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フィロス州を占領にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年十二月〇七日


 ○ケントルム王国 スタロニク州 カサドリ拠点 屋上


 オレたちは、朝のうちに新たに南と北の魔獣の森で魔獣の討伐をする為に更に追加で戦艦型と空母型ゴーレムを一〇艦ずつ建造し起動させた。

 クルーのピンクの猫耳ゴーレムたちが乗艦する。

 オレたちは、グランキエ大トンネルの中間地点にあるかつてタルス一族の街があった大空間に黄色のエーテル機関を獲得する為の施設を作り、ピンクの猫耳ゴーレムを大量生産している。

『『『ニャア』』』

 戦艦型と空母型ゴーレムたちが鳴き声を上げて北と南へと飛び立った。

「頼んだにゃん!」

 大部分の魔獣は自分より大きくて強そうなヤツからは逃げる性質があるので、追い回すには都合がいい。

 後は現地でオートマタをどっさり再生して魔獣を始末しまくる予定だ。



 ○ケントルム王国 スタロニク州 パゴノ街道 上空


 カサドリ拠点を出発し、ドラゴンゴーレムを連ねてパゴノ街道上空を飛行しスタロニク州の西南に隣接するフィロス州に向かう。

 フィロス州の州都ナウタは、パゴノ街道沿線では唯一砂海の魔獣の集合体の射程外にあり無傷で残っていた。

 ただし現在はそうでも無いようだ。

「州都に魔獣が集まっているにゃんね」

 州都の防御結界はなかなか優秀らしく魔獣の侵入を防いでいたが、数で押されておりいつ崩壊してもおかしくない状態だ。

 たぶん、今日一日持たない。

「せっかく焼かれずに残ったにゃん、オレたちが州都を占領するにゃんよ!」

「「「にゃあ!」」」


 フィロス州の境界を抜けたところで、パゴノ街道を外れてドラゴンゴーレムを北西方向にある州都ナウタに向けた。



 ○ケントルム王国 フィロス州 上空


「にゃあ、いるにゃんね」

 直ぐにドラゴンゴーレムから数匹の魔獣が北からパゴノ街道に向かっている姿を肉眼でとらえた。

 色違いの巨大なムカデ型の魔獣が森の木々の間を縫って移動している。このところの大発生で感覚が麻痺しているが、本来一匹でも人間の領域に現れるのは異常事態なのだ。たった一匹でも、ちょっとした街を壊滅させる力があり人間は蹂躙される。

 プリンキピウムでも一匹の鎧蛇に襲われて、本来あるべきの魔獣避けの刻印が効力を失っていたことも相まってかなり危ないことになった過去がある。

 その時はカズキとユウカが追い返して事なきを得たが、今回のケントルムでは魔獣の数が多いこともあってその様な成功例は見られていない。

 内陸のこの辺りは、魔獣の森から距離があるから州都以外の街に高価な魔獣避けの刻印などあるはずも無いし、本当に一撃で壊滅する。

「ひとまず見える範囲内で狩るにゃん、それ以上は州都を占領してからにゃん」

「「「にゃあ」」」

 フィロス州の騎士団も守備隊も姿が皆無なので、もっと大規模に攻めて問題はなさそうだが、まずは州都の占領だ。



 ○ケントルム王国 フィロス州 州都ナウタ 上空


 魔獣を狩りながら州都ナウタに到達したオレたちは防御結界に沿ってドラゴンゴーレムを旋回させる。

 州都の防御結界が城壁に群がる魔獣を辛うじて弾いていた。魔獣避けの刻印は付与されてないみたいだ。

「これだけの数の魔獣から守っているとはここの防御結界は本当に優秀にゃん」

 アナトリでは優秀な部類に入るフェルティリータ州の州都カダルの防御結界でもここまでは弾けなかった。

 しかし、まもなく限界だ。

「魔獣はオレが始末するにゃん」

 州都の防御結界をぶち破る前に城壁に群がる魔獣どものエーテル機関を奪い取ってその動きを止めた。

「残りはウチらにお任せにゃん」

 猫耳たちが魔獣の躯をすべて格納した。

 城壁にいた兵士たちが驚きの声を上げている。

 魔獣を始末したところでオレを先頭に猫耳たちのドラゴンゴーレムが次々と州都の結界をぶち抜いた。

「にゃお、こいつらはこの非常時に何をやっているにゃん?」

「盗賊にゃんね」

 眼下の州都は、盗賊との戦闘の真っ最中だった。

 最初は暴徒化した市民と守備隊や騎士がやりあっているのかと思ったが様子が違う。盗賊と騎士団だ。避難民と一緒に盗賊どもまで流れ込んだか?


