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フィーニエンスの侵攻軍の最期にゃん

 ヘンゼルは大木の影から泥沼に浮かぶ大きな球体に目を凝らす。全部で四つほど。確かに魔獣の濃度のマナをまとっている。それ以外はただ浮いてるだけで鎧蛇のように人間を見境なく襲って来る気配は無かった。

『アリ、こいつらが魔獣なのか?』

 球体はヘンゼルの知ってる魔獣のシルエットに無い形だ。

『ライブラリに当たったところ眼球型と呼ばれる水棲の魔獣と思われる』

 アリの参照したライブラリは魔法軍司令部に置かれている共有記憶の魔導具だ。

『水棲型だと?』

『この雨で一気に活動範囲を広げたらしい』

『攻撃方法は?』

『不明だ、目撃情報しか記録されていない』

 運良く球形の魔獣から逃げ出せた人は攻撃方法を見ておらず、見たであろう人間はすべて生還を果たせなかったと考えるのが自然だ。

「さて、俺たちはどっちだろうな?」

 ヘンゼルは乾いた唇を舐める。血の味がした。


 フィーニエンスの軍隊は魔獣を狩る能力を有しているが、それは魔獣の森からマナの濃度が低い人間の領域に越境し能力が大きく低下した個体限定での話だ。魔獣の森での戦闘経験はあっても勝利したことは一度も無い。

