特異種の受難にゃん
辺り一面に倒れている通常種のサイの躯もオレがせっせと回収した。これだって宅配便のトラックぐらいある。
「にゃあ、これも仕舞っていいにゃん?」
首を落とされた特異種を指差した。
「お、おお、頼む」
アーヴィン様は、ガントレットを眺めていた。
「いまのはスゴかったにゃん」
「そうだね」
リーリもうなずいた。
「拳だけで行けると思ったのだが、無理であった」
「にゃあ、それでも特異種の身体の自由を奪ったんだから十分スゴいにゃん」
「なに、足を止めさせたのは防御結界の手柄だ、吾輩の力ではないのである。キャサリンももう良いぞ」
「かしこまりました」
キャサリンも周囲に獣の気配がないのを確認してから、防御結界を元の厚さに戻した。
「えっ、他のサイはどうしたの?」
防御結界の制御に集中していたキャサリンは、通常種のサイの姿が見えないことにいまさらながら驚く。
「マコトさんが回収しました」
エラが答えた。
「へえ、本当にスゴいんだね、おっともう次が来たみたいよ」
早くも次の特異種の群れが来た。
「マコトの言うとおり入れ食いらしいな」
「にゃあ、今日は特異種が北に上がってるみたいにゃん」
徒歩だとまる一日かかる距離だし、そもそも危険エリアだから他の冒険者は来てないと思うが北上はよろしくない傾向だ。
「どうされます?」
エラがアーヴィン様に尋ねる。
「各自、自由に動いて良し」
「では、そのように」
「承知しました」
次の群れが地響きを立ててまっすぐこちらに近付く。
この考え無しの攻め方はオオカミやウシの群れとは違う。
音からすると二足歩行。
恐竜?
いや、違う恐鳥だ。
『『『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!』』』
大口を開けた恐鳥の群れが突っ込んで来る。
機敏に木々を避けて走るのでサイよりもずっと速い。
「後ろからも来たにゃん」
考えなしのようでしっかり群れを割って仕掛けてくるあたり、特異種は厄介な存在だ。
「後ろは私が守ります、ネコちゃんたちは下がっていて!」
「わかったにゃん」
邪魔しないように三人の真ん中に馬を進ませた。
「おおおお!」
アーヴィン様が気合とともに衝撃波を連発で放つ。魔法というより「気」を操ってるように見える。
口を開けていた恐鳥たちの頭が次々と破裂した。
頭部を失った恐鳥たちはそれでも走り続けるが、いずれも方向がめちゃくちゃで立木に衝突を繰り返す。
危ないからオレが仕留めて回収する。
「はっ!」
衝撃波を免れた個体は、エラの剣で首を跳ねられた。
背後では、キャサリンが魔法で作り出した風の刃で襲いかかって来た恐鳥たちを残らず切り刻んでいた。
辺り一面に血の臭いが色濃く立ち込める。
圧倒的な力だが、獲物がめちゃくちゃで売り物にならないにゃん。
オレなら修復できるから関係ないけど。
切り刻まれ飛び散った恐鳥の躯を残らず回収する。
地面をウォッシュして血と臭いを消した。
「にゃあ、この中に特異種がいないにゃん、ヤツはまだ隠れてるにゃんね」
探査魔法に引っ掛からない認識阻害ではないステルス性を有しているらしい。
「どこから来るの?」
キャサリンも探査魔法を使ってるようだがやはり何も反応がないみたいだ。
「来た、上です!」
最初に気付いたのはエラだった。
「デッカイね」
「にゃあ」
真っ黒な恐鳥が翼を拡げてオレ狙いで降下する。クチバシが四つに割れて開くとか完全に別の生物だ。
「ネコちゃん!」
オレは銃を上に向けて銃撃一発で仕留めて防御結界で受け止めて回収した。
「マコト、いまので仕留めたのであるか?」
「そうにゃん」
「特異種を一発って、しかもちゃんと見ないで撃ったでしょう?」
「的が大きいから気配だけでも外さないにゃんよ」
見なくても探知結界に入れば認識可能だ。それにオレの防御結界は恐鳥の特異種ごときには破れない。
「やるではないかマコト、吾輩も負けられん!」
「私も負けられません!」
エラが剣を振って血を払う。
「私も私も!」
キャサリンも手を挙げた。
