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天使様と夕食会にゃん

 ○ケントルム王国 スタロニク州 カサドリ拠点 食堂


 関係各所の猫耳たちと鉄道計画を練ったり、追加の戦艦型と空母型のゴーレムを建造して艦長席に座って起動させたりとやっているうちに夕食の時間になった。

「ケントルムの宮廷料理は中華っぽいにゃんね」

 本日はケントルムの王宮に潜入して入手したレシピで魔獣の肉を料理した。見た目はオレの知ってる中華料理に近い。

 本物は魔獣の肉なんて使わないから味も違うはずだ。

「レシピだともっと辛いにゃん、だからウチらに合わせて調整したにゃん」

 調理担当の猫耳が解説してくれる。

「にゃあ、悪くない選択にゃん」

 以前は辛いものも好きだったが、六歳児になってからは駄目になった。

「うん、イケるね」

「美味しいの」

「ふむ、我はもう少し辛くても平気かもしれない」

 リーリとミンクそれに今日は天使アルマも来てくれていた。天使様も距離は関係なしみたいだ。妖精たちはトンネルを抜けたっぽいが、天使様なら砂海の海もそのまま突っ切れそうだ。

「にゃあ、辛いのが好きならこの山椒を掛けるといいにゃんよ」

「試してみよう」

 天使アルマは山椒の入った小瓶を受け取って、振り掛ける。

「うん」

 今度は満足そうだ。

「中華ですね、しかも懐かしい」

「うん、家庭の味に近いかも」

 天使ミサとクミの姉妹も来ている。北方監視者だけに砂海の海を渡る必要もない。

「にゃあ、オレたちが調整したからにゃんね」

「ネコちゃんのところの猫耳ちゃんたちは可愛くていいよね」

「ウチとは大違いね」

「猫耳ちゃんみたいに改造しちゃえばよかったね」

「保護した一般人を改造しちゃ駄目にゃん」

 犯罪奴隷ならいいのか?って話もあるが、ここはいいとしておこう。

「天使様たちに質問があるにゃん、いま東方大陸をうろついている砂海の魔獣の集合体のことにゃん、あれって砂海の海の超大型魔獣と同じにゃん?」

「違うと思うが」

「超大型はもっと大きいですね」

「あのレベルになると地上は無理だからね、それにあんなのが出たら既にこの辺りも砂海に沈んでいたよ」

 天使様たちは揃って否定した。

「にゃあ、砂海の超大型魔獣じゃないなら一安心にゃん」

「あの集合体については我もよくわからん」

「うん、あたしたちもわからないかな、砂海の魔獣が陸地にあんなに入り込むのなんて見たことなかったから」

「普通は直ぐに死んでしまいますから」

 天使様たちもわからないらしい。

「あの集合体は超大型じゃないけど、単体とも性質がかなり違うにゃんね」

「まったく別物であろう」

 天使アルマがうなずく。

「にゃあ、観察した結果もそうにゃん」

「ネコちゃんなら大丈夫だよ」

 天使クミが簡単に太鼓判を押す。

「そのために神様がネコちゃんを遣わせたのですから」

 天使ミサがそう言った。

「神様にゃん?」

 そう言えばカホにそんなことを聞いたことがある。関係があるかどうかわからないが、ミマも無意識に似た様なことを呟いていた。

「神様がオレをこの世界に遣わせたって本当にゃん?」

「ええ、この世界で初めて目を覚ましたときから神の言葉は私の中にありました」

「神様の予言だよね」

 天使ミサとクミがうなずき合う。

「天使アルマが受けた予言とはちょっと違うにゃんね」

「神が我に託されたのは、マコトの守護だ」

「にゃあ、おかげ様で今日までピンピンしているにゃん」

 天使アルマには感謝だ。

「ネコちゃんはきっと神を知っているのではないでしょうか?」

 天使ミサがオレを見る。

「にゃ、オレが神様を知っているにゃん?」

 神様じゃなくてオレから知っているってこと? でも、神様の知り合いとかオレにはいないにゃんよ。

「ネコちゃんがこの世界を作った七人の神の愛し子であることは間違いないと思うよ、だから何処かで繋がっているのは間違いないんじゃない?」

 天使クミはあんかけ焼きそばを食べながらそう言った。

「七神にゃんね」

 オレはケイジ・カーターに魂を乗っ取られたブルーノ・バインズの『ここは七神によって造られた世界、何もかもが造り物の世界だ』という言葉を思い出す。

 それ以外の心当たりは無い。

 前世でも七人といったら七福神ぐらいか?

