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森を目指すにゃん

 ○帝国暦 二七三〇年〇五月〇三日


 朝ごはんのサンドイッチとジュースを出しっ放しだった外のテーブルに用意する。

 夜が肉ばっかりだったので、朝は野菜中心だ。

 リーリはもうパリポリ音を立てながらサラダを食べてる。

「朝にゃんよ」

 大型テントと毛布を消して男ども全員にウォッシュを掛ける。

「にゃあ、普段より綺麗になったにゃん」

「本当だね」

 女子職員たちは寝起きの男どもの顔を見てクスクス笑う。

「こいつは美味いな、何て言う食い物なんだ?」

 昨夜、自宅に戻ったはずのギルマスがサンドイッチを食べていた。

「野菜とチーズのサンドイッチにゃん」

「ほお、チーズか、珍しい食材を使ってるんだな、しかも美味い」

 こっちの世界にもチーズは存在するのだが、あまり一般的じゃなかった。

 乳製品自体がほとんど出回ってない。

 なんたってウシが人間を食べる猛獣だから仕方ない。

 こちらでの乳製品はヤギのお乳が原料だそうだ。

「にゃあ、デリックのおっちゃん、貴族は美味しいものを食べてるって本当にゃん?」

「いや、味はそれほどでもない、肉だってマコトの用意してくれたモノの方が間違いなく美味いぞ」

「そうにゃん? 貴族の食卓を覗いて見たかったから、ちょっと残念にゃん」

「貴族の料理番にでもなりたいのか?」

「にゃあ、レシピを知りたいだけにゃん」

「普通は門外不出だぞ」

「そういうモノにゃん?」

「没落貴族のレシピならたまに売り出されるらしいが、一般市民が手に入れるのは難しいだろうな」

「人気商品にゃんね」

「そういうことだ」

「無理して買うほどのモノじゃないにゃんね」

「マコトの場合はそうだろうな、おお、これはやばいな」

 一応、並べて置いたかつサンドをおいしそうに食べてる。

 筋肉が肉を求めてるのだろうか?


