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最後通牒にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年十一月十六日


 ○ヘレディウム州 州都トラース トラース・オルホフホテル 車寄せ


「やっぱり、マコトのホテルは快適なのです」

「うん、快適、テントも良かったけどね」

 車寄せに出て来たベルとキャリーは巨大な青いピラミッドを仰ぎ見た。

 ヘレディウム州は、目的地であるトンネルのあるグランキエ州の南隣に位置する。

 領内には広大な魔獣の森があり、ほぼ廃領に近い状態だったが、貴族派だった在王都の領主一家が先日の政変で命を落としたことからマコトに譲渡され、現在は領内の魔獣を狩り尽くしマナの濃度を下げる処置がなされていた。

「にゃあ、車の準備は出来ているにゃん」

「いつでも出せるにゃん」

「明日にはグランキエ州に到着するにゃん」

 猫耳たちがベルとキャリーを出迎えた。

「もう着いちゃうんだ」

「早いのです」

 パゴス街道をキャサリンの従姉妹であるアドリアナ・マクファーデン侯爵が領主を務めるフィークス州から、旧フェルティリータ連合のひとつだったボース州に進んだところで、猫耳たちが合流した。

 そこから全員が猫耳たちが用意したトラックに乗り換え、車を連ねて移動している。

 ボース州からトンネルのあるグランキエ州まですべてマコトの領地なので、ピラミッド型のホテルが要所要所に建設されている為、テントの出番は無くなっていた。


「キャリー隊長とベル副隊長、おはよう今日もよろしく頼む」

「「おはようございます、オラース閣下」」

 声を掛けたのはケントルム大使館の副大使オラース・クーランだ。凍死寸前に陥ってアイリーンに説教されてからは、すっかり角が取れていた。

 猫耳たちがこっそり脳内の記憶を読み取ったが、キャリー小隊を凍死させてうんぬんの計画は濡れ衣だったようで、本人は気付いていないが九死に一生を得ていた。

「この魔法車のおかげで、明日にはグランキエ大トンネルに到着するのだな」

「にゃあ、問題ないにゃん、このままパゴス街道を進めば日付が変わる前にグランキエ州の州都パゴスに入れるにゃん」

 猫耳がオラース副大使の問いに答えた。ちなみにグランキエ州には大トンネルのある州都パゴスしか街は存在しない。

 後は雪に閉ざされた森と街道があるだけだ。

「早く到着できるのは助かる、本国から一日も早くトンネルまでお送りしろとの要求が厳しかったからね」

「ぶっちゃけて大丈夫にゃん?」

「諸君らは、我らの協力者であるから問題はない」

「にゃあ、ウチらも頑張って大トンネルにお届けするにゃん」

「「「にゃあ」」」

「ヘレディウム州を通る南回りのルートは初めてだが、これほど快適な道だとは思わなかった、私の記憶が正しければ、ほとんど魔獣の森に閉ざされていたはずだが」

 ケントルム大使館員は、王都からトンネルのあるグランキエ州への移動にはケントルム系の北方七州を通る北回りのルートを使う。

 今回は『アイリーンを最短で届けよ』との本国からの指令があったので、各領主たちからの歓待の宴席が有り距離以外にも時間が取られる北方七州の北回りのルートは避け、南回りを選んだのだった。

