ルーファス第二王子にゃん
○帝国暦 二七三〇年十一月十三日
○リアンティス州 シエロ街道
旅商人に扮して馬車で雪の積もった森の中の北に向かうルーファス第二王子の秘密特使でありケントルムの貿易事務官のエサイアス・ネルソン。
エサイアスは、御者台に防御結界を薄く張って風雪から身体を守る。
しかし、あくまで不自然にならない程度にだ。
「今日は一段と滑りますね」
独りつぶやきつつ、轍のない新雪のまま凍り付いた路面から外れないよう魔法馬を操り続ける。
ケントルムの魔法馬ならば、くるぶし程度に積もった雪などどうってことは無いのだが、アナトリの魔法馬の性能の低さには改めて閉口させられる。
雪どころか雨にも弱い。
魔法でアシストしなければまともに走らない。
限界を越えた刻印の打ち直しなどケントルムでは処罰の対象だ。
更に道も悪いと来ている。
「滅多に人の通らない道だから仕方ありませんね」
エサイアスは、アナステシアス・アクロイド公爵の領地であるリアンティス州の州都イリオトを昨夜のうちに出て北に向かっている。
目的地は、北方七州と呼ばれる貴族派の領地の一つカエルム州だ。現在走行中のシエロ街道は、そのカエルム州の州都シエロと王都を繋いでいる。
リアンティス州は国王派の領地で、貴族派の領地であるカエルム州とは隣接していながら積極的な交流はない。
「あの公爵様ですからね」
アナステシアス公爵の融通の効かなさが隔絶の大きな要因を占める。
柔軟性に欠ける思考は領地の繁栄よりも主義主張を優先する。
先日、マコト公爵の関係者が撤退したことで回りかけていた経済が一気に停滞した。
それでも小麦を中心とした食料だけはマコト公爵が商会を介して格安で提供を続ける辺り、為政者としての器の違いを感じさせる。
北方七州はケントルムにそのルーツをもつ七つの州からなり、貴族派ではあるが実質ケントルム派といって良い勢力と言えた。
いずれもアナトリ王国の北の辺境の地であり人口も多くは無いが、ケントルムとの繋がりからアナトリ王国の中でも豊かな側の領地だ。
同じ貴族派でもフェルティリータ連合の諸州とは、地理的に距離があった為、先日の政変による被害もなかった。
いまもケントルムの魔導師二〇〇人が、北方七州の各領地に分散して潜伏している。
オオカミの群れが道の両側の森を並走する。
街道の近隣には打ち捨てられた村や街が幾つか点在していた。いずれも獣害と天候不良を原因とした放棄だ。
アナトリ王国では珍しくはないが豊かな領地であるはずの公爵領での出来事となると話が違ってくる。
「公爵領ですら、この有様では」
獣害は冒険者が対応するのだが、それらしき人間が活動している気配は無い。
リアンティス州の冒険者は、州都イリオトを拠点にしている者がほとんどの様だ。こんなところまで来なくても獲物も仕事もあるのだろう。
獣の排除なら騎士団を投入すれば解決しそうなものだが、こちらの誇り高き騎士は獣を追い払ったりしないそうだ。
「再革命には参加していただけるとしても、あまり期待できそうにありませんね」
エサイアスは皮肉めいた笑みを浮かべる。
二万騎もの騎士を抱えていても、獣相手にすら実戦経験の無い騎士団などさして役には立つまい。
再革命では魔導師による魔法の撃ち合いが主な戦闘になるだろう。
交渉次第では無血開城もあり得る。
ルーファス第二王子の秘密特使としてアナトリ王国に潜入したエサイアスは、この国の荒廃ぶりを目の当たりにしていた。
先日の政変が無くともアナトリの命運が尽きかけていると肌で感じる。
天候悪化と無能な領主が引き起こした飢饉。
凶暴な獣が跋扈する森。
侵食の速度を上げる魔獣の森。
一日も早くルーファスによる救済を開始すべきだ。
確かにマコト公爵の魔力は、調査の結果かなりのものらしいが、魔獣を相手に出来るとは到底思えない。
現に潜入した魔導師たちを動員して調査したが魔獣とやらの痕跡はまったく見当たらなかった。
街並みはみな真新しく、被害の跡など何処にも無い。住人たちも避難はしたらしいが、実際に魔獣を目撃した者は皆無だ。
