避難指示にゃん
○帝国暦 二七三〇年十二月〇五日
○ケントルム王国 アクィルス州 アクィルス拠点 大露天風呂
アクィルス拠点の横っちょにいつの間にか作られた大露天風呂で猫耳ゴーレムたちと抱っこ会の後の大入浴会で朝日を浴びている。
さっき目を覚ましたらでっかい露天風呂に入っていたのでちょっと焦った。何で猫耳ゴーレムがお風呂が好きなのかオレもわからない。最初にプリンキピウムの森の南エリアにある魔獣の森の飛び地で発見した最初の猫耳ゴーレムが持っていた本能的なモノなのだろう。
「猫耳ゴーレムは、もうほとんどピンクにゃんね」
『にゃあ、切り替えは順調に進んでいるにゃん』
オレを抱っこしているピンクの猫耳ゴーレムが答えた。
「いいことにゃん」
昨夜は雪が降っていたが、今朝は晴れ渡って朝日が眩しいぜ。
拠点の結界の外は氷点下。
ダイヤモンドダストがキラキラ光る。綺麗だが気温が低い証拠でもある。
気温以前に高濃度のマナもあるから、現状では人の生存は難しい場所だが、キラキラする白い風景はとても美しい。
「……」
おっ、朝っぱらから砂海の魔獣専用探査魔法を使っているヤツがいるにゃん。ケントルムの主席宮廷魔導師か。転生者並みに若い姿をキープしている筋金入りのマザコンだ。いろいろな意味でヤバいヤツだ。
○ケントルム王国 王都フリソス フリソス城 宮廷魔導師団 主席執務室
早朝、主席宮廷魔導師のモリス・クラプトンは西に向かって探査魔法を打った。目標は現在、砂海の魔獣の集合体が侵攻中のグルポ州だ。
「はぁ、……駄目か」
それから深いため息を吐く。
平民階級の市民の多くは勧告に従って既に避難していたが、貴族階級のほとんどが州都グラロスに残っている。
先日、モリスが直接、州都グラロスの城を訪問し退避を忠告したのだがやはり動かなかった。
「主席殿のご忠告感謝する、しかし我が州都の防御結界は王国でも最強、たかが魔獣ごときに遅れを取ることはない」
領主は薄笑いを浮かべて取り合わなかった。
州都グラロスの防御結界は、先々代の主席宮廷魔導師によって刻まれたケントルム王国でも最強と言われている代物だ。
「しかし、砂海の魔獣の集合体には既知の魔法では防ぐことはできません。現に探査魔法ですら効かないのはご存知かと」
モリスは城の魔導師を見た。五〇代の随分と恰幅のいい男だ。
「主席殿、探査魔法が通らなくとも我が領の防御結界を抜くことは不可能です。そんなことはあり得ない」
城の魔導師も取り合わなかった。
「わかりました」
説得は無駄と判断し次の領地に向かったのだが、やはり後味は良くなかった。
○ケントルム王国 アクィルス州 アクィルス拠点 大露天風呂
まあ、根っこは悪いヤツではないのはわかる。わかるにゃんよ。
○ケントルム王国 グルポ州 州都グラロス
グルポ州の州都グラロスの城壁門に白色の光が降り注いだ。
門を守っていた守備隊の隊員たちが一瞬で蒸発する。
光は城塞門を貫きそのまま市街地を焼く。
領主の居城にも白色の光が突き刺さり炎を吹き上げる。
ケントルム最強の防御結界はまったく効力を発することなく消え去った。
州都に残っていた人々は身分に分け隔てなく何が起こったか認識する間もなく燃え上がり、魂は天に還る前に砂海の魔獣の集合体に喰われた。
○ケントルム王国 王都フリソス フリソス城 宮廷魔導師団 主席執務室
「やっぱり駄目か」
モリスが椅子に仰け反って呟く。予想を覆すことはなかった。
「グラロスも落ちたか、砂海の魔獣の集合体が相手ではご自慢の防御結界も紙同然か」
ルミール・ボーリン上級宮廷魔導師も探査魔法を打っていた。
「あれは紙どころか完全に素通りだよ」
グルポ州の防御結界が効かないということは、国内のすべての防御結界が効かないことを意味する。
