砂海の砂の研究にゃん
○帝国暦 二七三〇年十一月十九日
○グランキエ州 州都パゴス グランキエ大トンネル 物理障壁 屋上
「にゃあ~お疲れにゃん」
一番手前の物理障壁の上から猫耳たちにねぎらいの声を掛けた。
「「「にゃあ」」」
猫耳たちを動員してまる一日掛けてトンネル前の防衛陣地が完成させた。とにかくトンネル前の広場を拡張して深さ六〇〇メートルほどのどデカい大穴を掘った。
それを高さ一六〇メートルの物理障壁で丸く囲んでいる。それが全部で一〇層。上空から見るとハニカム構造で繋がっているのが見える。
かつての州都パゴスから以前の面影が消え、まるごと物理障壁になった。それほど大きな街じゃないから仕方ないにゃんね。
これだけやれば、砂海の砂が再度流出してもいきなり飛び散ることはないと思いたい。
いまだにトンネルから砂の流出が止まっていないが、全部格納しているので、大穴には蓋がしてある。穴は格納できない砂が出た場合に備えた緊急避難用だ。
「にゃあ、砂がいまだに止まらないのはウザいにゃんね」
オレは腕を組んで物理障壁の上から口を開けたトンネルを見る。入口に自動的に砂を格納する刻印が働いているので砂は見えるがこっちには漏れない。
砂はトンネルから人工的に出されていることが奥まで消した時に判明している。
トンネルを五キロほど潜った場所に壁が出来ていて、その手前に開いた数カ所の吐出口から砂が滝の勢いで流れ出していた。トンネルの真ん中あたりにあるタルス一族の街で底が抜けたにしては、それでこちらで砂が吹き出すタイミングが早かったわけだ。
単にトンネルの天井が崩壊して砂が流れ出したのではなく、敵を一掃する為に人口的に砂を出しているのは間違い無さそうだ。内部を効率的に砂で満たすように作られているっぽい。
単に入口を塞いだら変なところから吹き出すぐらいの嫌がらせは装備してそうだ。
グランキエ大トンネルを統括するシステムが何処かにあるはずなのだが、やっぱりタルス一族の街だろうか?
このトンネルは図書館情報体にも記載があったのだが詳細な記載はなく、オリエーンス連邦時代の軍事施設だったのではないかと推察される。軍事施設だからこそ有事の際の砂を出す仕組みが作られていたのではないだろうか。
タルス一族にしても正式な管理者というより勝手に棲み着いて実効支配していたんじゃないかと思う。もし正式な管理者ならトンネル全体に砂を出さなくても侵攻軍の排除ができたはずだ。敵の頭の上にほんの少し落としてやればいいわけだから。
砂海の砂に関しては、研究拠点の調査で簡単に魔力が取れることがわかった。しかも軽く三型マナ変換炉を超えるとんでもない量を取り出せる。
砂を使えば魔力炉並の魔力を出せそうなのだが、オレたちじゃないと使えないのが最大の欠点だ。
まず大量の砂海の砂を格納空間に仕舞うのが第一の関門で、そこから魔力を取り出すのが第二の関門といったところか。
いずれにしろオレと猫耳以外は無理な代物だ。
「こんなに魔力が有っても、ウチらには使い所が無いにゃん」
「そうにゃんね」
さっきも乗員の猫耳ゴーレム付きで戦艦型ゴーレムと空母型ゴーレムを一〇艦ずつ建造して周囲の警戒に当たらせている。
艦長席に座る方が時間が掛かったぐらいの建造時間だったが。
「にゃあ、後はカンケル州の魔の森とプリンキピウム遺跡にでも流し込むしかないにゃんね、後はディオニシスにでも流してやると喜びそうにゃん」
「あら、あたしにはくれないの?」
いきなりタマモ姉に抱き上げられた。
「にゃあ、タマモ姉も来たにゃんね」
やはり何処から見ても美人の狐耳&尻尾付きの女医さんだ。
「だって、砂海の砂とか面白いことをやってるんだもん、見に来ないわけにはいかないじゃない?」
「タマモ姉に魔力を送り込んで大丈夫にゃん?」
