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フィーニエンスの切り札にゃん

 ○首都アルカ 王宮スペルビア城内 枢密院議場


「今朝のアレは何だ!?」

 入室するなり激昂した声を上げる陸軍大臣。大股に歩いて自分の席に座る。

「念話だね」

 涼し気な顔の魔法省大臣が答えた。

「念話であることはわかっている!」

「何故、アルトリート第二王子殿下が広範囲に念話を送れたのかと考えるなら、ピルゴナの念話の塔を使ったのだろう」

 法術省大臣も他人事の様だ。

「念話の塔だと!? あれは使えるのか?」

「おそらく王国の連中が使えるようにしたのだろう」

 魔法省大臣が回答する。

「何百年も放置されていたものをか?」

「あの手の物は魔力を注ぎ込めば自動修復される、それだけだ」

「では、何故いままで修復しなかった?」

「注ぎ込む魔力が尋常じゃない」

「王国はそれだけ魔力に余裕があるのだろう、羨ましいかぎりだ」

「単に使い方を知らぬだけではないか? 本気で侵攻するつもりがあるなら念話を飛ばすよりも先に兵を動かすはずだ」

 法術省大臣は薄笑いを浮かべる。他の大臣たちも同意して頷く。

「国務大臣殿は、ひとりだけ浮かない顔をしているが、何かあるのですかな?」

 魔法省大臣に指摘されて顔を向けた。

「秘密警察の長官が拉致されたらしい」

「すると秘密警察が機能不全に陥ってるという噂は本当なのですかな?」

「ああ、行政区の地方本部と直轄領内の非公式エージェントの上位者とも連絡が付かない」

「秘密警察が動けないのは痛いですな」

 大臣たちは薄笑いを浮かべている。今回の失態は国務大臣の失脚を意味していた。

「我が陸軍が大幅に人員を減らしたところに秘密警察が動かないとは、困ったことになった。この責任、軽くは無いぞ」

 陸軍大臣が糾弾する。

「わかっている、然るべき責は負うつもりだ、だがいまはそんなことよりも大事なことがあるだろう?」

「無論、承知している。王国の連中は我らの想定以上に深く国内に入り込んでいたわけだ」

 法術省大臣は相変わらず他人事のように語る。

「秘密警察を使えないいま、街中に入り込んだ王国の人間を撃退するのは難問だ」

 国務大臣は額に浮かんだ汗を拭う。

「何か手はないのか?」

 陸軍大臣が苛立った声で問い掛ける。陸軍はまともに動かせる戦力が無いことが不機嫌に拍車を掛けていた。

「手なら無いことは無い」

 魔法省大臣だ。

「ただし、諸君らの同意が必要となる」

「同意とは、何をするつもりだ?」

 法術省大臣も知らないようだ。

「諸君、飛行戦艦だよ」

「「「飛行戦艦?」」」

 大臣たちの反応は薄い。

「飛行戦艦、いまだ空に浮かんだという話は聞いておらぬが」

 陸軍大臣は侮蔑の表情を浮かべる。

「確かにまだ飛んではいない、陸軍は正確な情報をお持ちのようだ」