同時にマコト公爵の本拠地プリンキピウム州も調査した。高度な魔導具を大量に生産しており、その技術力は評価されるが、いずれも魔獣を狩るようなモノではなかった。
マコト公爵の魔法も戦闘ではなく生産に特化されているのだろう。到底、ルーファス様の脅威になるとは思えない。
そもそもまだ六歳の幼女が単身で公爵にまで陞爵とか不自然過ぎる。裏で糸を操っているアーヴィン・オルホフ侯爵の策略だろう。
先日の革命も、体の良い貴族派領主の排除が本当の目的で間違いあるまい。
彼等は、アナトリ王国を支えていたフェルティリータ連合を潰すとか有りえぬ愚行を犯した。
しかも強力な騎士団と近衛軍を解体し、チンピラ風情の寄せ集めである王国軍を主力に据えている。
更に主席宮廷魔導師まで粛清した。
国を守る戦力を大幅に低下させてまで目的を果たした様だが、ルーファス様には天が味方しているような都合の良い展開と言える。
昨夜、拝謁した先王も実に扱い易い、操るまでもない単純な人物だ。凡庸な人物だから簡単に王座から引きずり降ろされたのだろう。
「神輿にする以外に使い所がないのが、マコト公爵様との最大の違いと言えますね」
思い出し笑いの様にエサイアスは口元を歪めた。
身体の大きなオオカミたちが道の両側から飛び出し、御者台を狙った。
「「「キャイン!」」」
情けない悲鳴を上げて身体を硬直させその場に倒れる。
「殺しはしませんよ、痕跡を残すと厄介ですからね」
オオカミたちは、痺れた身体を引きずって文字通りしっぽを丸めて雪を掻き分け森の中に逃げ込んだ。
○北方七州 カエルム州 シエロ街道街道
空が白み始めた頃、エサイアス・ネルソンの馬車はリアンティス州の朽ち掛けた無人の境界門を抜け、カエルム州に入った。
景色は変わらずに森だ。ただこちらは獣避けの結界がしっかりと働いていた。
『先王との対面はどうであったエサイアス?』
ルーファス王子からの念話だ。
『問題ございません、先王陛下は、我が国の協力を得られるなら革命権の使用もやぶさかではないと仰せでございます』
『そうか、やぶさかではないか、まだ返り咲きに色気をみせているのだな?』
『主体性の無い方です、私の喜ぶ返答をされただけにも思えます』
『なに、言質を取れれば問題あるまい』
『ありがとうございます、魔導師の王都タリスへの移動はどうなさいます?』
『目立たない様に始めてくれ』
『かしこまりました』
『追加の魔導師の到着はどうだ?』
『はい、大使館の交代要員として宮廷魔導師一〇名が近日中にグランキエに到着予定でございます、アイリーン様の迎えの一行に同行しております』
『父上も渋っていた割に、存外協力的ではないか?』
『殿下に期待されてのことかと』
『姉上もそろそろグランキエに到着している頃合いか』
『はい、アイリーン様も数日中には到着されるようです』
『問題は無いな』
『順調でございます』
『追加の魔導師は、そのまま王都タリスの大使館に送ってくれ』
『かしこまりました』
『全部で二一〇人の魔導師か、十分すぎる人数だな』
『ところで殿下、最後にアイリーン様にお会いしなくてよろしかったのですか?』
『潜入中の私がアナトリ側で再会するわけにはいくまい』
『そうではございますが、ご心配なのではございませんか?』
『姉上は、大使館の騎士が守りを固めているのであろう? 盗賊風情ではあれは抜けまい』
『左様でございます』
『国に戻れば、いずれ会う機会もあろう、いまは仕事を優先だ』
『仕事でございますね』
『私も追加の魔導師がタリスに到着するタイミングで動くとしよう』
『いよいよでございますね』
『ああ、せいぜい楽しませて貰おうではないか、では、引き続き準備を頼む』
『お任せ下さい』
念話を終えたエサイアスは馬車の速度を上げた。
○王都タリス 文教地区 王立魔法大学附属魔法学校 学生寮 寮室
扉が激しくノックされた。
「レイモンくん、起きてる! 朝ごはんに行くよ!」
「マルレーヌ先輩、そんなに大きな声を出さなくても起きてますよ」
うんざり顔で扉を開けたレイモン・アムランことルーファス第二王子。