「ヘレディウム州にある魔獣の森だったら暫定的に解放した状態にゃん」

「魔獣の森を解放?」

 オラース副大使は思わず聞き返した。

「にゃあ、魔獣の森の魔獣を狩り尽くしてからマナの濃度を押さえたにゃん、暫定と言っても危険は無いから安心していいにゃんよ」

「街道も作り直してあるにゃん」

「マコト公爵様の配下の諸君らがそう言うのなら信用しよう」

「「「にゃあ」」」

「オラース、本国は何故、私の帰国をそれほど急かすのだ?」

 アイリーンがフレデリカを連れて出て来た。

「猫耳ちゃん!」

 フレデリカは直ぐに近くにいた猫耳に抱き着いた。

 その後を側仕えのイライザが小走りに駆け寄った。

「本国から明確な理由を示されておりませんが、やはり先王の関係者は粛清の対象となります故ではないかと」

 私見を混じえて答えるオラース副大使。

「ハリエット様は我らの身の安全を保証してくれたが」

「残念ながら先王様には再革命の噂も囁かれております、本国はアイリーン様の御身に危機が及ぶ可能性が大と判断されたのでしょう」

「先王様が再革命か」

 考え込むアイリーン。

「何か知っているか?」

 猫耳たちを見る。

「にゃあ、先王様がアーヴィン様の領地ニービス州からアナステシアス・アクロイド公爵のリアンティス州に勝手に移動したにゃん」

「王宮の警告も無視して現在もニービスには戻ってないにゃん」

「残念ながら先王様に再革命の意志有りと判断されても仕方ない状況にゃんね」

「そうか」

「だからといってケントルム王国の姫を害するメリットは、ハリエット様には無いにゃんよ」

「そうであろうな」

 アイリーンも猫耳たちの意見に同意した。

「にゃあ、ただ戦乱を起こしたいヤツには格好の襲撃目標にゃん、アイリーン様を害すればケントルムに開戦の口実を与えるにゃん」

「開戦か、まだ足りぬ者たちがいるのか?」

「主義主張は人の数だけあるにゃん」

「にゃあ、間違ってもウチらがそんなことはさせないから安心していいにゃん」

「すまないが頼む」

「それに何と言っても副大使閣下がアイリーン様の最大の味方にゃん」

「「「にゃあ」」」

 濡れ衣を着せたお詫びに副大使を応援することにした猫耳たちだ。オラース副大使本人はまったく知らないわけだが。

「そうか、頼りにしているぞ、オラース兄様」

「アイリーン様、その呼び方はどうかと」

「硬いことを言うな、いまの私は王妃でも何でもないのだ、以前のただの幼馴染に戻ったのだ」

「では、またお勉強を見て差し上げますか?」

「うっ、勉強は私ではなくフレデリカを見てやってくれ」

「かしこまりました」

 甘酸っぱいふたりは放って置いて、周囲の者たちは出発の準備に取り掛かった。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 地下拠点 大食堂


