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武器を売るにゃん

 ○帝国暦 二七三〇年〇七月〇一日


 ○プリンキピウム ホテル


 コレットとフェイがホテルを手伝ってくれることになったので、ひとまずノーラさんと三人でギルマスの父ちゃん用の準備を進めてもらってる。

 オレはハード担当にゃん。

 近いうちにホテルはノーラさんたちに丸投げする予定なので、オレなしで運営できる様にしたい。

 ゴーレムもどっさり出したので運営自体は何とかなるだろう。



 ○プリンキピウム 市街地


「にゃあ、こんなところに武器屋があるにゃん」

「そうだね、武器屋だね」

 孤児院に顔を出した帰り道、魔法馬で道路を直していると通りの一角に武器屋があるのを発見した。

 前からあったけど見落としていたようだ。

「プリンキピウムの武器屋は二軒あったはずだから、ここがもう一軒にゃんね」

「なんかボロいね」

「にゃあ」

 リーリのいうとおりだった。しかし、何ともボロい店構えは実は美味いラーメン屋みたいな雰囲気を醸し出している。

 曲がったままの看板も味わい深い。

「不潔じゃないのはポイント高いにゃん」

 そう言えば大公国で巻き上げた武器をまだ売ってなかった。

 既に洗浄&再生&改造済みだが、武器の売却自体、オパルスの冒険者ギルドに売ったのが最後か。

 ここで売れれば州都まで持って行かなくて済むしプリンキピウムの冒険者にこそちゃんとした武器を使って欲しい。

「これはもう行くしかないにゃんね」

 魔法馬を店に向けた。



 ○プリンキピウム マホニー武器店


「にゃあ、お邪魔するにゃん」

 ドアベルを鳴らして扉を開けたが反応はなかった。店内に入ったがカウンターに人気はない。

 商品もかなり少ない。

「お店の人いないね」

「にゃあ」

 あっ、これは穴場を期待して入ったが、予想以上にマズくて涙目になるパターンかもしれない。

「にゃあ、誰かいないにゃん?」

 声をかけると奥の部屋からゴソゴソと音がした。

「いらしゃいませ」

 年の頃で言うと二〇ぐらいの女の人が出て来た。

 金髪ショートカットにバンダナみたいな頭巾、職人ぽい作業ズボンに袖をまくったTシャツに生地の厚いエプロンをした可愛い娘だ。

 ただ、お胸は冒険者ギルドでの出世は見込めない感じにゃんね。

「どうしたの?」

 小さい子に話しかける声のトーンだ。間違ってはいないけどな。

「買って欲しいモノが有るにゃん」

「ネコちゃんと妖精さんが売ってくれるの?」

「そうにゃん、買って欲しいのはこれにゃん」

 取り出した剣をカウンターに置く。

「似たようなのが二〇ちょっとあるにゃん、他にも小銃とナイフや斧があるにゃん」

「ネコちゃん、この剣って新品じゃない?」

「にゃあ、新品ではないにゃん」

「マコトが直したんだよ」

 剣を手にとってじっくり眺める。その眼差しは武器屋って感じだ。

「スゴい、まるで未使用ね、いい剣だわ」

「にゃあ、いい剣なのは間違いないにゃん」

「間違いないよ」

 なまくらもオレが作り直してるのでそこそこの仕上がりになってる。

「買い取りたいんだけど、実はうちお金が無くて」

 見たまんまどころか予想の斜め上だ。

 でも、悪い人では無さそう。

「だったら、委託販売でもいいにゃんよ」

「委託販売?」

 首を傾げる。

「簡単に言うと売れたら買い取り価格分をオレにくれればいいにゃん」

「それでいいの?」

「にゃあ、地域振興もオレの仕事にゃん」

「この街にはもう一軒、武器屋があるけどそっちじゃダメなの?」

「アソコはダメにゃん」

 きっとまた電撃を浴びせることになる。

「うちとしてはありがたいけど、本当にいいの?」

「構わないにゃん、あっちに頼むより全然マシにゃん」

「こういっちゃなんだけど普通の冒険者なら、あっちを使うよ」

「そうにゃん?」

「うちは武器をメンテする職人がいないんで、売りっぱなしになっちゃうから、自分で手入れできるひとにしか売れないの」