 歴代のフィーニエンスの侵攻作戦でも魔獣の森ではやり過ごすことが基本とされており、魔獣との戦闘は緊急時のみとされている。ヘンゼルも勿論この規定を守っていた。


 球体の魔獣が姿を現して三〇分ほどが経過した。


 魔獣側からの動きはなくヘンゼルは距離を置いて観察している。他の魔法兵を含む兵士全員は急拵えの陣地まで後退していた。

 緊張した膠着状態が続いている。わずか三〇分の間に球体魔獣の数は四から二〇に増えている。兵士たちのいる四つの島が完全に包囲された状態になっていた。

『動きは無いか?』

 アリが念話で問い掛ける。島の中央に造った指令所から念話を飛ばしていた。

『ああ、まったく動く気配は無い、いっそ規定を無視してこっちから仕掛けるか?』

『バ、バカなことを言うな』

 狼狽えぶりが念話を通してもわかる。

『冗談だ、どんな魔法を使うかわからない魔獣に先に手を出すとか、死にたがりがやることだ』

『焦らせるなよ』

『それでこの丸いヤツに付いて何かわかったか?』

『近くにいる蛇型の魔獣の倍以上の魔力を持ってる、属性は不明だ』

 魔力量は膨大と推し量れていたが魔法の属性まではアリをしても読み取れなかった。

『ちっ、ヤツらまた増えやがった』

 念話でも舌打ちするアリ。

『マジか?』

『いま二四になった』

『数を揃えてから一斉に仕掛けるつもりか』

『連携タイプの魔獣なら有り得る、気を付けろ、いよいよ動き出すぞ』

 アリの念話にヘンゼルは目を凝らす。

 泥沼に浮かぶ球体が回転していた。

『確認した、確かに目玉だ』

 回転して現れたのは瞳だった。巨大な目玉がヘンゼルを見ていた。

『伏せろヘンゼル!』

『……っ!?』

 アリの念話にヘンゼルは腹ばいに伏せる。

 次の瞬間、真っ赤な熱線が頭上を掠め背後の巨木に穴を穿つ。その穴からは炎が吹き出した。

『続けて来るぞ!』

 続けて他の魔獣たちも一斉に攻撃を開始した。熱線が何本も飛び木々が焼かれ辺りは眩しいほど明るくなった。厚くしたはずの防御結界はまるで役に立たず熱線を通す。


『『『姿勢を低くしろ!』』』

『『『塹壕に退避!』』』

『『『急げ! 焼かれるぞ!』』』


 隊長たちからも緊急の念話が飛ぶ。陣地構築で掘った塹壕が兵士たちを攻撃の第一波から守ってくれた。宮廷の指示もたまには役に立つようだ。

 四つの島はいずれも熱線攻撃で木々が炎上する。いまは防御結界で守っているが、いつまで高温を遮れるかはわからない。

「……!」

 ヘンゼルは気配を感じ慌てて横に飛んだ。いまさっきまで転がっていた場所に低い軌道の熱線が突き刺さり土手をえぐった。

『魔獣が熱線の角度を変えて来たぞ!』

 ヘンゼルは魔法で跳躍して難を逃れたがそう何回も出来る芸当じゃない。

『ヘンゼルも退避しろ!』

『わかってるが』

 島の中央に逃げ戻るのは無理だ。

 ヘンゼルは地面に穴を陥没させそこに潜り込んだ。その蛸壺の頭上を熱線が飛ぶ。

『熱線を撃つタイプは、攻撃されると同じ軌道で撃ち返して来る』

『緊急時でも反撃不可か』

『熱線の集中砲火を浴びたら避ける間もなく蒸発する』

『だよな』

 現在は迎撃されてない為、魔獣たちの照準は緩く回避可能なレベルだが、複数の正確に反撃されるとアリの言う通り蒸発して死霊になる余地すらなくなる。

『ただ、このまま手をこまねいて嬲り殺しになるのも癪だ』

『そうだが』

『俺に試したいことがある』

『試したいこと?』

『ヤツらに何処から攻撃されたかわからなければいいんだよな?』

『それは無理だぞ』

『なに直接攻撃しないでダメージを与える』

『雷撃か?』

 アリは直ぐに察した。

『そうだ、泥沼に雷を落とし魔獣を感電させる、間接攻撃なら、直ぐには俺を特定出来ないはずだ』

『見境なしに攻撃してくるぞ』

『今の状況と何の違いがある? それに下手に照準を合わせられるよりマシだろう』

 熱線の攻撃は勢いを増していた。

『確かにそうだ、わかった上と協議する』

『急いでくれ』

 残り時間はわずかだ。

『ああ、直ぐに決める』


 三分ほどして決行の返事が来た。


『使える魔法兵を全員で、同時に雷撃を沼に叩き込む』

『了解』

『この状況では失敗しても誤差の範囲だ、思い切りぶちかましてやれ!』

『誤差か、そうだな』