ケントルム王国の王都フリソスの商家の十二歳の子息という設定で、半年前からアナトリ王国の王立魔法大学附属魔法学校に留学している。
二〇歳ではあるが十二歳と称しても全く違和感がない容姿をいかしての潜入だ。
コーディネートしたエサイアスに思うところが無いわけではないが、王宮の近くに潜入するには最も適した場所だった。
「おはようレイモンくん! さあ、行くよ!」
彼女はマルレーヌ・マラブル。十三歳で一年前から留学している。
ケントルムの王都フリソスの西方に位置するリスティス州の領主であるマラブル侯爵家の三女だ。
故に先輩ということで、何かとレイモンの世話をやいている。
頭一つレイモンが小さいこともあって完全に弟扱いだ。
偽装にはちょうどいいが……。
手を引っ張られて寮の食堂へ。
○王都タリス 文教地区 王立魔法大学附属魔法学校 学生寮 食堂
「おはようございます! マルレーヌ先輩! レイモンくん!」
先に来ていたマルネロ・ダヤンが立ち上がって元気に挨拶した。彼もケントルムからの留学生で十二歳。
レイモンと同じく半年前からの留学だ。
こちらは偽装ではなく本物の十二歳で王都フリソスの法衣男爵の次男坊。
本物故に当初は、ワガママに悩まされた。
『僕はダヤン男爵家のマルネロ・ダヤンだぞっl』
典型的なバカ貴族そのもので威張り散らす。
面倒臭いから、こっそり始末するかと思っていたところ、政変の後に教職員の補充としてマコト公爵の配下の猫耳たちが派遣されてから変わった。
それまではケントルム王国からの留学生ということで、教職員たちも腫れ物を触る様に当たり障りのない対応をしていたが、猫耳たちは違っていた。
『たかが男爵風情の子弟の分際で、ワガママ言ってると殺すにゃんよ』
子供相手に容赦ない脅しを掛けたせいで、すっかりいい子になっていた。
猫耳たちも相当大人げない連中だが、揃いも揃って宮廷魔導師クラスの魔法使いだ。
ただ、戦闘力に関してはマコト公爵に当てた傀儡程度に手を焼いていたところを見ると、主と同じく生産にベクトルの向けた魔法使いなのだろう。
出来ることなら平時に使えるマコト公爵たちは、そのまま配下に加えたいものだ。
アナトリ王室の縁者ではないマコト公爵なら、裏で糸を引くアーヴィン侯爵一派と引き離せば、交渉は可能と思われる。
所詮は魔力の強いだけの子供、どうにでもなる。邪魔なら排除するまでだ。
何もかも燃やし尽くす姉上の様な滅茶苦茶な人物はそうは存在しまい。
「猫耳さんたちが、来てくれてからここの料理って一気にレベルが上がったよね」
マルレーヌが手慣れた感じでトーストにバターを塗っている。
いずれも政変の後にやって来た猫耳たちが持ち込んだものだ。パンを焼いたら余計に硬くなりそうなものだが、彼女たちのパンは違っていた。
『焼いたら普通は美味しくなるんだよ、何で違うかな?』
パンを炙ってカチカチにしていた幼い頃の姉上の姿を思い出す。
このパンなら姉上も喜んだに違いない。
「ねえ、レイモンくんちゃんと聞いてる?」
マルレーヌが不機嫌そうな顔でこちらを見ている。
「聞いていますよ、私もこちらの食事には閉口していましたから」
その辺りは嘘偽りは無い。
アナトリの食事の不味さはケントルムでは常識だ。
想像以上ではあったが。
「マルネロくんは?」
「僕も無理でした」
彼が怒りっぽかったのは、空腹が関係していたのかもしれない。
それでも戦場ですすった泥水よりはマシだ。
「せめてバターだけでも持ち帰りたいな」
「我が国では手に入らないのですか?」
マルネロもバターを塗りながら質問した。
「多分、無いんじゃない? あたしは見たことも聞いたこともないよ」
「バターだったら、マコトのところの魔法牛が無いと作れないらしいぞ」
トレーを持った講師のチャド・アシュ・ピサロが話に割り込んだ。
確か職員寮の食事が不味いとかで、学生寮で食事をしていた。
この自由な人間も政変後にやって来た。元貴族らしい。
それとマコト公爵の友人だとか。
公爵ネタの冗談を一切許さない猫耳たちが訂正しないところをみると本当なのだろう。
「魔法牛ですか?」
ルーファスも魔法牛については知っていた。