「誰も負けてないにゃんよ、次が来るにゃん」
おいしそうな魔力と血の臭いを振りまいたせいで入れ食い状態が続く。
オレは切り刻まれた獣たちを回収するのに専念した。
リーリはドーナツを頬張る。
○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) ロッジ
夕方、オレはその場にロッジを出した。
もうちょっと南下したかったが今日はこの場で野営だ。
「久し振りに存分に暴れたぞ、実に有意義な時間であった」
アーヴィン様がロッジのソファーに大きな身体を預ける。
「うん、美味しいよ」
その横でリーリがソフトクリームを舐めている。
今日は実に三〇匹の特異種を狩った。特異種だけでその数だから通常種はその一〇倍を超えてる。
オレは馬を提供しただけだから、この人たちは底抜けに強い。
「アーヴィン様もお風呂をどうぞ」
「野営でお風呂に入れるなんて贅沢ができるなんて思いませんでした」
キャサリンとエラが風呂から出て来た。
アーヴィン様は従者で有っても先に女性にお風呂を使わせる紳士だ。
「吾輩はホテルの風呂にも驚いたのである、王都にも滅多にない贅沢な作りであった」
「そうにゃん?」
「お風呂自体が贅沢品とされてるから、貴族でも毎日使ってるなんて少数よ」
「魔導具の使い方も贅沢の一言です、特にゴーレムがスゴいの一言です」
「しかもネコちゃんが全部ひとりで作ったんでしょう?」
「作ったと言っても設計図は既にあったにゃん、それとゴーレムは大公国のお土産にゃん」
嘘はついてない。
「にゃあ、それより侯爵様もお風呂に入るにゃん、湯上がりのよく冷えたビールは最高にゃんよ」
「おお、冷えたビールが有るのか!?」
「にゃあ、抜かりないにゃん」
「わかった、直ぐに清めて来よう」
「慌てなくてもビールは逃げないにゃん」
階段を駆け下りるアーヴィン様の背中に声を掛けた。
キャサリンとエラにジュースを出してから、オレは夕食の準備を続ける。
夕食と言ってもビールだろうから恐鳥の唐揚げに焼き鳥、枝豆もどきにフライドポテト、それともつ煮だ。
「獲物の内蔵の料理は出してもいいにゃん?」
「内臓って食べられるの?」
「鮮度がいいモノを適切に下ごしらえすればおいしく食べられるにゃん、でも無理には出さないにゃんよ」
「美味しいよ」
リーリもお気に入りの逸品だ。
「美味しいなら問題ないわよ、アーヴィン様も気になさらない方だから心配は要らないわ」
「おおお! 何であるかこのビールは、めちゃくちゃうまいではないか!」
アーヴィン様はジョッキを一気に空にした。
「きっと風呂上がりだからにゃん」
「おお、そうであったか!」
「いいえ、アーヴィン様、ネコちゃんに騙されないで下さい、これは明らかにその辺りのものと違います、エラもそう思うでしょう?」
「もふ?」
エラは口いっぱいに唐揚げを詰め込んでいた。
「とにかく我輩にもう一杯くれ」
「私もお願い」
「もふ」
「にゃあ、直ぐ持ってくるにゃん」
オレとゴーレムがビールサーバーとテーブルの間を何度も往復した。
すっかり夜も更けて酔っ払った三人をゴーレムを使ってそれぞれベッドに運んだ。
オレはこれから夜のお楽しみにゃん。
「にゃあ、ここからがオレに取っては本番にゃん、夜の狩りにゃん」
「出発!」
○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯)
ロッジを出て馬に乗る。
光の玉を飛ばしてヘッドライト代わりに森の獣道を照らす。
魔力を絞って大物狙いにゃん。
探索して進む。
「にゃあ、反応有りにゃん」
「かなり大きいよ」
「にゃあ、そうみたいにゃんね」
魔法馬の鼻先を反応に向けた。
藪を魔法で刈り取って新たな獣道を作って近付く。
「にゃ!?」
大きくて直ぐには全容が掴めなかったが、このフォルムはワニだ。
おお、動いた。
一〇メートルを軽く越えるが特異種ではない。
頭はこちらを向いてないが、金色に光る眼はしっかりオレを見ていた。
魔力をお漏らししていなくてもおいしそうなのだろうか?
