危険な泥水にゃん
『にゃお! 慌てちゃ駄目にゃん!』
オレはドラゴンゴーレムの背中に立って後ろを向く。猫耳たちのドラゴンゴーレムがボロボロになっている。
いずれも速度と高度が落ちてる。
しかも新たな泥水の第二波が回避不能な密度で迫っていた。
『にゃあ!』
正体は不明だが降り注ぐ泥水を一気に格納した。
やった、こいつは格納は出来る。
同時に猫耳たちのドラゴンゴーレムを修復した。
『『『にゃ!?』』』
猫耳たちのドラゴンゴーレムが浮力を取り戻した。
『おまえら大丈夫にゃん?』
『『『助かったにゃん』』』
とりあえず空から降って来た泥水は全部格納する。
『泥水は格納できるにゃんね』
『にゃあ、格納できなかったらヤバかったにゃん』
『『『にゃあ』』』
猫耳たちの緊張が解けた。
『にゃあ、ビッキーたちも大丈夫にゃん?』
戦艦型ゴーレムに念話を飛ばした。
『こちらは、最初から距離を取っていたので大丈夫です』
幸い元チビたちが乗艦している戦艦型ゴーレムは距離を取っていた為に泥水が届かなかった。
マナだけなら封印結界で抑えられたがトンネルから爆発的にあふれ出た何でも溶かす泥水にはまったく効かなかった。
さっきのは、土石流のような勢いでトンネルから飛び出した泥水が物理障壁にぶち当たって爆発的に分解した時の衝撃波だったみたいだ。
いまもトンネルからは轟音を撒き散らしながら大量の泥水が吐き出されている。
物理障壁はボロボロになって三番目までがグズグズに崩れていた。いくらも時間稼ぎになっていない。
泥水は地面も溶かしているっぽい。泥水の下が見えないが渦巻いてるぐらいだからかなり溶かしているんだろう。
魔法蟻のトンネルにも流れ込んでいたが途中で切り離して埋め戻していた。
オレたちの防御結界をコンマ数秒で突き抜ける泥水の正体はこれからじっくり調べなくてはならない。
ただ格納はできるってことで。
「にゃあ!」
大気に四散した分と辺り一帯を溶かしている危険な泥水をトンネルの奥の方まで一気に格納して消し去った。
トンネルの入口の前には予想通り深い大穴が出来ている。泥水の吐出は続いているのでトンネルの入口に簡易刻印を打ち込んで自動的に格納した。後でちゃんとした刻印を打ち直す必要ありだが。
『お館様、その泥水、砂海の砂にゃん!』
研究拠点の猫耳から念話が入った。
『にゃ、ケントルムのヤツらトンネルに穴でも開けたにゃん?』
『そんな感じの吹き出し方だったにゃんね』
『お館様、トンネルは溶けてないにゃん、あの壁の素材は大丈夫っぽいにゃん』
吐出を続ける砂海の砂を格納してトンネルの奥を覗き込んだ猫耳から報告が入った。
『にゃあ、それは使えるにゃんね』
早速、トンネルの鍾乳洞の様な壁をコピーした。
『トンネルの前に防御陣地を構築にゃん!』
『『『にゃあ』』』
ひとまず大穴をトンネルの入口前に掘りその表面に貼り付けた。それから崩れた物理障壁を再生しそれにも貼り付ける。
平らに切り出すと大理石っぽい感じの質感だ。
オレたちの防御結界にも同様の機能を組み込む。理屈は後で検証だ。とにかくいまは防御が最優先だ。
『お館様、どうもケントルムの侵攻軍がやらかしたっぽいにゃん、あっちの王宮では大騒ぎしているにゃん』
王宮にいる猫耳のエマから念話が入った。
『ケントルムの連中、いったいどんなヘマをして砂海の砂なんて流出させたにゃん?』
『あっちの王宮が慌てて情報を収集してるみたいにゃんね』
『砂海の砂なんて放置したら国が滅ぶにゃんよ』
何でも溶かす砂海の砂も危険だが、それ以上に砂が撒き散らす高濃度のマナがヤバい。人が死ぬのはもちろん、これは放置すれば魔獣を呼ぶ。
『既に大変なことになってるみたいにゃん、ケントルム側のトンネルの出口があるワガブンドゥス州の州都パゴノと連絡が取れなくなっているにゃん』
『こっちも砂は止まってないから、ケントルムもかなりの量の砂が出てると違うにゃん?』