 朝食の後は、ロッジだのテーブルだのを全部消して裏庭を元の状態に整えた。

 今日は雑用をこなしてから、シャンテルとベリルのところに顔を出す予定だ。

 森に行けるかどうかは微妙だが頑張るにゃん。



 ○プリンキピウム 繁華街 古着屋


 まずは盗賊からの戦利品を売っぱらうべく、冒険者ギルドにほど近い古着屋にやって来た。

 プリンキピウムではたかが知れてるがいちばん高級そうなところを選んだ。

「いらっしゃいませ、お嬢ちゃんと、おおこれは珍しい、妖精さんですね、今日はお使いかな?」

 店主はプリンキピウムにしては身奇麗な中年紳士だ。

「お使いじゃないにゃん」

「そうだよ」

 まだ朝早い開店直後の時間だから他に客はいない。

「買い取りして貰いたいにゃん」

「承知しました、ではこちらにどうぞ」

 物腰の穏やかなオジサンだ。

 買い取りカウンターにドサッと古着を出す。

 古着と言ってもオレが洗浄と修復と改良をしてるので元の服よりランクが上がってる。

 全部を一度に買い取るのは無理だろうからカウンターに乗せられる範囲で。

「これはこれは随分と高級なお召し物ですね、いったいどちらで?」

「これにゃん」

 盗賊の討伐証明を見せる。

「そのままではボロかったので、魔法で綺麗にしてから修復するついでにちょびっと改良したにゃん」

「確認してみるといいよ」

「ああ、魔法ですか、道理で縫い目が有りませんものね」

「にゃあ、買い取れるにゃん?」

「幾つかは州都で売った方がいいものがありますが、それ以外はお引き受け出来ます」

「値段はどうにゃん?」

「では、査定にお時間を下さい」

「了解にゃん」


 一〇分ほど待って示された値段はちょっと安すぎだ。

 流石に商売人だ、丁寧な接客でオレから安く巻き上げようとする。

 でもそうは行かない。

「オレの希望とかけ離れてるから、今日のところはヤメておくにゃん」

「それがいいね」

 カウンターに置いた服を妖精と一緒に仕舞おうとする。

「ちょっと待って下さい、では、おいくらでしたらお売り頂けますか?」

「最低でも三倍は欲しいにゃんね」

「三倍ですか、では二倍ではどうでしょう?」

 いきなり査定額が跳ね上がった。

「まだぜんぜん安いにゃん」

「わかりました、では、二.二いや二.五倍、それが限界です」

「にゃあ、ちょっと安いけどわかったにゃん、それでいいにゃん」

 半分も売ってないが、残りは州都で売ったり物々交換で使うのが良さそうだ。

 いまのオレならいくらでも作れるし。


 次に武器屋に向かう。



 ○プリンキピウム 繁華街


 こちらは古着屋と違って選ぶほど店の数がない、プリンキピウムにはたったの二軒しかない。

 冒険者が街の基幹産業にしては寂しい限りだ。

「近い方でいいにゃんね」

「いいと思うよ」

 馬をパカポコと歩かせる。

 武器屋は小洒落た外観で、かなり儲かってそうだ。

「にゃ!?」

 馬を降りたところで武器屋から人が飛んで行った。比喩じゃなくて本当に。

 路上にゴロゴロ転がったのは若い兄ちゃんだった。顔が腫れ上がってる。

 発射元はいま正にオレが訪れようとしていた武器屋だ。

「出て行きやがれ! このクソガキが! てめえはクビだ!」

 店から出て来たのはギルマスより大きな筋肉質のおっさん。

 このおっさんなら武器なんて要らないと違うか?

