禁忌の秘法にゃん
「なぜ城が!?」
レオナール殿下は地面を蹴って飛び上がった。
「にゃあ、わからないにゃん!」
オレも付いて行く。
「マコトは死霊を退治しろ!」
「にゃあ、自動で実行中にゃん」
自動で魔法陣を飛ばしまくり死霊を天に還して魔石の回収も行う。
「それより死霊魔導師にゃん、城に入り込んだかもしれないにゃん」
「死霊魔導師か、いいだろう、付いて来い!」
レオナール殿下が速度と高度を上げた。
「にゃあ!」
○フルゲオ大公国 首都ルークス ルークス城
レオナール殿下の後を追って、いまの震動でダメージを負った城壁を乗り越える。
更に高く飛んでルークスの中央にそびえる城に向かう。
城の尖塔の幾つかが轟音と砂埃を撒き散らして崩れた。
城下の人々は突然の城の崩壊の始まりに慌てふためいている。
「マコト! 城の中に強い魔力を感じる、玉座の間に直行するぞ!」
「にゃあ!」
レオナール殿下は大きく上昇するとまだ崩れていない尖塔の一つに飛び込んだ。
「ちゃんと付いて来い!」
「にゃあ! 心配要らないにゃん!」
床がない!?
真っ暗な穴が空いてるだけ。
レオナール殿下が降りて行く。
おいおい、やたらと棘があちこちから生えてるぞ。
「これはスリルあるね」
リーリがオレの胸元から顔を出す。
「にゃあ、これは夜目の効く魔法使い以外は危なくて使えない抜け道にゃんね」
「それ以前に飛べない魔法使い以外は使えないよ」
「それもそうにゃんね」
金属のぶっとい棘を避けながら高度をどんどん落とす。
「間もなくだ」
殿下の声に減速する。
直ぐに石畳の床に着地した。
「にゃふぅ」
薄暗い何もない部屋だ。扉すらない。
「面白かったね」
リーリは楽しそうだ。
「初見で怪我もせず通り抜けられるとは大したものだ」
「にゃお、普通に入った方が早いと違うにゃん?」
「この抜け道は、城とは別系統の防御結界で守られてる。だから崩壊に巻き込まれずに済む上に、いちばんの近道だ」
レオナール殿下は壁に蹴りを入れた。
石積みの壁が吹き飛び暗い大きな空間に出た。
「にゃあ」
ライトの魔法を使って光球を浮かべた。
○フルゲオ大公国 首都ルークス ルークス城 玉座の間
半壊してるがここが、玉座の間であることは間違い無さそうだ。
「やはり来たか、レオナール」
「兄上?」
玉座に座っていた美丈夫が立ち上がる。
金色の髪を総髪にまとめ、鍛えられた肉体は歴戦の騎士の様だ。
レオナールの兄なら第一公子のデフロットなのか?
弟と違って貴公子然としていた。
「兄上、大公陛下はどちらに?」
「父上は先ほど退位された」
「退位?」
デフロット殿下は、格納空間からそれを取り出す。
「父上!」
デフロットが掴んでいたのは切り落とされた生首だった。
間違いない、オーギュスト・ボワモルティエ大公の首だ。
「兄上が父を討たれたのですか?」
「そうだ、そして私が大公に即位した」
「何があったのです」
レオナールが問う。
「にゃお、違うにゃん殿下」
「なに?」
「殿下の兄、デフロット第一公子が死霊魔導師にゃん」
オレは玉座の美丈夫を指差した。
玉座に流れている魔力は紛れもなく魔獣由来の魔力だ。
「本当なのか、兄上!?」
レオナールが声を上げた。
「おまえがマコトか、なるほど噂通りの魔力だ」
「どういうことだ兄上!?」
「レオナール、このような歪んだ国は滅んだ方が良いとは思わぬか?」
「歪んでいる?」
「歪んでいるにゃんね」
次男坊殿下よりもデフロットの方がちゃんと国を見ていたのだろう。
そして狂ったのか?