『確認できないけど、たぶんあっちも止まってないにゃんね、なんたってケントルムにはお館様がいないにゃん』
『にゃあ、こっちと違ってワガブンドゥス州の州都パゴノは、かなり栄えていた街と違うにゃん?』
『アナトリと段違いに栄えているにゃん、隣の国に仲良しの州だけで戦争を仕掛けられるぐらい景気がいい領地にゃんね』
『早急に砂を止めないととんでもない被害が出るにゃんよ』
『たぶん手遅れにゃん』
エマが断定する。あの砂の勢いからすると甚大な被害が出てるのは間違いないか。
『こっちからも各方面に情報収集を働き掛けてるにゃん、ユウカのところにも緊急依頼を出したにゃん』
『了解にゃん、頼んだにゃん』
「にゃふ~とりあえずケントルムの侵攻軍が来ないのは幸いにしても、もっとヤバいのが出たにゃんね」
オレは物理障壁の上に立って深いため息をついた。
ケントルムの被害も一〇〇や二〇〇では済まないだろう。いや、桁が違うか。それだけの人間をむざむざ死なせるとは大罪もいいところだ。
○グランキエ州 州都パゴス 上空 戦艦型ゴーレム 船室
『にゃあ、本艦はオルビー領に向けて飛行中にゃん、到着時刻は明後日二〇日を予定しているにゃん、なおオルビーから王都までは陸路を予定しているにゃん』
猫耳の艦内放送が流れた。
戦艦型ゴーレムの乗客たちが一斉に声の方向を探してキョロキョロする。それから四方から音が出ていることに気付く。
『壁面に外の様子を映すにゃん』
「「「外?」」」
全員が首を傾げる。
『にゃあ、では到着までくつろいで欲しいにゃん』
猫耳の艦内放送が終わり壁面いっぱいに外の風景が映し出された。どこまでも続く森と地平線が見える。
「わぁ!」
「フレデリカ様!」
壁に駆け寄ったフレデリカを側仕えのイライザが声を上げた。
「なに?」
壁にペタンと張り付いたフレデリカが振り返る。
「あっ、いえ、お気を付け下さい」
壁に映った映像に今更ながら気付く。
「にゃあ、慌てなくて大丈夫にゃん」
猫耳がコンコンと壁を叩く。
「このエリアは自由に使って貰っていいにゃん、お風呂も食堂もあるからご自由にどうぞにゃん」
「個室も適当に使っていいにゃんよ」
「わかってると思うけどケンカは禁止にゃん」
猫耳たちが説明する。
「それから不埒な真似をするとこの戦艦型ゴーレムが怒って外に放り出されるから注意するにゃん」
『ニャア』
戦艦型ゴーレムが鳴く。
「「「……」」」
ケントルムの騎士たちは揃って首を横に振る。
「心配するな、マコト公爵を怒らせるようなことは私がさせぬ」
アイリーンが請け負った。
「それでマコトたちは大丈夫であるのか?」
アーヴィン侯爵の発言にケントルムの面々の視線も集まった。
「にゃあ、お館様たちは無事にゃん、どうやらトンネルに穴が開いたっぽいにゃん」
「穴であるか?」
「にゃあ、砂海の砂がトンネルから吹き出したにゃん、さっきの爆発はそれが原因にゃん」
「本当にそうなのか?」
オラース・クーラン副大使が訊く。
「にゃあ、ケントルムの侵攻軍が何かしくじったみたいにゃんよ、正確なところは大使館にでも問い合わせて欲しいにゃん」
「砂海の砂とは穏やかではないな」
腕を組んで唸るアーヴィン侯爵。
「にゃあ、危なくウチらの仲間が犠牲になるところだったにゃん、ホテルも半壊したにゃん」
「本当に大丈夫なのか?」
アイリーンが心配そうな表情を浮かべる。
「ウチらにはお館様がいるにゃん、いまはほとんどの砂を消し去ったにゃん」
「そうか、ひとまず安心だな」
安堵する。
「トンネルは暫く通れそうにないにゃん、悪いことは言わないから戦争はさっさと止めた方がいいにゃんよ」
「私もそう思う」
アイリーンが頷いた。
「トンネルが通れなければ戦争をする意味もなかろう」
アーヴィン侯爵も同意する。
ケントルムの騎士たちも神妙な顔をする。
「アーヴィン様、砂海の砂とはどのようなものかご存知ですか?」
アイリーンが尋ねる。
