道具を有効に使うのも鍛錬です」

「にゃあ、この環境で戦うのは危ないからヤメた方がいいにゃんよ」

 こんな高温多湿では熱中症になる確率が高い。目の前の人間離れした人なら大丈夫かもしれないが。

「オレは馬にも乗るにゃん」

 魔法馬に跨る。

「今日は足場が悪いから馬を使った方がいいにゃんよ」

 昨夜の雨でかなり滑る。

「そうであるな」


 三人も魔法馬に乗り、泥と苔で滑る足場を魔法で固めて出発する。

「にゃあ、アーヴィン様は銃は使わないにゃん?」

「銃であるか? 使わぬこともないが、いざというとき吾輩はこれを使うのである」

 アーヴィン様が取り出したのはボーガンだった。

「ただ、狩りにはあまり向かぬ代物なのである」

「にゃあ、向かないにゃん?」

 威力が足りないのだろうか?

「ちょうど良い獲物が現れたので、実際に見るのがわかりやすいのである」

 現れたのは黄金の毛皮に鋭く長い牙を持つ巨体。サーベルタイガーだ。特異種ではないが普通のトラよりも大きくて手強い。

 馬を停めるとサーベルタイガーはゆっくりと距離を詰めてくる。

 楽勝だと踏んでいるのだろう。

 アーヴィン様がボーガンを構えた。

 殺気を感じたのかサーベルタイガーは地面を蹴って襲い掛かった。

 音もなく発射された瞬間、サーベルタイガーの巨体が矢によって穿たれた小さな穴に吸い込まれる様に消えた。

「にゃ?」

「見てのとおり獲物が消え去るのだ」

「にゃあ、スゴいにゃん、確かに狩りには向かないにゃんね」

 オレの見立てでは、発射されたのは矢の形をした魔法式そのものであり、空間圧縮と分解をほぼ同時に行っているのではないだろうか。

「本来は城攻めに使うものらしいわよ」

「生き物に使うものではないのです」

 キャサリンとエラが教えてくれる。

「にゃあ、それ以前に誰にでも使えるものじゃなさそうにゃん」

 魔力バカ食いなのは当然として発射前にターゲットに合わせての調整が必要なはず。

「マコトはわかるのであるか?」

「ネコちゃんですもの当然ですよ」

 オレが返事をするよりも早くキャサリンが答えてしまう。

「ぅぅ、先を越された」

 リーリは威張れなくて悔しそう。でも、ドーナツを渡したらすぐに機嫌をなおしてニコニコした。


 今日は馬を使っての狩りということでアーヴィン様も普通の銃に持ち替えた。普通と言っても王都の専門店に行かないと手に入らない逸品だ。

 キャサリンとエラは引き続き剣を使う。オレは最初から銃だ。

「来たにゃん」

 サーベルタイガーと遭遇してからいくらもたたないうちに次が来た。今度も特異種ではないが群れだ。

 オレたちを囲んで一斉に襲い掛かって来る。


『ケェッッッッッッッ!』


 大人の背丈ほどもあるどでかい軍鶏の群れだった。黒い羽と赤いトサカを持っている。

 いきなり蹴りが炸裂する。

「はぁっ!」

 それをキャサリンが剣で受け止めた。魔法もスゴいが剣技も半端ない。


『ギャアアアアアアア!」


 次の瞬間、軍鶏の身体が燃え上がった。

 いい匂いが漂う。

「焼き鳥!」

 リーリが叫ぶ。

 地面に転がった黒焦げの軍鶏が変な格好でプスプスくすぶる。

 魔法剣士なだけはある。