魔法的に人間の魔力を回復させるには治癒魔法を使う。直に魔力を流し込んでもチャージどころか量によってはショック死する。
「あたしは人間じゃないから問題ないよ、魔力ならいくらでも吸い込んじゃうから、天使様に貰ったこともあるし」
中身が幻獣なら大丈夫か。
「にゃあ、わかったにゃん、あげるにゃん」
タマモ姉と手を繋いで魔力を送る。無論いきなり大量に送って身体が消し飛んだらヤバいので常識の範囲内に留める。
「全然、大丈夫だよ」
ウインクするタマモ姉。
「にゃあ、だったら魔力を引き上げるにゃん」
徐々に送り込む魔力を増す。
繋いだ手から光があふれ出る。
「まだ大丈夫にゃん?」
「問題ないよ」
「にゃあ、だったらもっと送り込むにゃん」
魔力を更に増やす。猫耳ゴーレムから戦艦型ゴーレムの建造する量と段階的に引き上げたがタマモ姉はしっかり吸収した。
「本当に大丈夫にゃんね」
「どんどん頂戴♪」
「にゃあ」
戦艦型ゴーレムを一〇〇艦分を越えて数えるのも面倒くさくなったところで、魔力の譲渡が一旦終了した。
タマモ姉の髪が金色に輝き尻尾が九つに別れた。しかも赤い袴の巫女さんの衣装だ。これはレオナルド・ダ・クマゴロウことサクラの仕業にゃんね。
「やっぱりそうなるにゃん」
「うん、これまでの作り物の身体から本当の身体になったところかな」
尻尾の多いエロい巫女さんになった。
「デザインはサクラにゃんね」
「そう、魔力が行き渡った時の為の姿も用意してくれてたんだよね」
自分の姿を眺める。
サクラは普通の転生者ではなさそうだ。まあ、普通の転生者というのには会ったことがないけどな。
「でも、この姿は目立ち過ぎちゃうか」
髪の輝きが収まる。九本の尻尾も一本にまとまり元の女医さんの姿に戻った。
「魔力をくれたお礼に砂海の砂について教えてあげるね」
「砂海の砂にゃん?」
「そう」
タマモ姉がオレを持ち上げて額をくっつけた。
「にゃあ」
タマモ姉が砂海の砂の情報を渡してくれた。
簡単に言えば、砂海の砂はその一粒一粒が極小のマナ変換炉の集まりだ。その一粒で天使様のくれた三型に迫る性能を持っているとか、何の為に作ったやら。
しかもこの砂は単体でオレたちの知らない腐食系の防御結界を持っていた。そりゃ何でも溶かすか。こいつはトンネルの壁の材質をコピーして暫定的に対策してあるが、タマモ姉の情報で根本的な解決が出来そうだ。
「にゃあ、基本がマナ変換炉だけあって魔力を取り出すのが簡単っだったにゃんね」
「いや、砂海の砂から簡単に魔力を取り出せるのはネコちゃんたちだけだから」
「タマモ姉はどうにゃん?」
「あたしも無理、だいたい砂海の砂に近づこうなんて思わないから」
「にゃあ、オレたちだってそうにゃん、今回も好きで近付いたわけじゃないにゃん」
「それもそうか」
「タマモ姉は、砂海の砂の情報なんて何処で仕入れたにゃん?」
「確か、東方監視者の天使様だったはず」
「東方監視者の天使様もこの辺りにいたにゃん?」
「ううん、会ったのは東方大陸だよ、あっちにいたこともあるから、というか、あたしを作ったのが天使様だから」
「タマモ姉は天使様の娘だったにゃんね」
「娘というか、作品かな? 天使に子供を作るって概念がないから」
「そうものにゃんね」
砂海の砂は、タマモ姉の情報で一気に解明が進んだ。防御結界と物理障壁の強化と砂の格納の効率化を図った。ついでに砂を利用した四型マナ変換炉の制作も始まった。モノがモノだけに何に使うかは要検討だ。
○グランキエ州 州都パゴス グランキエ大トンネル 物理障壁 屋上庭園
物理障壁の上を有り余る魔力を使って空中庭園化した。露天風呂とペントハウスは外せないにゃんね。ガーデンパーティーの準備も万端だ。
「凄いのを作ったね」
「凄く大きいの」
「ふむ」
リーリにミンクそして天使アルマを呼んで物理障壁だのなんだの見て貰った。
「美味しい!」