「吾輩が海を見たのはシヌス公国の極地でしたが、あの氷に閉ざされた地ですら地獄のような有り様で、濃いマナに引き寄せられた魔獣が溶けておりました」
シヌス公国はケントルムの北方に位置する国だ。グランキエ大トンネルのあるワガブンドゥス州よりも更に北に位置する。
「魔獣が溶けるのですか?」
「そうです、砂海の砂はすべてを溶かすと伝えられております、今回もマコトがいなかったら大変なことになっていたでしょう」
「本国にもマコト公爵の様な魔法使いがいれば良いのですが、オラースはどう思う?」
アイリーンはオラース副大使を見た。
「砂海の砂を消し去ることは、わずかな量はともかく大量となれば宮廷魔導師の主席様でも難しいかと」
「すると本国は、非常にマズいことになっているのでは?」
「後ほど確認いたします」
「頼むぞ」
○王都タリス ケントルム大使館 邦人避難所
ケントルム大使館の空き地に簡易宿泊所が二棟建てられ、同国人の商人や学生が集められていた。
「私までここに入れられるとは思わなかったが」
ルーファスは直ぐに王都に潜伏している魔導師たちと合流するつもりだったが、王立魔法大学附属魔法学校の教室から猫耳に掴まって大使館の避難所に連れてこられた。
この真新しい建物は猫耳たちが作ったそうだ。
マコト公爵の指示でケントルム国民の保護に力を入れてくれているらしい。表面上はありがたい話だが、不穏な動きを見せる前に隔離しているといったところか。
本国なら今頃、同じく保護を名目に牢獄にブチ込んでいるか、市民のリンチを黙認していることだろう。
それが普通なのだ。マコト公爵は甘い。
「ルーファス様、デュドネ大使との面会の準備が整いました」
エサイアス・ネルソンが、ルーファスの充てがわれた狭い個室に現れた。
「わかった、直ぐ行こう」
先ほどまでマルレーヌとマルネロのふたりが部屋に居座っていた為、念話もろくにやりとり出来なかった。
○王都タリス ケントルム大使館 大使執務室
「お久し振りです、ルーファス殿下、お呼び立てして申し訳ございません」
駐アナトリ大使デュドネ・バルビエが出迎えた。
「久しいなデュドネ侯爵、私は身分を隠している故、構わぬ」
「殿下とこうして異国の地でお会いできるとは思ってもおりませんでした」
ルーファスはデュドネの知る姿と少しも変わらなかった。
「私もだ、大使館に足を踏み入れる予定など無かったのだ」
「左様でございますか、私は進行計画の蚊帳の外でしたので何もわかりませんが」
やや皮肉交じりだ。
「それで何用だ?」
本来なら面会の予定など無かった。あくまでルーファス第二王子ではなく商家の子息レイモン・アムランで通すつもりだったのだが。
「殿下、グランキエ大トンネルが失われた様です」
デュドネ大使はゆっくりとした口調で伝えた。
「失われた? どういうことだ」
ルーファスは低い声で聞き返す。
「どうやら侵攻軍がグランキエ大トンネルの占領に失敗し、砂海の底が抜けてトンネルのあるワガブンドゥスの州都パゴノが砂海の砂に沈んだとのことです」
「トンネルを占領!?」
侵攻軍が動いているのは承知していたルーファスだが、トンネルを占領するというのは初耳だった。
「侵攻軍がタルス一族の街を攻めた直後、砂海の底が抜けた様です、トンネル内にいた将兵一万、パゴノの三万が絶望、領民の被害も相当な数になるようです」
「何故、タルス一族の街を攻めるなど余計なことをしたのだ? 将兵の移動は話が付いていたのではないのか」
「タルスが直前で値上げをしたとかしないとか」
デュドネも正確な情報を持ち合わせてはない。
「アナトリ派のヤツら余計な真似を」
「どうやらパゴノ周辺には砂海の魔獣も多数現れたようです」
「なんということだ」
「どうされます、殿下?」
「どうかとは?」
「アナトリとの戦です、援軍は絶望的となりました」
「本国は何と?」
「こちらには何とも、王宮はそれどころではない様です、下手をすると国の半分が魔獣の森に沈むかも知れない一大事でありますから」