「まったく何なんだ、あの化け物は?」
ルミールも天を仰ぐ。
「砂海の魔獣は砂海から出たら脆弱化するんじゃなかったの?」
ルフィナ・ガーリン次席宮廷魔導師が大きな胸を持ち上げるように腕を組む。冒険者ギルドなら一発合格だ。
「それってシヌス公国の古文書だっけ? 正しいのそれ」
モリスがルミールを見る。
「確かに根拠はそれだが、まあ記載内容は概ね正しいはずだが集合体じゃないからな」
ルミールはタブレット型の魔導具で情報を確認する。
「集合体は別モノなんだね」
「だろうな、いまだに歩き続けているわけだし」
「確かに弱体化した感じはないわね、ヤバいままなわけね」
「そのぐらいテランス師だって承知しているだろ、上手くやるんじゃないか?」
心配するルフィナにルミールが適当に答える。
「いまのところ砂海の魔獣の集合体の熱線を確実に止められるのは、たぶんマコト公爵の魔法だけじゃない?」
モリスは自分の推察を口にした。
『正解!』
いきなり念話が入った。
「えっ、ママ!?」
ルミールとルフィナが声を上げたモリスを見た。
『もーママはヤメてよ、あたしは永遠の十五歳なんだから』
「はい?」
素で声が出るモリス。
『……なに、死にたいの?』
ナオのボソっとした念話がモリスの背筋を凍らせた。
「申し訳ございませんでした!」
「「……」」
机の上に飛び乗って土下座を決めるモリスにルミールとルフィナが固まった。
『やーね、冗談に決まってるじゃない~』
ナオが念話でケラケラ笑う。
「やはり無事だったんだね!」
『当たり前じゃない、あたしを誰だと思ってるの、戦略的な偽装? まあ、いまはネコちゃんのところに占領されちゃってるけどね』
「ネコちゃんって、マコト公爵のこと?」
『そうよ』
「もしかして、マコト公爵と以前から繋がってた?」
『念トモみたいな?』
「やっぱり」
『仕方ないじゃない、避難民が押し寄せて魔獣も迫ってるんだもん、ネコちゃんが助けてくれるっていうからお願いしちゃった』
「ボクに言ってくれればいいのに」
『あんたは助けるどころか、あたしのところに普通に攻めて来ようとしたじゃない? もーそんな子に育てた覚えはないのに』
「弱っているところを攻めるのは基本だって教えてくれたのはママだけど」
『いや、弱ってないし、危なかったわね、手加減できる状態じゃないから本当に攻めて来たら普通に燃やしてたよ』
「……」
ナオなら本当に焼き殺しかねないとモリスも思った。
「ボクは命拾いしたってことだね」
モリスは顔を引き攣らせながら応答する。
『そういうこと、いまはネコちゃんのところに占領されちゃっているからあれだけど、落ち着いたら王宮を焼きに行くから、巻き込まれないでね~』
「えっ、王宮を焼くの!?」
「「……!」」
モリスの声にルミールとルフィナがぎょっとする。
『当たり前じゃない、王宮のヤツらが北方連合一〇州のヤツらをけしかたんでしょ? お姉さんわかってるんだから』
「ボクは知らないけど」
主席宮廷魔導師だが、その手の話からはハブられている。
『あーでも、あたしが焼く前に砂海の魔獣の集合体に壊されちゃうか~』
「やっぱりそうなる?」
『当たり前じゃない、あんなの勝てるわけないでしょ? 対抗できるのはネコちゃんたちぐらいだよ』
「マコト公爵なら砂海の魔獣の集合体でも対抗できるんだ」
『本人は何が起こるかわからないから無理って言ってたけどね』
「何が起こるかわからない?」
『そう、単体の砂海の魔獣は倒せるけど集合体はまったく別物なんだって、それに人間の魂を吸い込んでるから大規模な禁忌呪法を打つかもって言ってたかな』
「大規模な禁忌呪法!?」