「にゃあ、でも国ごと消すのはやりすぎにゃん」
「中途半端では何も変わらぬ」
「にゃお、だからってこれはメチャクチャにゃん!」
「兄上の魔力は、魔導師には程遠かったはず、それがなぜ?」
「父上が私の身体に魔導師のエーテル器官を埋め込んで定着させたのだ」
「にゃ?」
エーテル器官を後から埋め込むなんてできるのか?
「よく見て、本当みたいだよ」
リーリが囁く。
デフロットの身体を探査する。
「にゃお、確かにエーテル器官が三つもあるにゃん」
「三つだと?」
「父上も魔導師ほどの魔力は無かったはず」
「追加したエーテル器官を動かすのだよ、このように」
三つのエーテル器官が稼働する。
デフロットの身体から魔力があふれ出した。
まさに人間離れした魔力だ。
「なぜ、そのようなことが?」
「エーテル器官を弄るのも死霊の使役も大公家の第一公子のみに伝えられる秘術だ、これのおかげで大公国は長らく独立を保つことが出来た」
攻め込んだら死霊が出て来る国なんて嫌過ぎるもんな。
「死霊を使役?」
「そう、歴代の大公は死霊魔導師でもあるのだよ」
「大公が死霊魔導師!?」
「表沙汰になった死霊魔導師は継承に失敗した出来損ないの公子だ、そう、この私のようにな」
自嘲的な笑みを浮かべた。
「兄上は出来損ないなどではありません!」
多分、歴代の継承者の中でもとびきり優秀だ。
そうでなければ滅亡の禁呪を復活させることなどできないはず。
城が大きく揺れる。
「時間だ、さらばだレオナール、おまえは好きに生きよ」
玉座の間が崩れる。
「兄上!」
天井が崩れ大量の瓦礫が視界を奪う。
「にゃお! 直ぐに城を出るにゃん、禁呪が次の段階に入るにゃん!」
「次の段階だと!?」
「にゃあ! 説明は後にゃん!」
レオナールの腕を掴むとさっきの小部屋に引っ張り込んでそのまま上昇した。
金属の棘は防御結界ですべてへし折り塔の屋根をぶち破った。
城が崩れ落ちる。
もうもうと砂煙が舞う。
「これで終わりではないのか?」
「にゃあ、違うにゃん、国を滅ぼす禁呪なら術者の命を喰ってからが本番にゃん」
砂煙の中で何かが蠢く。
玉座の刻印から読み取れたのは再生の魔法式だった。
城のあった地中からデフロットの命を喰った巨大な何かが這い出して来たのだ。
「殿下は魔導師の陣地に戻るにゃん」
「バカ言うな! 俺様は最後まで残るぞ!」
「ダメだよ、マコトの邪魔になるし、ここは危ないから戻った方がいいよ」
リーリがハッキリ言う。
「俺様が邪魔だと!?」
レオナール殿下の目が釣り上がる。
「にゃお! 邪魔なものは邪魔なんだから、さっさと行くにゃん!」
次男坊殿下の防御結界を蹴って陣地の方向に飛ばした。
「マコト、てめぇぇぇぇぇぇ!」
回転しながら陣の方向に飛んで行った。まあ、防御結界があるから死にはしないだろう。たぶん。
「マコト、結界!」
「にゃあ!」
城の敷地を結界で囲う。
瓦礫から突然、炎が吹き上がった。
「にゃ!? 燃えてるにゃん!」
深いところから出てきたヤツがかなり高温の熱を持っていた。
砂煙が落ち着き、地下から這い出したモノの姿が肉眼でも確認できた。
「魔獣にゃん?」
「そうみたいだね」
溶岩のように赤く焼けたそれは人の形をしていた、それも赤ん坊だ。
醜悪で巨大な赤ん坊。
結界の内部でマナの濃度が人の即死レベルにまで上昇する。
ルークスの城の地下に隠されていたこの魔獣こそが、滅亡の禁呪の核をなす存在だ。
「にゃあ、とにかく温度を下げるにゃん」
「マコト、それより先に魔力をシャットアウトだよ」
「了解にゃん」
濃いマナと共に立ち昇る魔力を吸い取り、それを糧に結界の封じ込めを強化して魔獣の温度を下げる。
このまま機能を停止してくれればいいのだが。