「飛べない飛行戦艦など何の役に立つ?」

「飛べないのには理由があるのだ」

「理由? 発掘をしていた魔導師の資質の問題ではないのか?」

「違う、封印がなされているのだ」

「封印? 魔導師では解けぬのか」

 陸軍大臣はあまり魔法関係は明るくはない。

「魔法軍及び宮廷魔導師では歯が立たない強力な封印がされていたが、幸いなことに刻印の内容の解析には成功した」

「内容であるか?」

「捧げなくてはならないものがあったのだ」

「捧げるとな?」

「飛行戦艦を起動させるには鍵となる物が必要だったのだ」

「それを得るのに我らの承諾が必要であると?」

「左様」

「まさかそれは」

 国務大臣は自ら弾き出した答えを口にすることが出来ず言葉を濁す。

「たぶん正解だ」

 ニヤリとする魔法省大臣。

「では、必要なのは陛下の血か?」

「正確には革命権保持者の血だ」

「ここに陛下がいらっしゃらないのは、既に手を掛けたのか?」

 国務大臣の言葉に大臣たちは魔法省大臣の顔を見た。

「陛下の玉体に触れられるのは治癒師のみ。故に陛下には指一本触れてはいない。本日、お出ましになられないのはご気分が優れないとの報告のままだ」

「すると王太子殿下か?」

「殿下は、今回の件を察知した宰相殿と北の塔で籠城されている。故に使えるのはコンラート殿下のみ。昨夜のうちに城下の娼館で保護し、現在はロサ遺跡にお越しいただいてる」

 ロサ遺跡は、一〇年前に飛行戦艦が発掘された場所であり現在も修復が続けられてる。

「この場に宰相殿がいないのはそういうことであったか」

「残念ながら、宰相殿は協力を拒否された」

「土壇場で血迷ったか」

 国務大臣はため息をつく。

「宰相殿は王太子殿下の親友だ、国難よりも私情を優先するとは若さが出たのであろう、それでどれほどの血が必要なのだ?」

 陸軍大臣が口を開く。

「飛行戦艦は全部で一〇艦、かなりの量だ、首を切り落とさざるを得まい」

「殿下の命は無いか」

「コンラート殿下の英雄的な自己犠牲のおかげで王国の連中を驅逐できるのだ、悪評にまみれていた殿下にとって、そう悪い話ではあるまい」

「コンラート殿下ご自身以外にはであろう」

「既に準備は整っている。後は諸君らは承認するか否かだ、どちらを選択する」

「我らに承諾以外の選択肢はあるまい」

 国務大臣の言葉に他の面々も頷いた。



 ○首都アルカ 城壁内 廃屋


 オレたちが不法占拠した首都アルカの上級貴族地区にある廃屋をこっそり改造して表向きの前線基地にした。

 王宮スペルビア城が窓から間近に見える距離だが、あちらから気付かれることはあるまい。

 刻印技術は進んでるフィーニエンスだが肝心の魔法がいまひとつだ。例えば宮廷魔導師は家柄重視の世襲のまま世代を重ねたせいで、魔法を満足に使えない魔導師が半数を占める。魔法軍はまだマシだが、バカな遠征のせいで技術の蓄積が出来ず衰退の一途をたどっていた。