『禁忌呪法って、人間を大量に殺す魔法でしょ? いかにも打ちそうな顔をしてるもんね』
「それってマズくないの?」
『マズいけどどうしようもないんじゃない? 狙われているのは王都なんだからそっちでなんとかしなさい』
「無理いわないでよ」
『だったら、逃げたら? こっちでは受け入れられないけどね』
「えーなんで!?」
唇を尖らせるモリス。
『こっちはネコちゃんに占領されてるんだよ、宮廷魔導師なんて戦争奴隷にされちゃうよ』
「いくらマコト公爵でもボクを捕まえるなんてできるわけ……」
『にゃあ、できるにゃんよ、ただ主席殿にはそちらの一般市民の避難や保護をお願いしたいにゃん』
直接、接触するのは避けたかったが仕方がない。まあオレはヤツのママじゃないので実害は無いだろう。
「あなたがマコト公爵?」
『そうにゃん』
「念話に割り込めるなんてスゴいね」
『にゃあ、逆探知はしないほうがいいにゃんよ、自動的に反撃するからどうなっても知らないにゃん』
「……う、うん、わかった、それで一般市民の避難て?」
『具体的には城壁の外側、王都圏の避難がまだ間に合ってないにゃん、特に砂海の魔獣の集合体の射程圏内になる東側の人間は危険にゃん』
「王都圏か、自主的に避難したのは三割ってところかな」
『さっき見ての通り熱線が飛んで来た時は既に手遅れにゃん、現状だと王都圏と王都の東半分が魔導師の罠が上手く働いても壊滅するにゃんよ』
「情報は回っているはずなんだけど、そうだね、思っていた以上に避難できてないね」
『にゃあ、このままだと大きな被害が出るにゃん』
他領の平民は割と素早く逃げたが、王都圏は今日の食べ物も窮する貧民が多く動くに動けないのだろう。
「マコト公爵は何で敵国の国民を気に掛けるんだい?」
『国は関係ないにゃん、オレはたくさんの人の命を無駄にしたくないだけにゃん』
「敵対する人間でも?」
『それは些細な問題にゃん、本気で敵対するならそれはそれで改めて対応するにゃん』
「マコト公爵は子供なのに剛気だね」
『そっちの国王がちっちゃいだけにゃん、この国難に自分だけ地下に逃げるとか為政者の器じゃないにゃん』
「いや、それはマコト公爵が杭を打ち込んだりするからだよ」
『にゃあ、殺す気で呪いを打っておいて、軽く反撃されたら半べそで逃げるとか、あのおっさんなかなか笑えるにゃん』
「ぷっ」
思わず吹き出すモリス。
「おい主席! マコト公爵の声が城内に放送されているぞ!」
ルミールが声を上げた。
「えっ?」
○ケントルム王国 王都フリソス フリソス城 地下王宮
『にゃあ、ついでに国王ハムレット三世に警告するにゃん、お前も地下に籠もってないでさっさと王都圏の人間を避難させるにゃん』
オレの声は地下に隠れている国王にも声を届けた。
『それすら出来ないならさっさと退位するにゃん、王国はお前のオモチャじゃないにゃんよ』
国王がプルプル震えている。
未知の防御結界に守られているが、猫耳のマルがこっそり刻んだ刻印で外側から監視を続けている。
「おのれマコト」
「挑発には反応されない方がよろしいかと」
国王付きの魔導師が姿を現した。暗部の元締め次席宮廷魔導師テランス・デュランとは別の人間だが、その配下だ。
ケントルム王宮の宮廷魔導師は、主席モリス・クラプトンの率いる人畜無害の非戦闘系と暗殺でも何でもやる暗部の二系統にわかれている。
『どうしたにゃん、国王は穴に籠もったままにゃん? だったらオレが勝手に王宮の連中に指示するにゃんよ』
○ケントルム王国 王都フリソス 内務省 情報局 会議室
「今日もマコト公爵に乗っ取られてるのか?」
会議の最中に騒ぎ始めた通信の魔導具を見てブレーズ・ダヤン男爵は隣に座る秘書官のアニエス・ルメールに訊く。