「にゃあ、切り込んだところから魔法を送り込んだにゃんね」

「ネコちゃん、ご名答です」

 獲物は消し炭になったけどな。

 回収して復元する。

「キャサリンの魔法剣は相変わらずの凄まじさであるな、吾輩も負けてはおられぬ」

 群れの半分以上がアーヴィン様によって射殺されていた。

 残りはエラが首を落としている。

 走り回る首のない胴体はオレが銃で仕留めた。

「皆んな、早すぎ!」

 見どころを作った割に一羽しか狩れなかったキャサリンが不満の声をあげた。

「仕方ありません、森の中は危険ですから」

 エラが藪に剣を突き刺すと毒蛇の頭が重たい音を立てて転がり出た。人間の頭と遜色のない大きさだ。

 頭部を喪ってのた打ち回る蛇の胴体もあっと言う間にぶつ切りにする。こちらは一五メートルはあった。

「うむ、エラの剣さばきも見事である」

「お褒めいただき光栄です」

 こう刻まれては、せっかく高く売れる蛇革も台無しだ。

 人気商品の肉も毒まみれ。

 オレが回収して修復するから関係なしだが、ほかの冒険者が見たらリアルもったいないお化けになること間違いなしだ。


 血に飢えた三人が獲物を求めて森を徘徊する。

 飢えた妖精は焼き鳥をオレの頭の上で食べていた。


 昨日までと特異種の種類が違ってるような。

 撲殺したり焼き殺したりバラバラにするので多少知恵のある奴は皆んな逃げてしまったらしい。

 考えなしの獣&特異種がオレたちの魔力に誘われて入れ食いになるので、獲物としての数は変わらない。

 鳥系と爬虫類系が多くなってオオカミなどの獣系が減ってる。鳥も爬虫類も高く売れるからいいけど。


 いちばん考えてなさそうな恐竜系の特異種が率いる群れが襲ってきた。四足歩行タイプで頭は紛れもなく肉食だ。

 体長は五メートルほどと恐竜としては大きくないが動きが恐ろしく速い上に数が多かった。

 よく見ると恐竜じゃなくて、巨大ヤモリかも。

「にゃあ、五〇〇匹はいるにゃん!」

「それは歯ごたえがあるのである」

「こんなのに当たったら普通死にますけどね」

「同感です」

 オレたちは小さく固まって飛び掛かってくる巨大ヤモリを次々と倒す。

 頭上からも降り注ぐように襲ってくる。

 面倒くさいので一気に片付けたいところだが、アーヴィン様たちが薄笑いを浮かべて戦ってるので自重した。

 巨大ヤモリたち一匹一匹はそれほどの強さはないが、群れになった時の強さは魔獣に匹敵する。

「この生命をすり減らす感じがたまらないではないか」

「アーヴィン様、そんなことは思っても口にしてはダメですよ」

「同感です、慣れてる我々も不気味に感じます」

 オレはノーコメントだ。こっそり魔獣狩りをしてるオレにはアーヴィン様の感覚もわからないではない。


 三〇分ほどして無限かと思われたキャサリンの魔力に黄色信号が灯った。


「ネコちゃん、私の防御結界はもうもたないわ、後はお願いしていい?」

「にゃあ、魔法馬の防御結界で十分守れるから心配いらないにゃんよ」

「わかったわ」

 キャサリンがオレたちを守るべく張っていた防御結界が消える。

 防御結界の変化を感じ取った巨大ヤモリたちは、さらに無秩序に襲い掛かってきた。将棋倒しになってるけどいいのか?