 スペルビア城の宮廷魔導師たちが束になって探査魔法を打っても、オレたちの認識阻害の結界を抜くことは不可能だ。

「予想していた以上に王宮の動きは無いにゃんね」

「にゃあ、近衛の騎士団も動いて無いにゃん、通常業務って感じにゃん」

「やや慌ただしいのは、秘密警察の中央本部にゃん、人の出入りが激しいにゃん」

「にゃあ、それも間もなく終わるにゃん」

 地下から猫耳たちが中央本部の庁舎内に侵入を開始していた。制圧は時間の問題だ。

「お館様、枢密院の連中は飛行戦艦を動かすみたいにゃん」

「いまから飛行戦艦を投入するにゃん?」

「そうみたいにゃん」

「オレたちが首都にまで入り込んでるのを知ってるのに飛行戦艦にゃん?」

「斬新な戦術の予感にゃん」

「王家の血が飛行戦艦の起動のキーになってるそうにゃん、コンラート王子が既に血抜きをされてるにゃん」

「にゃお、王家の血で認証は、これまでロクなものが無かったにゃん」

 大公国の巨大赤ちゃん、クーストース遺跡群の人型魔獣と洒落にならない化物ばかりだ。未確認だがアポリト州の人間をグール化する大規模魔法も同系統と思われる。

「強力な砲台とか有りそうにゃんね」

「首都の中でぶっ放されると被害甚大にゃん」

「そうなると何を目的にしてるかわからなくなるにゃんね」

「飛行戦艦で市街戦をやること自体が意味不明にゃん」

「それでも先史文明の強力な兵器であることに変わりはないにゃん、各方面に防御結界展開の通達を出すにゃん」

「「「にゃあ、了解にゃん」」」


 飛行戦艦は、先史文明の遺産だけあって起動前から強力な認識阻害の結界をまとっており遠距離での詳細は未だに掴めていない。

 人間の記憶にまで効果しているという念の入り様だ。

 高高度にいるディオニシスの目を通しても結界内を見ることが出来ない。実際に肉眼で捉えるまでは手出しは控えた方が良さそうだ。


『お館様! 飛行戦艦らしき物体が動き出したにゃん!』


 コンラート王子受難の報告から一時間後、ムドゥリ行政区の城塞都市からロサ遺跡を監視していた猫耳から報告が入った。

『にゃあ、了解にゃん!』

 オレも探査魔法を打つ。

 かなり大きな認識阻害の結界がロサ遺跡から動き出していた。地上からの高度一五〇メートルほどの位置に浮かんでいる。

 そこに認識阻害の結界があることはわかるだけなのでやはり詳細は不明だが、飛行戦艦で間違いないだろう。

 反応が蛇のように長いのは、複数の認識阻害の結界が重なっているせいだ。枢密院での会話から艦数一〇という情報を掴んでいる。

『お館様、飛行戦艦は全艦首都アルカに向かってるみたいにゃん』

『そうみたいにゃんね』

 本気で市街戦をやるつもりなのだろうか?