 魔獣の圧倒的な火力を前に二〇万を越える将兵の命運は尽きかけていた。島は熱線によってじわじわと削られている。焼き尽くされるのも時間の問題だ。


『『『魔法兵は雷撃準備!』』』

 隊長たちの念話が飛ぶ。

『『『各自、目標確認せよ!』』』

 魔法兵一人ひとりに攻撃する座標が指示される。いずれも魔獣を避けた泥沼の表面に狙いを付けた。

『『『雷撃!』』』


 幾つの雷が同時に着水する。

 魔獣の放つ熱線が止まった。

『効いたか?』

『攻撃は止まったが、反応に大きな変化はない』

『動き出したぞ』

 巨大な目玉たちは攻撃した者を探しているのか忙しなく回転する。

 そして止まる。

『見つかったか?』

『近くにいる人間が攻撃したと判断したってところか?』

『多分な、来るぞ』

 ヘンゼルは近くの自作の蛸壺に飛び込んだ。

 島を囲んでいた魔獣たちから発せられた幾本もの熱線が地表を焼きながら島の中央に向かって照射される。

 まだ角度的に泥沼からは直接照射されない位置だが土手を崩されつつあった。その先には数多くの兵士たちがひしめいてる。一刻の猶予もない状態だ。


『『『雷撃準備!』』』


 次もまた水面を狙っての雷撃だ。


『『『雷撃!』』』


 二度目の雷が泥沼に落ちる。結果は前回と同じく目玉の魔獣は動きを止めた。

『今度はやったぞ! 二体ほどしぼんで白煙を上げてる!』

 アリが教えてくれた。

『喜ぶのは早いぞ』

 ヘンゼルは蛸壺から顔を出して水面を眺めた。

 四つの島を隔てる水面の中央で水音を立てて他の倍は有りそうな巨大な球体が浮き上がった。

 しかも水面に留まらずそのまま空中に浮く。ゆっくりと回転している。

『飛べるのか!?』

『マズい、島の中央を直に狙われるぞ!』

「ちっ!」

 ヘンゼルは蛸壺から飛び出した。

『どうする気だ!?』

『決まってるだろう!』

 すかさず浮いてる巨大球体に雷撃を直に叩き込んだ。派手な稲妻と落雷の音が響き渡り魔獣の回転が止まる。

 巨大な瞳がヘンゼルを凝視する。

『ヘンゼル、お前』

『防御結界は捨てて認識阻害に全振りしとけ、今なら誤魔化せるかもしれないぞ』

『了解だ、ヘンゼルも直ぐこっちに戻れ』

『心配無用だ、俺一人ならどうにでもなる、死ぬつもりは無いから安心しろ』

 そう言いつつもありったけの魔力を雷撃に換え宙に浮かぶ巨大な目玉に向けて放つ。視界が白一色に染まり雷鳴が轟く。

「なっ!?」

 渾身の雷撃は球体に届く寸前に四散していた。巨大な目玉に傷一つ付けられなかった。

『防御結界まで使うのか?』

 アリが呻く。

『熱線に防御結界か、無敵だな』

 魔力切れ寸前で身体をふらつかせながら苦笑いを浮かべるヘンゼル。もう立ってるだけで精一杯の状態だ。

 目玉がヘンゼルに近づく。

「そんなに近付かなくても外さないだろうに」

 マナが上昇して肌がピリピリする。

「死霊に喰われるよりはマシか」

 どういうつもりかはわからないが球形魔獣はヘンゼルの鼻先まで近付いた。

 瞳が赤く輝く。

 そして縦に開いた。そこにはびっしりと鋭い歯が生えていた。

「こいつ、俺を喰う気か? まあ、それはそれで好都合か」

 ヘンゼルはグール騒ぎの時に回収した魔石をポケットの中で握る。喰われる寸前に暴走させれば魔獣でもただでは済まないはずだ。


 突然、空気を切る音がした。


「……っ!?」

 目の前の魔獣に巨大な杭が突き刺さっていた。

「にゃあ、お前らがなかなか来ないからこっちから来てやったにゃん」

 魔獣を串刺しにした杭の上に幼い女の子が立っていた。

「子供?」

 ヘンゼルは目の前で何が起こったのか理解出来なかったが、雨が上がり眩しいほどの陽の光が雲の間から差し込んでるのはわかった。



 ○悪魔の森 地下要塞 通路


「何で俺まで呼ばれてるんだ?」

「さあな、俺に聞かれても困る」

 ヘンゼルとアリが囁き合う。

 あの後、空から下りて来た少女兵たちに武装解除させられ、捕虜として徒歩五分も掛からない場所にあったこの地下都市につれて来られた。

 二〇万人全員がウオッシュされ清潔な着替えに暖かな食事にベッド、それに治癒魔法まで大盤振る舞いされて聞いたところによると古傷まで直してくれたらしい。本当に捕虜なのか?と疑問に感じたところでアリと一緒に呼び出されたのだった。