「美味しい!」

 ホットケーキにバターとはちみつを掛けて声を上げたのはタマモ姉だ。尻尾が揺れて猫耳たちが目で追っている。

「ホットケーキは前も有ったと違うにゃん?」

「あったけど、ここまでは美味しくなかったかな、クンクン、これってヤギのミルクじゃないでしょうこれ?」

「にゃあ、マダラウシのミルクがベースになってるにゃん」

 地下拠点に併設された食品工場で生産している。

「マダラウシって、あの森の奥深くにいる?」

「本物はそうにゃん」

「へえ、あれからミルクが取れるんだ」

「にゃあ、いまは牧場も作っているにゃん」

「アポリト州に作った牧場でしょう?」

「そうにゃん」

 グールに支配されていたアポリト州を牧場を中心に復興を図っている。青色エーテル機関持ちのウシ系と毛虫を中心に飼い始めていた。

 ヤル気満々の獣系はともかく青色エーテル機関持ちはフレンドリーなので一般人でも大丈夫なので従業員を募集中だ。

「ネコちゃんも領地がいっぱいあるから大変ね」

 タマモ姉はオレの格納空間にいたから情報を共有していた。ただ全てではないので何が基準なのかはわからない。

「にゃあ、仕方ないにゃん、でも人のいない領地はいろいろ埋まっていて面白いにゃんよ」

「一〇〇〇年前からほとんど手つかずの場所だから、確かに面白いモノが埋まっていそうね」

「何かしらはあると思うにゃん、特にマナの濃い場所には何かが埋まっているにゃんね、同時に危ないにゃん」

 アウルムのでっかい蛹しかり戦艦型魔獣のいたマナ生成プラントしかり。

「面白いものの調査は私に任せて貰いたい」

「にゃあ」

 ミマとセリの考古学チームが手を上げた。

「こっちの調査はいいにゃん?」

「私たちの専門はオリエーンス連邦の都市遺跡の発掘調査だからな、帝都の調査は大学の元同僚たちに任せるのが良いだろう」

「ローザ・ローズ教授を推薦するにゃん」

 セリが名前を上げる。

「にゃあ、わかったにゃん受け入れの準備ができたら連れて来るにゃん」

 防犯の刻印の変更とヤバいモノの封印が終わったら研究者に解放する。その条件に変更は無いが、早くても再革命のゴタゴタが片付いてからだ。

「にゃあ、そう言えばタマモ姉がチューチューしていたアウルムのでっかい蛹ってアレは何にゃん?」

「ああ、あれね、あたしも詳しくはわからないけど、たぶん生体型マナ生成プラントが何かしらの理由で大きく育っちゃったんじゃない?」

「アウルムのでっかい蛹もマナ生成プラントだったにゃん?」

「それは間違いないと思うよ、あんなの他に使い道が無いだろうし」

 確かにマナを生み出しているだけだ。

「タマモ姉上、生体型マナ生成プラントは育つモノなのですか?」

 ミマが質問する。ミマのお姉ちゃんにも就任していたらしい。

「普通は育たないわよ、アレはたぶん魔法式に欠陥が有ったんじゃない?」

「すると生体型マナ生成プラントが成長したせいで、それまでマナを封じ込めていた結界が壊れアウルムの街に流れ込んだのかもしれませんね」

「にゃあ、確かに蓋の部分の結界が無かったにゃん、最初から無かったわけじゃないにゃんね」

 一〇〇年前の悲劇の新たな仮説にミマとセリが納得する。オレもそれで決まりだと思う。いまはちゃんと蓋がしてあるので問題はないが、今後さらなる成長に備えた対策は必要になるにゃんね。