タマモ姉は、さっき露天風呂に入っていまは恐鳥の唐揚げを頬張っている。
「天使様的には砂海の砂が地上に流れ出すのは問題にゃん?」
天使アルマに砂海の砂の件を確認する為に降臨願った。
「問題と言えば問題だが、人間がやったことなら仕方あるまい」
「介入はしないにゃんね」
「人の為すことに基本、干渉しない」
「にゃあ、了解にゃん、砂海の砂も人間が作ったモノだったにゃんね」
「そう聞いている、砂海に関しては我も詳しくは知らぬ」
「にゃあ、参考になったにゃん」
もしかしたら天使アルマよりも砂海の方が古いのかも。
「リーリたちは砂海に行ったことはあるにゃん?」
「あたしは無いよ」
「ミンクも用事のないところは行かないの」
リーリとミンクは揃って首を横に振った。
「確かに魔獣の森以上に用事は無さそうにゃん」
「うん、妖精は誰も行かないと思うよ」
「にゃあ、オレたちも近付きたくは無かったにゃん、今回はあっちから来たにゃん」
「普通なかなか来ないけどね」
「そうなの、来ないの」
「オレもそう思うにゃん」
リーリとミンクそして天使アルマをガーデンパーティー会場に案内した。こっちを見せびらかすのがもうひとつの目的だったりする。
「マコト、この駅弁て美味しいね」
「釜飯も美味しいの」
「寿司弁当も美味しい」
妖精たちと天使様が食べているのは駅弁各種だ。
「にゃあ、駅弁は猫耳たちが魔力をどっさり使って頑張ったにゃん、お蕎麦も美味しいにゃんよ」
グランキエ大トンネルの鉄道馬車の始発駅ということで駅弁と立ち食いそばを用意させて貰った。
「オレはコロッケ蕎麦とおにぎりのセットが好きにゃん」
「それはぜひ試してみたいね」
「試すの!」
「うむ、試してみよう」
「ネコちゃん、あたしはいなり寿司のセットで」
リーリたちにタマモ姉が混ざって蕎麦を食べ始めた。
○グランキエ州 州都パゴス グランキエ大トンネル 物理障壁 露天風呂
「「「にゃあ」」」
「「「ニャア」」」
デザートを楽しんでいるリーリたちとタマモ姉をガーデンパーティーの会場に置いてオレは猫耳と猫耳ゴーレムと一緒に露天風呂で身体を休める。
「一時はどうなるかと思ったけど何とかなったにゃん」
「お館様のおかげにゃん」
「にゃあ、何でも格納できればこっちのものにゃん」
『オ館様、抱ッコニャン』
『『『ニャア』』』
猫耳ゴーレムたちに抱っこされる。なにやら充電?しているらしい。
『お館様、ケントルムの本国と大使館の通信と念話を傍受したところ、あちらで砂海の魔獣が現れたらしいにゃん』
王宮にいる猫耳のエマから念話が入った。
『にゃあ、砂海の魔獣で間違いないにゃん?』
『砂海の砂の中から出て来たそうにゃん』
『砂海の砂で溶けないなら決まりにゃんね、でも魔獣が出たとなるとかなり大きい穴が開いたにゃんよ』
『もしくはトンネルから出た直後に発生したかにゃん』
『にゃあ、魔獣の森と同じならそうにゃんね』
魔獣の森ではマナを低く保てば魔獣は逃げ出すが、また濃度を高めると何処からともなく湧き出してくる。
砂海の砂にも何かしら条件が揃った場合、こちらでも魔獣が湧き出すのかもしれない。
『お館様、ケントルムに出たならこっちに出てもおかしくはないにゃん』
『にゃあ、こっちは砂の流失をほぼ止めているから、単に発生する条件が揃ってないだけかも知れないにゃん』
『可能性はあるにゃんね』
『ちなみにどんな魔獣が出て来たにゃん?』
「目撃情報だと、どぎついレーザーをぶっ放す赤ちゃん型らしいにゃん』
『どぎついレーザーにゃん?』
『にゃあ、街が丸ごと焼かれたみたいにゃん』
『光線をぶっ放す赤ちゃんなら、大公国の城の下に埋まってたヤツと似てるにゃん」
『にゃあ、確かにお館様が倒した魔獣に似てるにゃんね、でも砂海の魔獣はもっとヤバそうにゃん』
『油断できる相手じゃないのは間違いないにゃんね』
