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ケントルム産の猫耳にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年十一月二七日


「にゃふ~良く寝たにゃん」

 オレは布団を跳ね上げて身体を起こした。そしていつもの寝間着のロンTからセーラー服に着替える。早変わりみたいなものだが。

『……』

 オレの乗ってる魔法蟻が口をカチカチさせる。

「おはようにゃん」

 昨夜は第二陣の猫耳たちと交代して魔法蟻の背中に布団を敷いて寝た。魔獣の森と砂海の秘密を考察しようと思ったが、直ぐに眠ってしまった。

「魔法蟻の背中は快適だったにゃんよ」

 魔法蟻を撫でる。

『……』

 魔法蟻が口をカチカチさせる。「どういたしまして」と言ってるみたいだ。

 隔壁とその向こう側の砂と魔獣を処理しながら進んでいるが、これでもたぶんタルス一族の鉄道馬車よりずっと速いと思われる。

「にゃあ、タルス一族の鉄道馬車ってデカいけど大して速くなかったみたいにゃんね」

 普通の乗合馬車と変わらない速度で走っていたのではないだろうか? しかもオレたちと違って休憩しながら進む。

 そこは悪評高いタルス一族だけあって、宿泊所もすこぶる評判が悪かったみたいだ。庶民階級だとかなり厳しい旅だったらしい。

 滅んでも多くの人間からザマーミロと思われているだけはある。

 隣を走る魔法蟻の上でもチーコも目を覚ました。布団は敷いてない。毛布一枚だ。

「にゃあ、この速度なら二週間とかからないでケントルムに到着しそうにゃんね」

「後はタルス一族の街にある仕掛け次第にゃん」

「そうにゃんね、トンネル内の砂を出す仕掛けを潰さないと危なくて使えたものじゃないにゃん」

「砂を出す仕掛けが生きているなら止めるのも生きてるはずにゃん、例えぶっ壊れていてもお館様なら簡単に止められるにゃん」

「使えなかったら、砂を全部固めるまでにゃん」

「にゃあ、流石お館様にゃん」


「お館様、ケントルム産の猫耳の調整が終わったにゃん」

 先に起きていたアルが報告する。

「にゃあ、お疲れ様にゃん」

「新入りは、お館様の声で目を覚ますにゃん」

「了解にゃん」

 オレはケントルム王国最初の拠点パイアソ州の地下拠点にいる猫耳ゴーレムたちと視覚を共有した。



 ○ケントルム王国 パイアソ州 地下拠点 大ホール


 パイアソ州はナオのいるアドウェント州の東に位置し、アナトリ派六州の中で最も南に位置する領地だ。こちらも先日の砂海の砂と魔獣の大発生で壊滅しマナの濃度からしても現在の生存者は皆無と思われる。少なくとも猫耳ゴーレムを介して打った探査魔法に反応は無かった。

