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夜が来るにゃん

 そうこうしてる間に夕暮れも終盤に差し掛かって太陽が見えなくなった。


 まるで地球みたいなオルビスが、あかね色に染まった空に大きく見えて異世界感が半端ない。妖精を頭に乗せてる時点で何をいまさらなのだが。

「暗くなってきたから、皆んな宿泊所に入るにゃん」

 入口を解放した。

「おい、街道に誰かいるみたいだぞ!」

 冒険者の一人が叫んだ。

「どうします?」

 さっきBランクの魔法使い女子が土壁で塞いだ出入口を指差した。


「おおぃ! あ、けて、くれぇぇ!」


 イントネーションのおかしな男の声がオレにも聞こえた。

「ピガズィの人間じゃねえか? おい、早く開けてやれよ!」

 土壁の前の冒険者が声を上げた。

「は、はい」

 入口を塞いだBランクの魔法使いが浮足立って土の壁を崩そうとした。

「待ってカティ! 慌てないで!」

 フリーダが止めた。

 魔法使いの名前はカティと言うらしい。

「何処の誰だか訊いた方がいいにゃんね」

「そうね、グールだって喋るから」

 フリーダも同意した。そうかグールは喋るんだ。

「おまえらは宿泊所に入れ!」

 ラルフが指示を出す。


 ドン!と重い衝撃音が響いた。


 外側からの打撃だ。さっき作ったばかりの入口の土壁にヒビが入った。

「きゃ!」

 カティが驚いて尻もちをついた。

「にゃあ、オレを降ろして欲しいにゃん」

 オレはフリーダに抱っこされたままだ。

「あっ、ごめんなさい」

 地面に降り立つと銃を取り出して土壁に向けて発砲した。

「おま、確認してないのに撃つの早いぞ!」

 ラルフが制止しようとする。

「にゃお、バカ言うにゃん! Bランクのお姉さんが作った壁にヒビを入れる一般市民が何処にいるにゃん!」

「お、おお、それもそうか」

「これはヤバいかもね」

 リーリがオレの頭で囁いた。

「にゃお、そうみたいにゃん、思ってたよりもずっとヤバい相手にゃん」

 魔法馬を出して飛び乗るとヒビの入った土壁の前に急いだ。

 激しい衝撃と轟音で肌がビリビリする。

 もう一方の入口の土壁にもヒビが入ってる。

「にゃあ! カティ、乗るにゃん!」

「えっ!? あ、はい!」

 カティを馬に引き上げて回収しUターンする。

「グールに喰われたくなかったら、宿泊所に入るにゃん!」

 壁の前で呆然としてる冒険者に声を掛けつつ続けて土壁に銃弾を撃ち込む。

 もう一方の土壁にも銃弾を撃ち込んで宿泊所の入口に戻った。

 冒険者たちも危険な状況を理解したらしく次々と簡易宿泊所に駆け込んだ。

「急げ!」

 ラルフも声を張り上げる。

「馬を消すにゃんよ」

「えっ? きゃああ!」

 カティに抱き着かれた。

「大丈夫にゃん」

 空気のクッションで地面にふんわり着地した。

「にゃうう! そんなにキツく締めちゃダメにゃん!」

「ご、ごめんなさい!」

「カティも中に入るにゃん!」

 まだ中に入ってない冒険者共が五人もいる。

「どうした? おまえらも早く入れ!」

 ラルフが声を張り上げた。

「あいつらは何をしてるにゃん?」

「あそこでグールを迎え撃つつもりらしい」

「にゃあ、無理にゃん! 直ぐこっちに来るにゃん!」

 五人組の冒険者に声を掛けた。

「うるさい! 子供に指図されてたまるか!」

「「「そうだ!」」」

「引っ込んでろ、クソガキ!」

 全員二〇そこそこのガキにクソガキって言われてカチンと来た。

「にゃお、だったら勝手にするにゃん、ラルフはどうするにゃん?」

「俺は中に入る」

 オレとラルフが入って扉を閉めた。

「どうしたのネコちゃん、そんなに慌てて?」

 フリーダも気付いて無かった。

「ここはグールに囲まれてるにゃん、気配を消して近付いたみたいにゃん」