いや王宮は戦そのものに興味がないのだろうとデュドネは推察する。王宮の目的は戦によるアナトリ派の力を削ぐことであり勝敗は二の次なのだ。
聞くところによれば王宮で騒いでいるのはルーファス殿下と組んで侵攻を計画していた西部連合の領主たちらしい。先を越された挙げ句、トンネルを潰されては騒ぎもするか。
「アナトリ側はどうなのだ? グランキエ州のパゴスではパゴノと違って辺境の寒村レベルだから被害はあってもたかが知れているとは思うが」
ルーファスが問い掛ける。
「マコト公爵が砂を止めたと副大使のオラース・クーランより先ほど報告がありました。いまはトンネルをどうするか検討中だそうです」
「砂を止めた?」
「マコト公爵の配下の者からも、そう聞いております」
「何故、マコト公爵に止められるモノが我が国の魔導師どもには止められぬのだ?」
「私にはわかりかねますが、侵攻軍に従軍した魔導師も全滅の様です、マコト公爵の配下の者の話では、砂海の砂には通常の防御結界が効かないそうです」
「本当にマコト公爵の配下は何でも喋るのだな」
どうやら学校の猫耳たちと変わらぬようだとルーファスは思う。
「公爵様のことを語るのが好きなようですから」
「援軍のことを考えれば状況は不利だが、こちらは先王の再革命の最中だ、まだ目はある」
「殿下は戦は続けられると?」
「無論だ、マコト公爵はやはり土木系の魔法使いのようだ、戦向きの魔導師の質はこちらが上であろう」
「かしこまりました、明日にはアイリーン様が戻られますのでお気を付け下さい」
ルーファス殿下がアイリーン様にもその所在を明かしていないとエサイアスより報告を受けていた。
開戦を心良く思ってはいないアイリーン様とルーファス殿下が出くわせばひと悶着起きるのは必至だ。
「姉上は無事であったか、しかし明日とは随分と早いのではないか、グランキエに到着したばかりでは無かったのか?」
「マコト公爵の空を飛ぶ船だそうです」
「そんなものがあるのか?」
「秘匿されていたものをアイリーン様一行を避難させる為にお使いになったようです」
「マコト公爵は、つくづく甘い様だ、騎士どもはその船を奪わなかったのか?」
「殿下、騎士は追い剥ぎではございません」
もと騎士団所属のデュドネは口調は穏やかだが眼光は鋭くなる。
「甘いなデュドネ、戦とは勝った者が正義なのだ、敗者には抗弁の機会も与えらぬ、そのプライドを守りたいなら負けぬことだ」
「肝に銘じます」
○グランキエ州 州都パゴス 上空 戦艦型ゴーレム 船室
「わあ」
フレデリカは壁に張り付いて代わり映えしない景色を飽きもせず眺めていた。
「本当に空を飛んでいるのですね」
イライザも一緒に眺めている。パゴスで別れる予定だったが、ひとまず王都に戻るまでは側仕えの仕事を続けることになった。
戦艦型ゴーレムは高度限界の三〇〇メートルを越えないようにギリギリの高度を保って飛行を続ける。
認識阻害の結界を展開しているが風の影響などを考慮して人のいないコースを選んでいた為、おのずと森林地帯上空ばかりになっていた。
フレデリカの他にもアーヴィン侯爵も外の景色を眺めている。こちらはスツールに腰掛け酒の肴にしていた。
「人生、何が有るのかわからぬものだな」
革命軍が王都に迫っているがこれを持ち出せばそれで済みそうなものだが、マコトは使う気は無いようだ。
猫耳の話では、マコトはこれを使うまでもなく王国軍だけで間に合うと考えているらしい。相手は寄せ集めとはいえ元騎士を中心に組織された諸侯軍と正規の騎士団からなる革命軍だ。以前なら無謀な試みだがいまなら十分な勝算があると考えているのだろう。
「とはいえ、子どもたちに今回の不始末を押し付けるわけにはいかぬ。先王一家を領外に出してしまったのは吾輩の不手際、責任は取らねばなるまい」
そしてグラスを煽った。
○グランキエ州 州都パゴス 上空 戦艦型ゴーレム 浴室
「空を飛びながらお風呂ってスゴいよね」
