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スペルビア城の秘密にゃん

 ○首都アルカ スペルビア城


 ボロボロになったスペルビア城に革命軍の旗を翻したトラックが列を成して入城する。王宮内に既にオレたちに抵抗する力は無い。戦艦型ゴーレムをベランダに横付けして猫耳ゴーレムたちも入城する。

 ちなみにチビたちは、魔力を使い切ってノビてしまい、いまは戦艦型ゴーレムの医務室で天使様が造ってくれたカプセルに並んで入っている。

 いくら新型のマナ変換炉を搭載していてもコントロールには魔力を使う為、まだその辺りの経験が甘いチビたちはかなり持っていかれたようだ。そこはそのうち身体で覚えるだろう。

 首都アルカも既に猫耳たちによって占領が完了しており、いまはスペルビア城で最終的な武装解除を進めている。

 この期に及んでも無駄な抵抗をしているのは、ほぼ全て秘密警察の非公式エージェントで犯罪奴隷相当の罪を犯した者たちだった。革命軍が秘密警察のメンバーを皆殺しにしているとの噂が流れてるようで必死になってるらしい。

 無論、いくら抵抗しようが猫耳たちの敵ではなく、次々と生け捕られて箱詰めされていった。飛行戦艦の殲滅から一時間ほどで完全な開城となった。



 ○首都アルカ スペルビア城 玉座の間


 全権大使のオレが玉座の間の玉座に触れた時点で革命軍の勝利が確定し、国王グレゴリウスが持っていた全ての権限が停止された。

「これでいいにゃん?」

『にゃあ、問題無いにゃん、これでお館様がフィーニエンスの支配者になったにゃん』

 手続きを指導してくれるのは、姿形は猫耳ゴーレムの元フィーニエンスの宮廷魔導師ギーゼルベルト・オーレンドルフだ。

 二〇〇年前の知識だが、当時とシステムは何も変わっていない。革命による王位の交代とか頻繁に使われる機能でも無いし、勝手に改変されない堅牢なシステムであることが第一なので刻印もブラックボックス化されて造られた時のまま維持されていた。

「にゃあ、王宮内の刻印がかなり傷んでるのが気になるにゃん、王国のタリス城以上にやられてるにゃん」

 そしてもうひとり、かつての王宮刻印師の一族出身で天才の名をほしいままにした元ラウラ・ピサロの猫耳ラウラ。こっちは元三〇〇年前の人だ。

「にゃあ、何処も刻印技術は衰退してるにゃんね」

『魔法も衰退しているにゃん』

 ギーゼルベルトは腕を組んで首を横に振る。猫耳ゴーレムの可愛い姿なので威厳は感じられない。

「スペルビア城も修復と改造にゃんね」

「にゃあ、ウチらでやってもいいにゃん?」

 ラウラがおねだりする。

「いいにゃんよ」

「やった! 前から弄ってみたかったにゃん!」

『それは面白そうにゃん』

 ラウラとギーゼルベルトは目を輝かせる。

「面白いにゃん?」

『にゃあ、スペルビア城も遺跡をベースに造営されたらしいにゃん』

「遺跡にゃん?」

「伝説があるだけで、物証は無いにゃん」

『核心に迫るには、壁に穴を開ける必要があるにゃん』

「壁に穴にゃん? 簡単と違うにゃん」

「にゃあ、遺跡部分があると思われるスペルビア城の中心部は探査禁止の不可侵区域になっていたにゃん」

『にゃあ、そうにゃん、不可侵区域にゃん』

「いまなら触り放題にゃんね」

『にゃあ、腕が鳴るにゃん』

「ウチもにゃん♪」

「修復前に調査をするといいにゃん、オレが許可するにゃん」

『お館様に許可を頂いたので、不可侵の結界が無効化されたにゃん』

 ギーゼルベルトが城の中心を向く。

 確かに魔法式が書き換わっていた。

「にゃあ、話しただけで許可が出るとは、これはなかなか便利にゃんね」

「それが王が王たる為の刻印にゃん」

「オレは王様じゃないけど便利なのはいいことにゃん、アリが即位するまで使わせて貰うにゃん」

『アルトリート第二王子が国王として即位してもお館様は、摂政として設定が残るからそのままにゃん』

「必要ない気もするにゃん」

「にゃあ、お館様の設定を排除するにはもう一度、革命を行う必要があるにゃん」

「それは面倒にゃんね」

『にゃあ、そのままにしておくのがお勧めにゃん』

「そうするにゃん」


 オレがフィーニエンスの王宮を掌握したことで、ここ数百年ろくにメンテナンスされていなかった魔獣の森との境に展開している防御結界を一気に書き直すことが可能になった。直ぐに修正する。