 でも特に繋がりがあるかといえばないよな。

「神の姿は我らも知らぬ、神の意志はマコト自身がいずれ知ることになるだろう」

 天使アルマがそういった。

「にゃあ、それも予言にゃん?」

「いや、我の予想だ」

 天使アルマはオレの頭を撫でてくれた。


「ふむ、なるほど、そなたがマコトか、たしかに稀人じゃな」


「にゃ?」

 オレの真後ろに子供?がいた。オレよりはずっと大きいけど。

 小学校高学年ぐらいの女の子の姿の腰まであるツインテールの長い髪は雪のように白い。肌も白く。金色の瞳。そして天使様たちと同じ白いプレートメイル。

「天使様にゃん?」

 椅子から飛び降りて向き合う。

「いかにも、わらわは東方監視者のスーラじゃ」

 天使様の中ではいちばんちびっこか。

「にゃ、東方監視者の天使様にゃん?」

「ここはわらわの管轄じゃ、顔を出さぬわけにもいくまい」

「そうであろうな」

 天使アルマも頷く。

「スーラちゃんもネコちゃんのソフトクリームが目当てじゃないの?」

 天使クミが冷やかす。

「否定はせぬ、主らに散々自慢されては確かめねばならぬだろう」

 好奇心旺盛な天使様だ。

「にゃあ、食事はいいにゃん?」

「食事か」

「美味しいですよ」

 天使ミサが勧める。

「ふむ、主らがそう言うなら」

 猫耳たちが席と皿を用意する。

「「……」」

 リーリとミンクの妖精ふたりはテーブルの上で固まっていた。

「お久しぶりです、スーラ様」

 タマモ姉が姿を現した。准天使だけあって神出鬼没は他の天使様と一緒だ。

「おお、お前か、ちょっと見ない間に随分と見違えたではないか」

「いろいろありましたから」

 タマモ姉を作り出したのが東方管理者の天使スーラだ。中身だけどな。いまはいつものエッチな女医さんの格好だ。

「お前もマコトを守っていたか」

「当然です、だってネコちゃんは可愛いですから」

 タマモ姉はオレを抱え上げた。

「マコトには、わらわも守護を与えるとしよう」

「スーラ様、守護はネコちゃんとその大事な人たち全部ですよ」

 タマモ姉が横から注文を付けた。

「ああ、構わんぞ」

 天使スーラは二つ返事で了承してくれた。気前がいい天使様だ。


「おお、これは美味しいではないか!」

 天使スーラは最初の一皿で満面の笑みを浮かべた。

「にゃあ、天使スーラはいまのケントルムの現状はどうにゃん?」

「どうと言うと?」

「ケントルムの大半が魔獣の森に沈んでも構わないにゃん?」

「それを言うなら、わらわの監視領域は大半が魔獣の森じゃ、いまさら増えたところでどうということもない」

「にゃあ、オレが魔獣の森を削っても構わないにゃん?」

「魔獣の森か、マコトの好きにして良い」

「それは助かるにゃん」

「監視者は基本的に人間には干渉せぬ」

 天使様のスタンスは共通らしい。

「にゃあ、それと質問がもう一つあるにゃん」

「なんじゃ?」

「魔力炉の在り処を知りたいにゃん」

「そんなものが欲しいのか? マコトはもう似たような物を持っておるだろう?」

「にゃあ、砂海の砂を使ったマナ変換炉は出力をあげるには大型化しないといけないのがネックにゃん」

 それと何かあって砂海の砂が外に漏れたら大惨事だ。魔力炉はその点、堅牢だ。

 魔力は余っているので単に欲しいだけであるが。人類を繁栄の絶頂に導きそして滅ぼした代物だ。実物を見てみたいにゃん。

「からくりのことは良くわからんが、魔獣の森の何処かに埋まっているはずじゃ」

「魔獣の森は広大にゃん、もうちょっとヒントを頂きたいにゃん」

 手を合わせてお願いのポーズ。

「ここよりはたぶん西側じゃな、それ以上はわらわも詳しくは知らん、すまんな」

「にゃあ、十分にゃん」

 東西南北のうち三つを除外できるのは大きい。

「西側の魔獣の森は全部頂きにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちも声を上げた。

「おおお!」

 天使スーラはソフトクリームを舐めて声を上げた。



 ○ケントルム王国 スタロニク州 カサドリ拠点 ブリーフィングルーム


「マジモノの大発生だけあって魔獣の侵入が止まらないにゃんね」

 ケントルムの南と北にある魔獣の森からの侵入が増加の一途だ。いずれも砂海の魔獣の集合体を目標としている。

 同時に魔獣の森の外で湧き出しているっぽいのが厄介だ。このままではケントルムの東半分に深刻な被害を出す。

「オレたちは魔獣の森側からもっと魔獣を始末するにゃん、このまま悠長に集合体が王都に到着するのを待っていてはマズいことになるにゃん」

 魔獣の大発生の真っ只中に取り残された人々が生き残るのはかなり難しい。現にアナトリ派の六つの領地は大発生から数日で人の住めない領域になった。

「魔獣の供給をストップさせるにゃんね」

「そうにゃん、何処からか湧き出す分は仕方ないにして何もしないよりはマシにゃん」

 既に手遅れの感も否めないが、オレたちも人手が足りない。今日、狩りまくった盗賊を使っても足りないのだ。

「とにかくやれることはやるにゃん!」

「「「にゃあ!」」」


 オレたちは追加の戦艦型と空母型のゴーレムの建造を再開した。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ 魔法大学 図書館


