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プロトポロス再生にゃん

「にゃあ、ここから城をオレ好みに改造するにゃん」

 再生したてのプロトポロスの城を上空から眺める。

「それはあたし好みでもあるわけだね?」

 リーリが腕を組んで顎を撫でる。

「にゃあ、当然にゃん」

 最初の改造は城そのもののゴーレム化だ。

 城の外周を旋回しながらエーテル機関を打ち込んで全体に魔力を行き渡らせる。

 ホテルの改築で学んだのだがシステムを一元化した方が何かと便利だった。

 城壁にもエーテル機関を打ち込む。

 ただの石に魔獣由来の物質で表面をコーティングする。

 城の表面も同様に仕上げた。

 大理石より透明感がある白になった。

「「ピカピカ!」」

 ビッキーとチャスは声を合わせた。

「にゃあ、ピカピカにゃん」

 同時進行で城の中が作り変えられる。

「かなり強力に仕上がったね」

「にゃあ、防御結界の強化と快適な居住空間が最重要にゃん」

「うん、過剰なぐらいの防御力だよ」

「にゃあ、かわいい領民たちが傷付けられたら、オレも冷静でいられる自信がないからこのぐらいは当然にゃん」

「プリンキピウムのおっさんたちも?」

「にゃあ、プリンキピウムは知行地にゃん、領主様は代わってないからおっさんどもはオレのじゃないにゃん」

 何か有っても冷静に対応できる。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 城内


 内部の大まかな改装が終わったので城に入ることにした。

「着陸するにゃん」

 城の高い場所にあるヘリポートの様な張り出しにドラゴンを着地させた。

 これって絶対に飛行系の着地場だよね?

「にゃあ、ゴーレムがいるにゃん」

 格納庫らしき空間から人間大の白いゴーレムが二列でやって来て敬礼した。

 城の付属品として一緒に再生されたらしい。

「三〇〇〇年前の代物にしては進んでるね」

「にゃあ、そうにゃんね」

 先史文明の技術が再生時に混ざったのかと思ったが、そんなことは無かった。純粋に城の備品だ。

「にゃあ、大公のご先祖かどうかわからないけどなかなかやるにゃん」

 ゴーレムは、以前オレが復元したものと基本は変わらず、こちらは城で使われることを考慮してヘビーデューティーな作りになっていた。

「にゃあ、出迎えご苦労にゃん、皆んなはまた作業に戻っていいにゃんよ」

 ゴーレムたちは回れ右して城の中に戻って行った。

「マコト、おやつの時間だよ」

「にゃあ、そうにゃんね」

 城の中を探検する前におやつで鋭気を養うべくピクニックシートを取り出してプリンを出す。

「「わぁ」」

 ホイップクリームたっぷりのちょい豪華プリンにビッキーとチャスの五歳児たちは目を輝かせる。

「美味しい!」

 妖精は早くも口の周りをクリームだらけにしていた。

 オレはプリンを食べながら、城の最深部に遠隔で魔法蟻を二〇〇匹ほど再生した。

『『『……』』』

 居並ぶ魔法蟻たちは口をカチカチさせ右前脚を掲げる。

『にゃあ、頼むにゃん』

 魔法蟻たちはトンネルを掘って順番に降りて行く。

 更に追加で六〇〇匹を再生する。

 魔法蟻たちにはまず地下農場を作ってもらう。

 ドクサ守備隊だけで一二〇人いるわけだし。

 出来れば備蓄もしたい。

 その後はプリンキピウム方面に向けてトンネルを掘る。

 トンネルが完成すれば移動も楽ちんだ。

 いつ完成するかわからないけどな。


 おやつの後は、城の中を探検ついでに内装の細かな調整と魔導具の追加だ。

「もうちょっと明るくてもいいにゃんね」

 照明の増設はホテルでもやったので簡単だ。

「「あかるくなりました」」

 ビッキーとチャスは天井を仰ぎ見る。

 更に照明専用のエーテル機関をぶち込んでおく。

 天井に青い空が映し出され、雲が流れる。

「「わあ、お空だ」」

 明るくしただけでかつての監獄都市の重苦しい雰囲気が一掃される。

 空調のエーテル機関も追加する。

 廊下にそよ風が流れた。

 考えてみれば、エーテル機関が五つも有れば国を滅ぼせるのにオレは便器に一個使っている。

 平和利用の技術は間違いなくオレが上だ。


 城も中を隅から隅まで徒歩で移動するのは現実的でないので、小さなカートを出して五歳児たちと共に乗り込んだ。


 ホテルの改装の経験があったので、最初の改装でほぼ完成の域に達しており改めて弄るところはほとんど無さそうだ。

 全部で四〇〇〇体いるゴーレムもエーテル機関をぶち込んだので、動きはより滑らかになる。素材も魔獣由来のものに置換してあり城同様にピカピカだ。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 守備隊居住区