「対策はしていたはずですが、まったく効果がなかったようですね」
テーブルの上でにゃあにゃあ言ってる通信の魔導具。
「完全に手玉に取られてるな」
『にゃあ、内務省の情報局の連中はよく聞くにゃん、お前らに王都圏内の避難を指揮する栄誉を与えるにゃん』
「「「……っ!」」」
会議室の全員が固まった。
『騎士団と配下の犯罪ギルドも使って直ぐに始めるにゃん、時間が無いからとにかく砂海の魔獣の集合体の射程圏内に入る人間を北か南に逃がすにゃん、西は進行方向だからヤメた方がいいにゃんね』
「公爵様は情報局を名指しかよ」
ブレーズ局長代理は渋い顔をする。
『にゃあ、局長代理はブレーズ・ダヤンだったにゃんね、職員全員の情報は暗部の魔導師のオツムから貰ったにゃん』
椅子からずっこけるブレーズ局長代理。
「マジか」
『諸君らのおかげで、オレたちは多大な迷惑を被ったにゃん、ここでも手を抜いたらひとり残らずとっ捕まえて拷問にゃん、にゃあ、オレたちは治癒魔法が得意にゃん、お前らならこの意味がわかるにゃんね?』
「「「……っ!」」」
情報局のオフィスもザワザワする。
『にゃあ、ひとりでもサボったら連帯責任にゃん、それと邪魔した人間も同様に処罰するにゃん』
押し黙る情報局員たち。
「どう思う、お前ら?」
ブレーズ局長代理が会議のメンバーに尋ねた。
「代理、こんなのハッタリに決まって……」
男が言葉の途中で素っ裸になってズルっと椅子から滑り落ちた。白目を剥いてヒクヒク痙攣している。
『ハッタリだと思うなら試してみればいいにゃん』
テーブルの上に子供の姿が現れた。
『にゃあ、お初にお目にかかるにゃん、オレがマコトにゃん、そっちがブレーズ・ダヤン局長代理にゃんね』
オレは幻体を内務省情報局の会議室に出現させた。
「幻体?」
さすがにブレーズ局長代理は直ぐにわかったらしい。
『そうにゃん』
「何故、マコト公爵がケントルムの民を?」
『にゃあ、この戦に庶民は関係ないにゃん、それ以前にオレは人が死ぬのを見るのが嫌にゃん』
ニマっと笑うオレ。
「……さ、左様でございますか」
『そうは言っても諸君らも手元不如意では動けないにゃんね、オレから資金を出すにゃん』
テーブルにドサドサっと大きな袋を三つばかり出す。ここの城の金庫からかっぱらったモノだけどな。
『諸君らの健闘を期待するにゃん、拷問されたくなかったらキビキビ働くにゃん』
幻体を消した。
「ま、マジかよ」
マコトが消えたところでブレーズ局長代理が緊張を解いて脱力する。
「代理、この袋の中、大金貨みたいですよ」
テーブルに残された袋を職員が確認した。
「随分と気前がいい子供だな」
「これで失敗したり、横領したら間違いなく拷問されますね」
アニエスは気を失ったままの職員を突っつく。
「しゃあない、直ぐに王都圏内に避難命令を出せ、逃げないヤツは放っておけ、逃げる者にはルートと安全を確保しろ」
「敵国の公爵の言いなりに動いてよろしいのですか?」
アニエスが訊く。
「自国民の安全を図るのは利敵行為には当たらんだろ、それに誰も俺たちを守ってくれないぞ」
○ケントルム王国 アクィルス州 上空 戦艦型ゴーレム 艦橋
「にゃあ、魔獣の状況はどうにゃん?」
露天風呂でホカホカになったオレはさっき建造した戦艦型ゴーレムに移動して艦長席から猫耳たちに声を掛けた。
「占領した領地内はオートマタと猫耳ゴーレムが狩り進めているにゃん」
「戦艦型ゴーレムと空母型ゴーレムは魔獣の森の縁に展開しているけど間に合ってないにゃん」
「にゃあ、魔獣の森からはいまも侵入が続いているにゃん」
モニター中の猫耳たちが答えた。
「まだ魔獣の森からあふれているにゃんね?」
「「「にゃあ」」」