「ケントルムでも出土の例は有りますが、使い物にならないガラクタだと聞いてます」
刻印が複雑で繊細、打ち直しが効かない代物だ。
「おっ、レイモンは知ってるみたいだな、だが、マコトのところの魔法牛は違うぞ、ちゃんと使える」
「使えるというのは、魔法牛でミルクを生産していると?」
「そう、だからここにバターやミルクがある、中身を作り変えたんだろう、マコトは先史文明の魔法に造詣が深いからな」
先史文明の呪術にまで詳しいと厄介だが、幸い公爵たちがそれを行使した形跡はない。
「チャド先生、それが本当なら魔法牛を是非、連れて帰りたいです!」
マルレーヌは魔法牛を買うつもりらしい。
「そりゃ、無理だな、魔法牛は非売品だそうだぞ」
「えっ~何でですか?」
「マコトは、魔法牛を使ったバターやチーズの生産を孤児たちの仕事にしてる、だから魔法牛は金を積まれても売らないって話だ」
「いくら積んでもですか?」
「マコトはこの国でいちばんの金持ちだからな、金じゃ動かない、無論、脅しも効かない、猫耳たちが守ってる」
「公爵様に脅しなんて怖いことしませんよ」
肩をすくめるマルレーヌ。
マルネロも激しく頷く。
「それがいい、実際に脅しを掛けたバカがいたらしいが、いずれも忽然と姿を消したそうだ」
「怖い」
「公爵様となれば、そんなものだ」
「チャド先生、マコト公爵様は、それほどの富豪なのですか?」
「レイモンはその辺りが気になるか~」
「実家が商家ですから」
という設定だ。
「アナトリの国庫の七割はマコトの貸付だ、王国軍はほぼ全額がマコトの金で動いている、ちなみに魔法大学の運営資金もそうだ」
「確か、流通している小麦の七割が公爵様の領地で生産しているそうですね」
「よく知ってるな、主な生産地は国外の領地だけどな、マコトの小麦が無かったらこの冬を越せなかった人間も多かったんじゃないか? ケントルム王国と違ってアナトリは貧しい領地が多いからな」
「公爵様が玉座を狙わなかったのが不思議ぐらいのお力ですね」
「ハリエット陛下はマコトの友人だ、革命にしたって陛下を救う為の苦肉の策だったらしい」
チャドの語る革命の正当性を流布する為の美談は、ルーファスも既に収集済だ。考えるまでもなく革命を利用した謀反人の救出など子供の出来る仕事ではない。ここで反論しても怪しまれるだけなので、相槌を打って話を合わせる。
マコト公爵の友人を公言する割に、今ひとつ新たなネタは出て来なかった。
○王都タリス 文教地区 王立魔法大学附属魔法学校 教室
「遺跡に付いてのルールが王宮直轄領と一部領地で変更になったにゃん、犯罪奴隷の利用が禁止になったにゃん」
講師はマコト公爵配下の猫耳の一人だ。
アナトリの魔法大学で見る価値があるのは、考古学だけだ。
アナトリ王国の誇る二人の天才、エドモンド第二王子とセザール・マクアルパイン教授が在籍していた。
残念なことにお会いする前にどちらも先の政変で天に還られてしまったが。
二人は政変直前にフェルティリータ連合の領主たちと結託し、一〇万の戦闘ゴーレムからなる騎士団を使い王国に反旗を翻したらしいが、謀殺なのは間違いない。
アナトリに一〇万の戦闘ゴーレムなど存在するわけがない。
これもまたマコト公爵の業績を作るための工作に決まっている。
魔法馬の生産さえおぼつかないアナトリ王国に戦闘ゴーレムを維持出来る能力があるはずがないのだ。
戦闘ゴーレムなど、気が遠くなるほどの金と手間が掛かる代物だ。しかも戦闘以外に使い所がないときている。
「理由は、犯罪奴隷を使った発掘の効率の悪さにゃんね、以前は、犯罪奴隷だけではなく騙して連れてきた一般市民や冒険者を使った事例があるにゃん」
遺跡の発掘に犯罪奴隷を使うのは、最も効率的な手法だった筈だが。
ケントルムでも過去に魔法使いを投入したことがあったが、貴重な人材を失って早々に中止された。
「発掘の初期段階である結界の解除は、今後、王国軍が担当するにゃん」
ああ、以前は重要な遺跡は近衛軍が管理していたはずだからその流れか。
アナトリの王国軍は犯罪奴隷の代わりに兵士を潰すのか?