 オレたちも巨大ヤモリに埋もれた。

「おお! これは!」

「「無理!」」

「「「……っ!」」」

 魔法馬の防御結界が表に出ると同時に電撃が走って、オレたちに殺到した巨大ヤモリどもを感電死させた。

 団子になっていた巨大ヤモリたちも運命を共にする。その前に仲間に踏まれて圧死した個体も少なくはない。

「これはどうしたのであるか?」

「にゃあ、魔法馬の防御結界に電撃を乗せただけにゃん」

「ネコちゃん、そんなことができるの?」

「にゃあ」

「おかげで助かったわ」

「いまのは危なかったですね」

 オレは積み重なった巨大ヤモリたちの死体を回収する。

「すまぬマコト、手間を掛けさせた」

「にゃあ、巨大ヤモリはまだいっぱいいるから安心するのは早いにゃんよ」

「そうであったな」

 アーヴィン様は迫りくる第二陣の巨大ヤモリに銃を撃ち込む。

 キャサリンとエラも銃に持ち替えた。

「また来た!」

「埋もれるのは勘弁です」

 第二陣の巨大ヤモリたちが殺到する。危険を目の前にして逃げないのだから考えなしだ。それだけにこちらも殲滅戦を強いられる。

 アーヴィン様たちは銃を乱射するが倒すよりも襲ってくる数が多いのは一目瞭然だ。また巨大ヤモリに埋もれるのも時間の問題か。

「にゃあ、電撃が待ってるのに突っ込んでくるにゃんね、考えなしすぎるにゃん」

「特異種の群れはそれを倒さぬことにはどうにもならぬ」

 もしくは特異種以外を全部始末するかだ。

「巨大ヤモリの特異種は群れの奥にゃんね」

「そうみたいだね」

 リーリも確認したようだ。

「特異種も自分の身は可愛いにゃんね」

「考えなしの割に考えてるね」

「にゃあ、考えてるわけじゃないと思うにゃん、生存本能にゃんね」

「吾輩が打って出るのである」

「アーヴィン様、この群れの中をどうやって特異種まで進むおつもりですか」

「なに、マコトの魔法馬があれば問題あるまい」

「にゃ?」

 アーヴィン様は、馬を操り殺到する巨大ヤモリたちを踏みつけて前に出た。防御も迎撃も魔法馬の防御結界に丸投げで巨大ヤモリたちの上をどんどん進んで行く。

 無論、巨大ヤモリたちはアーヴィン様に襲いかかるが、すべて防御結界の電撃で返り討ちにされる。

 巨大ヤモリの死体で作られた道が特異種に向かって伸びる。

「相変わらずめちゃくちゃするわね」

「アーヴィン様ですから」

「にゃあ、ふたりはアーヴィン様について行かなくていいにゃん?」

「私たちにアレを真似しろと?」

「アーヴィン様ならおひとりでも大丈夫です」

「にゃあ、だったらオレが見てくるにゃんね」

「ネコちゃんもアーヴィン様のマネをするの?」

「にゃあ、オレは飛んで行くにゃん」

 魔法馬を消してオレは飛翔する。

「ネコちゃん、ひとりで大丈夫なの?」

「リーリもいるにゃん」

「まかせて!」

 オレの頭の上でリーリが安請け合いする。

「にゃあ、ちょっと見てくるにゃん」

 ついでに巨大ヤモリの躯を回収する。

 飛翔といっても五メートル程度の高さなので、巨大ヤモリは木に登ると次々とオレに向かってジャンプした。


『『『ゲッ!』』』


 次の瞬間、飛びついたどの個体も身体を切り裂かれて仲間の上に落下した。

「にゃあ、見えないけどオレの防御結界は期間限定でトゲトゲにしたにゃん」

 いまのオレは、イキってる一〇代よりヤバいぞ。


 追い付いたアーヴィン様は、巨大ヤモリの特異種に迫りつつあった。

 ここから見える特異種は、超巨大ヤモリで全長八メートルぐらい。残念ながらあまり強そうじゃなかった。

 数で押すタイプだとそんなものか。

 迫りくるアーヴィン様に驚いて守りを固めようとしてるが、残念なことにいままでとそれほど変わらない。

「やっぱりオツムはいまいちっぽいにゃん」

「ああっ! 特異種が逃げ出したよ!」

 特異種が反転して自分の手下を乗り越えて逃げ出した。

「逃げる特異種は初めて見たにゃん」