「にゃ?」

 オレの身体がひょいと持ち上げられた。

『オ館様ハ、うちラトオ風呂ニャン』

『『『ニャア』』』

 猫耳ゴーレムたちだった。

『たまも姉モニャン』

「あらあらお姉ちゃんもなの?」

『『『ニャア♪』』』

 オレとタマモ姉は猫耳ゴーレムたちに大浴場へと連れて行かれた。



 ○リアンティス州 州都イリオト イリオト城 客間


 主席宮廷魔導師マリオン・カーターはイリオト城の謁見の間に通された。

「わざわざユリウス様にご案内いただき恐縮です」

 案内をしてくれたのは使用人ではなくアナステシアス・アクロイド公爵の息子ユリウスだった。領主補佐として領内の実務を取り仕切っている。

「いえ、こうでもしないとマリオン殿と話をする機会が得られませんから」

「私はただの使い走りですよ、空を飛べるので便利に使われております」

 苦笑いを浮かべるマリオン。

「ただの使い走りならマコト公爵の配下の者で事足りるのではありませんか?」

「猫耳さんたちは公爵様のご命令で、こちらのリアンティス州には入られないとのことですから」

「王宮は、やはり当家の動きを疑問視されているのですね」

「私からは何とも、ただ王都ではアナステシアス様が先王陛下を擁して再革命の挙兵をされるとの噂で持ちきりです」

「私も王都の屋敷の者から聞いております、出入りの商会も売掛を渋るなど影響が出ておりますので」

「公爵家にですか? それはまた怖いもの知らずというか」

「それだけ当家は無謀な企てを目論んでいると思われているのでしょう」

「やはり再革命をされると?」

「まさか、当家の戦力ではそれこそ無謀な試みです、ですが……」

 ユリウスはそこで言葉を途切れさせ後ろに下がった。


 使用人が扉が開きアナステシアス・アクロイド公爵が姿を見せた。

 その姿は息子といくらも歳が違わない様に見える若々しさは相変わらずだ。

「主席殿、遠路はるばるご苦労である」

「ご無沙汰しております、公爵様」

「それでユリウス、お前はなぜここにいる?」

 アナステシアス公爵は息子を睨んだ。

「マリオン殿にご挨拶しておりました」

「では、戻るが良い」

「かしこまりました」

 ユリウスが退出したところで、アナステシアス公爵はソファーに腰を下ろした。

「ハリエット様の使いとのことだが、書状ではないのだな?」

「はい、失礼ながら口頭でお伝えいたします」

「よかろう」

「では、お伝えいたします。陛下は先王様をニックスに即日戻すことをお求めです」

 ニックスは、アーヴィン・オルホフ侯爵の領地ニービス州の州都だ。先王一家が先日まで滞在していた。

「またか、その話は断ったはずだ」

「無論、聞き及んでおります。改めてのお願いでございます」

「再度、断った場合はどうなる?」

「再革命に備え、王都との境界門の閉鎖と公爵様の王都のお館を接収されるとのことです」

「まるで討伐の準備であるな」

「私からはお答えしかねますが、既に国軍の動員が始まっております」

「国軍ごときに我が騎士団とことを構えるつもりか?」

「そのような事態にならないと良いのですが」

「ハリエット様も、せっかく金回りの良くなった国軍を潰されてはたまらんだろう?」

 アナステシアス公爵には、組織を変更後の王国軍のことは耳に入って無い様だ。

「そうでございますね」

 マリオンも余計なことは言わない。

「いかがなされます、公爵様?」

「無論、先王陛下には我が城に引き続きご滞在いただく」

「では、再革命の兵を挙げられると?」

「そう急くでない」

「先王様がニックスに戻られない場合、例え公爵様に挙兵の意図が無くとも、王宮は再革命の準備ととらえて動きますが、よろしいのですか?」

「よろしくは無いが、致し方あるまい」

「かしこまりました、では公爵様のお返事を持ち帰ります」

「うむ」

 アナステシアス公爵は頷いた。

「最後に一つだけよろしいでしょうか?」

「構わぬ」

「公爵様は何故そこまでして先王様を留め置かれるのですか?」

「無論、先王陛下がそれをお望みだからに他ならない」

「かしこまりました、では、失礼いたします」


 会見を終えたマリオンは、正門を出るとイリオト城を後にし曇天の空に舞い上がった。



 ○リアンティス州 森林上空


「自分で飛ばないというのは実にいいですね」

 マリオンはドラゴンゴーレムから眼下に拡がる凍てついた森林を見る。

「にゃあ、アナステシアス公爵は引かないにゃんね?」

 ドラゴンゴーレムを操るエマが尋ねた。

「残念ながら意志は変わらずです」

「相変わらずの頑固ジジイ振りにゃん」

 呆れ顔のエマ。

「エマさんは、アナステシアス公爵様をご存知なのですか?」

 意外そうなマリオン。猫耳たちがウロチョロし始めて日が浅いからだ。

「にゃあ、人となりは嫌でも耳に入るにゃん」

「王宮に居ればそうですね」

 頷くマリオン。かしましい人間は何処にでもいる。