「にゃあ、これは便利にゃんね」

 玉座に触れることでフィーニエンス国内の重要な刻印に簡単な操作でアクセス出来る。

「便利なのにここ数百年は使われて無かったみたいにゃん」

 最後に使われたのは五〇〇年ほど前だ。

『にゃあ、玉座の刻印を起動させるのは、ウチの時代では奇跡の御業に分類されるにゃん』

「多めに魔力を使うから、そこだけがネックにゃんね」

「伝承では、宮廷魔導師全員で取り掛かって死人まで出す危険な儀式だったみたいにゃん」

「使用する魔力を考えるとあり得るにゃん」

 たぶんそれが五〇〇年前の最後の起動だった様だ。次が無かったところからもかなりの惨状だったのだろう。

『いまの腑抜けた魔導師どもでは、儀式の準備すら無理にゃん』

「にゃあ、家柄重視じゃ仕方ないにゃん」

『愚かなことにゃん、魔導師を上手く使えば馬鹿な人減らしをなどせずに済んだはずにゃん』

「そうにゃんね、人的な損害が半端ないにゃん」

 まだこの世界は魂が輪廻するので救いがあるが、天に還れない者や魂が消滅することもある。新しい魂が誕生するか転生者が増え無い限りこの世界の人間は減る一方だ。その辺りがどうなってるか天使様に聞けばわかるのかな?


 ちなみに天使様はチビたちをカプセルに放り込んだ後に妖精たちを引き連れてフィーニエンスの新しい拠点のレストランを巡ってる。何処の拠点もそれぞれオリジナルのおすすめ料理があるので食べ歩いてるそうだ。



 ○首都アルカ スペルビア城 不可侵区域


「にゃあ、この先が不可侵区域にゃんね」

「ウチの時代からそうされているにゃん」

 廊下と壁いずれも例のコンクリートもどきを打ちっぱなしの殺風景な場所だ。謎の不可侵区域と聞いてはオレも見逃せない。調査に向かうギーゼルベルトとラウラにくっついて来た。

『にゃあ』

 ギーゼルベルトが探査魔法を打つ。不可侵区域の内部は弾かれてしまいその表面を這うように探査魔法が走った。内部は不明だがその形が明らかになった。

「不可侵区域は塔みたいな形状にゃんね」

「にゃあ、思ってたよりも上下に長かったにゃん」

 ラウラの言う通りスペルビア城の中心に直径三〇メートルほどの円柱状の探査不能な空間が浮かび上がっていた。縦方向は尖塔の一つを構成し高度限界ギリギリから地下二〇〇メートル程度まで続いている。