『にゃあ、お前ら聞くにゃん! 現時刻を以てフィロス州はオレたちが占領したにゃん、これより戦闘行為を継続した者は犯罪奴隷に落とすにゃんよ!』


 風に載せて声をフィロス州の全てに響き渡らせた。ここも州都以外はほとんど盗賊ばかりだけどな。

 州都内で暴れてる盗賊をまとめて素っ裸で昏倒させた。

「暴動を起こした連中は箱詰めにゃん」

「「「にゃあ」」」

 猫耳ゴーレムたちが降下し騎士や兵士たちを追っ払う。そして地面に穴が空いて魔法蟻たちがぞろぞろ出て来た。


「オレたちは城に行くにゃん」

 城からも黒煙が立ち上っている。

「盗賊にかなり押されているにゃんね」

「数が多いにゃん」

「盗賊も魔獣が直ぐそこに来ているのにマメな連中にゃん」

「にゃあ、まったくにゃん」



 ○ケントルム王国 フィロス州 州都ナウタ ナウタ城


 ドラゴンゴーレムを格納して城の中庭に降下したオレたちは城の外壁に勝手に穴を開けて突入した。

「しっかり略奪している辺り逆に感心するにゃん」

 城内に盗賊が入り込んでいる。

「何だてめえらは!」

 早速、デカい棍棒を持ったこれまたデカいおっさんが声を上げた。冒険者風ではあるが臭いでわかる。

 盗賊はうんこ臭い。

「オレの話を聞いて無かったにゃん?」

「はあ?」

 バカにした調子で首を傾げたが、そのまま吹っ飛んで壁にめり込んだ。

「お館さまの玉声を聞き逃すとは万死に値するにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳に冗談は通用しない。