「カティ、そうなの?」

 フリーダがカティに聞いた。

「あっ、はい、確かに壁の向こうに人間と違った気配が幾つもあります」

 カティは目を閉じて答えた。探査魔法を打つ速度はコンマ数秒だった。流石Bランクだけはあるにゃん。

「壁があるから大丈夫よね? 入口が破られてもあいつらは全員Bランクだから後れは取らないはずだし」

「にゃお、甘いにゃん、さっきわかったにゃん、グールはかなりヤバいにゃん、獣の特異種とはまったく別物にゃん」

「いや、あいつらだってBランクなんだ、わかってるはずだ」

「ラルフは、実際にグールの討伐経験はあるにゃん?」

「いや、俺はないが」

「外にいるあいつらは?」

「俺の知る限りないと思う」

「私もないわ」

 フリーダも無かった。

「獣とは根本的なスペックが違うにゃん、あれは獣より魔獣に近いにゃん」

 エーテル器官が変異して魔力が身体強化と再生に回されていた。

「まさか、そこまで強くはないはず」

「にゃあ、フリーダ、今回この人数で挑んだのは完全な采配ミスにゃん」

「おい、マコト何を言ってるんだ、いくら強くても三、四体のグールに負ける訳がないだろう?」

「ラルフ、今回のグールは数が違うにゃん、軽く二〇はいるにゃん」

「「「二〇!?」」」

 ざっと探知しただけでそれだけの数が引っ掛かった。

「実際にはもっといるよ」

 リーリは正確な数字を掴んだらしい。

「獣の特異種だってその数がいたらヤバいにゃんよ」

「あ、ああ、まったくだ」

 ラルフが頷く。

 グールは、これまでオレが倒した獣の特異種とは強さのレベルが違っていた。

 銃弾を撃ち込んでハッキリわかった。

 ヤツらは、獣にはない知能がある上に魔力で身体を強化し損傷を自動補修する不死身の体を手に入れていた。

「ヤツらは獣じゃないにゃん、人間の能力をはるかに超えた鬼にゃん」

「しかも数が多いと来てるか、マズいなんてモノじゃないな」

 ラルフもことの重大さがわかってきたらしい。

「壁越しで撃った感触でわかったにゃん、普通なら即死の銃傷を一瞬で補修したにゃん、再生能力が半端ないにゃん」

 だから慌てて他の冒険者を安全な宿泊所に集めたのだ。

「ネコちゃん、グールの数が二〇って本当なの? カティ何かわかる!?」

「ま、待って下さい! いま精密に探索します!」

 カティは杖を振った。

「います、二五、二六、ああ、まだ増えてます! 壁に取り付いてよじ登ってます!」

「おい、マジでそんなにいるのか!?」

 ラルフの声が大きくなる。

「間違い有りません!」

 カティは涙目になってる。

「数が増えてるにゃんね」

「おい、マジかよ、俺たちよりグールが多いのか?」

「多少、苦戦するとは思っていたけど、まさかそんなにいたなんて、ネコちゃんの言う通り完全な私のミスだわ」

「いや、俺も甘く見てました」

 ラルフとフリーダが青くなってる。

 他の冒険者たちも絶句していた。

「ひとまずここにいれば安全にゃん、オレはちょっと上に行ってぶちかまして来るにゃん、皆んなはこれでも見てて欲しいにゃん」

 壁に外の様子を映し出す。

 薄暗い野営地にさっきのBランク五人が見えた。


「どっからでも来やがれ!」

 グール相手に五人のうち銃持ちはふたりだけとは命知らずな冒険者だ。


 オレは頭にリーリを乗せたまま階段を駆け登る。

「おい、俺も行くぞ!」

 ラルフが付いて来る。

「にゃあ、邪魔にゃん」

「はっきり言うんじゃねえ!」

「私も行くわ!」

 フリーダもおっぱいを弾ませて階段を駆け上る。

「仕方ないにゃんね、でもオレの邪魔はダメにゃんよ」

「わかってる、でも私もギルマスとして見届ける義務があるから」

「仕事はちゃんとやるから心配要らないにゃん」

 屋上まで一気に駆け上がって銃を取り出した。

 空に向かって一発。

「照明弾にゃん」

 野営地が昼間の様に照らし出される。