そんなわけで元チビたちの乗艦した戦艦型ゴーレムには、引き続き離れた場所で待機して貰っている。
元チビたちは大きくなったとは言え、オレと猫耳と同様には身を守れない。得体の知れない砂海の魔獣が現れるかもしれない場所には置いておけないのだ。
○グランキエ州 州都パゴス グランキエ大トンネル 物理障壁 屋上庭園
「魔獣の気配はないにゃんね」
露天風呂を出た後は、物理障壁の上からトンネルの入口から奥を睨む。
正午を過ぎたが砂海の砂の吐出量に大きな変化は無い。いまもトンネルの入口に達したところですべて格納している。
魔法が通らない砂の詰まったトンネルだが、時折、奥まで砂を消し去ってトンネル内部を調査している。おかげで砂の吐出口と奥に壁が出来ているのを発見したというわけだ。
現在のトンネルは先日まで有ったタルス一族の施設がごっそり溶けて無くなって、いまはまんま巨大な鍾乳洞の様な姿になっていた。
複数ある砂の吐出口だが、やはり魔獣を通すには小さい。ケントルム側の出口もこちらと同じ構造なら、やはり何らかの条件が揃った時に湧き出すのだろう。
『にゃあ、お館様、今回の砂海の砂はケントルムの侵攻軍に攻められたタルス一族が苦し紛れにやったみたいにゃん』
王都にいる猫耳のエマから追加情報だ。いま猫耳たちがケントルムの追加情報を各方面から集めている。
『やっぱり追い詰められて最後の切り札を切ったにゃんね、こっちは関係ないんだからいい迷惑にゃん』
『にゃあ、タルス一族はこうなると知らないで使ったと違うにゃん?』
『追い詰められた一族は拠点防衛の結界を起動させたつもりが、砂海の砂があふれだしてしまったとか、ありそうにゃん』
タルス一族はトンネルの中央最深部にある巨大な空間に地下都市を作っていたが、そこもいまは砂海の砂で跡形も無いと思われる。
ちなみにカホもタマモ姉も当時トンネルは帝国が管理していたというので、やはり一族はトンネルの正当な管理者ではなく実効支配で間違い無い様だ。
『にゃあ、オレたちは砂を格納できたから事なきを得たが、ケントルム側はどうにゃん?』
『いまだに流出が止まらないらしいにゃん、あちらにはお館様やウチらみたいな存在はいないみたいにゃん』
『勝手に攻め込んで知らない間に壊滅とか、お前らはフィーニエンスかと突っ込みたくなるにゃん』
『にゃあ、まったくにゃん』
エマも同意だ。
『それとお館様、潜伏しているケントルムの第二王子ルーファスは、まだ戦争継続中にゃん』
『たぶんバカにゃんね』
『にゃあ、間違いなくバカにゃん』
護国派で魔獣に変身したマルク・ヘーグバリ男爵から記憶をサルベージできれば良かったのだが、残念ながら仕上がったのは純白無垢な猫耳で、前世の記憶をほとんど失っていた。
『魔獣化の因子には引っ掛ってないにゃんね?』
『にゃあ、いまのところは反応してないにゃん』
『エーテル機関までは入って無かったけど、フルゲオ大公国の元第一公子デフロット・ボワモルティエみたいに体内に魔力を隠蔽していると引っ掛からない可能性があるにゃんよ』
『にゃお、直ぐ改めて調べるにゃん』
『慌てなくても第二王子なら近いうちに出てくると違うにゃん?』
『第二王子に関してはウチもそう思うにゃん』
『ただ第二王子の他にもいると厄介にゃん』
『にゃあ、魔力を隠蔽できるとなると魔導師クラスにゃんね、魔獣にならなくても厄介にゃん』
『捕まえたら猫パンチにゃんね』
『にゃあ、承ったにゃん』
『やあ、マコト、いま大丈夫かい?』
続けてカズキから念話が入った。
『取り込んでるけど、大丈夫にゃん』
『ケントルムの情報だよ』
『にゃあ、大歓迎にゃん』
『猫耳ちゃんたちに聞いたけど、グランキエでも大トンネルから砂海の砂が出たんだって?』
『にゃあ、死ぬかと思ったにゃん』
『ケントルムではどっさり死んだみたいだよ』
『そうらしいにゃんね』