「何だガキ、てめえもぶっ飛ばされたいか?」

 いきなり武器屋のオヤジの鬼瓦みたいな顔に睨まれた。

「にゃ!」

 びっくりして電撃をブッ放ってしまった。


「うぉ!」


 パーマ頭になって、ドサッ!と仰向けにぶっ倒れるオヤジ。

「に、にゃあ、こんな天気なのに雷とは危ないにゃんね」

 リーリを始め、通行人たちも空を見上げる。

 雲一つないいい天気だ。

 それから皆んな関わり合いになるのはごめんとばかりにそそくさと立ち去る。

 オレも馬車を出して倒れたままの兄ちゃんを魔法で荷台に運び込んで武器屋の前を速攻で離れた。

 店の前には不幸にして雷に打たれたオヤジだけが残される。

 オレは何も悪くないにゃん。



 ○プリンキピウム 市街地 公園


 近くの公園らしき場所に馬車を停めた。

「うっ、ううう」

 武器屋のオヤジにぶん殴られた兄ちゃんはかなりの重症だ。

 骨折も何箇所かしてる。

 しっかり利き手を潰してるあたり武器屋のオヤジの底意地の悪さが読み取れた。

「直ぐに治してやるにゃん」

「うう、あぅ、うう」

「お金は取らないから安心していいにゃん」

「マコトの治癒魔法はピカイチだから安心していいよ」

 リーリが横から説明する。

 治療を開始する。

 怪我を治療して顔を元に戻したら二〇歳ぐらいのイケメンが出て来た。

 ついでにウォッシュで完璧だ。

「スゴい! 完璧に治ってる! しかも前から有った腰の痛みまで綺麗になくなってるよ!」

 兄ちゃんは自分の身体をチェックした。

「オレはマコトにゃん、こっちがリーリにゃん」

「ありがとうマコト、リーリ、おかげで助かったよ、ボクはチャック・ボーン、武器屋の職人だったけど、いまは無職の流浪人になるのかな?」

 だんだん声が小さくなった。

「チャックは何で武器屋を追い出されたにゃん?」

「いろいろ有ったんだけど、お得意さんの剣を安くメンテしてあげたのがダメだったみたいだ」

「そんなに安くしたにゃん?」

「いや値段に付いては適正価格だと思ってるよ、店の値段が高すぎるんだ」

「それで半殺しにされて投げ出されにゃん?」

「そうなんだ、ボクも我慢の限界だったからちょうど良かったよ、あのままいたらもっと酷いことになってたと思うし」

「にゃあ、チャックはこれからどうするにゃん?」

「もう店には戻れないから、自力で何とかするよ、住むところが無くても自由になれたからそれで十分だ、じゃあ、ありがとう、お礼はいつかするよ」

 馬車を降りて爽やかな笑顔のチャック。

「にゃあ、待つにゃん」

 盗賊から奪取したテント一式と毛布を洗浄と修復をして出してやる。ついでに防水加工もした。

「ホームレスでもこれで雨露はしのげるにゃん」

「こんな立派なもの貰えないよ」

「にゃあ、これも何かの縁にゃん、それと当面の生活費と着替えもやるにゃん」

「えっ、こんなに?」

「何をするにも金は掛かるにゃん」

「そうだよ、お金が無くて犯罪奴隷に堕ちるヤツは多いんだから」

 妖精にも諭される。

「わかった、これもいつか必ず返すよ」

 チャックは手を振って馬車から離れて行った。

 手に職があるから何とかやって行けるだろう、子供じゃないんだし。


「にゃあ、武器を売るのは後回しにゃん」

「そうなの?」

「にゃあ、シャンテルとベリルの所が先にゃん」

「ふたりに会いに行くんだね」

「にゃあ」

 予定を繰り上げてオレたちはシャンテルとベリルがいるノーラさんの家に向かった。



 ○プリンキピウム 市街地 ノーラさんの家


「にゃあ、こんにちはにゃん」

 ノーラさんの家の前で馬車を片付けて玄関の前で声を掛けると、こっちに向かって駆けて来る足音が家の中から聞こえた。

「いらしゃい、マコトさん、リーリさん」

「ネコちゃんとリーリちゃんだ!」

 シャンテルが扉を開けてくれて、ベリルがオレに抱き着いた。

「どうにゃん、おばあちゃんの家は?」

「おばあちゃんね、とっても優しいよ」

「ええ、とっても優しいです」

「いまね、おねえちゃんとお家の中をお掃除してたの」

「にゃあ、偉いにゃんね」

 ノーラさんは、身体が不自由だから掃除ひとつでも大変だったことが伺える。

「おばあちゃんはどうしたにゃん?」

「いま寝室にいます、身体が辛いみたいです」

「そうにゃん、オレが様子を見てもいいにゃん? たぶん治療できると思うにゃん」

「お願いします」

 シャンテルとベリルのふたりにノーラさんの寝室に案内してもらう。


「あら、マコトさんと妖精さんが来てくれたのね」

 ベッドに寝ていたノーラさんが身体を起こそうとする。

「にゃあ、そのままでいて欲しいにゃん」

「おばあちゃん、マコトさんは治癒魔法も使える魔法使いなの」

「ネコちゃんが、おばあちゃんの身体を治してくれるよ」

「治癒魔法を使えるんですか?」

「そうだよ、マコトの腕はあたしが保証するよ」

 リーリが保証まで付けてくれた。

「魔法使いだからその歳で冒険者をしてるわけね」