『ただの柱の可能性も有るにゃん』

「そうだとしても、何でこんなモノを造ったのかが興味あるにゃん」

『同感にゃん』

「にゃあ、円柱を中心に城が造られているけど、城の柱としては機能してないにゃん」

「まるで不可侵区域を隠す為に城を造ったみたいにゃんね」

 ラウラが推理する。

「にゃあ、不可侵区域の謎を解けばすべてわかるにゃん」

「ウチが絶対に解くにゃん」

 ラウラの鼻息が荒い。

『いよいよ不可侵区域の調査にゃん』

 ギーゼルベルトもワクワクが止まらない感じだ。オレはどちらかと言うと不可侵区域そのものより探査魔法を弾く魔法に興味があった。

「にゃあ、探査魔法を弾いてるのは永久魔法式と違うにゃん?」

『流石、お館様にゃん、ウチの時代にもその可能性が指摘されていたにゃん』

「永久魔法式のヒントが身近にあったことから、かつてのフィーニエンスでは研究されていたにゃんね」

『にゃあ、いまでは魔法の研究は宮廷魔導師から魔法省の研究所に移っているみたいニャんね。実に嘆かわしいにゃん』

「最新の研究は、飛行戦艦一色だったらしいにゃん、残念ながらほとんどの研究員が食べられてしまったにゃん」

『にゃあ、可哀想な結果にゃん』

「善悪よりも研究を優先する連中だったらしいから、研究対象に喰われても後悔はしてないはずにゃん」

『にゃあ、研究者なら当然にゃん』

「デカアタマの中から回収に成功した魂もあるから、ある程度の研究内容は把握出来るにゃん」

『喰われたヤツらも浮かばれるにゃん』

 オレとギーゼルベルトが話してる横でラウラが手を伸ばして不可侵区域を構成する結界の魔法式に触れた。

「にゃ!? お館様、これは現代魔法にゃん!」

 ラウラが驚きの声を上げた。

「永久魔法式っぽいのに意外にも現代魔法だったにゃんね」

「以前はさっぱりわからなかったのに、いまは手に取るように魔法式がわかるにゃん、これはお館様のおかげにゃん」

 ラウラは感動に身体を震わせる。

『にゃあ、ウチにも見えるにゃん、当時は全く違うモノを見ていたにゃんね』

 ギーゼルベルトも感心して何度も頷く。

「この構成だと見えないのが普通にゃん」

 魔法式そのものは現代魔法だが、オリエーンス連邦時代の技術でパッケージングされていた。

「これはオリエーンス連邦時代の魔法を知らないとまず気づかないにゃんね」

「にゃあ、オリエーンス連邦の魔法で包むとは反則にゃん」

『同感にゃん』

 ラウラが頬を膨らませギーゼルベルトが同意する。

「誰が作ったのか知らないけど、オリエーンス連邦時代の魔法に精通した人間に間違い無さそうにゃん」

「大昔でもオリエーンス連邦時代の魔法に精通した人間なんて、そうそういないはずにゃんよ」

『にゃあ、ウチも居ないと思うにゃん』

「ここにひとりいるにゃん」

「お館様と同じ転生者の可能性はあるにゃんね」

「転生者が絡んでるとなるとこのでっかい柱の中にはろくでもないモノが詰まってる可能性があるにゃん」

『にゃあ、お館様、この中は水にゃん』

 ギーゼルベルトが不可侵区域の魔法を突破して中身をスキャンした。

「そうにゃんね、中にはただの水が詰まってるにゃん」

 ラウラも確認した。

「ちょっとマナを含んでるみたいにゃんね」

 オレも確認したがマナに敏感な人間だと頭痛がする程度のレベルなので大したことはない。雨水だと普通にそのぐらいはある。

『にゃあ、お館様、水の中に何かいるみたいにゃん』

「「にゃ!?」」

 確かに何かが円柱の中で動いていた。オレたちが不可侵区域の魔法に干渉したことで動き出したっぽい。いきものっぽい動きにも感じられるが、水以外のモノが入っていないのも事実だ。