 守備隊の居住区はホテルの従業員寮とほぼ同じ構成にし、厨房はすべてゴーレムによって運用する形にした。

「後は魔法牛と魔法鶏にゃん」

 ホテルと同じく厨房から直結した中庭に魔法牛と魔法鶏を再生した。

「「ウシさん?」」

 ビッキーとチャスは自信なさげに名前を上げた。

「にゃあ、正解にゃん」

 首都育ちなのに魔法牛がわかるとはなかなかのモノだ。

「こっちはどうにゃん?」

 透明な鶏を抱えた。

「「トリさん?」」

「にゃあ、当たりにゃん」

 よく知ってる。

「ミルク飲みたい」

 横から妖精のリクエストが入った。

「にゃあ」

 搾りたてミルクを配る。

「「「おいしい!」」」

「にゃあ」



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 医務室


 医務室も出来上がっていた。

「にゃあ、医療用ゴーレムがいたにゃんね」

 形そのものは他のゴーレムと変わらない。

「大したことは出来ないみたいだね」

 リーリが医療用ゴーレムの周りを飛び回って観察する。

「にゃあ、だったら治癒魔法を使える様にするにゃん」

 図書館情報体のデータにゴーレムに魔法を付与する方法が有ったのでそれを実行する。

「複雑怪奇な刻印を打たなくてもエーテル機関で簡単に設定できるのがいいにゃんね」

「普通はエーテル機関を設定する方が難しいんだよ」

「そうにゃん? リーリだって簡単に出来そうにゃんよ」

「当然できるよ、あたしだからね!」

「にゃあ」

 五歳児たちも拍手をした。

 オートウォッシュを効かせた室内に治癒効果をキツ目に設定したベッドと治癒魔法を使うゴーレムで隊員たちの健康維持は万全だ。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 制限エリア 地下施設


 カートに乗ったままエレベーターで地下に降りる。

「にゃあ、ふたりともここは危ないから勝手に入っちゃダメにゃんよ」

「「はい」」

 地下は魔法蟻のエリアを完全に仕切って他の人間は入れない制限エリアにする。

 普段、行き来するのはオレとゴーレムたちだけだ。

 魔法蟻の穴に落ちたら間違いなく普通の人間は即死するから安全のための立入禁止だ。

 地下の各倉庫には状態保存の魔法を付与していく。

 ここにもエーテル機関を惜しげもなく使う。

 ゴーレムの為にフォークリフトと運搬用の魔法車をそれぞれ必要そうな数だけ出してやる。

 天井にはクレーンを取り付ける。

「にゃあ、これで効率が良くなるにゃんね」



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 大浴場


 そして忘れてはならないのが大浴場だ。

 各部屋にもシャワーは付いてるが、やはり大浴場は欠かせない。

 皆んなを引き連れ一般エリアに戻ったオレは、たっぷりと魔力を注ぎ込み、エーテル機関を突っ込んでこれまででいちばん大きな風呂を作り上げた。

 プリンキピウムのホテルのより大きい。

「にゃあ、早速入るにゃん」

「「はい」」

 ビッキーとチャスを引き連れリーリを頭に乗せて大浴場の湯に浸かる。

「にゃああ」

 気持ちよさに意識しなくても鳴いてしまう。

「「はぁ~」」

 五歳児たちも息を吐き出す。

 一応、男女別に作ったがしばらくは片方しか使わないか。

 男子禁制と言うわけではないから、いずれは使うこともあるだろう。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 大食堂