「スゴいのです、しかも展望大浴場とか何の為の飛ぶ船なのかわからないのです」
キャリーとベルは二人だけで大浴場のお湯に浸かっていた。
他のキャリー小隊の面々は、食堂に行ったりエステを楽しんだり思い思いに過ごしている。気が抜けているようだがオンとオフがはっきりしているだけだ。
「戦艦型ゴーレムの調査も済んだしやることないもんね」
キャリーはちゃぷっと浴槽の縁に腰掛けて外を眺める。
眼下の森には大型の獣が群れを作って走っていた。
「猫耳たちに聞いただけでもとんでもないモノだとわかるのです」
「こんなのが魔獣の森に落ちてるとは驚きだよね」
マコトが戦艦型ゴーレムを手に入れた顛末も猫耳たちが熱弁していた。
「マコトじゃないと拾えないのです」
「六歳の女の子が拾うモノじゃないけどね」
「そうなのです、マコトが六歳だということを忘れてしまうのです」
「だよね」
「戦艦型魔獣を捕まえてゴーレムにするとか思い付かないよね」
「思い付いても実行は不可能なのです」
「しかも天使様が絡んでるとか、もうね」
「普通の人間には扱えない代物なのです、戦艦型ゴーレムを構成する魔法式と刻印も高度すぎて説明を受けても理解が追い付かないのです」
「もう魔法大学の研究者の範疇だね」
「あの人たちが知ったら住み着いてでも調べたがるです」
「でも、戦艦型ゴーレムの機嫌を損ねて外に放り出されそう」
「ありそうなのです」
魔法大学の研究者の凄さは王国軍にも知れ渡っていた。
「戦艦型ゴーレムがあれば魔獣だって狩れそうなんだけどね」
「そもそも操艦するのに要求される魔力量が半端ないのです、例え貸与を受けたとしてもいまの王国軍では魔力的に派遣されている猫耳以外には動かせないのです」
「まあ、魔獣はマコトたちが狩ってくれるから王国軍の出番がないけどね」
「王国軍は身の程を知ったのです」
「だね」
革命後に王国軍憲章が破棄され、対魔獣の任務は外されていた。
『にゃあ、いまは大丈夫にゃん』
オレは州都パゴスの物理障壁を再構成しながらキャリーとベルに念話を入れた。
「「マコト」なのです!」
キャリーとベルはお互いの顔を見た。
『こちらは大丈夫なのです』
ベルが答えた。
『マコトたちは本当に無事だったの?』
キャリーが安否を問う。
『にゃあ、今回はちょっと危なかったけど全員無事にゃん』
『安心したのです』
『うん、安心』
二人がほっとしたのが伝わってくる。
『砂海の砂が出るとはオレも想定外だったにゃん』
『トンネルでいったい何があったの?』
『詳細は調査中にゃん、どうもケントルムの侵攻軍がヘマをやらかしたらしいにゃん』
『わざとやったわけじゃないんだ?』
『そうみたいにゃん、あっちは大きな被害が出てるみたいにゃんよ』
漏れ聞こえた情報だけで甚大な被害が出ている。
『キャリーとベルは砂海の砂について何か知ってないにゃん?』
『砂海の砂か、さすがにまともな情報がないな』
『砂海は王国軍の担当外なのです、たぶんアーヴィン・オルホフ侯爵の方が詳しいのです』
キャリーとベル情報を持ち合わせていなかった。
『にゃあ、確かに砂海のことは以前アーヴィン様から教えてもらったにゃん』
『砂海の砂ってどんななの?』
『何でも溶かすしマナがスゴいにゃん、人間の手に余る代物にゃん』
『それをどうにかしちゃうんだから、マコトはスゴいよ』
『オレはただ格納しただけにゃん、何の解決にもなっていないにゃん』
『普通はそれだって無理なのです』
『にゃあ、被害が最小限で済んだのは幸いだったにゃん』
特に人的な被害が無かったのは助かった。
『マコトはこれからどうするの?』
『まずは砂海の砂の研究にゃんね、何でもかんでも溶かされては困るから対策を考えるにゃん』
『マコトがいなかったら私たちも溶けていたのです』
『うん、それは間違いないね』
『にゃあ、物理障壁が無かったら、砂海の砂は飛び散らなかったから逃げる隙きはあったにゃんよ』
キャリーとベルなら何があっても大丈夫な気がする。