「ただの水流と違うにゃん?」

 ラウラが首を傾げた。

『ただの水流にしては動きが変にゃん』

「そうにゃんね、これは直接見た方が早いにゃん」

 オレは手をかざし不可侵区域を作る魔法式に接続して改変する。コンクリートもどきの壁から色が抜ける。

「にゃあ、透明になったにゃん」

『にゃあ』

「不可侵区域の魔法が水を円柱の形に留めていたにゃん、コンクリートもどきを偽装するとか芸が細かいにゃん」

 まるで何処ぞの水族館のように壁一面が透明になる。

「暗いにゃんね」

 でもいきなりまっぴかりんにすると暗い水の中にいる何かに悪い影響を与えるかもしれない。

 透明な壁に貼り付いて暗い水を眺める。

「にゃあ、オレのキャットアイでも見えないにゃん」

 気配は確かに感じるが視認できない。

「ああ、カイザル湖のドラゴンか」

「にゃ? 天使様にゃん」

 オレの後ろに天使アルマがいた。そのまま抱きかかえられてしまう。

「やっぱここが落ち着くね」

「落ち着くの」

 天使アルマにくっついて食べ歩きをしていたリーリとミンクがオレの頭に乗った。

「にゃあ、遥か彼方にあるカイザル湖の水棲ドラゴンがここにいるにゃん?」

「そうだ」

「でも、見えないにゃん」

「この感じだと水棲ドラゴンは本来、人間には見えないモノみたいだよ」

「見えないのが普通なの」

 妖精たちが教えてくれた。

「久しいなお前たち、ちょっと見ない間に随分と変わったではないか?」

 天使アルマは暗い水に向かって話しかけた。

 すると水槽のような壁にほのかな明かりがともる。

「ドラゴンじゃないにゃん」

『違うみたいにゃん』

 ラウラとギーゼルベルトが呟く。

「にゃあ」

 眼の前に四人の少女が浮かぶ。白いサマードレスが水に揺らいでる。年の頃は猫耳たちと同じぐらいか。人間じゃないから実際の年齢は不明だし意味はなさない。

 容姿は見分けがつかないほど似ている。見分けるのはプリンキピウムのアトリー三姉妹並の難易度だぞ。

『天使様?』

『天使様だ』

『天使様だね』

『猫もいる』

『いるね』

『かわいいね』

『結界に触ったのは猫?』

『猫だね』

『間違いないね』

 四人はオレのことを見ている。

「にゃあ、オレはマコトにゃん」

『『『マコト?』』』

「水棲人たちがドラゴンたちのことを心配してたにゃんよ」

『『『水棲人!?』』』

『ゲコたちは無事なの?』

「にゃあ、姿形は違ってるけど元気にしてるにゃん」

『姿形が違う?』

『私たちと同じ?』

「にゃあ、こんな感じにゃん」

 オレは格納空間から猫耳ゴーレムを再生した。猫耳ゴーレムはすべてが水棲人の記憶を引き継いでいる。

 ちなみにギーゼルベルトは形は似ているが水棲人たちの記憶は引き継いでない。

『ニャア、認識シタニャン、水棲どらごんニャン』

 猫耳ゴーレムは四人の少女がカイザル湖の水棲ドラゴンと同じ個体であることを確認した。

『これがゲコ?』

「にゃあ、そうにゃん、水棲人にゃん」

『ニャア、ソウニャン、うちラハ生マレ変ワッタニャン』

『ゲコが可愛くなってる』

『ゲコって言わないけどこれは有り』

『うん、有り』

 頷き合う水棲ドラゴンの少女たち。

「水棲ドラゴンも人間の形なんだね」

 リーリが質問する。

『ここで元の姿では窮屈だからね』

『うん、凄く窮屈』

『だから仕方ない』

『人間の姿がちょうどいい』

「水の中なのに魚の姿にはならないんだね」

『魚は可愛くない』

『可愛くないからダメ』

『ダメだね』

 水棲ドラゴンの少女たちは首を横に振った。

「同感なの」

 ミンクがオレの頭の上で頷いた。

「にゃあ、なんでカイザル湖の水棲ドラゴンはこんなところにいるにゃん?」

 そこが最大の謎だ。少なくとも近場では無い。

『湖の水が毒になったから逃げた』

『ここに来たのは、天使様が助けてくれたから』

『空に上った時に助けてくれた、危なく丸焼きになるところだった』

『危なくこんがり』

「高度限界まで上がったにゃんね」

『それから天使様がここに案内してくれた』

「にゃあ、するとこの円柱は天使様が造ったにゃん?」

 天使様なら現代魔法でも何でも有りだ。

「水の柱か? いや、人間が造ったものだ、放置してあったからコイツらを住まわせて貰った」

「にゃ、既に在ったにゃん?」

「そうだ」

『お館様、それだと時代が合わないにゃん』

「そうにゃんね」

 カイザル湖の異変はオリエーンス連邦の末期に起こった。天使アルマの話からするとその時、既にこの円柱が在ったことになるのだが、しかしこれを形作るのは現代魔法だから時代が合わない。

『にゃあ、現代魔法はその時代には存在しなかったはずにゃん』

「現代魔法はオリエーンス帝国の初代皇帝が創り出したってのが通説だったにゃんね」

「そうにゃん」

『初代皇帝うんぬんは眉唾でも年代的には、ほぼ間違いないと思われるにゃん』

「オリエーンス連邦の滅亡が約五〇〇〇年前で、オリエーンス帝国の成立が二五〇〇年前だから時代がかなり違うにゃんね」

「通説よりも二五〇〇年も早く現代魔法が出来上がっていたことになるにゃん」

 腕を組んで考え込む。

「何か問題でもあったか?」

 天使様が尋ねる。

「にゃあ、大丈夫にゃん」

 歴史の謎が一つ増えただけのことだ。

「それで水棲ドラゴンはここを出ないにゃん? カイザル湖は昔とは違って大きくなってるけど毒はもう無いにゃんよ、オレたちが綺麗にしたにゃん」

『『『毒が無い!?』』』

『本当に!?』

「にゃあ、本当にゃん」

『ニャア、前ヨリ綺麗ニナッテルニャン』

 猫耳ゴーレムも保証する。

『『『帰る!』』』

 水棲ドラゴンの少女たちは声を揃えた。念話だけどな。

「にゃあ、オレが良かったら連れて行くにゃんよ」

『いいの?』

「いいにゃんよ、それで水棲ドラゴンたちは水からは出られるにゃん?」

『『『大丈夫だよ』』』

 水棲ドラゴンの少女たちは透明な壁を抜けて水の中から出てきた。でも濡れてない。

『おお、久しいな、お前たち』

「にゃ?」

 オレの後ろにガタイの大きい白い鎧をまとった銀髪の美丈夫がいた。

「にゃあ、どちらさんにゃん?」

 初めて見る顔だが危険は無さそうだ。

『『『誰?』』』

 水棲ドラゴンたちの知り合いでも無いのか?