「そういうことにゃん、まずはノーラさんの身体を診せて貰うにゃん」

 手を握ってノーラさんの身体をスキャンする。

 症状からあらかじめ予想していた通りだ。

「わかったにゃん、オレでも治せる症状にゃん」

「マコトさんが治せるの? でも、お支払いする治療費がないわ」

「にゃあ、オレは冒険者で治療師じゃないからお金は必要ないにゃん、それにシャンテルとベリルの為にもノーラさんには元気じゃないと困るにゃん」

「わかったわ、マコトさんお願いします」

「にゃあ、直ぐに終わるから楽にして欲しいにゃん」

 ノーラさんは目を閉じて身体の力を抜いてくれた。

「始めるにゃん」


 治癒の光が部屋を満たす。

 エーテル器官に魔力を送りつつダメージを受けた肉体の時間を巻き戻す。

 治癒魔法も慣れてきたからか三分程度で終わった。


「にゃあ、これで治ったはずにゃん」

 ノーラさんが目を開けて身体を起こした。

「本当、身体に痛みもないし思い通りに動かせるわ」

 ベッドから降りて杖なしで歩く。

「ついでにお家も修復するにゃんね」

 ウォッシュと修復を同時に行う。

 トイレを水洗にして、水で身体を洗う場所もお湯の出るシャワールームに作り変えた。

「まあ、まるで建てたばかりの家みたい」

 いちばん驚いていたのはノーラさんだった。

「にゃあ、補修ついでにちょっと便利な魔導具を入れただけにゃんよ」

「魔導具って、身体を治していただいた上にこんなにして頂いては」

 調子に乗ってちょっとやりすぎたか。

「にゃあ、これはオレからノーラさんへの全快祝いのプレゼントにゃん、気にせず使って欲しいにゃん」


 お昼はリビングでいただく。

 メニューはカツサンドだ。

「これはいったい何て言う料理なんですか?」

「おばあちゃん、これはね、カツサンドって言うお料理なんだよ」

 オレに代わってベリルが答えてくれた。

「こっちではあまり食べられない料理だけど美味しいにゃんよ」

「本当ね、とてもとっても美味しいわ」

 ノーラさんも美味しそうに食べてくれた。

「でしょう? マコトの料理はどれも美味しいんだよ」

 リーリが自慢するのはいつものことだ。

「マコトさんはどちらにお住まいなんですか?」

「にゃあ、いまのオレは住所不定の冒険者にゃん」

 無職じゃないからセーフだ。

「マコトさんは、住むところがないの?」

「そうにゃん、プリンキピウムの街の中に常設の家はないにゃん」

「常設の家ですか?」

 首を傾げるノーラさん。健康を取り戻したいまは十分に四〇代で通用する。

「マコトさんは家を持ち歩いているの」

 ノーラさんにシャンテルが説明する。

「そうにゃん、これまでは森の中や冒険者ギルドの裏で野営してたにゃん」

「マコトさん、森の中で野営なんて危険過ぎるわ」

「にゃあ、オレは魔法使いだから問題ないにゃん」

「そうだったわね、魔法使いは普通の冒険者と一緒にはできないわね、でも油断してつまらないことで命を落とした冒険者はたくさんいるの」

「にゃあ、そこは肝に銘じてるにゃん」



 ○プリンキピウム 西門


 昼過ぎにノーラさんの家を出たオレは、リーリを頭に乗せて魔法馬で門に向かった。

「マコト、昨日の肉、美味かったぞ」

 守備隊副隊長のおっちゃんに声を掛けられる。

「にゃあ、それは良かったにゃん」

「今日は戻ってくるのか?」

「野営する予定だから早くても戻りは明日以降の予定にゃん」

「六歳で野営とはすげーな、気を付けて行けよ」

「にゃあ、わかってるにゃん、ヤバいのが出たら逃げるにゃん」

「ああ、それでいい、妖精さんもマコトを頼むぞ」

「任せて!」



 ○プリンキピウムの森 南西エリア


 門を出て森に入った。

「マコトはまた魔獣と戦いたいんでしょう?」

「にゃあ、魔獣はまだ早いにゃん、もっと経験を積んでからにするにゃん」

「マコトだったら魔獣の森に突っ込んでも大丈夫だと思うけど」

「にゃあ、皆んなに注意されたばかりだから無茶はしないにゃん」

「そうだね、魔獣の森に絶対はないからね」

「リーリは魔獣の森に行ったことが有るにゃん?」

「お気に入りだった街が魔獣の森に沈んだって知った時ぐらいかな、魔獣でいっぱいになってて昔の面影なんて無くなってたよ」

「にゃあ、リーリは魔獣を倒したりしないにゃん?」

「しないよ、だって魔獣はあたしたちを襲ったりしないもの」

「もしかして仲良しにゃん?」

「それも違うかな、魔獣は妖精を認識できないんだよ」

「そうにゃん?」

「あたしらも興味がないから、魔獣のことはあまり知らないんだよね」

「知らないのに魔獣の森に行っても大丈夫なんて言ったにゃん?」

「それはマコトの能力から弾き出した予想だよ」

「にゃあ、適当言ってたわけじゃないにゃんね」

「少しテキトーだったかな」

「にゃ~」

 いずれにしろ、いま直ぐ魔獣の森に突っ込むのは無謀だと思う。



 ○プリンキピウムの森 南西エリア(危険地帯)