「にゃあ、魔獣がこっちを見てるにゃん」
特異種とは違ってランダムに散らばってる大小六つの目玉が空中に浮かぶオレを見ていた。
そして口を大きく開く。
とんでもないエネルギーが白く輝きながら照射された。
「にゃ!?」
オレに向かって吹き出したエネルギーの塊は、強化された封じ込めの結界をやすやすと突き破り夜空を焦がした。
「にゃお、いまのはかなりヤバかったにゃん」
間一髪、オレは空間圧縮を使って赤ん坊の背後に逃げていた。
「レーザーにゃん? にゃお、本当にエネルギーの塊としか形容のできない代物だったにゃん」
「いまのは魔力の塊だね」
リーリはあっさり見抜いていた。
「にゃあ、それにゃん! 生で高圧の魔力にゃん! 正体がわかればなんとかなるにゃん」
いまの高圧魔力砲の魔法式を解読する。実物がオレの魔法式をかすめたのとリーリのヒントで何とか読み取れそうだ。
巨大赤ん坊は、ズルズルとこちらに向きを変える。
魔力もマナも遮断したのにこいつはまだ元気だ。
赤ん坊がまた口を開けた。
「にゃあ!」
風の魔法を使って高圧の魔力発射寸前の赤ん坊の口を強制的に閉じさせた。
初めて六つの目玉に感情らしきモノが浮かんだ。
驚愕だ。
更に赤ん坊の身体を高圧魔力に特化した結界で覆う。
結界の中が太陽のように光った。
魔獣は自ら作り出した高圧魔力を吐き出すことができずに破裂した。
光は消えずに燃え続ける。
「全部、分解にゃん!」
オレは結界の中身を熱ごと分解して格納した。
城の跡がえぐられクレーター化している。しかも高温で焼かれたせいで石材まで溶けて融合していた。
「全部、消えたみたいだね」
「にゃあ、禁忌の秘術も綺麗サッパリ消えたにゃん、死霊も消えたにゃん」
「後は、ピザ魔獣の処分だね」
「にゃあ」
距離はあっても供給していた魔力をたどれば容易に見つけられる。逆探して頭の中の地図と照らし合わせた。
予想通りいずれも死霊で壊滅した城塞都市の地下に生息していた。
場所がわかれば攻撃は容易い。
距離もどうってことはない。
全部で三体のピザ生地魔獣をここから電撃で潰してエーテル機関を回収した。
最後に聖魔法を使う。
ルークスに巣食っていた怨霊をすべて天に還す。
いや、もっと範囲を広げる。
大公国のすべてを包む。
たくさんの光が天に還って行く。
「次はもっといい人生だといいにゃんね」
「そうだね」
こうしてフルゲオ大公国での仕事は終わった。
○帝国暦 二七三〇年〇六月十五日
○フルゲオ大公国 首都ルークス郊外 首都防御陣 ロッジ
朝から肉が食いたい気分だったのでロッジのキッチンでステーキを焼く。
それにホットサンドにサラダ。
ポタージュスープにプリンキピウムの美味しい水。
「果物はヨーグルトと一緒がいいにゃんね」
テキパキ作る。
「やっぱりステーキはクロウシに限るね」
フライングでリーリが食べ始めている。
「マコト、今日はどうするの?」
「にゃあ、準備が出来たらとっととプリンキピウムに帰るにゃん」
「そう簡単に帰れるかな?」
ソファーからむっくり起き出したのはチャドだった。
姿を見ないと思ったら簡易宿泊所での兵士たちの宴会に参加していたらしい。
「にゃあ、まだ何かあるにゃん? 死霊だったら全部始末したにゃんよ、魔石が最終的に一八〇〇万になったけど本当に買ってくれるにゃん?」
「俺には無理だな」
「にゃあ、なんか面倒だからこのまま売らなくてもいいにゃん」
「いいんじゃない? マコトはお金に困ってないんだし」
「おう、俺も賛成だ、どうせ俺のじゃないしな、それよりマコト、ビールくれ」
「にゃあ、まだ飲むにゃん?」
「無論、食事の後にはアルコールを抜いてもらう」
「にゃあ、仕方ないにゃんね、ビールは出すからレオンを呼んで来て欲しいにゃん」