『にゃあ、オレにゃん』

「マコトか」

 オレは作業をしながら帝都エクシトマにいるミマ・キサラギに念話を入れた。

『いま、いいにゃん?』

 アナトリ王国とケントルム王国の時差は半日ちょっとと言ったところだ。

「ああ、問題ない、何だ」

 図書館にいるミマが本から顔を上げた。帝都エクシトマの魔法大学にある蔵書は記憶石板よりも紙の本が多い。

『ミマにちょっと聞きたいことがあるにゃん』

「遺跡か? ケントルムの遺跡ならそちらの専門家に相談した方がいいぞ。王都に行けるなら紹介するが」

『にゃあ、それは助かるにゃん、でもそれは後で頼むにゃん』

 ケントルムにもミマの同類がいるらしい。

「後で? 構わないが」

『今日聞きたいのは前世の事にゃん』

「前世?」

 ミマが首を傾げる。

『にゃあ、オレの近くにこの世界を作った神様がいたかもしれないにゃん』

 ミマに天使様から得た情報を簡単に説明した。

「七神がマコトの知り合いの可能性か? それもまたスゴい話だな」

『オレもそう思うにゃん』

「転生者が神様なら、実際に再会しないとわからないと思うぞ」

『にゃあ、そうにゃんね、少なくとも前世で神様に関係した人間はいなかったから、知り合いが神様だとしたらこっちに来てから神様になったにゃんね』

「天使様の情報でもさすがにそのままは信じられないけどな~」

『そうにゃんね、でも転生者が天使になった例もあるからまったく無いとは言えないにゃんよ』

 天使ミサ&クミ姉妹がそれだ。

「そうなんだが、世界を創生する神が元は日本で暮らしていた人間とか、私には想像が追いつかない」

『にゃあ、まったくにゃん』

「マコトの知り合いが神様になったとして、マコトに世界を救うとかの大役を押し付けそうな人間に心当たりはないのか?」

『ディーラーの支店長はありそうにゃんね、ただあのおっさんが神様になるビジョンは見えないにゃん』

「この世界の神は七柱の神だから、ひとりじゃなくて七人組のグループだったんじゃないのか?」

『七人組にゃん?』

 該当するグループは、ぱっと出てこない。クラスメートも部活もディーラーの新車セールスの班も人数が違う。むろん家族でもない。

「七人か、マコトも入っていたなら八人だな」

『にゃ、神様のグループにオレも入っているにゃん?』

 それこそ心当たりがない。

「世界を託すぐらいだから、かなり親しい人間だったんじゃないのか?」

『にゃあ、一理あるにゃん』

「いまは探しようのない神の正体より世界を救うことに全力を上げた方がいいんじゃないか?」

『オレが世界を救うとか、実感が沸かないにゃん』

「マコトに実感がなくても魔獣を狩れるのはお前たちだけなんだし、現状、神に託されたと考えて間違いないんじゃないか?」

 ミマはそう言った。



 ○ケントルム王国 スタロニク州 カサドリ拠点 地下大ホール


 深夜の地下大ホールにはスタロニク州内でとっ捕まえた二〇〇〇ちょっとの盗賊を詰めた箱が整然と並べられている。

 犯罪奴隷相当の盗賊を猫耳化の手順も最適化されて、ほぼ半日で魂の浄化が完了するまでになっていた。

 つぎ込める魔力が桁違いに大きくなったおかげで、もう一つ前世の罪までまっさらにするほどの勢いの地獄の業火で魂を焼き上げた。盗賊のおっさんの姿も消えてなくなり再構成される。


「にゃあ、これより新入りどもを叩き起こすにゃん!」


「「「にゃあ」」」

 猫耳たちが新入りの入った箱を消し去る。

 羊水が流れ出し、裸の猫耳たちが立ち上がった。汚れなきキラキラした瞳をしている。

「オレたちはお前らを歓迎するにゃん! これまでの罪を贖う為に全力を……」

「「「お館様にゃん!」」」

 訓示の途中で抱っこ会になだれ込んだ。

本年は誤字報告や感想などたいへんお世話になりました。

来年もよろしくお願い致します。

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