お姉ちゃんにゃん
○エクシトマ州 帝都エクシトマ 魔法大学 医務室
天玉の大盛りでお腹をパンパンにした後に呼び出されたのは、大学の医務室だった。
「にゃにゃ?」
医務室のデスクに目を閉じ微笑した狐耳の美人でエロい女医さんが半透明の状態で座っていた。おっぱいは冒険者ギルドがスカウトに来るレベルだ。背は高い方だな。
白衣だから女医さんだろうか。
「お館様、これは何だと思うにゃん?」
猫耳たちが集まっていた。
「狐耳のエロい女医さんの姿をしたゴーレムみたいな何かにゃんね」
どうも身体は生き物の様に柔らかそうだが、構成物質は違う。
「どうやら身体は生きてる金属の一種みたいにゃん、中身まで全部それにゃん、刻印も何も無いにゃんね」
「お館様、それで動くにゃん?」
「普通は動かないにゃん、たぶんこれは依代にゃん」
「依代というとこれに魂か何か挿れるにゃんね」
「そう言うことにゃん」
「それって精霊情報体の知識にゃん、それはつまりお館様と同じ転生者が作ったということにゃんね」
「にゃあ、つまりレオナルド・ダ・クマゴロウ作にゃん、そうそうヤバい転生者に登場されても困るにゃん」
精霊情報体うんぬん抜きでもこのエロい外見でクマゴロウで決まりだ。
「中身は再生されないにゃん?」
「たぶん、魂の類は消滅の刻印では消せないにゃん、故に再生もないにゃん」
「お館様がアウルムで拾ったドラゴンモドキの中身の幻獣はどうにゃん? 格納空間で反応しているみたいにゃん」
「にゃあ」
猫耳が提案したのは、ケラス州の旧州都アウルムでオレの格納空間に回収した魔力で構成された幻獣のことだ。
「確かに、プルプルしているにゃん、いままでにない反応にゃん」
狐耳のエロい女医さん中身が本当に幻獣ならあるかもしれない。幻獣なんてそうそうフラフラしてないし。
「実験してみるにゃん」
『『『にゃあ』』』
猫耳たちも賛成の鳴き声が念話で届いた。
「挿れるにゃん」
半透明の狐耳の女医さんに触れる。
間違って幻獣を逃したりして再生が一段落した帝都エクシトマをぶっ壊したらミマやカホに大目玉を食らってしまう。
それだけは避けたいところだ。
「来たにゃん」
格納空間から解放すると幻獣が這い出して、自らエロい女医さんの中に潜り込んだ。
次の瞬間、女医さんの身体から光があふれた。
「にゃあ」
防御結界……は、不要か。
光が止むと狐耳とフサフサの大きな尻尾が揺れた。
「あっ、ネコちゃん、やーん、可愛い♪」
いきなり女医さんに抱き上げられて頬ずりされた。ちゃんと柔らかい。
「やっぱり中身は、アウルムの幻獣だったにゃんね」
「どうしても強い魔力や濃い魔力に惹かれちゃうのよね」
「にゃあ、砂海には行かないにゃんね」
「やーよ、あんな怖いところ」
「幻獣にも怖い場所にゃんね」
「魔獣も好きじゃないけど、あのマナの濃さには逆らえないよね、それで凄いところ見付けたからちゅーちゅーしてたらネコちゃんが来たってわけ」
一〇〇年ぐらいちゅーちゅーしてたのか?