 利便性を考えてまずはアドウェント州の境界に近い場所の地下深くに先発隊の猫耳ゴーレムたちがケントルム最初の拠点を作り上げている。


『にゃあ、始めるにゃん』

 東京ドーム一個分の空間にオレの声が響く。

『『『ニャア!』』』

 地下拠点の大ホールに三〇〇ちょっとの箱が整然と並べられている。箱の中身は魂を煉獄の炎で焼き上げた元盗賊たち。

 そしてオレの声と姿は魔導具を使った立体映像だ。

『お前ら、起きるにゃん!』

 箱を消すと羊水が流れ裸の猫耳たちが目を覚まして身体を起こす。

「「「にゃあ、お館様にゃん」」」

 いつもの様に猫耳たちに盗賊だった頃の面影は無い。

『まずは、服を着るにゃん』

『『『にゃあ』』』

 いそいそとツナギの作業服に似た服に袖を通す猫耳たち。

 それから、またぞろぞろと集まって来る。

「「「みゃあ、お館様を抱っこ出来ないにゃん」」」

 オレの姿が立体映像と知って落胆する猫耳たち。

『オレはいまケントルムに向かってる最中にゃん、だからお前らは自分の仕事を始めるにゃん』

「「「にゃあ、盗賊どもを片っ端から捕まえるにゃん!」」」

『オレたちが到着するまで準備を頼むにゃん!』

「「「にゃあ、了解にゃん」」」

 新入りたちは声を揃えた。



 ○ケントルム王国 アドウェント州 ローゼ村 薔薇園の館 執務室


「おはようクロエ、さっきネコちゃんから連絡が有ったけど、先発隊が到着したらしいよ」

 執務室にやって来たナオがクロエに告げた。

「先発隊ですか?」

「何でも盗賊の魂を触媒にして召喚したんだとか」

「禁忌呪法ですか?」

「似てるけど違うそうよ、盗賊を使ってるからノーカンなんだって」

「はあ」

「今日、挨拶に来るそうだから、またオレリアが変なことをしないように注意しといてね」

「かしこまりました」



 ○グランキエ大トンネル


「ここからピンクの猫耳ゴーレムを実戦投入するにゃん」

『『『にゃあ、ウチらはいつでも行けるにゃん』』』

 魔法蟻に乗ったピンクの猫耳ゴーレムたちが前に出た。

「にゃあ、トンネルを壊さなければ何でもいいにゃん、ただし砂の処理も忘れちゃ駄目にゃんよ」

『『『にゃあ!』』』


 前に出たピンクの猫耳ゴーレムが擁壁と砂を消し一斉に熱線を放った。

 更にもう一つ向こうの隔壁と砂海の魔獣も一緒に消し飛んだ。

 同時に砂と自己格納中の魔獣もエーテル機関を奪われ処理される。ちゃんと砂の吐出口も塞がれていた。

「にゃあ、いきなり区画を二つもブチ抜くとはなかなかやるにゃん」

 おかげで隊列の速度が上がった。



 ○ケントルム王国 アドウェント州 ローゼ村 境界門


 ローゼ村の境界門前に猫耳たちが乗ったジープが停まった。

「にゃあ、村の境界にまで本格的な境界門があるにゃんね」

「結界がフリーパスにゃん」

「お館様が、話を通していてくれたにゃん」

 乗っている猫耳は、元ナリュート団の首領のガエルだったガルとリュカとドニの三人だ。ちなみにリュカとドニの名前はそのままだ。

「お嬢さんたちが、マコト公爵のところの人かい?」

 ジープが門を通り抜けたところで声を掛けられた。ラフな格好をした無精髭の男だ。それでいて立派な魔法馬に乗っている。

「そうにゃん、薔薇園のクロード・デュクロ騎士団総長がお出迎えしてくれるとは思わなかったにゃん」

「ほう、俺のことを知ってるのか?」

 感心するクロード。

「にゃあ、猫耳ゴーレムから聞いてるにゃん」