そこはお互い様と言うことで。
「早速行くにゃん」
ワニも動き出そうとする。
オレは電撃を放とうとした瞬間、ワニを横取りされた。
『ブモォ!』
ブタがワニの頭を踏んで動きを封じるとその身体に喰い付いた。
硬いワニ皮などものともしない。
一〇メートル越えのワニを軽々押さえ込むブタって、これも有り得ない大きさだ。
生きたまま喰われてるワニも渾身の力を振り絞って身体をねじって逃げようとするが、ブタから逃げられないでいる。
怪獣の様なワニをむさぼり食うブタは足が八本も有って胴も長い。
「お肉がいっぱい取れそうだね」
「にゃあ、あのブタってもしかして魔獣にゃん?」
「そうみたいだね」
体内にエーテル機関有り。
魔獣で決まりだ。
「どこから来たにゃん」
「あっちだね」
リーリが指さした先に探査魔法を打った。
「魔獣の森にゃん?」
五キロほど先にマナの濃い場所があった。
「魔獣の森の飛び地だね、そんなに大きくないよ」
「そうにゃんね」
リーリの言うとおり飛び地という言葉がぴったりの規模の小さな魔獣の森だ。
巨大ブタはそこから出て狩りをしているのだろう。
魔獣の森から出る迷惑な魔獣は当然、殺処分だ。
まずは電撃で様子を見る。
『ブヒィィィ!』
ブタの身体から炎が吹き出した。
「にゃあ! 炎の魔法を使うにゃん!?」
「違うんじゃない?」
「にゃ、そうにゃんね」
ブタの様子が変だ。
身を捩って暴れる魔獣のブタ。
「脂肪に火が点いたにゃん、お肉が燃えてるにゃん!」
「おいしそうな匂い」
人体発火だ。豚体だけど。
慌てて結界で囲って酸素をシャットアウトした。
まずは消火だ。
ブタは結界の中で暴れたが直ぐにおとなしくなった。
死因は窒息死だった。
○帝国暦 二七三〇年〇七月十一日
翌日もアーヴィン様一行は狩りを続ける。午前中は、ほんの少し南下したが特異種たちに足止めを食らっていた。
オレはバラバラになった獲物の回収とご飯を作る係だ。
そしてリーリは食べる係。
この前もこの辺りには来ているが、魔法馬で走り抜けてしまっていたのでここまで特異種がいることには気が付かなかった。
あのときは特異種じゃなくてウシとブタを追い求めていたから、他の獣は特異種であっても積極的には狩らなかった。
「わっははは! 特異種は実に愉快である!」
次々と特異種を殴り殺すアーヴィン様は果たして普通の人類なのだろうか?
キャサリンとエラも半端なく強い。冒険者ギルドのランクで言ったらAは堅い。
アーヴィン様はA以上だ。
オレが加勢するまでもなく順調に獲物を狩っていた。
「マコトよ、もう数日ばかり森に滞在しても良いであろうか?」
昼食の席でアーヴィン様が切り出した。
「にゃあ、問題ないにゃんよ」
「プリンキピウムにも我輩から通信の魔導具でデリックに伝えておこう、マコトのホテルに使いを出すにしてもそう手間ではあるまい」
「にゃあ、それは助かるにゃん、通信の魔導具は便利にゃんね」
「高価な点を除けば便利な魔導具である」
冒険者ギルドには完備されてるみたいだし。
この前の大公国の遠征にもラルフが持って来ていた。
オレには見せなかったけど。こちらの通信の魔導具は高価だからか、前世の携帯みたいに気軽に人前で使うものではなかった。
「通信機能だったら、ネコちゃんの馬にも着いてるんじゃない?」
キャサリンは隙あらばオレを抱っこしようと狙ってる。
給仕中はヤメてもらいたいのだが。
「にゃあ、有るにゃんよ、でもお互い馬に乗ってるか格納してるかが条件になるから専用品には敵わないにゃん」
「魔法馬での通信は付随機能だから仕方あるまい、通信の魔導具がもう少し安く出回ればいろいろ楽になるのだが」
「通信の魔導具は、その全てが出土品ですから今後も安く出回ることは無さそうです」
エラが通信の魔導具の現状を説明してくれた。