「それで、女医さんは何処の誰にゃん?」
「私はタマモ、准天使でネコちゃんのお姉さん」
お姉ちゃんはともかく。
「准天使にゃん? 幻獣とは違うにゃん」
天使アルマは幻獣と言っていた。
「幻獣は肉体が無い時ね、いまは准天使でネコちゃんのお姉さん」
「准天使タマモは、魔獣の大発生前までは、この帝都エクシトマの魔法大学にいたにゃん?」
「そう治癒魔法師をしていたの」
「にゃあ、准天使タマモなら魔獣が来ても逃げられたと違うにゃん?」
「お姉ちゃんて呼んで」
「にゃあ、タマモ姉にゃん」
「ここで、ネコちゃんに会えるって聞いていたから、移動するわけにもいかないじゃない? だから身体だけこっちに置いて行ったの」
「にゃ、誰に聞いたにゃん?」
「この身体をくれた子よ」
「にゃあ、タマモ姉の身体を作ったのは、レオナルド・ダ・クマゴロウにゃん?」
「レオナルド・ダ・クマゴロウ、そんな変な名前だったかな?」
首を傾げるタマモ姉。
「エロい魔法絵が得意にゃん」
「ああ、それならそうかも、見た目は可愛いのにモノ凄いのを描くからドン引きしちゃうのよね」
「にゃ、見た目が可愛いおっさんにゃん?」
想像が追い付かないが。
「ううん、年齢はともかく見た目はそこの猫耳ちゃんたちぐらいの女の子だよ」
「みゃ! レオナルド・ダ・クマゴロウが女の子にゃん!?」
「そんな変な名前じゃなくて、サクラね」
レオナルド・ダ・クマゴロウの本名が、サクラという女の子だという衝撃の事実を告げられた。
「名前からしてサクラは転生者にゃん?」
「そうなのかな? 遠いところから来たとは言ってたけど」
身体を与えたタマモ姉にも詳細は語っていなかったか。
「サクラに関してもう一つ訊きたいにゃん、魔獣をこの帝都に呼び寄せる刻印を作ったのはサクラにゃん?」
「ああ、魔獣を呼ぶ刻印のことね」
「そうにゃん」
「ええ、サクラはそのために帝都に呼ばれたそうよ」
「呼ばれたにゃん?」
「消滅の刻印を使って魔獣をここに呼び寄せるなんて刻印、誰でも作れるわけじゃないからね」
「消滅の刻印で魔獣を呼び寄せるにゃん?」
「そうしないと魔獣の森が大陸全体に拡がっちゃうでしょ?」
「消滅の刻印に魔獣を呼び寄せる効果なんてあるにゃん?」
「消滅の刻印が起動する時に発生する強大な魔力を利用して、魔獣を呼び寄せる刻印を起動させるの」
「魔獣を呼び寄せる刻印じゃなくて消滅の刻印が先だったにゃん?」
「そうじゃないと起動しないわね」
頭の中でシミュレーションすると確かに起動時に強大な魔力が渦巻き、それを利用すればかなり遠い場所の魔獣を呼び寄せることが出来る。
カホの言ってた五〇~一〇〇年分の魔力も貯める必要もなく起動するわけだ。
「サクラは帝都を魔獣の森に沈めて大陸全体に被害が及ぶの防いだにゃんね」
「少なくても国土の半分は残せたんじゃない?」
「魔獣を呼ぶ刻印は、人類を滅ぼす為じゃなかったにゃんね」
カホが作った消滅の刻印は、王宮に魔獣が到達した時に自動起動する。魔獣を呼び寄せる刻印の起動もそれに紐付けられていたわけだ。
「なんでサクラがそんな刻印を作ったにゃん?」
「王宮から頼まれたそうよ」
「純粋に刻印師としての仕事だったにゃんね」
それで城の根幹に根を張る刻印が刻めたのか。
「ちょっと変わってるけどいい子よ」
「にゃあ、サクラが危ない転生者じゃなくて良かったにゃん」
「エッチな絵を描くけどね」
○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 地下拠点 ブリーフィングルーム
「お館様、タマモ姉の証言の裏が取れたにゃん、城の書庫から魔獣大発生時の行動計画書を発見したにゃん」
エクシトマ城の調査結果の報告を受ける。
「何とも微妙な計画を立てたものだ、もっと奥地に魔獣を集めればいいものを」
カホが腕を組んで椅子に仰け反る。
「実際に魔獣の大発生が起こるとは想定してなかったと違うにゃん?」
「コスト的な問題も有るんじゃないか? 消滅の刻印並の魔力を発生させるのは並大抵のことじゃないぞ」