『わからぬか?』

 残念そうな顔をする美丈夫。

『『『地底湖の龍!?』』』

 水棲ドラゴンの少女たちの知り合いらしい。

『そうだ』

 少女たちの言葉に嬉しそうに頷く美丈夫。

『いまはディオニシスと名乗っている』

『『『ディオニシス』』』

 そして意外な名前が上がった。

「にゃ!? 本当にディオニシスにゃん?」

『ああ、旧知の水棲ドラゴンたちがいると聞いてやって来た』

「ディオニシスも人間の姿になれるにゃんね」

 じっくり見れば魔力がドラゴンのディオニシスと同一だとわかる。

『元のナリではここに入るのは無理だからな』

「そうにゃんね」

 全長二〇〇メートル超えの魔法龍姿のディオニシスでは王宮に入ることはできない。頭を突っ込んだだけで城が崩壊しそうだ。

「水棲ドラゴンを知ってるとはディオニシスも意外と顔が広いにゃんね」

『我と水棲ドラゴンたちは兄妹みたいなものだからな』

「にゃあ、それは衝撃の事実にゃんね」

 カイザル湖の水棲ドラゴンは人工生命体の可能性が高い。すると地底湖にいたディオニシスのオリジナルも人工生命体ということになる。

『水棲ドラゴンたちは我が元の棲み処に連れて行こう』

『ディオニシスが私たちを連れて行ってくれるの?』

『『『大丈夫なの?』』』

 心配を隠そうとしない少女たち。

『問題ない』

 反対にディオニシスは自信たっぷりだ。

『何処を通るの? 地下とか』

『空を飛ぶつもりだが』

『ディオニシスは空が飛べるの?』

『無論だ』

『『『えええっ!?』』』

 水棲ドラゴンの娘たちは驚きの声を上げた。当然ながら地底湖で引きこもっていた頃のディオニシスしか知らないのだろう。

「にゃあ、いまのディオニシスは全然違うにゃんよ」

『これも我が主と天使アルマのおかげだ』

『主って、このちっちゃい猫?』

『そうだ』

『『『へー』』』

 今度は水棲ドラゴンの少女に抱え上げられる。

『うん、この中の魔力はスゴいね』

『『『どれどれ、おおお~』』』

 オレの目を覗き込んだ水棲ドラゴンの少女たちが驚きの声を漏らす。魔力が見えるとはなかなかやる。

「ふふん、マコトは、あたしが育てたからね!」

 リーリがオレの頭の上で仁王立ち。

「ミンクもなの!」

 ミンクもリーリの横で仁王立ち。

『『『おおお』』』

 またまた水棲ドラゴンの少女たちが声を漏らす。

 妖精たちが育ててくれたかというと微妙だがいろいろ世話になってるのは間違いない。ふたりが居なかったらいまのオレは無かった。

『では行くぞ』

「にゃあ、もう行くにゃん?」

『『『行く!』』』

『カイザル湖と聞いてはじっとしてられない』

『『『当然!』』』

「にゃあ、気を付けて帰るにゃんよ」

『『『大丈夫!』』』

『我が責任を持って送り届けるから心配は無用だ』

「全員ドラゴンなんだから何があっても大丈夫なんじゃない? 人間の姿でもマコトより大きいし」

 リーリの言う通りか。

「にゃあ、それもそうにゃんね」


 オレは王宮の崩れたベランダからノルドに向かって夜空を飛んで行くドラゴンたちを見送った。水棲ドラゴンだからかなのか雨を降らせていた。



 ○首都アルカ 地下拠点


『『『にゃあ! お館様! チビたちが大変にゃん!』』』

『にゃ!?』

 深夜、チビたちに異変が起こったとの報告にオレは抱っこ会を中断し慌てて戦艦型ゴーレムに向かった。

 報告してくれた猫耳の思考が混乱していて状況がハッキリしない。

 天使アルマが造ってくれたオレも良くわからない超絶技術が使われているカプセルだから間違いはないはずなのだが。



 ○首都アルカ 上空 戦艦型ゴーレム(天使建造艦) 医務室


「何があったにゃん!?」

 オレは戦艦型ゴーレムの医務室に飛び込んだ。


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