「メンテができないとは、なかなか致命的にゃんね、お姉さんはできないにゃん?」

 いかにも職人みたいな格好をしているけど。

「私、凄い不器用で先代店主の父が亡くなる時も絶対にお客様の武器を触るなと遺言したぐらいで」

「根が深いにゃんね」

「ごめんなさい」

 何故かオレに謝る。

「メンテができないなら、代わりに売値を下げるしかないにゃんね」

「下げちゃうの?」

「にゃあ、メンテができないのに、メンテ付きと同じ値段で売ってどうするにゃん? メンテ分、値引けばお客も納得して買うにゃん」

「なるほど、そういう考えもあるわね」

「ところで、この店は何でこんなに商品が少ないにゃん?」

「お金が無くて仕入れができなかったから」

 声が小さくなる。

「普通は売れた分で仕入れるんじゃないにゃん?」

「そこは生活費に消えちゃうの」

 さらに声が小さくなる。

「にゃああん?」

「ご、ごめんなさい!」

 オレに謝らなくていいにゃん。

「にゃあ、委託販売でいいにゃんね」

「いいんじゃない」

 妖精は既に飽きていた。

「ええ、問題ないわ」

「ああそれと看板が傾いているのは何かのこだわりにゃん?」

「それもお金が無くて直してないだけなの」

「店がボロいのも?」

「こだわりじゃないよ」


 どうやら店主らしいお姉さんが商品の値付けをする間にオレは店舗の修繕を行う。

 看板も直した。

 リーリはカウンターでドーナツを食べてる。

 それとバックヤードにあった鉄くず状態の武器を買い取った。

「そんなのどうするの?」

「修理するにゃん」

「できるの?」

「ちょっと時間は掛かるにゃん」

 一〇秒ぐらいな。



 ○帝国暦 二七三〇年〇七月〇二日


 翌日からお姉さんアン・マホニーの店、マホニー武器店での訳ありクリアランスセールが始まった。

 デリックのおっちゃんに頼んで冒険者ギルドの壁にポスターを貼ったので、そこそこの賑わいだ。

「お一人様一本限りにゃん、メンテができない分、安くお出ししてるにゃん」

 いかつい冒険者たちで店がいっぱいだ。

「おう、この値段なら文句ないぞ」

「軽いメンテなら自分でできるし」

「そうだ、冒険者ならそれぐらいできて当然だ」

 メンテ無しと説明したが問題ないみたいだ。

「もう一つの武器屋ではやらないにゃん?」

「ダメダメ、ボッタクリが過ぎてとてもじゃないが使えないぜ」

 肩をすくめる若い冒険者。

「最近じゃ職人もいないみたいだしな」

 中年冒険者のいう職人は、オレが治療してやったチャック・ボーンのことだろう。チャックの後釜は見つかってないらしい。

 あの武器屋のオヤジでは職人もすぐに逃げ出すか。

「あそこを使うぐらいなら州都に行くよ」

「ああ、それが間違いない」

 冒険者たちにもあの武器屋のオヤジは評判が悪いようだ。


 小銃五丁と剣二〇本は直ぐに売れてしまった。

「にゃあ、追加しないとダメみたいにゃん」

「ネコちゃん、まだ持ってるの?」

「あるにゃん」

 昨日仕入れした鉄くずを再生&改造した武器もあるし大公国で巻き上げた武器はまだ大量にある。

 バタン!と乱暴に扉が開かれた。

「おい、これはどういうことだ! 誰の許可をもらってこんなに武器を売ってやがる!」

 もう一軒の武器屋のオヤジが鬼の形相で怒鳴りこんで来た。

「ぶっ殺すぞ、この野郎!」

「にゃあ!」

 びっくりしたオレは、オヤジを通りの向こうまで魔法でぶっ飛ばした。

 オレは悪くないにゃん。

「大丈夫、ネコちゃん、いまのあっちの武器屋の店主だったよね、いきなり叫んだと思ったらスゴい勢いで飛んで行ったけど何しに来たんだろう?」

「にゃあ、知らないにゃん」


 変な形で転がっていた武器屋のオヤジはいつの間にかいなくなっていた。


 オヤジ乱入のアクシデントも有ったが、追加した小銃七丁と剣五〇本とその他の武器と防具も売り切って夕方には店じまいした。

「全部、売れちゃったね、ネコちゃんスゴすぎるよ」

「マコトだからね」