 それとガエルだった頃にかなり遠くからだが見たことがあった。

「そうか、だったら知ってるだろうが、お嬢さんたちまでまたバカどもに絡まれたらたまらんからな」

 クロードは肩をすくめる。

「にゃあ、そう何度もあるにゃん?」

「無いと思いたいけどな」

 そう言ったところでクロードは後ろを見た。

「魔法車とは面妖な! 貴様ら何者だ!」

 騎士を引き連れた女騎士だ。

「おい、オレリアお前、今朝の俺の話を聞いて無かったのか?」

 クロードは額を押さえた。

「総長、今朝の話ってなんですか?」

 オレリアは首を傾げる。

「にゃあ、ウチらはマコト・アマノ公爵様の名代にゃん」

「マコト・アマノ公爵様?」

 また首を傾げるオレリア。

「おい、お前らこいつを詰め所にでも閉じ込めとけ」

「「「はっ!」」」

 クロードの命を受けて騎士たちはオレリアを連れ去った。



 ○ケントルム王国 アドウェント州 ローゼ村 薔薇園の館 前


「いらっしゃい」

 猫耳たちをナオ自身が出迎えた。

「にゃあ、はじめましてにゃん、ウチらはガルとリュカとドニにゃん」

「うん、間違いなくネコちゃんのところの子だね」

「「「にゃあ」」」



 ○ケントルム王国 アドウェント州 ローゼ村 薔薇園の館 執務室


「それで、今後のことなんだけど」

 ナオが切り出した。

「何か問題があるにゃん?」

「近々、ここに宮廷魔導師団が攻めてくるみたいなの」

「ローゼ村に攻めて来るにゃん?」

「村というかこの薔薇園だけどな、既にあちらさんは出兵の準備に入ったらしい」

 クロードが補足した。

「お館様のことがバレたにゃん?」

「ネコちゃんのことは漏れてないよ、今回の混乱に乗じて主席宮廷魔導師がこれまでの不始末をチャラにしようとしてるってところかな?」

 ナオが説明する。

「にゃあ、この非常時に辺境の村を襲う方が不始末と違うにゃん?」

 首を傾げつつガルが問う。

 ナオとクロードが猫耳たち三人の前世を知ったらきっと目を剥いただろう。

「普通はそうなんだけどね、それだけアナトリ派の領地が手を付けられない状態なんじゃない?」

「そうにゃんね、砂海の砂が思いの外、領域を拡げてるにゃん」

「それと砂海の魔獣が軽く一〇〇〇体を越えてるみたいにゃんね」

「マナの濃度も上がりまくってるにゃん、アナトリ派の領地に隣接している領地もここ以外は酷いことになっているにゃん」

「うん、隣接している領地で生き残ってるのは、ここだけみたいだね」

 アナトリ派六州の西に隣接する州のうち魔獣の被害を免れたのは、ローゼ村のあるアドウェント州だけだ。

 アナトリ派六州の北と東と南の三方は魔獣の森に連なる森になっている。故に魔獣の大発生が簡単に起こったとも言えた。

「ネコちゃんが教えてくれた情報のおかげで何とかなってる感じね」

「それは何よりにゃん」

「それで宮廷魔導師団はどうして薔薇園に攻めて来るにゃん?」

「薔薇園の魔女は、まだ王宮と対立しているにゃん?」

 ナオが昔、王宮を焼いたことはその筋には広く伝わっていた。

「まさか、あたしはおとなしくしてるよ」

「まあ、最近はそうですね」

 クロードが頷く。

「にゃあ、すると狙いはローゼ遺跡にゃん?」

 ローゼ村のローゼ遺跡もその筋では有名だ。結界がキツく誰も発掘出来ていないことから、相当なお宝があるのではと噂されている。

「たぶんね」

「ちょうどこの真下に埋まってるにゃんね」

 ドニが床を指差した。

「わかるの?」