『おかげでケントルムの王宮も大騒ぎで、もう侵攻どころじゃ無いみたいだね』
『最終的に、砂の突出をオレたちのせいにして収めると違うにゃん?』
『いや、それがそうでないんだよ、ケントルムの御前会議で侵攻軍がやらかしたから』
『にゃ?』
『ケントルム侵攻軍を出したアナトリ派の領主たちが、御前会議の席上からタルス一族に降伏勧告をするパフォーマンスをしたらしいんだよ』
『ライブ配信とはいい通信の魔導具を持ってるにゃん』
『ケントルムだからね』
『そのパフォーマンスの最中に砂があふれたにゃん?』
『そういうこと、交渉が決裂、籠城していたタルス一族が何か魔導具を起動してその直後、砂が降り注いだらしい』
『衝撃映像にゃんね』
『その後は、王宮も収拾が付かない状態だったらしく、宮廷魔導師の調査隊がやっと今朝出発したらしいよ』
『トンネルのある現地とはいまも連絡が付いてないにゃん?』
『砂海の砂が流れ出したことと砂海の魔獣が現れたことが断片的に伝わったけど、同時に魔獣の大発生が起きてアナトリ派六州が絶望、隣接する州も危ないんじゃないかな?』
『魔獣が大発生したにゃん?』
『あちらもアナトリ派六州の東側は魔獣の森だからね、拡大する砂海の砂のマナに引き寄せられたんじゃない』
『にゃお、なんでマナを封じ込めなかったにゃん?』
『領域が広すぎる上に砂海の魔獣が多数では難しいと思うよ。グランキエ州にしたってマコトたちがいなかったら間違いなく同じ状況だったんじゃないかな』
ケントルム王国の東側にあるアナトリ派と呼ばれる六州が、今回の侵攻軍の中心を成す仲良しグループなのだが、魔獣の大発生と有っては魔獣の森に沈むのはほぼ不可避な状況らしい。
『実際のところケントルムの連中は、まだ戦争をするつもりにゃん?』
続行不可能なのは目に見えているが。
『こっちは第二王子が白旗を揚げるまでは続行じゃないかな、たぶん革命軍に合流するんだろうし』
『革命軍? にゃあ、そんなのもいたにゃんね』
『いるよ、現在王都に向けて六万人が進軍中だよ』
『結局、六万のままにゃんね』
もうちょっと同調者なり北方七州の騎士団あたりが合流するのかと思ったがそうでもなかった。北方七州は第二王子も指揮下ではなくケントルム本国の指示が無いと動かないのかも。
『ケントルムの軍勢と同時に動くつもりだったから今ごろ慌ててるかもね、知らない可能性もあるけど』
たぶん知らないだろう。
『外国の軍隊を引き入れたらそのまま侵略されるにゃんよ』
『先王もアナステシアス・アクロイドもそこまで考えてないと思うよ、勝利後のビジョンが無いんだから』
『護国派とその後ろにいるケントルムの第二王子に丸め込まれたにゃんね』
『そんなところだろうね、まさかルーファス第二王子が本当にこっちに来てるとは思わなかったけど』
『ルーファスはたぶんバカにゃん』
『バカかどうかはともかく、マコトに喧嘩を売ってるんだから諜報面の能力がかなり劣ってるのは間違いないね』
『にゃあ、ルーファスはそのうちとっ捕まえるにゃん』
『彼のことはマコトが好きにすればいいよ、で、ここからが本題』
『にゃ?』
まだ何かあるらしい。
『ケントルムにいる転生者のナオさんから、マコトに伝言を預かったんだよ』
『ナオ・ミヤカタにゃん?』
ケントルムにいる古株の転生者で、オレは会ったことが無いので詳細は不明だ。今回は協力を拒まれている。
『そう、ナオさんから、マコトにケントルムを救って欲しいそうだ』
『無理にゃん』
『だろうね』
『いまはとにかく濃いマナを領内に入れないことにゃん、とにかく風の魔法でも何でも使って押し返すにゃん、それで魔獣の侵入はかなり抑えられるにゃん』
『なるほど』
『それとケントルムの侵攻を黙認しといて虫の良いことを言わないことにゃんね』
『まあそれはね、今回は自分のお尻に火が点いて泣き付いたってところじゃないかな』