 ○悪魔の森 地下要塞 会議室


 二人は魔法軍の中将と少将、それに陸軍の大佐二人と一緒に殺風景ではあるが高級感のある椅子とテーブルの有る会議室らしい場所に通された。

 魔法軍と陸軍のお偉いさんは、いずれも侵攻軍の現地指揮官の最上位者だ。陸軍の将軍たちは死霊による司令部の襲撃で死亡してる為、大佐が最上位者になっていた。

 ヘンゼルとアリだけはそのいずれでもない。

「王国のヤツらはいつの間にこんなものを築いていたんだ?」

「周到に戦争準備を進めていた証拠である」

 忌々しげな様子の陸軍の大佐たち。こんなものとは、フィーニエンスの侵攻軍二〇万以上を収容してもまだ余裕がある地下都市のことだ。

「いや、聞いたところさっき造ったそうだぞ」

 オトフリート・グライス魔法軍少将が教える。眼鏡を掛けた細身で軍人というより高級官僚のような雰囲気を漂わせてる。

「これをさっきでありますか?」

「少将殿、そんな世迷言を信じられたのですか?」

 陸軍大佐二人は呆れた顔で少将を見る。こちらの二人は現場叩き上げだがオツムは今ひとつというのがヘンゼルの印象だ。

 何時造ったにせよフィーニエンスとの国力差は明らかだし、魔獣を軽く屠る連中と普通に戦わずに済んだのは幸いだ。

「大佐、諸君らは何を見ていた?」

 ヘルムート・ダンジェルマイア魔法軍中将が問い掛ける。こちらは魔法使いと言うよりデカい剣を振り回す剣闘士のようだ。

「閣下、何をとおっしゃいますと?」

 質問の意味が理解できない陸軍の大佐たち。

「雨を止め、魔獣を一瞬で葬り去り、膨大な量の泥を消し去った。それにグールを人間に戻したと言うではないか、それほどの魔法を操る者たちだ。この程度のことは造作もないだろう」

「造作も無いとは、流石に」

「閣下のお言葉ですがとても信じられるものではありません」

 陸軍の大佐二人は頑なだ。


「にゃあ、無理に信じることは無いにゃん」


 その声と共に扉が開いて少女兵たちを従えた小さな女の子が入室してテーブルの反対側に着席した。

「……!」

 ヘンゼルの目の前で巨大な球形魔獣を串刺しにした娘だ。

 見たところ五~六歳か?

 猫の耳としっぽが付いてるから「にゃあ」なのだろうか?

「にゃあ、オレはマコトにゃん、諸君らのフィーニエンスの侵攻軍が攻め込む予定だったケラスの領主にゃん」

「「「ケラスの領主!?」」」

 フィーニエンスの面々は驚きの声を上げた。王国はこんな子供に領主をさせたり魔獣を狩らせているらしい。

「お館様は王国の公爵であられるにゃん」

「王国内に二七の領地をお持ちにゃん」

 続けて少女兵たちが補足する。

「「「二七!?」」」

 またも声を上げる。

「大公国にも三つの領地をお持ちにゃん」

「「「……」」」

 額面通りに受け取るならこの子供は王国のとんでもない実力者ということになる。ヘンゼルは横目でアリを見たが、彼は小さく首を横に振った。何の情報も無いらしい。

「にゃあ、ほとんど人のいない領地が大半にゃん」

 マコトは手をひらひらさせる。

「そしてお館様は誰よりも可愛いにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 ヘンゼルとアリは思わず吹き出しそうになったが陸軍の大佐二人は相変わらず憮然としていた。

「何故、公爵様は此処にいらしたのですか?」

 グライス魔法軍少将が問い掛ける。

「公爵様の助けが無ければ我々は間違いなく全滅していたでしょうに」

「にゃあ、二〇万を越える人間を魔獣の餌にするのはもったいないにゃん、それに死霊の種が蒔かれるのもよろしくないにゃんね」

「公爵殿は我らをどうするおつもりかな?」

 ダンジェルマイア魔法軍中将が続けて口を開いた。

「そうにゃんね、兵士の大部分がかなり疲弊してるにゃんね、まずは静養させて体調を整えてもらうにゃん」

「捕虜に対して随分と待遇がいいのだな?」

 陸軍の大佐が疑わしげな表情でマコトを見る。ヘンゼルはこっそりため息を吐く。大佐たちは公爵に対して横柄な態度だが自分たちの置かれてる状況をわかってるのだろうか?

