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帝都エクシトマにゃん

 ○帝国暦 二七三〇年十一月十四日


 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ 境界外 上空


 一晩かけて早朝に帝都エクシトマの前に到着した。

「「「お館様!」」」

 ドラゴンゴーレムに乗った元チビの三人、シア、ニア、ノアが戦艦型ゴーレムから飛び立って出迎えてくれた。

「にゃあ、ただいまにゃん」

 オレはドラゴンゴーレムの頭の上で飛び跳ねて手を振った。

「危ないぞ、マコト」

 カホはすっかりドラゴンゴーレムを乗りこなしていた。

「にゃあ、オレは大丈夫にゃん、ドラゴンゴーレムに乗らなくても飛翔の魔法で飛べるにゃん」

 ドラゴンゴーレムの頭から一メートルほど浮き上がって見せる。

「にゃあ! お館様ゲットにゃん!」

 猫耳に横から掻っ攫われた。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ 上空 戦艦型ゴーレム(天使建造艦) 艦橋


 再生した帝都エクシトマは、横断するのに魔法馬で丸三日掛かったという伝承も納得の巨大な都市だ。

 オレたちは、上空に浮かぶ戦艦型ゴーレムの艦橋から復元の終わったばかりの帝都を眺める。

「にゃあ、ただの都市じゃなくて城塞都市にゃんね」

 巨大な都市を巨大な城壁がぐるりと囲んでいた。

「私の時代にも魔獣の脅威は、無視出来なかったからな、更に強化されたようだが、しかも都市自体がかなり大きくなっている」

「カホの時代から一五〇〇年後の世界にゃん、それだけ時間があれば街だって変わるにゃん」

「それでもほぼ私の設計通りに造ったらしい、律儀なモノだ」

「にゃあ、それだけカホはオリエーンス帝国の人々に愛されていたにゃんね」

「そうだったのだろうか?」

「カホが疑問を呈しては駄目にゃんよ」

「確かにそうだな」

 カホは眼下の都市に目を凝らす。

「これだけの都市でも放棄せざるを無かったのか」

「にゃあ、魔獣の森に沈んでは帝都機能を維持するのは無理にゃん」

「そういうことか」

「この帝都を失った時がオリエーンス帝国の終焉だったにゃんね」

「帝国としては、その後、魔獣の森の侵食などもあって統一した国家として機能しなくなったらしい」

 ミマが補足した。

「街の中心にあるのが皇帝の居城にゃんね」

 高度限界まで伸びた尖塔を中心に拡がる白亜の城。

 自然の岩山を利用したタリス城と違ってすべて人工物で構成された超巨大な建造物だ。

「エクシトマ城だ、私が知っているのは、まだ建設途中のものだったが間違い無い」

「いかにもファンタジーな感じがいいにゃん」

 カズキの造ったオパルス城にも似ているがエクシトマ城の方がずっと大きい。

 この大きさもファンタジーだ。

「有機的な曲線を描く方が魔法を使って造るには楽だからな、致し方あるまい」

「それはあるにゃんね」

 オレの造った猫ピラミッドも丸い。

「にゃあ、お館様、帝都の中心から普通じゃない魔力を感じるにゃん」

 レーダー担当の猫耳から報告が入った。

「城に何か仕掛けがあるにゃん?」

「あるにはあるが魔力を外に漏らすことは無いはずなのだが」

 カホも首を捻った。

「天使様だね」

 リーリがオレの頭に降り立った

「にゃ?」

「あそこには、天使様がいるの」

 ミンクもオレの頭に乗った。

「にゃあ、天使様がいちばん乗りだったにゃんね」

「天使様が来ているのか?」

「そうみたいにゃん」

「よし、城に行くぞ!」

「にゃあ!」

 ミマと元セザール・マクアルパイン教授のセリが艦橋から走り出た。

「にゃお、まだ城の防御結界を解除してないにゃんよ!」

「結界に焼かれるぞ」