魔獣の大発生はいまだに継続中か。
「オレたちも見積もりが甘かったにゃん」
砂海の砂の領域を消せば収まると思っていたのだが現実は違っていた。いまも魔獣の大発生は継続中だ。
「魔獣の森の魔獣を減らさないことには、どうしようもないにゃんね」
流入が止まらない。
「にゃあ、このままだと甘く見積もっても国の半分が沈むにゃん」
アナトリでの魔獣の大発生は、初期段階で潰せたからここまで酷いことにはならずに済んだのだろう。
『お館様、砂海の魔獣の集合体の撒き散らす魔力が関係しているのと違うにゃん?』
研究拠点からも意見が出る。
「にゃあ、帝都エクシトマの消滅の刻印ほどではないにしろかなりの魔力を垂れ流しているにゃん」
村や街を焼き払う熱線がほとんど魔力といっていい。
帝都エクシトマは魔獣を集めても結局、国の半分を持っていかれた。
「砂海の魔獣の集合体はヤバ過ぎにゃん」
「そうにゃんね」
猫耳もオレも砂海の魔獣の集合体はヤバさはヒシヒシと感じる。とくにこっちに来てからはヤツの気配を直に感じ取って尻尾がブワっとするぜ。
「マジであれは危ないにゃんね、これから何をするかわからないのもヤバいにゃん」
「魂を喰っている辺り魔獣と言うより兵器に近い感じにゃん」
「存在が既に禁忌呪法にゃん」
「お館様、封印図書館だとアレは第三階層クラスにゃん?」
第三階層は九人の魔女の首に記憶されてる人の世を滅ぼす禁呪だ。
「見た感じ第三階層の禁呪を使うにはまだ魔力が足らないにゃん、むしろ砂海の魔獣の集合体を第二階層の禁呪と見た方がいい感じにゃん」
第二階層の禁呪は国を滅ぼす禁呪だ。現状ならまんまこれだろう。
第三階層の禁呪はいまオレの持っている砂海の砂を全部突っ込んでも起動どころか魔法式の構築すらできない。
例えばブラックホールの作り方はわかるが、それを現実に作るとなると話が違ってくるみたいなものだ。
「お館様、ヤツが禁忌呪法を使ったとして、何処までの範囲が影響を受けるか予想が付かないにゃんね」
「にゃあ、それがいちばんの問題にゃん」
「「「にゃあ」」」
猫耳たちも同意する。
「お館様、こっちから集合体に先制攻撃しないにゃん?」
「考えたけど何が起こるかわからない現状では危険にゃん、ヤツが禁忌呪法を一発打ってからじゃないと手は出せないにゃん」
本当に何が起こるかわからない以上、近付かないのが無難だ。
人型魔獣にしたってミンクがいなかったらヤバかったし。運任せは危険だ。冷たいようだがオレたちにとってここは命を懸けてまで守るべき場所ではない。
「ケントルムの秘密兵器もまだ詳細不明にゃんね」
封印の魔神とやらだ。
「現在も地下王宮を護る未知の魔法と一緒に調査中にゃん」
オリエーンス連邦滅亡からオリエーンス帝国が誕生する間に成立した現代魔法とは別系統の魔法だ。暗部の一部のみに秘伝として伝えられた禁呪特化の魔法っぽい。
「ケントルムの国王がやる気だからまずは任せるにゃん、それで両方の手の内がわかるにゃん」
国王がやる気なのは集合体じゃなくてオレたちだが、暗部の罠が集合体に効かなかった場合、魔神の封印を解かざるを得まい。
たぶん集合体も王都圏で第二階層の禁呪もしくはそれに類するものを行使する。もしヤツが第三階層の禁呪を使えるならわざわざ王都を目指さなくてもいいはずだし。
「お館様、そうは言っても人型魔獣っぽい封印の魔神をそのまま使わせるのも危険と違うにゃん?」
「悩ましいところにゃんね」
砂海の魔獣の集合体VS封印の魔神のカードをそのままやらせるのは、それはそれで危険か。
煽り耐性の低いあの国王だと国ごと自爆とかやりかねないか。主にオレのせいだけど。
「小細工は必要にゃんね」
「「「にゃあ」」」
猫耳たちも同意した。