「にゃあ、これだけ濃いマナなら探査魔法を打たなくてもわかるにゃん」

「でも、遺跡にしては小さいにゃんね」

「へえ、そこまでわかっちゃうんだ」

 ナオは面白そうな笑みを浮かべた。クロエは表情を変えることなく観察を続ける。

「にゃあ、いいところこのぐらいにゃん」

 一メートルほど手を拡げる。

「やっぱりそのぐらいだったか」

 ナオが頷いた。

「これはたぶん、マナ生成炉の一種にゃんね」

「マナ生成炉?」

「にゃあ、マナ生成プラントのもう一段上のモノにゃん、封印されて無かったらこの辺りも魔獣の森だったにゃんね」

「そんなモノがあるの?」

「あるにゃんよ、現に格納できたにゃん」

 ドニが地下に埋まっていたマナ生成炉とそれを封印した箱を格納した。

「えっ? あっ、本当に消えてる」

 ナオは直ぐに変化に気付いた。

「マジですね」

 クロードも感じ取った。

「欲しいにゃん?」

 ガルが尋ねる。ドニも取り出そうとする。

「い、要らない、あげるから持って帰って」

 ナオが即答した。

「にゃあ、わかったにゃん」

 ローゼ遺跡の正体だったマナ生成炉一式をそのまま研究拠点に送った。

「これで、モリスが攻めて来てもマナが漏れることがなくなったわね、良かった良かった」

「ヤツの一発逆転もなくなりましたね」

 クロードも頷く。

「モリスには悪いけど、自分たちの不始末は自分でどうにかして貰うしかないわね」

「にゃあ、攻めて来る宮廷魔導師は、ウチらが始末してもいいにゃんよ」

「そこまで猫耳ちゃんたちに甘えるわけにはいかないから、あたしから話してみるわ」

「了解にゃん、危ない時は助太刀するにゃん」

「お願いね」

「「「にゃあ」」」



 ○ケントルム王国 ヴォーリャ州 中央部 州都防衛砦


 ヴォーリャ州はアナトリ派領地ストーロジ州の西に隣接した領地だ。ナオのいるアドウェント州からは先日ナリュート団を捕獲したトリフォリウム州を挟んで北に位置する。

 こちらも隣接するストーロジ州からの魔獣の侵入によって州都が蹂躙され州政府は統治能力を失っていた。

 要は先日までナリュート団が幅を利かせていたトリフォリウム州とほぼ同じ状況だ。


 獲物を追ってヴォーリャ州に入り込んだエフォドス団は、街道沿いに有る放棄された州都防衛用の砦を仮の拠点とし、捕獲した獲物を飼っている。その業界筋でもエフォドス団は男女問わず性的に襲うことで恐れられていた。

 州都の境界門を兼ねる巨大な砦からは、いまも奥から悲鳴やすすり泣く声が通気口を通って幽かに響いている。


「おい、何だあれは?」

 エフォドス団の団長エンゾは、見張りからの報告に城壁の銃眼から遠見の魔導具を使って声を上げた。

「魔法車じゃないですか?」

 副団長のレジスは、魔導具を使わずに銃眼から目を凝らす。

 ピンク色の魔法車が街道を州都の境界門に向かって走って来る。

「魔法車とは、この状況の中、随分と優雅なことだな」

 魔法車はケントルムでも金持ちの道楽という扱いだ。

「州都が壊滅したことを知らんのでしょう」

「団長、若い女が四人乗ってるぜ」

 新入りだが幹部待遇の大男ロジェが舌舐めずりする。

 団長エンゾは貴族出身で元騎士団員、副団長のレジスは平民の出だがこちらも元騎士団員だ。いずれも女絡みの不祥事で団を追放されていた。

 新入りのロジェに至っては現在も現役だ。仕官したヴォーリャの領主一族と騎士団員の大半がまとめて天に還った為、守備隊の兵士たちを引き連れかねてから繋がりのあったエフォドス団に正式加入した。