「侯爵、ヤバいもんね」

 既にアーヴィン様の射程圏内にとらえられた特異種に明日はなさそうだ。

 邪魔な巨大ヤモリがアーヴィン様の繰り出した衝撃波で吹き飛んだ。

「見つけたのである」

 必死に逃げる巨大ヤモリの特異種だったが、後ろからアーヴィン様の銃弾が降り注ぎ反撃もせずに死んでしまった。

「弱すぎにゃん」

 首領である特異種を喪って巨大ヤモリたちの進軍が止まった。

 それから我に返ったのだろうか、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

「にゃあ、残念ながら一匹残らず逃がさないにゃん」

 既に全部にマーキング済みだ。

「にゃあ!」

 雷撃で巨大ヤモリはすべて狩り獲った。

 ところでこいつらは売れるのか? 個体はそんなに強くないから、この世界のルールを当てはめるとあまり味は期待できない。

「スパイスの効いたソーセージ辺りならイケそうにゃんね」

「ソーセージ!」

 リーリの食欲に火がついた。


「マコト!」

 アーヴィン様が呼んでる。

「にゃあ」

 地上に馬を再生して飛び乗った。

「マコトだったら、最初から一気に狩れたのではないか?」

「にゃあ、通常種の巨大ヤモリはイケたかもしれないにゃんね、でもそれだとアーヴィン様の狩りにならないにゃんよ」

「それもそうであるな、確かに楽しめたぞ」

 アーヴィン様が豪快に笑う。

 そこにキャサリンとエラが到着した。

「いまの雷撃ってネコちゃんでしょう? 何で出し惜しみしてたの!?」

 キャサリンはお怒りモードだ。

「これ、マコトを責めるでない、我らの狩りだからマコトは手を出さずにいてくれたのだ」

 アーヴィン様がキャサリンをいさめてくれる。

「アーヴィン様の仰るとおりです。マコトさんが序盤で全部仕留めてしまったら狩りになりません」

「うっ、それは」

 キャサリンの勢いがしぼむ。

「ごめんなさいネコちゃん、自分の未熟を棚に上げて」

「にゃあ、いいにゃんよ、オレからもっと早く提案すれば良かったにゃん」

「六歳の子にそこまで心配されると立つ瀬がないですけど」

 今度はガクっと落ち込むキャサリン。

「マコトは強いからね!」

「妖精殿のいうとおりである、マコトと自分を比べること自体が無駄な行為であると我輩は悟ったのである」

 アーヴィン様が腕を組んで頷く。

「にゃあ、ひとまずお昼にするにゃん」

 巨大ヤモリの特異種がいた本陣跡が開けていたのでそこにロッジを出した。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) ロッジ


 お昼はリーリがソーセージを要求したのでオオカミのソーセージを各種、茹でて出した。巨大ヤモリは研究が必要なので代替品だ。

 それとフライドポテトと野菜スティック。硬いパンのスライスもあるぞ。

「ビールお待ちにゃん」

 オレとゴーレムで忙しくテーブルとビールサーバーの間を往復する。

「死にかけた後のビールがこんなにうまいとは発見であるな」

「普通は死にかけたら大変な状態ですから」

「そもそもビールが近くにありません」

「今日の狩りはここまでにして良いだろうか、気が抜けてしまったのである」

「私も魔力が払底してます」

「お風呂に入りたいです」

「にゃあ、気が抜けた状態なら森に出ないほうがいいにゃんね、魔力が足りないのも同じにゃん。お風呂はいつでも入れるにゃんよ」


 今日のアーヴィン様一行は、死闘で精神と体力をすり減らしただけあって酒の回りが早く、すぐに撃沈してしまった。

 アルコールだけは分解してゴーレムに寝室に運ばせた。

 このままじっくり疲労を回復させるといいにゃん。

「オレは時間があるから狩りに出るにゃん」

「あたしも行く!」

 リーリがオレの頭に飛び乗った。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯)