 猫耳たちが盗賊たちを次々とブチのめす。

「領主は謁見の間に立て籠もっているみたいにゃんね」

 ぶっ倒れた盗賊の頭を踏んで情報を引き出した。



 ○ケントルム王国 フィロス州 州都ナウタ ナウタ城 謁見の間 前


 謁見の間の前では騎士たちがバリケードを築いて盗賊たちと対峙していた。

「諦めて退きやがれ!」

 臭い盗賊どもが城内で奪ったと思わしき槍をバリケードに突っ込む。

「ぐぁ!」

 騎士に突き刺さる。多勢に無勢で盗賊が確実に押していた。


「盗賊の方が戦い慣れた感じにゃんね」

「ここの騎士は籠城戦の訓練はやってないみたいにゃん」

「とりあえず盗賊は邪魔にゃん」


 電撃を放って盗賊を全員素っ裸にしてぶっ倒した。ウォッシュで丸洗いしたのは主にオレたちのためだ。


「「「……っ!」」」

 盗賊どもが倒れて騎士たちはやっとオレたちに気が付いた。

「にゃあ、オレはアナトリのマコトにゃん、領主ジュリエンヌ・デュフォール伯爵と話がしたいにゃん」

 オレが先頭に立って声を掛けた。

 騎士たちがザワザワしている。

「なるべくなら平和的に話がしたいにゃん、それと州都はほぼ制圧したにゃん、城内も残りはここだけにゃん」

「少々お待ち下さい」

 扉の向こうと相談するようだ。


 少しして扉が開かれ魔法使いらしき男が出て来た。

「私は領主補佐のフロラン・デュフォールだ、領主ジュリエンヌ・デュフォール様の安全を保証してくれるなら会談に応じよう」

 領主のジュリエンヌ・デュフォール伯爵は確か八歳だったはず。八歳で犯罪奴隷相当はないだろう。

「了解にゃん、ジュリエンヌ様の安全を保証するにゃん」

「感謝する」

 フロラン・デュフォールが騎士たちの築いたバリケードを消し去った。なかなかの格納空間を持っている。

 騎士たちが左右に別れて道を開ける。

「にゃあ、この先はオレひとりでいいにゃん」

「……っ」

 見た目が子供のオレがひとりで乗り込むと言ったので、フロランは驚きの表情を浮かべた。

「にゃあ、ただしお館様に刃を向けたらさっきの約束は反故にするにゃんよ」

「「「にゃあ」」」

 猫耳たちがプレッシャーを掛ける。

「無論、現状は把握しているつもりだ」

「にゃあ、それなら問題ないにゃん」

 オレはフロランの後に続いて謁見の間に足を踏み入れた。



 ○ケントルム王国 フィロス州 州都ナウタ ナウタ城 謁見の間


 謁見の間の玉座に八歳の女の子がひとりちょこんと座っていた。フィロス州領主ジュリエンヌ・デュフォール伯爵だ。かわいい女の子だ。まあオレよりは大きいわけだが。

 ジュリエンヌが立ち上がってお辞儀をした。

 そしてオレの前に降りて来た。

 謁見の間に護衛の騎士たちは一〇人もいない。他に側仕えのメイドさんたちがいるだけだ。

 正式な魔法使いは謁見の間の後ろに立ったフロランだけだが、メイドさんの中に魔法使いが混ざっている。

 認識阻害を使って隠れている人間はいない。

「はじめまして、マコト公爵様、ジュリエンヌ・デュフォールです」

 改めてお辞儀をする。

「にゃあ、ジュリエンヌ様、オレがマコトにゃん、お初にお目に掛かるにゃん」

 オレも一礼した。

「マコト様は我が領を占領されたのですね」

 八歳にしては落ち着いた話し方だ。

「にゃあ、そうにゃん、州内に残っている領民の保護と魔獣と盗賊の討伐は今日中に終了する予定にゃん、州都と城内はほぼ制圧が完了したにゃん」

「お願いがございます」

 ジュリエンヌはオレをじっと見つめた。

「マコト様、どうか領内の者たちの命だけはお助け下さい」

 フロランたち大人が言わせているわけではなさそうだ。八歳でもしっかり領主をやっている。偉いにゃん。

「にゃあ、犯罪奴隷でも無い限り手は出さないにゃん、ただしオレたちに敵対しなければの話にゃん」

「それは……わかっています」

「マコト公爵、ご覧の通り我が領にあなたと敵対するだけの力は残っていない、我らはここで降伏する、ジュリエンヌ様もよろしいですね」

「はい」

 フロランの言葉にジュリエンヌが頷いた。



 ○ケントルム王国 フィロス州 パゴノ街道上空


 州都での会見を終えたオレは、真っ直ぐ南下してパゴノ街道に到着した。

 魔獣どもはすでに猫耳ゴーレムたちが綺麗にしている。

「拠点を設置するにゃん」

「「「にゃあ!」」」

 フィロス州で最もマナが濃いパゴノ街道沿いに巨大な青いピラミッド型の二型マナ変換炉を四つに猫ピラミッド型の拠点をひとつのケントルム拠点セットを再生する。

 いまのオレの魔力からすればほんの一瞬の作業だ。

 マナを回収した四つのピラミッドが青く輝く。

「お館様、魔獣にゃん!」

「にゃ!?」

 周囲一〇キロ圏内の魔獣はすべて狩ったはずなのに、また魔獣の反応が多数現れた。肉眼でとらえた範囲でも十数匹いる。

「にゃあ、本当に魔獣が湧くにゃんね、初めて実感したにゃん」

 魔獣の森での実験は見ていたが、人の領域で現れたのを目の当たりにするとヤバさがひとしおだ。

「これは殲滅しない限り切りがないかもしれないにゃんね」

「お館様、それならウチらが殲滅するまでにゃん!」

 猫耳が力強く宣言した。

「にゃあ、魔獣の無限湧きもオレたちに取ってはそう悪いことじゃないにゃん、貴重な魔獣の素材がてんこ盛りにゃん」

 元の世界でも経済を破壊しそうな量の素材が格納空間に積み上がっていた。

 アナトリ側ではこれと有り余る魔力をオレの領地と王宮の直轄地の開拓に使っている。他の領地との差が大きくなる一方だがそこは仕方がない。他の領地への干渉は挑発と同義だ。

「少し残すにゃん?」

「オレたちに調整するほどの余裕はなさそうにゃんよ」

「にゃあ、また追加が来たにゃん?」

「そうみたいにゃん」

 探査魔法を打つまでもなく魔獣の数が濃くなった。

「とにかく手当り次第、ぶっ倒すにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 オレが魔獣どもに杭を撃ち込み、猫耳たちが躯を回収する。残された杭が光を放ってマナを吸収した。


 幸い目に見えて魔獣が追加されることはなかった。



 ○ケントルム王国 フィロス州 フィロス拠点 屋上


 魔獣の討伐が一段落してオレは猫ピラミッドの上から探査魔法を四方に打つ。

「盗賊はまだ結構いるにゃんね」

「もっと東のスタロニク州にもあれだけいたにゃん、それと本職じゃないのもかなりいるみたいにゃん」

 現地猫耳の元ソルダート団の副団長のアンベールだったベールが教えてくれる。

「専業じゃないにゃんね」

 素行の悪い連中が逃げもせず火事場泥棒の真似事と洒落込んでいるのだろう。

「しょせん半端者にゃん、やることもコソ泥レベルにゃん」

 犯罪奴隷に堕とすほどではない罪状だ。

「にゃあ、するとオレたちで教育してネコミミマコトの宅配便に配属にゃんね」

「それがいいにゃん」

 物流を活性化させるにはこっちでもネコミミマコトの宅配便を展開する必要がある。

 特にこれまで物流のボトルネックになっていたグランキエ大トンネルを解放したから、両国間での物流と人流を増加させたい。


 それにはまず人間の領域に入り込んだ魔獣の殲滅と集合体と王宮の秘密兵器の処分が先だけどな。


本年もよろしくお願い致します!

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