「あいつは入口で何をやってるんだ?」
「不寝番にゃん」
昨夜、どうしても不寝番をやらせてくれと言って聞かなかったので、仕方なく許可したのだ。
「わかった、おいレオン、マコトが呼んでるぞ」
レオンは直ぐに戻ってきた。
「おはようございます、マコト様」
「にゃあ、不寝番ご苦労だったにゃん、朝ごはんにするにゃん」
レオンとついでにチャドにもウォッシュを掛けた。
チャドにはビールを出す。
「朝から飲むビールは何でこんなに美味いんだろうな?」
こいう男に引っ掛かると女は苦労するにゃん。
「「マコト様!」」
起きて来たビッキーとチャスがオレにくっついた。
「顔は洗ったにゃん?」
「「はい」」
「にゃあ、朝ごはんにゃん、ふたりもステーキを食べるにゃん?」
「「食べる!」」
五歳児たちにもステーキを出してやった。
「「「おはようございます」」」
カティとキュカとファナが起きてきた。
カティがいちばん年下に見える。
「「マコト様、給仕は私たちにお任せ下さい!」」
「にゃあ、だったらお皿を並べて欲しいにゃん」
「「かしこまりました」」
皿を並べ終わったところにアレシアとラルフが外から戻って来た。
「もしかして徹夜だったにゃん?」
ふたりにウォッシュを掛けてやる。
「ああ、マコトの仕事が終わったから帰還の日程について調整してた」
「にゃあ、調整も何も朝ごはんを食べたらオレは帰るにゃんよ」
「そうも行かないの、ネコちゃんにもう少し滞在して欲しいんだって」
「にゃあ、もう大公国内に死霊はいないにゃん、それともレオナール殿下はケツを蹴っ飛ばしたことまだ怒ってるにゃん?」
昨夜のうちに謝って治癒したのに。
「違うわよ、魔石の買い取りのお金を集めるのに時間が欲しいんですって」
「にゃあ、金なら後でいいにゃん」
「いや、この状況だとマコトが良くても他の冒険者ギルドから疑いの目で見られるからダメだ」
「大変にゃんね、お金に関してはオレが何とかできるにゃんよ」
「それと今朝付でレオナール殿下が大公に即位されたわ、そして国外に逃げた貴族はすべて取り潰しにするそうよ」
「にゃあ、やるにゃんね」
「それと奴隷制度の廃止だそうだ」
「貴族の特権もアナトリ並に縮小するそうよ」
「レオンのベルリンゲル家も名誉が回復されるそうだ、マコトがプロトポロスから持ってきた書類が証拠になったらしい」
「にゃあ、良かったにゃんね」
「ですが、俺は本家の人間ではありませんので」
レオンが首を横に振った。
「本家じゃなくても、ベルリンゲル家唯一の生き残りであるレオンがお家再興をすることになる」
ラルフが説明する。
「いいえ、俺はマコト様の奴隷として一生を捧げると決めましたので」
「レオンは本気らしいな、どうするマコト?」
ビール片手じゃなければ良かったのだが、いまのチャドは酔っぱらいの野次馬オヤジにしか見えない。
「にゃあ、レオンの気持ちはうれしいにゃん、でも、お家再興というやるべき仕事が出来た以上、それに邁進すべきにゃん」
「ですが、俺は」
「奴隷だったレオンは虐げられていた人の気持がわかるはずにゃん、その経験を侯爵として活かすのがこれからの仕事にゃん」
「マコト様」
「レオンは侯爵様になるから、これからは敬語で喋らないといけないにゃんね」
「いいえ、侯爵になろうともマコト様はずっと俺の主です!」
「にゃあ、だったらレオンのピンチには、主人としてオレが助けに来ないといけないにゃんね」
「マコト様、助けるのは俺の役目です!」
「にゃあ、ところで何でカティが泣いてるにゃん?」
「感動したからに決まってるじゃないですか」
ただの男の友情と言いたかったが、いまのオレは六歳の女の子なので男の友情というワードはしっくりこない。