 リーリはホールケーキに取り掛かっていた。

「これで次の仕入れの資金は出来たと思うにゃん」

「そうなんだけど、やっぱり職人がいないとダメだよね」

「それは言えるにゃん」

 武器屋を続けるには職人を見付ける必要ありだろう。

 地域振興のためにも必要だ。

 先代店主が使っていた仕事場はアンが綺麗にしていた。

 いつでも職人を迎え入れる準備はできている。

「誰か来たにゃん」

 裏口をノックする音が聞こえた。

「誰だろう?」

 アンが裏口の扉を開いた。

「よぉ!」

 顔を出したのは冒険者ギルドの買い取り担当ザック・リンフットだった。

「どうしたのザック、わざわざ裏口から?」

「ちょっと話が有って寄らせてもらった」

「アンとザックは知り合いにゃん?」

「ああ、アンの親父さんに俺が冒険者だった頃にいろいろ世話になったんだ。アンは関係ない」

「あたしだって世話したじゃない!」

「そうだっけ?」

「夕飯だって食べさせてあげたし、剣のメンテナンスだってしたじゃない!」

「おかげで死にかけたけどな」

「あれは、それで話って何なの?」

 アンが話題を替えた。

「おまえら、もう一つの武器屋のオヤジとトラブったろう?」

「トラブったと言うか、あの人が怒鳴りこんで来て勝手に転がり出てったんだけど」

「ヤツはこの街のオクルサスのギルマスと親しいんだ、今日も泣き付いてたらしいから気を付けた方がいいぞ、マコトのことも知らないだろうから」

 オクルサスはノクティスに次ぐ犯罪ギルドだ。辺境のプリンキピウムにもお互い縄張りがあって、チンピラどもが抗争していた。

 現在は、プリンキピウムのノクティスがこの前の孤児院の一件で壊滅してるので、オクルサスだけが活動している。

「了解にゃん、ところでザックはその情報をどこで聞いたにゃん?」

「オレはこう見えて顔が広いんだ、毎日入ってくる情報の一つってことさ」

 情報の出処を話すつもりはないらしい。

「にゃあ、つまり今夜にも何か有るってことにゃんね」

「可能性はないとは言えないってところだな」

「面白いことになりそうにゃん」

 ザックの忠告を聞いたオレは、アンの店で夜を明かすことにした。


「ねえ、本当に何かあるのかな?」

「にゃあ、それはオレもわからないにゃん」

「マコト、おかわり!」

「にゃあ」

 オレとアンとそしてリーリは店のバックヤードで夕食を食べている。

 オレの持ち込んだもつ煮とパンだ。

「なにこれ、スゴい美味しい」

「オレの得意料理にゃん」

「ああ、六歳のネコちゃんは何でもできるのに、あたしはどうして何もできないんだろう?」

「不器用だから?」

「そうにゃんね」

「あああ、はっきり言われた!」

「器用な男をお婿にもらえばいいにゃん」

「あぅ、死んだ」

「にゃあ、今日怒鳴り込んで来た武器屋のオヤジ、あれいつも来るにゃん?」

「怒鳴り込んで来たのは今日が初めてよ」

「良くあれで商売ができるにゃんね」

「あの人、腕は悪くないらしいんだけど性格に難が有り過ぎるって父さんが言ってたわ、地味に嫌がらせをされてたし」

「地味な嫌がらせにゃん?」

「ウチから買った武器のメンテを拒否したり、父さんの作った武器に難癖を付けたりしたんだから」

 偏屈な職人にたまに見掛けるタイプだ。

「メンテのできないアンにも問題を感じるにゃん」

「わかってるけど、いまの論点はそこじゃないわ」

 アンは自信たっぷりに言い放った。



 ○プリンキピウム マホニー武器店 前


 真夜中。


 アンの店に近付く人影があった。一見してカタギじゃない四人の男たちだった。それぞれ肩に棍棒を担いでダラダラとかったるそうに歩いてる。

「店主は寝てるようだぜ」

 店の前で立ち止まった。

「おまえら、大きな音を立てるなよ」

「わかってる、まずどうする?」

「ここの店主をたっぷりブチ犯してから店をぶっ壊すんだよ」

「あの女、俺好みだからな、たまらないぜ」

「さて、まずはドアをぶち破るか」

 扉に叩き込もうと棍棒を振り上げる。

「にゃあ、音は立てないんじゃなかったにゃん?」