 オレとカホは、ふたりに声を掛けた。


 どうやら、帝都の境界門で所定の手続きを取って入らなくてはならないようだ。

 もしくは防御結界をぶっ壊すか。

 それは最初に結界に突っ込もうとしたミマとセリが強行に反対した。

 現状維持が重要らしい。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ 境界門


 オレたちは、戦艦型ゴーレムから降りてジープを連ねて帝都エクシトマの境界門の前にやって来た。

 既に先行した猫耳たちが門を開いていた。

 門を潜っただけで帝都市民として通行許可を得られる様に細工したのだ。

「地上はかなりきっちりとやってるけど対空防御は、ザルにゃんね」

「仕方あるまい、当時はマコトの戦艦型ゴーレムみたいな強力な結界無効化の刻印を載せたモノの飛来は考慮してなかった」

「ドラゴンゴーレムはどうにゃん?」

「少なくとも人が扱うドラゴンゴーレムは存在しなかった、飛行する魔獣もどきを弾ければ十分だ」

「今後は、作り直した方がいいにゃんね」

「だろうな」

「調査が終わったらだぞ」

「にゃあ」

 横からミマとセリが口を挟んだ。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ 市街地区


 ジープで城に向けて市街地を走る。路面はコンクリートみたいなモノで舗装されており、交差点には信号機も設置されていた。

「何処か懐かしい雰囲気にゃん」

「前世の街を参考にしているから当然だ」

「にゃあ、カホが設計したにゃんね」

「私だけではないが、基本は考えた」

「やっぱ、信号は偉大にゃんね、プリンキピウムあたりから設置すると良さそうにゃんね」


 一〇〇〇年前の最先端の都市をキョロキョロ眺めた。

 軽く見回しただけで、かなり人口があった巨大都市であることがわかる。

 帝都を失うと同時に人々が多くの技術を失ったことも。

「帝都に国力が集中していたみたいにゃんね」

「都市で暮らす方が便利だからな、魔獣の大発生でそれが裏目に出たらしい」

「バックアップは重要にゃんね」

 オレと猫耳たちの拠点は、いまやあらゆるところに設置され、魔法蟻のトンネルで縦横無尽に繋がれ日々更新されている。

 猫耳に猫耳ゴーレムや魔法蟻が増えているからというのもあるが、過剰供給されているマナを消費する為というのが最大の理由なのでバックアップではないか。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 正門前


 エクシトマ城の正門前に到着した。

 帝都の境界門から遠すぎて途中でドラゴンゴーレムに乗り換えたけどな。

 天使様を待たせるわけにはいかない。


「一五〇〇年前の人間でもちゃんと認証するんだな」

 カホが門を開いた。

「にゃあ、まずは天使様のいる場所にゃんね」

「天使様は何処にいらっしゃるんだ?」

「魔力は、城のど真ん中にゃん」

「ど真ん中、すると玉座の間あたりか」

「にゃあ、まずはそこを目指すにゃん」

「玉座の間ならこっちだ」



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 モノレール乗り場


 カホが案内してくれたのは、何処かで見たことのあるモノレール乗り場だった。

「エクシトマ城にもモノレールが走ってたにゃんね」

 タリス城のものと同じ規格っぽい。

「かつてのオリエーンス連邦では普及していたのだろうな、タリス城にまであるとは思わなかったが」

 モノレールは新品同様に復元されていた。

 どうやら、魔導具も建物もすべて新品同様の状態で復元されたようだ。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 玉座の間