『にゃあ、それと転生者なら魔獣ぐらい自分でどうにかするにゃん』
『それは無理だよ』
『だったらとにかくマナを外に吹き飛ばすしかないにゃんね、それでも駄目なら後は逃げることにゃん』
『伝えておくよ』
『いずれにしろケントルムに行くのは、まずトンネルをどうにかしてからにゃん』
『だよね』
『にゃあ、オレたちが行くまで死なないように頑張るにゃん』
『攻略できそうかい?』
『にゃあ、砂海の魔獣次第にゃん』
『ナオさんにもちゃんとこちらに情報を送るように頼んでおくよ』
『にゃあ、危ないから近付かなくていいにゃん、砂海の魔獣に関してはオレたちで調べるにゃん』
『マコトたちは大丈夫なの?』
『駄目なら逃げるにゃん』
『無理はしない方がいいよ』
『にゃあ、もちろんにゃん』
ケントルムのバカ貴族はどうでもいいが、何の罪もない一般市民は助けたいとは思う。ただ時間的にかなり難しいのも事実だ。
『お館様、王都に潜伏していた魔導師たちが移動を開始したにゃん』
今度は王都拠点にいる猫耳のアルから連絡が入った。
『北方七州の市民に偽装した魔導師にゃんね』
『にゃあ』
いずれも北方七州に籍を置く一般市民だが、何故か揃いも揃って上位の宮廷魔導師並の外向きの魔力を持ってる連中だ。
王都の城壁門を潜ったところからマークしているが気付かれると厄介なので拉致って頭の中をチェックとかはせず、監視のみに留めていた。
『何処に向かっているんにゃん?』
『北方面の近距離の乗り合い馬車に乗ってるにゃん、どれも貸し切りにゃん』
『ケントルムの魔導師が革命軍に合流するつもりにゃんね』
『にゃあ、その前にリアンティス州との境界門に展開している王国軍の背後に回るみたいにゃん』
革命軍はリアンティス州内のシエロ街道を使って王都に向けて南下中だ。王国軍を挟み撃ちにするタイミングで王都を出たってところか。
『攻撃を開始したら適当なところでとっ捕まえていいにゃん』
『にゃあ、いまカホが王国軍に合流したみたいにゃん、「全部、焼き払う」って言ってるらしいにゃん、真っ赤な鎧とマントで燃やす気満々だそうにゃん』
『全部は不味いにゃんね、オレが話してみるにゃん』
『お願いにゃん』
リアンティス州と王都の境界門にいるカホに念話を入れた。
『にゃあ、オレにゃん』
『マコトか、どうした?』
『そっちの状況はどうにゃん?』
『王都の境界門にいるが、敵は距離を置いて続々集結しつつ有る』
『まだ戦いは始まってないにゃんね?』
『ああ、すべて集まってから一気に来るのだろう、でも、心配は要らない、私がすべて焼き尽くしてやる』
『にゃお、昔と違って人材は貴重なんだから燃やしちゃ駄目にゃん、焦がすぐらいで頼むにゃん』
『手加減は逆に危険だぞ』
『にゃあ、わかったにゃん、でも、カホにはそんな雑魚よりケントルムの第二王子を担当して欲しいにゃん』
『そいつは本当に出てくるのか?』
『にゃあ、国内に潜入しているのはほぼ間違いにゃん』
『このタイミングで姿を現すだろうか?』
『にゃあ、ケントルムの魔導師が二〇〇人ばかり王国軍の後ろに迫っているにゃん、たぶん、そいつらと一緒に動くはずにゃん』
『魔導師二〇〇か、かなりの戦力だな』
『援軍が無いからそれで全てにゃん』
『国盗りには少々厳しいか』
『にゃあ、それだけに劣勢になれば出ざるを得なくなるにゃん』
『わかった、そいつが出たら私が対処しよう』
『にゃあ、頼んだにゃん』
『なにハリエットを護るのは兄弟たちに託された私の使命だ』
『第二王子も燃やしちゃ駄目にゃんよ』
『駄目なのか?』
『にゃあ、身代金をがっぽり貰うにゃん』
『手加減できるかどうかは、わからんぞ』
『危ないときは燃やして構わないにゃん』
『了解だ』
カホとの念話を終えてからオレたちは砂海の魔獣の発生実験を開始した。