「いるね」

「もう、入り込まれたのか!」

 入口を塞いだ壁の一角が崩れグールが這い出していた。

 身長二メートルを越えている筋肉質の半裸の男たち。いや本当にゴリラみたいだ。

 耳まで裂けた口。

 尖ったサメの様な歯。

 四つの目。

 人間でありながら紛れもなく特異種の特徴を備えていた。

 赤黒い肌はまるで赤鬼だ。

「ラルフ、あのグールは元が何処の人間かわかるにゃん?」

「ああ、わかるぞ、あれは犯罪奴隷だ、額に紋章が見えるだろ?」

「にゃあ、するとここにいるグールは全員が犯罪奴隷にゃんね」

 どのグールの額にも犯罪奴隷の紋章が刺青されていた。

「これだけの犯罪奴隷は何処から来たの?」

 フリーダもグールたちを見下ろす。


「どうなってるんだ!? 銃が全然効かないぞ!」

「こっちに来るな!」

「おい、剣も効かないってどういうことだよ!」

「こんなに強いなんて聞いてないぞ!」

 冒険者の五人は早くもグールに囲まれていた。


「あいつら、食べられちゃいそうだよ」

 リーリが教えてくれる。

「随分と弱いにゃんね、もう弾切れを起こしてるし本当にBランクにゃん?」

「相手が悪いにしても、まさか一匹も狩れないとは」

「マコトの予想が当たったね」

 嬉しくない正解だ。

「グールは首を切り落とすかエーテル器官を破壊する必要があるみたいにゃんね」

「再生能力が特異種の中では群を抜いてるからね」

 リーリが補足してくれる。

「それは初めて聞くぞ」

「私も聞いたことは無かったけど、言われてみればどのグールも最後は首をねられていたわ」

「討伐経験者の話をちゃんと聞けなかったのもマズかったか」

「にゃあ、たぶんグール一体を冒険者一〇人以上で囲んだはずにゃん」

「マコトがいなかったら、いまごろ全員がグールどもに喰われてたか」

「ネコちゃんを連れて来た私のお手柄ね」

「フリーダ様に指示された時は耳を疑いましたけどね、『六歳児ってマジか!?』って、いまなら納得です」

「にゃあ、そろそろ五人組がヤバいにゃんよ、あいつらマジで喰われるにゃん」

 五人を囲むグールの輪は、いまにもヤツらを飲み込みそうなほど小さくなっていた。


「おい、そこから見てないで何とかしてくれ!」

 五人組のひとりが逆ギレ気味に叫んだ。

「自業自得だろう?」

「ラルフさん、勘弁して下さい!」

 手を合わせる。

「おい、どうにかしてくれ!」

「にゃあ、そこは普通『助けて下さい、マコト様』と違うにゃん?」

「普通はそうだろうな」

「だよね」

「そうね」

「「「助けて下さい、マコト様!」」」

 マジ泣きになってる。

「仕方ないにゃんね」

 オレは銃を構えて、五人を囲むグールの頭を一体ずつ撃ち抜いた。

 正確にはエーテル器官を破壊した。

 壁越しに撃った感覚から、たぶん他の何処を撃っても自動修復される。

 エーテル器官を破壊されたグールはその場に次々と崩れ落ちた。

 正解か。

「例えグールでも人間を撃つのは嫌な感触にゃん」

 他の獣にはない感覚だ。

「グールになった彼らを助けるにはそれしかないわ、ネコちゃんは彼らを救ってあげてるんだから気にしないで」

「にゃあ」

「おまえらそこにへたり込んでるんじゃねえ! マコト、あいつらをここに入れるわけにはいかないのか?」

「万が一のことを考えると他の冒険者たちがいるこっちは無理にゃん、トイレなら入れるにゃん」

「わかった、おまえら便所に走れ!」

 五人はラルフの声にトイレに向かって駆け出した。

 寄って来るグールはオレが撃ち殺す。

「便所に逃げ込んだか、悪いなマコト手間を掛けさせて」

「いいにゃんよ、目の前で喰われたら寝覚めが悪いにゃん、邪魔がいなくなったのでここから本気を出すにゃん」

 屋上の柵に飛び乗り周囲を探索する。

「にゃあ、グール、残存四八体、上位種一体にゃん」