まあ、王国軍の兵士だったら犯罪奴隷と変わらんか。
「にゃあ、実際はウチらが遺跡の防御結界を潰す係になるにゃん、ヤバい遺跡はそのままウチらが処理するにゃん」
どうやら、マコト公爵一派が国内の遺跡の独占を目論んでいるらしい。それがエドモンド第二王子とセザール・マクアルパイン教授を謀殺した理由か。
○王都タリス 文教地区 王立魔法大学附属魔法学校 演習場
続いて実習の時間だったが、そこは当たり障りなく過ごした。
力を隠すのが面倒ではあるが、念には念を入れる。
ここの教授陣なら簡単に誤魔化せるが、猫耳たちは要警戒だ。
あいつらは、底が知れない。
○王都タリス 文教地区 王立魔法大学附属魔法学校 教室
午後の座学の講師は、いろいろ失業中のチャド・アシュ・ピサロだ。妹のロマーヌ・ピサロ准教授が寿退官したので、代わりに猫耳に捕獲されて連れて来られたと本人が言っていた。
「本日は、人型ゴーレムについてな~、まあ、実際に使役する機会は無いと思う、俺も使ったことは無いしな」
ゲラゲラ笑いながら元も子もないこと言う。
だが、チャド講師の言葉通り、人型ゴーレムは金持ちの道楽の自動人形か、表向きには存在しない暗殺用ぐらいだ。
つい先日までは。
「そうは言っても、何処で出会うかもしれないからな、実物に触れるのも悪くは無いだろう」
チャド講師は人型ゴーレムを連れて来たらしい。
「今日は、猫耳に頼んで猫耳ゴーレムを貸して貰った」
『ニャア』
教室の扉を開いて猫耳ゴーレムが入って来た。
校内で複数動き回ってる汎用人型ゴーレムだ。
聞くまでもなくマコト公爵の所有物だ。
基本シルエットは女性型で、猫耳たちをモデルにしたのではないかと思える華奢な体付きだが、かなり強い力を持ってる。
『オ招キニ預カリ参上シタニャン』
しかもしゃべる。
自動人形の様に決まった言葉を再生しているわけではない。
「猫耳ゴーレムは、汎用の人型ゴーレムで、マコト公爵が冒険者時代に発掘した後に、複製と改良を重ねたそうだ」
『ニャア、うちラハ最初ノ頃トハ全ク別物ニャン』
戦闘ゴーレムと違って実用性が高いところが評価出来る。
「汎用型なので、人間が出来る大概の仕事をこなしてくれる、また思考と記憶領域がすべての個体で共有されているそうだ」
『ソウニャン』
チャド講師は、猫耳ゴーレムを使って人型ゴーレムについて解説するが、例えが特殊すぎだと思う。
潜入中じゃなければ、じっくり観察するのだが、いまは遠くから眺めるに留めた。
先王の再革命時の障害になるとしたら、猫耳たちと猫耳ゴーレムが最大か。
障害ではあるが驚異ではない、革命までにマコト公爵をこちらの陣営に引き込めれば血を見ずに済む。
無理ならば、排除する。
政権の中枢を担うマコト公爵を取り込むなり排除すれば、アナトリは獲れる。
姉上の様に圧倒的な力の差を見せ付ければ敵の心を折れるのだろうが、私にはそこまでの力はない。泥臭くやらせて貰おう。