「何だ、これは!?」

 玉座の間には、カホの巨大な肖像画が飾られていた。赤い鎧に赤いマント、かっこいいにゃん。

「にゃあ、初代皇帝の肖像画じゃないにゃんね」

「私は知らないぞ」

 カホがいちばん驚いていた。

「にゃあ、カホが兄弟たちに愛されていた証拠にゃん」

 そして、玉座の間には天使アルマがいた。

「にゃあ、お待たせしたにゃん」

「いや、問題ない」

 そして、もうひとりの天使が降臨する。

「そうです、思ったより早かったですね」

「天使ミサ」

 カホが呟く。

 転生者にして北方監視者の天使様。

 見た目は中学生ぐらいの美少女。白い肌に黒い髪。黒い瞳。身体の凸凹はあまりない。白いプレートメイルは天使アルマと似た意匠だ。

「にゃあ、はじめましてにゃん、オレがマコトにゃん」

「私がミサです、ネコちゃんと会える今日の日を楽しみにしていました」

「オレも天使様に会えて光栄にゃん」

 これで天使ミサの呼び出しに応じるというクエストは完了したわけだ。

「にゃ?」

 更に天使様がもうひとり降臨した。

 天使ミサにそっくりなもうひとりの天使様。

「にゃあ、どちら方面の天使様にゃん?」

「私も北方監視者だよ」

「にゃ、北方監視者の天使様は、二人いるにゃん?」

 カホを見ると黙って首を横に振った。どうやらカホも知らない天使様らしい。

「あたしはクミ、もうひとりの北方監視者だよ」

「天使クミにゃん?」

「そーだよ」

 ノリの軽い天使様だ。

「すいません、私の妹なのです」

 天使ミサが本当に済まなそうに頭を下げる。

「えっ、何で謝っちゃうの?」

 聖七神教会も教皇にして北方監視の天使様は腰が低い姉とにぎやかな妹の姉妹だった。

「にゃあ、双子にゃん?」

「そうです」

「ネコちゃんは可愛いね」

 天使クミに頭を撫でられる。

「それに街を再生しちゃうし」

「にゃあ、帝都の再生はカホのお手柄にゃん」

「カホさんは、お変わりありませんね」

「二五〇〇年ほど埋まってましたので」

 それ以前に転生者だから不老の可能性が高い。

「凄い偶然だね、運も味方したか」

 感心する天使クミ。

「神の予言は絶対ですから、偶然も必然なのです」

 断言する天使ミサ。

「にゃ? 神の予言て何にゃん」

「ネコちゃんとあたしたちが出会うことは、神様によって予言されていたんだよ」

 天使クミが答えてくれた。

「お姉ちゃんが、ネコちゃんに無理難題を出したから心配してたんだけど、こんなにも簡単にクリアしたから逆に驚いたよ」

 やっぱ無理難題だったわけだ。ちゃんとわかっているなら次はもっと簡単にして欲しいにゃん。

「わ、わざとじゃありませんよ、私が知らないところに降りられなかったから、結果として難しくなっただけです」

 開き直る天使ミサ。

「にゃあ」

「神は、私たちにもネコちゃんの守護をお求めです」

「神様に求められたら従うしか無いよね」

「神様にゃん?」

「そうです、ですから私たちもアルマと同じくマコトの守護天使に加わりましょう」

「うん、加わっちゃうね」

 天使ミサとクミからも守護を貰うことになった。

「にゃあ、天使ミサとクミから守護を貰えるなんて光栄にゃん、できればオレの仲間たちも守護して欲しいにゃん」

「ええ、いいでしょう」

「皆んな、いい子みたいだからいいんじゃない」

「にゃあ、感謝にゃん」

「ネコちゃんの前世は、男の人だったんですよね?」

「そうにゃん、敏腕の新車営業マンだったにゃん」

「トラックに撥ねられちゃったの?」

「にゃあ、もっと派手にゃん、車に鉄骨が刺さって爆発したにゃん」

「天使様たちは何で天使になったにゃん?」

「実際のところ、気が付いたらこの姿になっていました」

「前世の記憶もあまりないんだよね、女子高校生っぽいところまでは思い出せるんだけど」

「にゃあ、女子高生で天使とは大変にゃん」

「何故か、やることはすべてわかっていましたから、特に苦労はしませんでしたけど」

「苦労と言えば、人間の相手をするのが面倒くさいぐらいかな」

「にゃあ、それは人によるにゃん」

「そうなんですか、天使アルマ?」

「んっ? そうだな」

 天使アルマは妖精たちと玉座の間の片隅に猫耳たちが出したスタンドテーブルでカフェラテとケーキを楽しんでいた。

「ちょっと、何ですかそれは!?」

 お姉ちゃんの天使ミサ様が声を上げた。

「にゃあ、カフェラテとミルフィーユにゃん、天使ミサとクミもいかがにゃん?」

「頂きます!」

 天使クミが先に瞬間移動した。

「あっ、もう」

「にゃあ、天使ミサも遠慮は要らないにゃん」

「はい、いただきます」

「お姉ちゃん、メニューまであるよ!」

 天使クミがメニューを掲げる。

「えっ、メニューですか?」

「こっちに来て初めて見るモノばっかりだよ」

「本当ですか?」

 こっちに来る前にカフェでドヤっていた頃の経験が生きるわけだ。嘘にゃん、ちょっとおサボりしていただけにゃん。

 甘いモノ大好きオジさんだったので、メニューも充実している。