「にゃあ、感動してても朝ごはんはちゃんと食べるにゃんよ」
「食べますよ」
○フルゲオ大公国 首都ルークス郊外 首都防御陣 レオナールの館
和気あいあいの朝食の後は、大公の居城となったレオナールの館にやって来た。
警備の兵士が敬礼する。
「昨夜はありがとうございました」
「にゃあ、楽しんでくれたなら何よりにゃん」
警備の兵士が開けた扉をくぐると執事の爺さんがいた。
「いらっしゃいませマコト様、大公陛下がお待ちです」
「にゃあ」
姿勢のいい爺さんの後に付いて昨日と同じ部屋に入る。
大公陛下になったレオナールの両隣には、近衛騎士団団長のアンジェリーヌとギルマスのブランディーヌがいた。
「にゃあ、まずはウォッシュにゃん」
三人と言うか屋敷の中全員にウォッシュを掛けた。
「悪いなマコト」
「にゃあ、軽く摘めるモノも持って来たにゃん」
ホットサンドを載せた皿をテーブルに置いた。
「ありがとうネコちゃん」
「にゃあ、ちゃんと食べないと頭が回らないにゃんよ」
「マコト、悪いがあと一週間ばかり滞在してくれないだろうか?」
「嫌にゃん」
即答した。
「そう言われても困るのだが」
レオナールは眉間にシワを寄せた。
「にゃあ、金ならあるにゃん」
「マコトは有るだろうが、我が国には元々ない」
「にゃあ、大公国のお金をオレが預かってるにゃんよ」
「どういうことだ?」
次男坊大公が怪訝な表情を浮かべる。
「にゃあ、城が燃える寸前に金を回収したにゃん、呪いの魔導具とか装飾品の金箔も集まったから全部聖別して金の地金にしたにゃんよ」
全部、格納空間での作業だ。
「はあ?」
顔いっぱいに疑問符が浮かんだ。
「それって理屈からするとネコちゃんのものになるんだけど」
ブランディーヌが首を傾げた。
「にゃあ、だったら落とし物の扱いでオレが一割もらうにゃん」
こちらでもそのような決まりがあるかどうかは知らないが。
「それでいくら有るんだ?」
「王国の規格準拠で、金の地金二〇〇万枚にゃん」
「待て、本当にそんなに有ったのか?」
「にゃあ、本当にゃん、レオナール陛下の格納空間に一割を抜いた一八〇万枚を移すにゃんね」
「ちょ、本気か!?」
「にゃあ」
「おおお、本当に来た!」
「にゃあ、流石に大公陛下だけあって格納空間の器がデカいにゃんね」
「本当に兄上の格納空間に入れたのか?」
アンジェリーヌが眼を見張る。
「にゃあ」
「まさか城にこれほどの金が有ったとは」
「にゃあ、何処かに隠し金庫でも有ったと違うにゃん?」
「多分それだろう」
「これを全額、魔石の購入に当てる、我が国は魔導具の生産でもそこそこ優秀なのだ」
「にゃあ、だったら金の地金を魔石と交換にゃんね、一個大金貨三〇枚計算でいいにゃんね?」
「待って、今回は上位種や怨霊系が大半だからもっと高い値段が付くわよ」
サンプルは昨夜の内にラルフに渡してあるので、ブランディーヌは大まかな値段を算出済みだった。
「にゃあ、大公国に売る分はレオナール陛下の即位祝込みにゃん、というわけで交換するにゃん」
「ちょ、また全部俺の格納空間で済ませるつもりか!?」
「にゃあ、それがいちばん安心安全にゃん」
「おおおおお!」
「ちゃんと入ったにゃん」
「大丈夫か、兄上?」
アンジェリーヌがレオナールの顔を覗き込んだ。
「何とかな、他人の格納空間が弄れるなんて聞いたことがないぞ」
「にゃあ、次は冒険者ギルドの分にゃんね」
オレはブランディーヌを見た。
「無理無理! 私の格納空間は人並みだから幾らも入らないわよ!」
ブランディーヌが後ずさりする。
「にゃあ、誰も格納空間に入れるなんて言ってないにゃんよ、倉庫に入れるにゃん」
「それなら安心」
「マコト、今回の一連の働きに大公国として報酬を出さなくてはならない」