『飛行戦艦の予想進路上にいる猫耳は速やかに退避にゃん、何があるかわからないからなるべく距離を取るにゃん』

『『『にゃあ!』』』

 進路上の猫耳たちは直ぐに退避を開始する。

『怖いのは未知の分解魔法にゃん、あいつら直ぐに新種の分解魔法を使って来るから危なくていけないにゃん』

『にゃあ、ウチらも十分に気を付けるにゃん』


 飛行戦艦らしき物体は一列にならんで首都に向かってゆっくり飛行を続ける。到着は日没後になりそうだ。その間、オレたちは地下トンネルを走り回って迎撃の準備をする。



 ○ムドゥリ行政区 ロサ遺跡


「「「にゃあ!」」」

 壁のような斜面にポコッと穴が空いて猫耳たちがゾロゾロ出て来る。

「デッカい穴にゃんね」

「「「にゃあ」」」

 そこは露天掘りの鉱山のような大きなすり鉢状の穴の中ほどだった。そこからでもサッカーコート四面は取れそうな穴の底まで深さ三〇〇メートルは有りそうだ。

 猫耳たちがやって来たのは飛行戦艦が飛び立った後のロサ遺跡だ。

「遺跡は見当たらないにゃんね」

「にゃあ、人工物は穴の中には見当たらないにゃんね、ただのデッカい穴にゃん」

「飛行戦艦は裸で埋まってたにゃん?」

「そうみたいにゃんね」

 猫耳たちは探査魔法を打って遺跡とその周囲を探る。

「誰もいないにゃんね」

「にゃあ、遺跡の敷地内は完全に無人にゃん」

「何で人がいないにゃん?」

「今日が休日じゃないなら不明にゃん」

「全員、飛行戦艦に乗って出撃したと違うにゃん?」

「にゃあ、ウチらの常識からすると考えられないけど、状況はそうにゃんね」

「分解魔法と違うにゃん?」

「その痕跡は無いにゃん」

「「「にゃあ」」」

 建物も無いが、それは分解魔法で消し去ったわけではなく、最初から存在していない状態のようだ。

 分解魔法の行使が無かったのは確認できたが、飛行戦艦を掘り出した遺跡の発掘作業員たちから話を訊きたかったのだがそれは叶わなかった。

「にゃあ、上に死体があるにゃん」

 猫耳のひとりが穴の上を指差した。

「死体にゃん?」

「にゃあ、まずは確認にゃん」

 猫耳たちは飛翔を使って地上に移動した。


 遺跡の穴の縁に生える大きな木の枝に死体が逆さに吊るしてある。首が無いので死んでるのは一目瞭然だ。

「まるで血抜きにゃん」

「血抜きと言えばひとり思い浮かぶにゃんね」

「するとこれがコンラート殿下にゃん?」

「「「にゃあ」」」

「血が全部流れたせいか、話で聞いたよりスマートにゃん」

「にゃあ、頭は無いけど身体の中に魂が残ってるにゃん」

「これは回収にゃん」

 その場で死体を箱に詰めて回収した。



 ○首都アルカ 城壁内 廃屋


「来たにゃんね」

 オレは廃屋の屋根からまだ空に赤みが残ってる西の空を見た。空の一部が滲んだ様に見える。認識阻害の結界だ。

「お館様、あれは真っ直ぐスペルビア城に向かってるみたいにゃん」

 猫耳たちもオレの周囲に座ってる。

「にゃあ、そうにゃんね」

「ウチらを探してる感じはないみたいにゃん」

「にゃあ、あれは真っ直ぐ王宮に突っ込むコースにゃん」

「お館様、王宮に飛行戦艦が突っ込んだらこの国ごと大爆発とかと違うにゃん?」

「ここから見えてるスペルビア城にそんな物騒な刻印は無いから、いきなり自爆はしないにゃん」

「それなら少し安心にゃん」

「「「にゃあ」」」

 首都アルカの城壁の上空でいきなり火花が飛び散った。

 城壁都市の防御結界に飛行戦艦が反応したのだ。

「お館様、飛行戦艦がアルカの防御結界に引っ掛かったにゃん」

「にゃあ、まだ味方認定されてないにゃんね」

「あの反応は完全に敵にゃん」

「認識阻害の結界を張ったままだからにゃん」

 派手に火花を飛び散らせる空間の歪みに影が浮かぶ。

「お館様、飛行戦艦の姿が見えて来たにゃん」

 陽炎の向こう側にあるような物体が徐々に輪郭をはっきりとさせる。夕暮れの残光がそれをオレンジ色に光らせていた。

「にゃあ、認識阻害の結界を解いたにゃんね」

 それまで静かだった上級貴族地区までもが騒がしくなり始めた。使用人たちが首都の異変に気付いて声を上げている。

 陽炎が消えて飛行戦艦がその姿を現した。

「アレが飛行戦艦にゃん?」

「にゃあ、フィーニエンスの枢密院の連中が言ってるのはアレのことで間違いないと思うにゃん」

「飛行戦艦というより妖怪にゃんね」

 それは一つが五メートルはあろうかという巨大な人間の頭部を六個ほど数珠つなぎにした円環の化物だった。女性の頭部を模しているようだが髪は無く整った顔立ちだが無表情で、人間というよりマネキンの頭だ。