「にゃあ、遺跡から出るにゃんね」
「その大部分がフェルティリータ州の遺跡から出土しています」
フェルティリータ州は、王都の北東方向に位置する豊かな穀倉地帯を抱える大領地だったはず。遺跡が多く発掘された魔導具で豊かな領地だと州都の図書館で仕入れた知識に合った。
「いまも発掘されてるにゃん?」
「先史文明の都市がまるまる埋まってるって聞いたことがあるわ」
「にゃあ、それはスゴいにゃんね」
「発掘中の遺跡の周囲は即死の防御結界が張り巡らされてるので、間違っても近付いてはいけません」
「にゃあ、怖いにゃんね」
「フェルティリータ州なら、プリンキピウムからだと最短でも一ヶ月半は掛かると思うから、ネコちゃんが迷い込むことはないんじゃない?」
「にゃあ、それなら安心にゃん」
「発掘中の遺跡ならプリンキピウムにもあるではないか?」
「にゃあ、掘ってるみたいにゃんね」
「見には行ってないのか?」
「にゃお、デリックのおっちゃんから近付くなって言われてるにゃん」
「それが普通です」
「プリンキピウムの遺跡ってクーストース遺跡群の一つね」
「にゃあ、そうにゃん、遺跡群の他の遺跡は近くにあるにゃん?」
「アルボラ州にあるクーストース遺跡群の遺跡はプリンキピウムのみです、他はすべて別の州ですから近くはないですね」
「にゃあ、そのどれにもお宝が眠ってるにゃん?」
「王宮の力の入れようからすると、そうであろうな」
「ネコちゃんは、いままでどおり近付かないのが得策ね」
「にゃあ、わかってるにゃん、オレもそのつもりにゃん」
「マコトが希望するなら見学に連れて行くぐらいは構わぬのだが」
「アーヴィン様、ネコちゃんを危ないところに連れて行ってはダメですよ」
「後で近衛軍に誘拐されること必至です」
「マコトなら大丈夫であろう?」
「ネコちゃんと近衛軍の間で戦争が勃発しちゃいますよ」
「それは見ものであるな」
「確かに見ものです」
「にゃあ、オレは戦争なんて嫌にゃん」
後が面倒くさい。
「大丈夫よ、ネコちゃんのことは私が助けます」
キャサリンの申し出は嬉しいけど。
「内戦に発展しますね」
そうなるにゃんね。
「それは困るか、すまぬマコト、遺跡の見学は無理の様だ」
「にゃあ、オレもそれがいいと思うにゃん」
午後も狩りまくりだ。
移動する間もなく特異種の群れが襲って来る。それを血に飢えた三人が八つ裂きにして葬り去る。なかなか阿鼻叫喚な光景だ。
「もしかして魔獣の飛び地と関係あるにゃん?」
リーリに尋ねた。
「ないとはいえないかもね」
オレとリーリは話をしながら肉片を回収する。
「にゃあ、特異種の発生に濃度の高いマナが関係してるなら、魔獣の森の飛び地が近いこの辺りに多いのは説明がつくにゃん、でも確たる証拠はないにゃんね」
「マナの濃度か、どうなんだろうね」
リーリもわからないというか、これまで興味がなかっただけのような。
一キロも移動しないうちに日が暮れてしまった。特異種狙いなら移動はヤメてこのまま魔獣の森の飛び地の近くにキャンプを張った方が効率がいいかも。
「にゃあ!」
ロッジを出した。
「今日はここまでにゃん!」
アーヴィン様たちに声を掛けた。特異種や獣の血肉が飛び散った戦場を結界でくくって声を掛けた。
おいしそうな魔力も完全に隠蔽する。
「おお、もう夕暮れであったか!」
我に返るアーヴィン様。孫もいるのに飛ばしすぎにゃん。
「にゃあ、後は明日にゃん」
「ふぅ、時間が過ぎるのが早く感じるわ」
息を吐くキャサリンは魔法を打ちっぱなしで魔力切れを起こさないのだから大したものだ。
「戦いに集中していた証拠にゃん」
「手の抜けない相手だったからね」
「にゃあ、そうにゃんね、特異種を相手に手を抜いたら死ぬにゃん」
「そのとおりです、すべてが真剣勝負です」