改まってレオナールがオレに向き直った。
「別に要らないにゃん」
「おまえが良くてもこっちが困る」
「にゃあ、無理しない方がいいにゃんよ、お城の再建だってお金が掛かるにゃん」
「城の再建だったら魔導師どもを投入することにした、国庫もマコトにもらった魔石で十分に立て直せる」
「だからって見栄に金を使ったら直ぐに無くなるにゃんよ」
「金は使わん、マコトを我が国の貴族に取り立てる」
「にゃ?」
「二つの国で貴族になることは問題ないから安心して」
ブランディーヌが補足した。
「そういうものにゃん?」
「過去にも何人も居たし、大公陛下は代々アナトリの公爵でもある」
アンジェリーヌも補足してくれる。
「にゃあ」
「マコトには大公国の西方にあるドクサと言う領地をやる、大きさは良くわからん、プロトポロスも付けるからそこを州都にすればいい」
「プロトポロスの西側が全部領地だと思えばいいわ」
地図を広げてブランディーヌが説明してくれる。
あれだ、ほとんど森だ。
「小さな集落もないから面倒もないわ」
「無人の領地だから税収も期待できないが」
「面倒ごとよりはいいにゃん」
「レオンの領地と隣り合ってるから、普段はヤツに面倒を見させればいいだろう」
「にゃあ、だったらフルゴル州の駐屯地の娘を全員譲って欲しいにゃん」
「ああ、マコト殿が救出した大公国軍の兵士か?」
「にゃあ、ルチア・モーラ少尉を執政官にして残りの子で守備隊を組織するにゃん」
「いいの? そうなるとネコちゃんの持ち出しになるわよ」
「マコトの財産からしたら微々たるものだろう?」
「それもそうか」
「構わん、叔父上に内務大臣を押し付けたから何か有ったら相談するといい」
「にゃあ」
あの大男のおっさんにゃんね。
「では、マコトをドグサの領主とし、地位は辺境伯とする」
「にゃあ、オレが辺境伯にゃん?」
「侯爵とほぼ同等だ、つまりレオンと格は同じと思ってくれ」
「にゃあ、わかったにゃん、謹んで拝領するにゃん」
それから冒険者ギルドに移動してフルゲオ大公国の冒険者ギルドに魔石を納品した。
こちらの支払いは鑑定後に支払われることになる。
受け取りはある程度大きな支部なら問題ないそうだ。
オパルスの冒険者ギルドにも同じ数だけ納品することに決まっていた。
これで大公国での事務手続きも終了した。
○フルゲオ大公国 首都ルークス郊外 首都防御陣 ロッジ
「辺境伯への授爵、おめでとうございます!」
「「「おめでとうございます!」」」
ロッジに戻ったら皆んなに祝福された。
「にゃあ、別にオレ自身が偉くなったわけじゃないから、いままで通りでいいにゃん」
「ですが」
レオンは不満らしい。自分では敬語不要みたいなことを言ってなかったか?
「にゃあ、公の場は仕方ないとしても普段はそう目くじらを立てなくてもいいと思うにゃん」
「レオン、マコトが許してる人間だったら問題ないだろう、それに侮ってるヤツをギャフンと言わせる方が楽しいぞ」
「にゃあ、チャドはレオンに悪いことを教えちゃダメにゃん」
「あたしは最初から偉いけどね」
リーリがオレの頭の上で威張る。
「にゃあ」
「レオン様は本当にマコト様が好きなのですね」
「当然です、我が主ですから」
アンジェリーヌの守護騎士を辞したグリセルダはレオンの領地に付いて行くらしい。
求婚は本気だったにゃんね。
まずは領地経営を手伝うそうだ。実家が文官なので引退した父親と仕官先を募集中の弟も伴って行くとか。
婚活騎士の猛攻にレオンも逃げられなかったわけだ。
アンジェリーヌの信頼の厚いグリセルダだったら、駆け出し侯爵レオンの良き伴侶となってくれるだろう。
プリンキピウムで勝手気ままな冒険者生活を味あわせてやりたかったが、ままならないのが人生にゃん。