「誰だ!?」

 後ろから声を掛けられた男たちはビクっとして振り返ろうとした。

「おい、身体が」

「あ、ああ、動けねえ」

「どうなってるんだ?」

「よう、誰だか知らないが、余計な真似はよしてくれないか?」

「にゃあ、おまえらは武器屋のオヤジに頼まれたにゃんね」

「さあな」

 扉の前にいる男が背中を向けたまま肩をすくませた。

「それともオクルサスのギルマスに指示されたってのが正確にゃん?」

「はあ? 俺たちは何も言ってねえぞ」

「にゃあん、言わなくてもオレにはわかるにゃん」

「俺たちをどうするつもりだ?」

「どうもしないにゃん」

「だったら、この変な術を解いてくれ」

「にゃあ、おまえら、来る店を間違えてると違うにゃん? オクルサスのギルマスに指示されたのは武器屋はここじゃないにゃんよ」

「店を間違えた?」

「にゃあ、ちゃんと良く見るにゃん」

「おお、そうだ、ここじゃねえよ」

「間違えたら怒られると違うにゃん?」

「そうだ、危なくシャレにならねえヘマをするところだったぜ」

「わかったら、ささっと行くにゃん」

 オレが姿を隠すと四人のチンピラが動き出した。

「行くぞ、おまえら!」

「へへ、朝まで休まずだぜ」

「ああ、腰が抜けるまでだ」

「おまえも腰が立たなくなるんじゃねえのか?」

 棍棒を担いだチンピラどもはゲラゲラ笑いながらアンの店から遠ざかっていった。


 いったい何をして腰が抜けるのか知らないが、朝になったら死ぬほど驚くこと間違いなしだ。



 ○プリンキピウム オクルサス ギルマス邸


 スタタタとオレは深夜の街を忍者走りしてオクルサスのギルマスの家にやって来た。

「チンピラに仕事をやらせて自分は寝てるとかいいご身分にゃんね」

 認識阻害の結界は張ってるが、近くに誰も居ないのを確認して。

「にゃあ!」

 屋敷を門から何から全部分解した。

 素っ裸にされた人間が十数人更地に残された。



 ○帝国暦 二七三〇年〇七月〇三日


 店にオレが再生&改造した武器を並べてると世紀末モヒカンのジャックを始めとする冒険者たちがやって来た。

 オレのやった角の生えたプロテクターがいい感じだ。

「よう、マコト久し振り! いい仕事ありがとうな!」

「にゃあ、オレも助かってるにゃん」

 ジャックたちには孤児院のバーニーたちの指導を頼んでいる。

「ジャックがマコトさんと知り合いだったとは驚いたぞ」

 ヒゲモジャでクマみたいな大男がジャックとパーティーを組んでるバッカス・マッコイだ。

 見てくれと違って物腰は丁寧だ。

「初めてこの街に来て右も左もわからないマコトの面倒を見てやったのが俺だ」

「本当かよ?」

「にゃあ、だいたいそんな感じにゃん」

 ジャックの尊い犠牲の上にオレの冒険者カードがある。

「マジかよ、凄えなジャック」

「にゃあ、バッカスさんも仕事を引き受けてくれてありがとうにゃん」

「俺のことはバッカスって呼んでくれ、なんたって雇い主だからな、他のヤツらからめちゃくちゃ羨ましがられてるぜ」

「にゃあ、誰でもできる仕事じゃないにゃん」

「そう言ってもらうとちょっとこそばゆいけどな」

 ヒゲモジャの大男の照れ笑いはちょびっと怖い。

「そういや聞いたか?」

 ジャックが唐突に切り出した。

「何をにゃん?」

 主語が抜けていて意味がわからない。

「あっちの武器屋のことだ、オクルサスのヤツらに襲われたらしいぞ」

 もう一軒の武器屋が襲われたことを教えてくれた。

「あの店主って、オクルサスのギルマスと仲良しじゃなかったの?」

 アンが疑問を呈する。

「仲間割れでもしたんじゃないのか? しかも、あれだ、子供の前ではとても言えない状態だったらしいぞ」

 ジャックはオレをチラチラ見る。

「なにそれ聞きたい」

 アンが目を輝かせて食い付いた。

 ジャックがアレな要素をボカしつつ教えてくれたのは、夜が明けて異変に気付いた近所からの通報で守備隊が駆け付けると、武器屋のオヤジがチンピラたちに夜通しスゴいことをされていたらしい。