 探査魔法を打ちながら魔法馬を進ませ森に深く分け入った。

「あたしの探査魔法を使わなくていいの?」

「にゃあ、オレの魔法の訓練も兼ねてるにゃん、間違ってたら教えて欲しいにゃん」

「わかった、あたしが答え合わせしてあげる」

「よろしく頼むにゃん」

 リーリは魔法馬の頭に座る。

 あぐらをかいているのはオレの影響だろうか。

 妖精に悪いことを教えてしまった。


「にゃあ、見付けたにゃん」

「種類はわかる?」

「にゃあ、恐鳥にゃん」

 最初に見付けたのは恐鳥だ。

「この前の軍鶏ほどではないけどデカいにゃんね」

「正解! 次はなるべく気付かれないように近付いて」

「にゃあ」

「魔法は使わないでね」

「にゃお」

 気配を殺して反応が有った恐鳥との距離を詰める。

『認識阻害は自分の気配を隠せて初めて本当の効果が出るんだよ』

 リーリから念話だ。

『にゃあ、初めて知ったにゃん』

 オレの認識阻害が中途半端だったのはそういう理由だったらしい。

 気配をできる限り殺して恐鳥に近付く。

 オレの魔法馬は音を立てずに進む。

 いよいよ肉眼で確認できる位置まで距離を詰めた。

 恐鳥は地球では遠の昔に絶滅してるが、こっちでは恐竜ともどもバリバリの現役だ。

 名前の通り盗賊も裸足で逃げ出しそうな面構えをしてる。

『にゃあ、あっちもオレを捉えてたにゃん』

 オレは銃を構えてた。


『ギエエエエエ!』


 何とも耳障りな声を上げて突っ込んで来る。

 デカい図体なのにめちゃくちゃ速い。

 でも、オレの敵じゃない。

 眼と眼の間に半エーテルの弾丸を三発連続で撃ち込み、それを起点に内側から電撃を放った。

 恐鳥の意識どころか命を刈り取ってぶっ倒れる前に分解する。

「にゃあ、入れ食いの予感にゃん」

 オレの魔力に反応して森の獣たちが集まって来る。

「にゃはは、いっぱいいるにゃん」

 探知した獣の反応のすべてに電撃を撃ち込んで一度に全部分解した。

「マコト! 認識阻害の練習になってないよ!」

「にゃあ、そうだったにゃん」

「魔力も隠さないとダメだよ、魔力の隠蔽は基礎中の基礎だよ」

「みゃあ」

 気配を消しても魔力がだだ漏れだった。


「もっと奥に行くにゃん」

 魔力を絞って進む。

 今度は気付かれること無く獣に近付いて銃を使う。

「にゃあ、いい感じにゃん」

「うん、いい感じだね」

「もっと進むにゃん」


 オレの探知魔法に恐鳥よりももっと大きな反応が返って来た。

「にゃお、これは魔獣に近い大きさにゃん」

「でも、魔獣じゃないね」

「正体不明にゃん」

 オレはそのまま馬を走らせる。

 相手はいったい何だ?

 巨木の間を高速ですり抜ける辺りは魔獣と遜色がない。

「にゃお、デカいのに敏感なヤツにゃん、気づかれたにゃん」

 相手もオレに向かって移動を開始していた。

「魔獣じゃないのは、確かだけどそれに近い何かだね」

 突然、巨大なハサミが死角から振り下ろされた。

「にゃあ!」

 まるで重機のバカでかいバケットだ。

 それが死角から交互に来る。

 しかし、オレの探査魔法からは丸見えだ。魔法馬を回避させた。

 探査魔法は、その形を正確に捉えた。

「にゃあ! エビにゃん! 巨大エビにゃん!」

「エビ!?」

 オレは追ってくるエビに振り返って銃口を向けトリガーを引いた。

 エビの頭を吹き飛ばす。

「にゃう?」

 オレはエビを分解した。

 もう一匹のエビが入れ替わるように現れた。いや一匹ではない。

「にゃあ! もっといるにゃん!」

 何の事はない、巨大エビに囲まれていた。

 次々と突き出されるバカでかいハサミを魔法馬がアクロバティックに避ける。

「にゃお! エビのくせに待ち伏せとはやるにゃん!」

 その特上の脳味噌に半エーテルの弾丸を叩き込んで次々と倒し分解する。

「にゃあ! いったい何匹いるにゃん!」

 もうトリガーハッピー状態で撃ちまくった。

 魔力は絞ったままなのに巨大エビの入れ食いが続く。

「にゃあ、そこらじゅうエビでいっぱいにゃん!」

「頑張れマコト!」

「にゃあ、頑張るにゃん」

 集中力が途切れそうになるのを気力でカバーする。

 それでも防御結界にハサミが当たって火花が散った。電撃の載った結界だからエビも無傷では済まないけどな。

 ハサミがイカレたエビを始末し最後の個体にも銃弾をたっぷりくれてやった。


「にゃふぅ、今夜はエビバーガーにゃん」

 大型重機サイズのエビを全部で十八匹を分解していた。

「エビバーガー!」

 食べたことがあるのかどうか知らないがリーリのテンションが上った。


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