 風呂の後は大食堂で夕ご飯だ。

「今日は煮込み料理にゃんね」

「「「美味しい」」」

 五歳児とリーリが気に入ってくれたので味はOKだろう。

 オレの好みに引っ張られてる可能性は否めないけどな。

「マコトはまだ何処か弄るの?」

「にゃあ、城の改造はこの程度にしておくにゃん、後は皆んなの意見を聞いてから調整するにゃん」

 実際に使わないとどんな不具合が出るかわからない。

「にゃあ、後は夜の内に農場を作るにゃん」

「農場?」

「にゃあ、土地が余りまくってるから畑や果樹園を作るにゃん」

「でも、結界があるから人間は入れないんじゃない?」

「にゃあ、ゴーレムには効かないから大丈夫にゃん」

「ゴーレムに畑仕事をさせるの?」

「にゃあ、そうにゃん、人間がやるより効率がいいにゃん」

 地下農場ほど効率化はできないが、このだだっ広い森をそのままと言うのも勿体ない。

「ところで森の木を切ると精霊が怒って大発生とかないにゃん?」

「何で森の木を切ると精霊が怒るの?」

 不思議そうな顔をしたリーリに逆に質問される。

「にゃあ、そういうものと違うにゃん?」

「森も畑も精霊には違いがわからないんじゃない?」

「そういうモノにゃん?」

「精霊って特に何か考えてるわけじゃないから」

「にゃあ」

「ただ人間から魔力を吸い取るのが好きだから、ビッキーとチャスは近付けない方がいいよ」

「わかったにゃん」

「人間は結界を消さない限り入れないけどね」

「にゃあ」

「それ以前に森の精霊が居ないし」

「いないにゃん?」

「マコトが天に還しちゃったじゃない」

「にゃあ、言われてみると精霊の魔石が三〇万ちょっと有るにゃん」

「儲かっちゃうね」

「にゃあ、これは売らないにゃん」

「どうして?」

「にゃあ、悪いことに使われると困るからにゃん」

「魔石が悪い訳じゃないのにね」

「にゃあ、残念ながら悪い人間ぐらいしか欲しがらないにゃん」

 普通の魔導具なら魔石で十分なはず。

「それ以前にお金は使い切れないほどあるにゃん」

「それもそうだったね」

「にゃあ、だからって使わないのも勿体ないからゴーレムたちに使うにゃん」

 四〇〇〇体のゴーレムたちに森の精霊の魔石を増設した。

 医療用以外も魔法が使える様になる。

 そうだ魔法蟻たちにも入れるか。

 プリンキピウムの地下にいる魔法蟻たちも併せてアップデートだ。

『にゃあ!』

 声を出さずに魔力を飛ばした。

 オレたちは強い絆で結ばれてるから距離なんて関係ないのだ。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス ペントハウス


 オレのプライベートルームはホテルと同じく最上階の上に増築したペントハウスだ。

 見晴らしはいいが森しか見えない。

 星は綺麗だし、いまにも落ちてきそうなオルビスはヤバいの一言だ。

 ビッキーとチャスはソファーでこっくりこっくりしてるからゴーレムに寝室に運んでもらった。

「にゃあ、畑作りを始めるにゃん!」

 屋上の柵に飛び乗って宣言した。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 結界外


 飛翔の魔法でペントハウスから夜空に飛んだ。天に浮かぶオルビスの光が地上にネコっぽいシルエットを落とす。

 リーリもオレの隣を飛ぶ。

「にゃあ、自分で飛ぶのは気持ちいいにゃんね」

「そう?」

「にゃあ、自由になれた気がするにゃん」

「マコトって、他の人間に比べたら自由なんじゃないの?」

「にゃあ、他と比べちゃダメにゃん」

 城壁を越え更に結界を越えて森の領域に入った。

 夜の森の匂いに包まれる。

 眼下の木々を風魔法で刻んでから分解してちょっとした広場を作って着地した。

 その瞬間、地面から巨大ミミズが突き出る。

「にゃあ!」

 襲われるよりも早くオレが電撃で弾き飛ばした。

「邪魔にゃん」

 更に地面にも電撃を撃ち込んで同類を一網打尽にして分解した。

「お城を再生する魔力を嗅ぎ付けて来たんだね」

「そうみたいにゃん」

 オレにはどうってことないが、隠密性が高いので中堅ランク以下の冒険者だと苦労するかも。

 形はまんまミミズだが美味しいらしい。

 美味しいのなら畑の一角で養殖をしてもいいかも。

 その前に畑作りだ。

 魔法蟻を四〇〇ほど出す。

「にゃあ、おまえたちには伐採を頼むにゃん」

『『『……』』』

 魔法蟻たちは口をカチカチさせていつものように右前脚を掲げた。

 オレとリーリは邪魔にならない様に木々より高い場所に飛び上がってホバリングする。

「おお、いい仕事をするにゃん」

 魔法蟻たちは巨木をものともせず切り倒して行く。

 木材は根っこも含めてオレが分解する。

 どんどん森が拓ける。

 元の世界と違ってこちらでは森が人間の生活の場を破壊している。本来それだけ森林の伐採は困難な作業なのだ。

 続けて農作業用のゴーレムと魔法車ベースのトラクターを再生する。

 魔法で全部出来なくもないがゴーレムたちに任せておけば、後は自動的に畑を広げ野菜や小麦を作ってくれる。

 みるみるうちに畑が広がり、早くも作物が植え付けられていた。

「にゃあ、農業用だけあって仕事が早いにゃん」

「明日には食べられるかな?」

「にゃあ、流石にそれはちょっと早いにゃんね、でもそんなには掛からないみたいにゃん」

『『『……』』』

 ゴーレムと魔法蟻からもっと仲間が欲しいコールが来たので増産する。

 切り倒した木々はゴーレムがサクサクと堆肥に変えてしまうのでオレの仕事が補充要員の追加専従になってしまった。

「にゃあ、魔法蟻もゴーレムも優秀過ぎにゃん」

「エーテル機関に精霊の魔石だからね、優秀じゃなかったら困るよ」

「にゃあ、それもそうにゃんね」

 魔法蟻もゴーレムもトラクターも追加は、城のペントハウスからでもできるのでオレとリーリは引っ込んだ。


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