「アナステシアス公爵が拒絶したのなら次のフェーズに入るだけにゃん、それに既に兵を集めている時点で再革命の意志有りにゃん」

「兵ですか、噂ではなく?」

「北方七州が協力しているにゃん、リアンティスの諸侯軍が隠してあるにゃん」

「本当ですか?」

 マリオンの声が鋭くなる。王都周辺の動きには宮廷魔導師も独自に監視の目を光らせていたがその動きは掴んではいなかった。

「ウチらで確認済みにゃん、表向き北方七州との対立を隠れ蓑に取り潰された貴族派領地の騎士団崩れ辺りを極秘に集めていたみたいにゃん」

「では最初から?」

「何処までがアナステシアス公爵の意志かは不明にゃん」

「何者かに踊らされていると」

「にゃあ、ただし切っ掛けを作ったのは間違いなく先王とアナステシアス公爵にゃん」

「そこを何者かに付け込まれたと」

「ふたりとも為政者としての器ではないということにゃん、にゃあ、現時刻を以て王都とリアンティス州の境界門を閉鎖するにゃん」

「致し方ありませんね」

 マリオンは振り返って小さくなる州都イリオトの街を眺める。

「にゃあ、これから何が出てくるか、お楽しみにゃん」

 エマは真っ直ぐ前を見据えて笑みを浮かべた。



 ○王都タリス ケントルム大使館 貿易事務室


『先程、王宮の使者が訪れましたがアナステシアス公爵は先王を戻すことを拒絶されました』

 ルーファス第二王子の配下であるエサイアス・ネルソンの元にリアンティス州の領主アナステシアス・アクロイド公爵の居城に潜入している者から念話が入った。

 エサイアスは貿易事務官の書類仕事をしながら応答を開始する。

『先王は面会には立ち会わなかったのですか?』

『立ち会われませんでした』

『王宮の使者の反応はどうです?』

『革命権の行使を前提に対応するとのことです』

『わかりました、また報告をお願いいたします』


 続けて別の者から念話が入った。

『リアンティス州の隣り合う王都とタンピス州、リーリウム州、フィークス州の各境界門が閉鎖された様です』

『閉鎖ですか?』

『はい、先ほど各所で』

『随分と早く動きましたね』

 昨日、王国軍が王都とリアンティス州との境界門に移動したのは確認済みだが、早くも閉鎖を完了したということか。

 更に念話での報告が続く。

『アナステシアス公爵の王都の館が接収されました』

『接収?』

『はい、先ほど屋敷の中の者はすべて退去させられた様です』

『わかりました』


 念話を切り上げたエサイアスは息を吐く。

「ここに来て思っていた以上に早く動き始めましたね、シエロから早々に引き返して正解でした」

 エサイアスは普通なら一週間程度掛かる距離を僅かな時間で移動していた。

「いよいよ、忙しくなりますね」

 糸のような目を更に細めた。



 ○王都タリス 王立魔法大学附属魔法学校 教室


『そうか、リアンティス州の境界門を封鎖したか』

 ルーファスは、講義を聞き流しながらエサイアスからの念話に集中する。

『先王を殺すかと思ったが、詰めが甘いな』

『ハリエット陛下がでございますか?』

『いや、アーヴィン・オルホフ侯爵だ』

『アーヴィン侯爵様の配下に、暗殺術を操る配下がいないとも思いませんが』

『暗殺するまでもないと考えているのかもな』

『念の為、更に先王の守りを固めますか?』

 現在はアナステシアス・アクロイド公爵の居城に潜入している者が密かに先王を警護していた。

『なに、いまのままで問題あるまい』

『危険ではございませんか?』

『アーヴィン侯爵が正攻法にこだわるなら問題あるまい』

『かしこまりました、計画はどうなされます?』

『多少早まりはするが計画自体も変更する必要はあるまい、遅くとも明日には先王が革命を宣言されるだろう』

『明日でございますか?』

『そうだ、先王はともかく面子を重んじるアナステシアス公爵だ、境界門を閉ざされたことは顔に泥を塗られたと感じるのではないか?』

『左様かと』

 ハリエットは騎士団と近衛を潰し国軍を防衛の主力に据えているが、多少のテコ入れでどうにかなるレベルではない。

 あれでは実戦に耐える軍隊になるのには甘く見積もっても数年は要する。

『アナステシアス公爵の軍勢が王都に到達するのもそう難しくはあるまい』

『まず間違いないかと』

『我々も前倒しで動かなくてはなるまい、革命軍に恩を売らなければならぬからな』

『殿下、マコト公爵はいかがなされます? 開戦前にこちらの陣営に引き入れるのが最善かと思われますが』

『マコトに渡りを付ける必要があるか』

『私にお任せ下さい』

『いや、マコトは後で構わん、旗色が悪くなれば向こうから擦り寄って来るだろう、来なければそう仕向けるまでだ』

『かしこまりました』

 ルーファスは念話を終え授業に戻る。その思考は再革命ではなく王宮を占拠した後の行動へと移っていた。


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