「上位種?」

「群れを率いてる個体にゃん」

「するとピガズィに出たグールはこの周囲に全部集まってる可能性が高いわね、上位種が複数いたら別だけど」

「そいつは考えたくない可能性ですね」

「行くにゃん」

「ちょ、おい!」

 オレは屋上から飛び降りた。

「あたしも行くよ!」

 リーリがオレの頭に着地する。

 オレは風魔法で飛翔する。

「危ないにゃんよ」

「平気だよ!」

 馬を再生してその鞍に着地した。周囲はグールでいっぱいにゃん。


「「「ガアアアアアアア!」」」


 グールたちが咆哮する。

 全員が涙を流している。

「わかったにゃん、直ぐにオレが解放してやるにゃん!」

 銃はライフルから拳銃型に切り替えそれを両手に持った。

 走る魔法馬の上から襲い掛かってくるグールを防御結界で弾き飛ばして銃弾でとどめを刺す。

「徒党を組んでも無駄にゃん!」


「確かにあんな戦い方じゃ近くに誰かいたら邪魔になるわね」

「スゲえな、マコトは」

 屋上から見下ろすフリーダとラルフはため息混じりの言葉を吐いた。

「頭だけ正確に撃ち抜いてる、こんなモノを作った後なのにまだ魔力も集中力も途切れてないのね」

「本当にマコトがいなかったら、間違いなく俺たちは全員死んでましたね」

 ラルフはしみじみ言う。

「ええ、全滅だったでしょうね」

 フリーダも深く頷いた。


 特異種の好む魔力を解放して簡易宿泊所とトイレの結界に阻まれたグールたちをこっちに誘う。

「おまえらの相手はこっちにゃん」

 あれだけいたグールも一〇体ほどに減った。


「「「ガア!」」」


 残っていたグールたちがオレに殺到する。

 紛れも無く上位種の命令だ。

 すべてを魔法馬の結界に到達する前に倒した。

 オレは拳銃を分解して代わりに口径の大きなライフルを取り出す。

 残りは上位種一体のみだ。

「来るよ!」

「にゃあ」

 目の前の城壁の様な塀が崩される。

 土埃の向こうでキラキラ光る何かが見えた。


「あれが上位種か、確かに普通のグールと違って額に角が生えてやがる、しかも一回りデカい」

「あれって、近衛の騎士じゃないの?」

「ですね、あの身体に食い込んでる下品な鎧は確かに近衛の騎士のものです」

「近衛の騎士がこれだけの犯罪奴隷を率いてると言うことは」

「例の遺跡じゃないですか?」

「近衛軍相手では問い合わせも無理ね」

「ですね、マコト気を付けろ! そいつは魔法を使うぞ!」


「グァァァァァァァァァァッ!」


 咆哮するグールの上位種は金色の鎧?を膨張した身体に食い込ませていた。

 それに馬鹿でかい剣を持ってる。

「あの剣、アーティファクトにゃん?」

「間違いないよ」

 魔力を浴びて光ってる。

 グールの上位種は、自分の背丈ほどあるその剣を片手で軽々と扱っていた。

「にゃあ、こいつかなり剣の腕があるみたいにゃん」

 理性は失っていても身体に染み付いた技量は抜けないらしい。

 オレは馬を消して地面に降り立った。

「気を付けてマコト、あの剣だったら防御結界も切られちゃうよ!」

「にゃあ、それは分が悪いにゃんね」


「グガァァァァァッ!」


 剣の切っ先の光が飛んだ。

 オレが飛び退いた背後で向こう側の塀が崩れた。

「にゃあ、離れていても斬れるなんてズルいにゃん」

 オレも銃を構えた。

 グールの上位種も剣を構えた。

「大丈夫かマコト!?」

 簡易宿泊所の屋上からラルフの声が掛かった。

「にゃお、うるさいにゃん!」

 上位種が動いた。

「にゃあ!」

 切っ先の延長上に飛んだ光がオレの防御結界に刺さる。

 切れてるが、防御結界の再生速度が辛うじて優って光を受け止めていた。


「グガァ!?」


 魔力的に繋がってる剣が動かせずグールの上位種は初めて驚きの表情を浮かべた。

 そこにオレの銃弾が届く。

 グールの防御結界を弾きエーテル器官を撃ち抜いた。