エラは血にまみれた剣をウォッシュした。
魔力は既に隠蔽したので新たに特異種が群れを率いてロッジを囲むなんてことはないはずだ。
三人とも入口の自動ウォッシュで間に合いそうにないのでオレがウォッシュした。
「生き返るとはこのことであるな」
「にゃあ、まずは一休みにゃん」
○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) ロッジ
三人をロッジに入れた。オレは念のため半径五〇〇メートル以内の危険な獣は電撃で倒して回収した。これで防御結界に張り付くヤツもいないだろう。
「まずは、お風呂に入りましょう」
「そうですね」
なぜかオレの身体が持ち上げられる。
キャサリンに抱きかかえられていた。
「にゃー」
「「アーヴィン様、先にお風呂を失礼します」」
「ゆっくり入るがいい、吾輩はマコトのビールとつまみで先にやっているのである」
ゴーレムがテーブルにビールとおつまみを用意する。
「美味しいよ」
おつまみの皿にはリーリが乗っていた。
オレはそのままお風呂場に運ばれて行った。
「ふう、暴れた後にすぐお風呂に入れるのは最高ね」
「そのとおりです」
「にゃあ」
三人で湯船に浸かる。ふたりともスレンダーではあるが均整の取れたプロポーションだった。おっぱいも騎士という仕事を考えるとちょうどいいのかも。
キャサリンとエラの疲労した肉体はお風呂のお湯が癒やしてくれる。
「プリンキピウムから戻るとネコちゃんのお風呂やベッドともお別れしなくちゃならないのね」
「美味しいごはんも捨てがたいです」
「ネコちゃん、王都には来ないの?」
「にゃあ、そのうち行ってみたいにゃんね」
キャリーとベルにも会いたい。
「マコトさんなら、宮廷魔導師にだってなれますよ」
「にゃあ、六歳児にそんなお堅い仕事は無理にゃん」
「冒険者もホテルのオーナーも六歳児向きの仕事とは言えないけどね」
「にゃあ、冒険者はともかくホテルは従業員に丸投げする予定にゃん」
「だったら、ネコちゃんは王都で暮らせばいいのに」
「王都近郊ではろくな獲物がいないと違うにゃん?」
「それはありますね、王都近郊にはめったに特異種も出ませんからお金にはならないと思います」
「それじゃダメにゃんね」
「マコトさんだったら魔導具の製造だけで十分にやっていけると思いますが」
「にゃあ、そっち方面は悪い商人がいっぱいいそうで怖いにゃん」
「確かにいっぱいいるね」
「いますね、どちらかというと王都では悪い商人が幅を利かせています」
「うん、それはあるかな」
「善人ではやっていけない仕事ですから」
「にゃあ、それもわかるにゃん」
「もし、王都に来ることがあったらアーヴィン様の王都のお屋敷を訪ねてね、私たちも年の半分はそこにいるから」
「正確には四ヶ月ほどですね」
「その他の期間はどこにいるにゃん?」
「領地に帰ったり、いまみたいに旅をしたりいろいろかな」
「それは楽しそうにゃんね」
「楽しいですね」
旅をするのも楽しそうだ。
夕食の後、また三人は潰れるまで飲んだ。
「豪快にゃんね」
「そうだね」
ゴーレムに寝室に運んでもらった。
「行くの?」
「にゃあ」
○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地前
リーリと一緒にこっそり夜の森に出て飛び地から出て来るちょっと弱い魔獣を狩る。
空に浮かぶオルビスの光を浴びる。
「神無き世界にしては、神々しい風景にゃん」
「そうだね」
リーリはオレの頭の上でサクっとビスケットを齧った。
『『『……』』』
地下の魔法蟻たちからトンネルを魔獣の森方面にも延長したいと申し出があった。
『にゃあ、気を付けて作業するにゃんよ』
『『『……!』』』
魔法蟻たちは右前脚を挙げて口をカチカチさせた。