「嘘!」

「いや、守備隊のやつに聞いたから本当だ、犯罪ギルドではよくある制裁らしいぞ」

 それと犯行を指示したオクルサスのギルマスも掴まった。

「夜更けの街を素っ裸で集団で徘徊していたそうだ」

「へえ」

「わけがわからないことを喚き散らしたらしいぞ」

「何があったんだろうね」

「あっちの武器屋のオヤジは以前から良からぬ噂があったから、守備隊もオクルサスの連中とオヤジの仲間割れと見てるみたいだぜ」

「オクルサスのギルマスたちは?」

「あっちはノクティスの報復だろうって話だ。チンピラが出払った隙を突かれたんじゃないか」

「怖いにゃんね」

 オレは当たり障りのない感想を述べる。

「にゃあ、それよりこの前、州都でドナルドに会ったにゃんよ」

 すぐに話題を変えた。

「そっくりで一緒に居たレベッカとポーラもビビってたにゃん」

 ドナルド・ベイチュはオパルスの馬屋「アーチャー魔法馬商会」の副会頭でジャックの双子の兄貴だ。

 あっちはスキンヘッドなのでまず見間違えることはない。

「マジか!? ドナルドのヤツ、元気だったか?」

「にゃあ、元気そうだったにゃん」

「そうか、元気にやってるか」

「にゃあ、今回ジャックの為にこんなモノを用意したにゃん」

 真っ黒な戦斧を取り出す。髑髏の装飾付きだ。

「おお、スゲー!」

「いまならお友だち価格でお出しできるにゃん」

「おお、買う! 売ってくれ!」

「毎度ありにゃん」

 当面の危機は去ったので、オレはその日のうちにホテルに戻った。



 ○プリンキピウム ホテル レストラン


「マコト、お前なんかしたろう?」

 家族連れで夕食を食べに来たデリックのおっちゃんだけはオレを変な目で見ていた。

「にゃあん、オレは知らないにゃん」

「そういうことにしといてやるか」

 オレは道案内しただけにゃん。

「それにしてもデリックのおっちゃんの奥さんは綺麗な人にゃんね」

「美女と筋肉だね」

 リーリも頷く。

「にゃあ」

 清楚で知的な美人さんだ。

 もしかすると貴族だろうか?

「ふふ、まあな」

 自慢気な笑みを浮かべるデリックのおっちゃん。

「もう、何を言ってるのデリックったら」

 恥ずかしそうな笑みを浮かべる奥さん。

「私はカトリーナよ、よろしくねネコちゃん、妖精さん」

「オレはマコトにゃん、デリックのおっちゃんにはお世話になってるにゃん」

 ペコリとお辞儀する。

「あたしはリーリだよ」

「ネコちゃん!」

 奥さんの隣に三歳ぐらいの男の子が座っていた。

「バート、ご挨拶は?」

「バートでしゅ、さんさいでしゅ」

 たどたどしくご挨拶する。

「マコトにゃん、六歳にゃん」

「六歳で、これだけのことができるなんて魔法使いはスゴいのね」

「おい、普通の魔法使いとマコトを一緒にするのは乱暴だぞ」

「そうなの?」

「ネコちゃん!」

 夫婦が話してる間にバートがオレに抱き着く。

「あら、ネコちゃんが気に入ったのね、お嫁さんにしちゃう?」

「しゅる!」

「だったら決まりね」

「おお、いいぞ、マコトはオレより金を持ってるからバートの将来も安泰だ」

「にゃあ、ふたりして乗り気になってるんじゃないにゃん」

「あら、三人よ」

「あい!」

「にゃああ」

 ギルマスの一家三人にイジられるオレであった。


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