「……ミゴトダ」


 目を見開き確かにそう呟いた。

 グールの上位種だった者は仰向けに倒れる。

 静寂が訪れた。

「勝ったね」

「にゃあ、終わったにゃん」

 オレはその場にへたり込んだ。

 もう周囲にグールの反応はない。

「大丈夫?」

 リーリが心配そうにオレの顔を覗き込む。

「にゃあ、平気にゃん」

 ポロポロこぼれ落ちる涙を拭った。

 オレは上位種の持っていたアーティファクトと思しき剣を分解した。

 使用者の魔力を吸って切断力を高める剣だ。

 格納空間で調べたが精神を錯乱させたりグールになる機能はない。


 宿泊所の入口の封印を解くと冒険者達が飛び出してきた。

「ネコちゃん!」

「にゃう!」

 フリーダに抱き締められた。

「あんなに無茶して大丈夫なの? 怪我は!?」

「大丈夫にゃん」

「スゴいなマコト! ここまで強いとは思って無かったぞ!」

 ラルフが横から頭をワシャワシャする。

「ネコちゃんスゴい!」

「スゴいですわ!」

 レベッカとポーラにも抱き着かれた。

「マコト様、すいませんでした!」

「「「すいませんでした」」」

 便所に逃げ込んでいたBランクの五人が頭を下げた。

「もういいにゃんよ、様付けも不要にゃん」

「おまえら、今回は面倒見のいいマコトがいてくれたおかげで助かったが、次は周囲の声もちゃんと聞けよ」

「助けるのも今回だけだよ!」

「「「はい!」」」

 何故かラルフと妖精が威張ってる。

「にゃあ、グールの死体はどうするにゃん?」

 オレを抱きかかえたままのフリーダに聞いた。

「討伐証明の右手首を回収した後は燃やすか埋めるかね、今回は燃やした方が良さそうね、上位種はまるごと持って帰るけど」

「だったらオレが聖魔法で送ってもいいにゃん?」

「送るって、ネコちゃん、聖魔法が使えるの!?」

「マジか!?」

「送るぐらいはできるにゃん、討伐証明の回収が終わったら教えて欲しいにゃん」

「わかったわ」


 一〇分ほどで討伐証明と上位種の回収を終えた。

「では、始めるにゃん」

 聖魔法は浄化の魔法だ。

 死者の魂と身体をエーテルに変えて天に還す。

 このまま燃やしたら魂が迷いそうだ。

「にゃあ!」

 グールたちの死体が光の粒子に分解されて螺旋を描いて天に昇って行く。

「私にもわかる、皆んなネコちゃんに感謝してたわ」

「当然です、奴隷の紋章付きが聖魔法で送って貰えるなんて破格の待遇ですよ」

 フリーダとラルフは空を見上げてる。

「マコトさん、私、感動しました! こんな美しい魔法は初めてです!」

 魔法使いのカティがオレの手を握ってポロポロ涙をこぼしてる。

「大げさにゃん」

「そんなことは有りません!」

 女の子なんだから鼻水は拭くにゃん。ハンカチで綺麗にしてやる。

「にゃあ、今日は疲れたから風呂入って飯食って寝るにゃん」

 カティに手を握られたまま、宿泊所に戻った。


 大浴場でゆっくりした後は食堂に行った。皆んな配られた携帯食を食べてる。

 干し肉と釘が打てそうなパンモドキ。

「にゃあ、オレたちはこっちにするにゃん」

 オレとリーリの分のハンバーガーとポテトとコーラを出した。

「流石に料理を作るのは面倒くさいのでパスにゃん」

「「「……」」」

 皆んながハンバーガーを齧ろうとしたオレたちをガン見してる。

「にゃあ、皆んなも食べたいにゃん?」

 皆んなが一斉にうなずいた。

「仕方ないにゃんね」

 レベッカとポーラとカティに手伝ってもらって皆んなの分のハンバーガーをカウンターに配布した。


「「「うまい!」」」


 だからハンバーガーが特別美味しい訳じゃなくて、おまえらの普段食ってるモノが不味いにゃん。

 とは、口に出せない。


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