「それで人間は何処に乗ってるにゃん?」

「見当たらないにゃん」

 飛行戦艦に人間の反応は無かった。

「自動操縦にゃん?」

「少なくとも運用を開始したら人間の手は必要ないみたいにゃんね」

「フィーニエンスの連中はアレのどの辺りが戦艦だと思ったにゃん?」

「にゃあ、ウチに訊かれても困るにゃん」

 元ピルゴナの秘密警察本部司令エッケハルト・ベーレンスだった猫耳エッケも首を横に振った。

「にゃあ、奇妙な形というのは聞いていたにゃん、ロサ遺跡は魔法省の直轄だったので、ウチにも詳細は回って来なかったにゃん」

 元魔法軍の研究所の猫耳も詳細は知らなかった。一部の研究者だけで極秘に進められていたらしい。

「アレを見たら普通は飛行戦艦よりも先に魔獣を想像すると違うにゃん?」

「にゃあ、考えるまでもなく魔獣にゃん」

「お館様、飛行戦艦に乗っていないとするとロサ遺跡から消えた人たちは何処に消えたにゃん?」

「にゃあ、オレに訊くにゃん?」

「ウチの口から、飛行戦艦に喰われたなんて言いたくないにゃん」

「オレもそう思うにゃん」

『お館様、ざっと確認したところ頭一つ一つにエーテル機関有りで、魔獣の集合体と同じ構成だったにゃん』

 研究拠点から念話が飛ぶ。

『見たまんま魔獣にゃんね』

『エーテル機関は、魔獣ほどの性能が無い人工エーテル機関にゃん、それと刻印で予め行動をインプットするタイプにゃん』

『一応、人間が使うタイプだったにゃんね』

『にゃあ、今回は首都アルカが目的地としてインプットされてるみたいにゃん』

『認識阻害の結界が消えたら内部の魔法式まで丸見えにゃんね』

『分解魔法は使わないタイプの飛行戦艦みたいにゃん』

『そこまでの魔力は生成できないにゃんね』

『にゃあ、分解魔法は燃費が悪いから人工エーテル機関を数珠つなぎにしても魔力が足りないにゃん』

『分解魔法を使わないなら危険度は大幅に下るにゃんね』

『魔力量からすると自爆してもウチらの防御結界は抜けないにゃん』

『危険度が減るのはいいことにゃん』


 飛行戦艦は首都を突っ切って全艦が王宮スペルビア城に近付く。オレたちのことに気付いた様子もない。探査魔法も打ってない。そもそも探す命令がインプットされていないっぽい。


「王宮で魔導師でも乗り込むにゃん?」

「そんなところだと思うにゃん」

 オレも他に思い付かない。

 飛行戦艦は王宮を囲んで旋回する。王宮の連中は今更ながら驚いているらしい。

「王宮まで騒がしくなってるにゃん」

「飛行戦艦は秘密兵器だから、下の人間にまで情報が回ってなかったにゃん」

「初見であの妖怪デカ頭を味方だと思えというのは無理があるにゃん、下手に近付いたら食べられそうにゃん」

「実際ロサ遺跡の発掘チームは丸ごと消えてるにゃん」

「にゃあ、きっと起動させるのに捧げ物が足りなかったにゃんね、魔法式を見るとそんな感じにゃん。それにフィーニエンスの王家は王国や大公国と違って血筋が何度も断絶してるにゃん、能書きのままならまだ起動してないハズにゃん」

「人間の血なら誰でも良かったにゃん?」

「にゃあ、血だけじゃなく人間を丸かじりがお好みみたいにゃんね、飛行戦艦の魔法式には人間の魂を使う禁呪が使われているにゃん」

「あの見た目だから、禁呪が使われていても何の違和感も無いにゃん」

「「「にゃあ」」」


 突然、王宮から飛行戦艦たちに向けて砲撃が始まった。

「いきなり、ぶっ放したにゃんね」

「にゃあ、混乱が収まら無かったにゃんね」

「功を焦った下っ端がやらかしたみたいにゃん」

「いまのはマズいにゃんね」

 飛行戦艦の中で魔法式が切り替わった。

「王宮の連中が飛行戦艦に敵認定されたにゃん、拠点奪還モードになったにゃん」

「にゃあ、するとウチらより先に王宮の連中が排除されるにゃんね」

「そうなるにゃん」

 飛行戦艦の旋回が停止し、一〇艦で作る輪が小さくなる。

 城からの至近距離の砲撃だが飛行戦艦の防御結界が難なく弾いている。魔力がいまひとつでも防御力は高い。人間が調整しただけのことはある。

「にゃあ、飛行戦艦から何か出て来たにゃん」

 飛行戦艦の一つの頭の口から細長いモノが幾つも出て王宮に向けて伸ばされる。

「アレは腕みたいにゃん」

 数十メートルの長い腕が、城を守る兵士の身体に巻き付いて引き上げそのまま飛行戦艦の口の中に運ぶ。兵士は悲鳴を上げながら生きたまま咀嚼される。

「にゃお」

 兵士は一斉に逃げ出すが、飛行戦艦の長い腕は城の中に入り込んで兵士たちを引きずり出す。


 王宮内は瞬く間にパニックの波に飲み込まれた。


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