ミマも戻って来ていた。
「にゃあ、エーテル機関を使ったシステムも城にあるだけだから仕方ないにゃん」
「私も魔獣の大発生まで気が回らなかった」
落ち込むカホ。
「ちゃんと国土の半分以上は残ったにゃん、それだけでもカホの兄弟の子孫は十分偉いにゃん」
「マコトが千年前にいてくれたら良かったのだが」
「にゃあ、オレが今回対応できたのは、猫耳たちがいてくれたからにゃん、帝国みたいに安定した場所なら、良くて逃げ回る方にゃん」
「魔獣の大発生にひとりで立ち向かうこと自体が無謀だ」
「ミマの言う通りか」
「にゃあ、それで改めてサクラの刻印を見た感じはどうにゃん?」
カホに問い掛けた。
「王宮関係者が協力したのなら、無理に既存の刻印を細工した様子が無かったのも納得だ」
「サクラは刻印だけを担当しそうにゃんね」
「だろうな」
「帝都エクシトマが失われた真相がわかったのも大きな収穫だ、大学の教授たちにも共有したい情報だ」
「にゃあ、共有はいいけど身バレしないように頼むにゃん」
「無論だ、父上が既にややこしいことになっている状態で、私の名前が出たら余計な騒動を引き起こす」
「ちゃんとわかってるにゃんね」
先王の再革命の噂に実はエドモンドが生きていたなんて話が加わったら、余計なことを考える輩が出る。
「お館様、意外と付属品の再生に時間が掛かっているにゃん」
「再生の刻印をイジって魔力の供給を増やすのがいいかもしれないにゃんね、それと攻撃型の防犯刻印は一律無効化した方が良さそうにゃん」
「おい待て、そのまま復元するのではないのか?」
ミマから物言いが入る。
「防犯刻印の資料はもう十分と違うにゃん?」
「それはそうなのだが」
「このままだと大学の研究者を入れた時に死人が出るにゃんよ」
「確かに大学の研究者を入れたらそうだな、でも大丈夫なのか? 手癖の悪やつが紛れ込む可能性があるぞ」
「にゃあ、防犯結界の代わりに防御結界と置き換えるから抜かりは無いにゃん、そもそもかっぱらいは最初から帝都には入れないし、無許可で持ち出しもできないにゃん」
「それならいいが」
「再生の刻印をイジって帝都内にも自走式三型マナ変換炉を設置するにゃん」
『『『にゃあ』』』
帝都内にいる猫耳たちから念話が帰って来た。
起動中の再生刻印をイジって自走式三型マナ変換炉を追加で設置する。
「私が一〇年掛けて作った刻印が簡単に手直しされると格の違いを痛感させられる」
カホがボソっと呟く。
「ゼロの状態からこれだけの刻印を組み上げたカホとちょっとだけイジるオレたちを比べても意味がないにゃん」
「そういうものか?」
「にゃあ、そういうモノにゃん」
何でも魔法を一から組み上げるカホと既存のモノを解析して改造するオレたちでは手間がまったく違う。
「お館様、冒険者ギルドの魔導具が息を吹き返して帝都本部として全土のネットワークに繋がったにゃん」
猫耳から新たな報告が上がる。
「一〇〇〇年ぶりに復活にゃんね」
「アナトリ王国とフルゲオ大公国とフィーニエンスの冒険者ギルドが一つに統合されるみたいにゃん」
「システムがまた一つになるにゃんね」
「合わせてネットワークの修復が行われているにゃん、にゃあ、太古の道とは違う街道にも流れてるにゃんね」
「帝都で一元管理してたにゃんね」
「そうなのか?」
カホが不思議そうな顔をする。
「カホがカチンコチンになった後に追加されたにゃんね」
「私は帝都建設の途中に姿を消しているからな、全容ならタマモに聞いた方がいいんじゃないか?」
「タマモ姉は大学の治癒魔導師だから、大学の情報ならともかく王宮の情報には疎いと思うにゃん」
「それもそうか」
「ところでタマモ姉は何処に行ったにゃん?」
さっきまで地下拠点の中をウロチョロしていたが。
「猫耳ゴーレムたちが『たまも姉トオ風呂ニャン』って連れて行ったにゃん」
「皆んなのお姉ちゃんにゃんね」
「おかげでいろいろ貴重な証言が得られた」
ミマは満足げだ。