 魔法馬を走らせて魔獣の森の飛び地に向かった。飛び地とはいえ実際に魔獣の森の飛び地を肉眼でとらえたのは初めてだ。

 普通の森と魔獣の森は植生が違うらしくまるで人間が手を加えたみたいにかっちり生えている。

「にゃあ、本当にマナが濃いにゃんね」

 植生の違いはマナの濃度が原因だろう。濃いマナの中で育った植物はとにかく大きかった。

「マコト、魔獣の森に入るの?」

「にゃあ、今日は下見だけにゃん。近いうちに潜るけどひとりで来てるときにゃんね。じっくり攻略したいにゃん」

「それがいいね」

 強敵が潜む場所に足を踏み入れるのだ。無理は禁物だし命取りになる。

 飛び地から外に出てくる魔獣は微妙だったが、それはマナの濃度のせいだと思われる。

 濃いマナの中がスタンダードな生物が、濃度の低い森の外に出たらパフォーマンスが低下するのも当然だ。

「にゃあ、オレの倒した魔獣はどれも性能が落ちてたにゃんね」

「そう考えた方が安全かな」

「にゃあ、危なくなったら逃げるだけにゃん」


 硬いものを擦り合わせるような音が複数、飛び地の方向から聞こえた。

 それに魔法だ。

「飛び地の中から索敵してるにゃん」

「だったら、魔獣で決まりだね」

「にゃあ、少し下がって魔獣の森の飛び地から魔獣をおびき寄せるにゃん」

 魔法馬をUターンさせる。

 硬いものがこすれる音が大きくなった。

「来るよ」

「にゃあ」

 魔法馬の速度を上げるが魔獣はその後ろにピッタリ張り付いた。

「ムカデにゃん!」

 赤い身体がはるか向こうまでつながってる。

 巨大なムカデタイプの魔獣は、以前倒した鎧蛇と同じぐらいの大きさがあった。要は特急列車並の大きさだ。

「色からすると炎を吐きそうにゃん」

「どうだろうね」

 オレが森の木々を避けながら走ってるのに巨大ムカデは全部砕いて進む。

 しかも速いぞ。

 魔獣の森の飛び地から巨大ムカデの身体を外に引っ張り出すことに成功した。これで濃いマナは吸い込めない。

「攻撃開始にゃん」

「やっちゃえ!」

 オレは馬上から小銃を構えて撃った。

 変化なしだと?

 外しようのない巨体だが弾が当たってない?

 いや、全部弾かれてる。

「にゃあ、距離を詰めて来やがったにゃん」

 巨大ムカデは大きな牙をカチカチさせながらオレの乗る魔法馬の後ろに迫る。

「これならどうにゃん!」

 背後に分厚い土壁を造るとすぐ衝撃音が響き渡った。巨大ムカデが土壁を避けられず激突した音だ。

「効いてないね」

 次の瞬間、土壁を巨大ムカデが頭で砕いた。

「にゃあ、ウナギみたいには簡単にいかないにゃんね」

「足がある分、強いんじゃない?」

「そうかもしれないにゃん」

 巨大ムカデが口を開く。魔力を感じたオレは魔法馬を消して空中に逃れた。

 次の瞬間、毒液が飛ばされ魔法馬がいた地面を溶かした。

「毒液が地面まで溶かしてるにゃん」

 巨大ムカデが首をもたげ空中にいるオレに狙いを付けた。

 オレも銃を構え発射する。

 ムカデからも口の中に弾丸が飛び込むよりも早く毒液が発射された。

「にゃ!?」

 オレの防御結界に当たった毒液は結界を溶かし始める。

 弾丸を飲み込んだ巨大ムカデもただじゃ済まなかった。毒液を生成する器官が破壊され身体の中に漏れ出した。

 巨大ムカデは、すぐに身体を大地に叩きつけ悶え苦しむ。

 オレは防御結界を溶かす毒液を回収し分析する。

 答えはすぐに出た。

「にゃあ、毒液は液体に見えるけどそれ自体が魔法にゃん」

「どういうこと?」

「にゃあ、魔法式を液体に偽装させてたにゃん」

「回りくどいことをしてるね」

「にゃあ、魔法式のほうが扱いが楽にゃん、でも体内に流れ出すとは思ってなかったみたいにゃんね」

 身体の内側を破壊された巨大ムカデが動かなくなる。その躯を分解して回収した。


 その後は、魔獣の森の飛び地の縁にそって飛行を続け、今後に備えて各種データを収集した。

 飛び地は半径二〇キロほどの円形で、その中心に行くほどマナが濃くなる。約三〇〇程度の魔獣がいるようだ。


 次に飛び地から現れたのはコウモリ型の魔獣だった。胴体はミニバンぐらいあり、羽根はその数倍の大きさがある。

 コウモリだけに強力な超音波をぶつけてきたが、これはオレの防御結界で難なく防ぐことができた。

「にゃあ、反撃にゃん!」

 コウモリの使ってる飛翔の魔法に干渉し、さらに上空へと打ち上げた。

 その身体は軽々と高度制限を越える。

 どこからともなく赤いレーザーが四方から浴びせられ撃墜された。それを地面に墜ちる前に回収した。


 コウモリを回収したところで日が傾いた。

「今日はここまでにゃんね」

 オレも着地して魔法馬に跨った。自分で飛ぶより魔法馬の方が楽ちんなのだ。

「夜は狩りに出ないの?」

「にゃあ、ムカデとコウモリの解析と巨大ヤモリのソーセージ作りにゃん」

「美味しくできるかな?」

「にゃあ、そこは美味しくするにゃん」

「あたしが味見をしてあげるね」

「ご協力感謝にゃん」


 襲い来る獣や特異種を倒しながら暗くなる前にロッジに戻った。


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