「うわ~どれにしよう」

「えっ、本当に全部あるんですか?」

「あるにゃん」


 暫しおやつタイムになった。



 ○エクシトマ州 帝都エクシトマ エクシトマ城 ゲストルーム


 天使姉妹が糖分をたっぷりと摂取した後は、ゲストルームに移った。

 すっかり日本の女の子っぽくなっている。

 天使の威厳はないが、その実態は完全エーテル体でその魔力はヤバいの一言だ。天使様ならイキリ転生者もワンパンだ。

 天使ミサとクミは天使でも転生者だけあって話しやすい。

「ネコちゃんはどうやって街を再生するだけの魔力を調達したのですか?」

「いくら稀人でもこれだけの魔力を簡単に用意するのは難しかったんじゃない?」

 普通ならまず無理な量の魔力だ。

「天使アルマに協力して貰ったにゃん」

「協力?」

 当の天使アルマはソファーにもたれたまま首を傾げる。

「これにゃん」

 ピンクのまんまるボディーにつぶらな瞳と猫耳を付けた自走式三型マナ変換炉を再生した。

「「かわいいい」」

 天使ミサとクミが抱き着いた。

「これを使って魔力を注ぎ込んだにゃん」

「凄いですね」

「おお、凄すぎる」

 ふたりでペタペタ触って眺める。

「ですがここまで凝ったモノを使うなら魔力炉を使った方がいいのではないですか?」

「ああ、良くわからないけど、多分そうだね」

 妹の天使クミはたぶんわかってない。

「オレも魔力炉が無いから困ってるにゃん、ずっと探してるけど何処にも無いにゃん」

「魔力炉ですか? いまも東方大陸の何処かに埋まっているはずですが」

「本当にゃん?」

「お姉ちゃんが言ってるんだから、本当だよ」

「ただ大陸の何処に有るかはわかりませんが」

「にゃあ、実在することがわかっただけでも十分にゃん」

『『『にゃあ!?』』』

 ざわつく猫耳たち。

「これは東方大陸に渡る必要があるにゃんね」

『『『にゃあ!』』』

 猫耳たちも大賛成だ。

 実際にはそれなりに準備や調査が必要だから、直ぐに出発とかは無理だが。

 外国に戦艦型ゴーレムで乗り付けるわけにもいかないし。

「ディオニシスだったら海を超えられそうにゃん」

「ドラゴンにしろ船にしろ砂海を超えて東方大陸に行くのは無理ですよ」

 天使ミサが教えてくれる。

「無理にゃん?」

「それだったらあたしも知ってる、砂海の中央付近はマナの濃度が異常だから、ネコちゃんたちでもただじゃ済まないよ」

 天使クミが補足する。

「にゃ、マナの濃度が異常にゃん?」

「砂海の中心は、異常な濃度のマナが暴風雨となって荒れ狂っています、それに砂海に生息する超大型魔獣の巣窟ですから」

「なかなかハードルが高いにゃん」

「嵐は絶えず動いているマナの吹き溜まりだからね、場所を正確に把握することも難しいんじゃないかな?」

「間違っても近付かないで下さい、砂海の超大型魔獣に出会ったらネコちゃんでも、ただでは済みませんから」

 天使ミサが念を押す。

「にゃお、そんなにヤバいにゃん?」

「地上の魔獣とは性質がまったく違うし、ネコちゃんの魔法も効かないんじゃないかな?」

「そうです、特に砂海の嵐の中にいる魔獣は、他の魔獣とはまったく異なる生物だと思って下さい」

「にゃあ、異常な濃度のマナの中でも生息しているのならそうにゃんね」

 オレでただじゃ済まないなら、猫耳や元チビたちは洒落にならないことになる。

「大トンネル経由一択にゃんね」

「それがいいでしょう」

「後は北極を通るかだね、お勧めはしないけど」

「北極にもヤバい魔獣がいるにゃん?」

「魔獣もいますよ」

「他に何かあるにゃん?」

「結界とかいろいろ面倒くさいモノがあるんだよ、あたしらの監視区域じゃなかったら吹っ飛ばっしゃったと思う」

 他の天使の監視区域だったら吹き飛ばすのか?

 危険を犯すぐらいなら普通にトンネルを使うのが現実的か。冒険と無謀は違うからな。

「にゃあ、貴重な情報を感謝にゃん」

「ネコちゃんを守るのは私たちの義務ゆえ礼は不要です」

「そんなことより」

「にゃ?」

「ネコちゃんのところの美味しいモノ、もっと食べさせて貰ってもいいですか?」

「勿論いいにゃんよ」

「ありがとう、お姉ちゃんが変な場所を指定したせいで今日までお預けだったからテンションが上っちゃう」

「にゃあ、ふたりなら別に珍しいものじゃないにゃんよ、基本はオレの前世で食べた料理がベースにゃん」

「うん、それでいいんだよ!」

「むしろそれを頂きたいのです!」

「にゃあ、いいにゃんよ、ここから戦艦型ゴーレムの艦内食堂がいいにゃんね」

 あっちならビッフェ形式だから自分の好きなものがチョイス出来きる。

「北方、艦内食堂であれば、私が案内しよう」

 天使アルマが案内をかって出てくれた。

「頼みます、天使アルマ」

「アルマちゃん、お願い」

 天使アルマが二人を連れて出て行った。あと妖精たちも一緒だ。


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