「魔法車に女か、こんな場所に迷い込むとは運が無い」

 エンゾはニヤリとする。貴族と吹聴しているが祖父が騎士伯の三男だったというだけで自身が貴族階級だったことはない。

「揃って上玉ですね」

 レジスは改めて魔法車に乗る女たちを確認した。

「なあ団長、やっちまってもいいだろう?」

「殺すなよ、壊すのも駄目だ」

「あれなら高く売れるから傷は付けるな」

「丁重に扱うから安心してくれ」

 ロジェが立ち上がりゲスな笑みを浮かべた。



 ○ケントルム王国 ヴォーリャ州 中央部 州都防衛砦


「にゃあ、州都の境界門がぶっ壊れてるにゃんね」

「エフォドス団が二〇〇ちょっとで捕まってる人が一〇〇ってところにゃん」

「捨てられた死体が三〇〇にゃん」

「相変わらずエグいにゃんね」

 ジープを格納した四人の猫耳たちは、半壊している境界門と砦を見上げた。

『城壁は石じゃないにゃんね?』

 オレは念話と同時に視覚を同調させる。

「「「にゃあ! お館様にゃん!」」」

『にゃあ』


 猫耳たちはオレからの念話に驚いてしっぽと耳をピンとさせた。


「にゃあ、城壁はレンガにゃん」

『レンガにゃん?』

 オレの知ってるレンガよりもコンクリートに近い質感だ。

「お館様の知ってるレンガと違って魔法で作るにゃん」

「現場で作るにゃん」

「にゃあ、本当はこんなに簡単に壊れるものじゃないにゃんよ」

 荘厳な佇まいだった境界門の半分が無残に崩れ去っている。

『ぶっ壊したのは魔獣にゃんね』

 魔法ではなく物理的な衝突で破壊されていた。

「魔獣避けの結界も数が来られるとまったく駄目にゃんね」

『にゃあ、この程度の魔獣避けは大発生でラリった魔獣にはあまり効かないにゃん』

 境界門に刻まれた魔獣避けの結界はお世辞にも上等とは言えなかった。

「もっと西に行ったのが何体かいるみたいにゃんね」

 いまいる境界門は州都の西に近い。州都に入った跡と州都から出た痕跡があった。

「にゃあ、トリフォリウム州と同じく今は追えないにゃん」

「派手に動けないのが辛いところにゃん」

『にゃあ、いまの人数ではとてもじゃないけど手が回らないにゃん、それにケントルムの人からしたらオレたちは敵にゃん』

「いま下手に動いたらパニックを煽るだけにゃんね」

『そういうことにゃん』

「魔獣もそんなに突っ込んでは途中で力尽きるにゃん」

「近いうちに魔獣の森の飛び地が出来るにゃんね」

「魔獣が暴れるよりは被害は少ないにゃん」

「比較すればそうにゃんね」

『にゃあ、盗賊連中がお出ましにゃんよ』

 オレと猫耳たちがにゃあにゃあやってるうちに砦から一〇人ほどの男たちが出てきた。

「よう、お嬢さんたち、検問だ」

 大男が前に出た。老けているけど二〇代中盤といったところか。前髪パッツンだ。オレとしてはモヒカンをオススメしたい。

「にゃあ、ヴォーリャではいつから盗賊が検問をやるようになったにゃん?」

「盗賊とはご挨拶だな、俺は騎士だぜ」

「盗賊風情が、騎士の扮装とは笑えるにゃん」

 猫耳たちに話し掛けた大男はヴォーリャの騎士服を着ていた。その他の九人は諸侯軍の兵士の格好をしている。

「おいおい、俺は本物だぜ」

 大男は肩をすくめた。

「騎士のまま盗賊も兼業とは恐れ入ったにゃん」

「「「にゃあ」」」

「ほう、まったく世間知らずのお嬢さんって訳でもない様だな」

 大男は剣ではなく棍棒を格納空間から取り出した。オーガのモノと比べると足元にも及ばないが人間にしては十分デカい。

「格納の魔法ぐらいは使えるにゃんね」

「まあな、こいつは傷を付けずに捕まえるのは難しそうだ」

 棍棒を担ぎ上げた。

『始末していいにゃんよ』

「「「にゃあ」」」

 オレの許可を得た猫耳たちは躊躇せずに電撃を放った。



 ○ケントルム王国 ヴォーリャ州 中央部 州都防衛砦


「ずいぶんと静かだな」

 エンゾは、周囲が静寂に包まれていることに気付いた。

「団長、ロジェのヤツ、やらかしたんじゃないですか?」

 副団長のレジスが言う。

「その時は教育してやれ」

「了解です」

 そろそろ一度〆る時期というわけだ。

「にゃあ、教育はお前らにこそ必要にゃん」

「「……っ!」」

 エンゾとレジスがビクッとして首を向ける。声を掛けられるまでまったく気付いてなかった。

 今度は猫耳たちが二人を挟み撃ちにしていた。

「にゃあ、こいつらがエフォドス団のエンゾとレジスにゃんね」

「間違いないにゃん」

 猫耳たちは二人の姿を共通の記憶と照らし合わせて確認した。

「お前ら」

「何者だ?」

「「「お館様の忠実な部下にゃん」」」

 とりあえず顔の形が変わるぐらいボコボコにしてから箱に仕舞った。


『助け出した人たちはナオのいるローゼ村で保護して貰うといいにゃん、ただし犯罪奴隷相当の悪党は箱詰めにゃん』

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちとあとから魔法蟻のトンネル経由で来た猫耳ゴーレムが作業を開始した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 色んな州が出てきて、場所がわからなくなってきました!地図が欲しい…
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