「タマモ姉のおかげと言えば、レオナルド・ダ・クマゴロウことサクラの存在がはっきりしたにゃんね」
「女の人とは思わなかった」
「ミマもコレクションしていたにゃん?」
「いや、贈り物として何枚か貰ったことがあるが、私の好みでは無かったので、カズキ殿にその都度譲った」
「カズキにゃんね」
「奥方は良い顔はされないが」
奥方のクリステルの価値観は元冒険者だけあって上級貴族よりも庶民に近い。
「にゃあ、そこは仕方がないにゃんね」
「レオナルド・ダ・クマゴロウという人物は有名なのか?」
カホからしたら後世の人物だ。
「本人の情報は皆無だが、作品は高く評価されている、有名人と言っていいのではないだろうか?」
ミマはそれなりに詳しい。
「にゃあ、後は現在も生きているかどうかにゃんね」
「転生者でも一〇〇〇年前の人では、なかなか難しいのではないか?」
不老だが不死ではない。
「そうにゃんね、でもオレとタマモ姉が出会うことを予言した辺り、予知能力を持っているのかも知れないにゃん」
「予知か、するとマコトと会うのも本当かもしれないな」
「にゃあ、危ない人間じゃなければオレとしては大歓迎にゃん」
「ウチらも歓迎にゃん」
「レオナルド・ダ・クマゴロウの中身ならオレよりカズキが大喜びにゃんね」
「ああ、カズキ殿なら間違いない」
ミマが頷いた。
○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 地下拠点 大食堂
「美味しい!」
地下拠点の大食堂でタマモ姉はいなり寿司を食べて尻尾を大きく左右に振る。
じゃれ付きたくなるが我慢だ。
相変わらずの白衣のエロい女医さんスタイルだ。
「にゃあ、今日はタマモ姉の歓迎会にゃん、だからお稲荷さんを各種取り揃えたにゃんよ」
「マコト、これは美味しいよ!」
「大ヒットなの!」
リーリとミンクの妖精たちも大喜びだ。美味しいモノの為なら妖精たちは何処からでも飛んでくる。
「久しいなタマモ」
天使アルマが声を掛ける。幻獣の時とは違う扱いの様だ。
「お久しぶり天使アルマ、おかげ様でまたこの姿に戻れたよ」
「お前にもマコトの守護を頼む」
「はい、サクラにも頼まれているから任せて」
どうやら、サクラはオレのことも頼んでいたらしい。やはりフィーニエンスの皇太子みたいな未来視の能力でもあったのだろうか?
「にゃあ、タマモ姉、サクラはいまも生きてるにゃん?」
「たぶん生きてるんじゃない?」
オレの問いに即答するタマモ姉。根拠は無さそうだ。
「アレの魂が天に還ったという記録はない」
天使アルマは、根拠を示して答えてくれた。少なくとも魂は地上にあるということだ。魂だけ染み付いている可能性もあるが。
「何処にいるかはわかるにゃん?」
「いや、我にわかるのは守護を与えたマコトとその仲間だけだ」
「あたしもわからないな」
「にゃあ、たぶん生きてはいるけど所在は不明にゃんね」
「そんなところだ」
「何処にいてもエッチな絵を描いてるんじゃない?」
「飽きずに一〇〇〇年以上も描いているなら、それはそれで凄いにゃん」
もしそうだとしたら新しい作品が無いから描いただけで売っていないのか、もしくはこの国にはいないのかってところか。
「にゃあ、タマモ姉の名前を付けたのはサクラにゃん?」
「そうだよ」
タマモ姉の名付け親はやはりサクラだった。
玉藻前にしては尻尾が一本だけどな。
「サクラはいつ頃この帝都エクシトマにいたにゃん?」
「魔獣の大発生の一〇〇年ほど前に数年だけいたかな、あたしの身体を作って直ぐにいなくなっちゃった」
「にゃあ、ずっといたわけじゃないにゃんね」
「自分で根無し草って言ってたから」
「根無し草にゃんね」
ソフトクリームはタマモ姉にも大好評だった。
○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 地下拠点 寝室
元チビたちが、しっかりオレの周りを固めていた。その周囲を猫耳たちがにゃあにゃあ言いながら転がっている。
タマモ姉は、一〇〇〇年ぶりに自分の家に戻っていた。
元チビたちもくっつき具合はおおきくなっても以前と変わらない。
『にゃあ、お館様いまいいにゃん?』
王都にいる元宰相ニエマイア・マクアルパインの猫耳エマから念話が入った。
『大丈夫にゃん』
『ハリエット様が先王の件でアナステシアス・アクロイド公爵に最後通牒を突き付けることになったにゃん』
『穏やかじゃないにゃんね』
『にゃあ、穏やかじゃないにゃん、再革命の動きは本当にゃん、アナステシアス公爵は既に北方七州に隠していた兵を動かし始めているにゃん』
『マジでやる気にゃんね』
『にゃあ、先王もハリエット様の警告を無視してリアンティス州からアーヴィン様のニービス州に戻らないところみるとやる気にゃん』
『先王のおっさん、もしかしてバカにゃん?』
『にゃあ、あの方は相手に合わせるだけで何も考えてないにゃん』
『少しは考えてくれないと困るにゃん』
『平時はそれで国が回っていたにゃん』
『元王妃辺りはもうちょっと考えてると違うにゃん?』
『カイトリオーナ様にゃんね、思うところがあっても先王には意見しない方にゃん、元王太子のアーサー様も先王を諌めるとかは期待薄にゃん、先王と一緒に移動したのが何よりの証拠にゃん』
元宰相だけあってエマは元王室の人となりをよく知っている。
『家族揃ってやる気にゃんね』
『そう取られても仕方がない動きにゃん』
『革命権を行使しても、王都の防御結界を無効化できないのにご苦労様にゃん』
革命後に王都とタリス城の防御結界を組み直したついでに、革命権絡みの項目を全部削ったのだ。
革命権が行使されると逆に結界が強化される嫌がらせ仕様になっている。
『準備が完全に整う前に先手を取ってアナステシアス公爵に挙兵させるにゃん、ついでにこの機会に護国派と同調者をあぶり出すにゃん』
ハリエットの名前で最後通牒を突き付け暴走を誘っているが計画したのは猫耳たちだ。
『護国派はともかくアナステシアス公爵に同調者なんているにゃん?』
『兵を集めるのに協力した北方七州にゃんね』
『ケントルム本国の指示にゃんね、違っていたら逆に驚きにゃん』
北方七州は貴族派に分類されるが実質ケントルム派だ。
『他はどうにゃん?』
『アナステシアス公爵は貴族派に受けが悪いにゃん、だから例え檄を飛ばしても他の貴族派には無視されるにゃんね』
『日頃の行いにゃん、国王派と中立派はどうにゃん』
『どちらも同調の動きはないにゃん、たぶん様子見にゃん』
『護国派以外の法衣貴族も様子見にゃんね?』
『にゃあ』
長いものには巻かれるのは当然か。
『後はケントルムにゃんね』
『にゃあ、何処かのタイミングでアナステシアス公爵たちに交流もしくは共闘すると思われるにゃん』
ケントルムの連中も革命権の恩恵を利用するつもりだ。アナステシアス公爵は利用されるだけって気付いてないのだろうか?
『ところで先王様の為に馳せ参じるヤツはいないにゃん?』
『アナステシアス公爵だけにゃん』
『人気がないにゃんね』
『にゃあ、護国派にしたって国体を維持する為の道具としか見ていないにゃん、そこはアナステシアス公爵も同じにゃん』
『アナステシアス公爵もにゃん?』
『あのオヤジはお館様に嫉妬しているだけにゃん、自己顕示欲を満足させる為の手段に利用しているだけにゃん』
『結局、使い勝手の良い道具扱いにゃんね』
『あの方の選んだ道にゃん』
先王の行動に関してはオレがとやかくいう問題でもないか。
『お館様、ウチらはどうするにゃん? 革命前に潰してもいいにゃんよ』
『先王が再革命を宣言してアナステシアス公爵と挙兵したいならやらせればいいにゃん、いまの王国軍なら十分やれるはずにゃん』
『にゃあ、正規軍でも遅れを取ることはないにゃん』
『オレたちは裏で糸を引いてるヤツらをボコるにゃん、特に禁忌呪法とかふざけた真似は絶対に許さないにゃん』
『ケントルムの連中にゃんね』
『そういうことにゃん』
『にゃあ、了解にゃん』
先王一家には有無を言わさずケントルムに送るのが正解だったか。