「無論、王国法に照らし合わせて犯罪奴隷相当になる人間はこちらで処分させてもらうにゃん」

「奴隷部隊ですかな?」

「そうにゃんね、手始めに奴隷部隊二〇〇〇人を精査したところ八割が政治犯だったので解放するにゃん」

「政治犯か、正確には侵攻反対派ですね」

 グライス魔法軍少将が解説する。

「それと一般兵の中に三〇〇人ほど犯罪奴隷相当のヤツらがいたにゃん」

「そんなに?」

「にゃあ、それと秘密警察という組織があるにゃんね、奴隷部隊とほぼ同数の約二〇〇〇人がいるにゃん、こっちは逆に八割が犯罪奴隷相当にゃん」

「八割でありますか?」

「特に陸軍の将校が酷いにゃんね、異常者の集まりにゃん」

「陸軍の将校が犯罪奴隷相当?」

「にゃあ、そこの二人もそうにゃんね、犯罪奴隷相当にゃん」

 マコトは陸軍大佐たちを指差した。

「何を証拠に!?」

「お前らのエーテル器官を見れば何をやったかが詳細にわかるにゃん、連れて行っていいにゃんよ」

『『『ニャア』』』

 二人の陸軍大佐は猫耳ゴーレムに引っ立てられる。

「ちょっと待ってくれ!」

「何かの間違いだ!」

「間違えるほど難しくないにゃん」

 会議室に残ったフィーニエンス側の人間は魔法軍だけになった。

「厳密に王国法に照らし合わせれば二〇万の将兵は、全員が戦争奴隷になるのではありませんか?」

 グライス魔法軍少将は眼鏡の位置を直す。

「にゃあ、厳密に言えばそうにゃんね、でも奴隷にはしないし魔獣の森の外までは送ってやるにゃんよ、その後、オレと敵対するなら改めて始末するにゃん」

「公爵様と敵対しても勝ち目は無さそうですな」

 ダンジェルマイア魔法軍中将は苦笑いを浮かべた。

「オレのところで働いてくれるなら、それなりの報酬を出すにゃんよ」

「公爵様は我らに祖国を裏切れと?」

「祖国にゃんね、フィーニエンス侵攻軍の本当の目的は人減らしと違うにゃん? そう考えると全滅を前提にした無謀な侵攻作戦も合点がいくにゃん」

「なるほど」

 ヘンゼルは思わず声を漏らしてしまい慌てて口を閉じた。

「諸君を捨てた祖国に忠誠を誓うにゃん?」

「宮廷が本当にそこまで考えているかは疑問ですが、換えの効く人間で選抜されたのは間違いないでしょう」

 グライス魔法軍少将は眼光を鋭くする。

「オレとしてはフィーニエンスの国民をどうこうするつもりは無いにゃん、この魔獣の森、フィーニエンスでいうところの悪魔の森を頂戴するぐらいにゃん、ああそれとシイラ行政区も占領するにゃん、また侵攻されてはこっちも困るにゃん」

「悪魔の森とシイラ行政区ですか?」

 ダンジェルマイア魔法軍中将が聞き返す。

「にゃあ、既に魔獣の排除を開始してるにゃん、それにフィーニエンスの王宮にも通告済みにゃん」

「魔獣の排除でありますか?」

「こんな感じにゃん」

 マコトは壁に映像を映し出す。

「「「おおっ」」」

 そこには鋼の魔法馬に乗った甲冑に身を包んだ騎士が魔獣をこれまで見たことのない強力な銃で文字通り粉砕していた。

「ゴーレム?」

 最初に気付いたのはヘンゼルだった。

「正確にはオートマタ、機械にゃん、でも良くわかったにゃんね」

「人間にしては大きいからですが」

「まずは一〇〇万体を投入して様子を見るにゃん」

「一〇〇万体でありますか?」

「にゃあ、魔獣は数で押すのが基本にゃん、足りなかったら追加投入するにゃん」

「魔獣の討伐に兵士は使われないのですね」

「人間の兵士では効率が悪いにゃん、それに兵士はフィーニエンスの首都アルカに回す予定にゃん」

「アルカでありますか?」

「にゃあ、放っておくとまた攻めて来そうだから、フィーニエンスの宮廷の連中には出て行ってもらう予定にゃん」

「しかしそれでは、国民が従わないのではありませんか?」

 グライス魔法軍少将が疑問を呈する。

「そこは上手くやるにゃん、オレのところで作ってる小麦だの何だのを安く提供するし、フィーニエンス国内の魔獣も始末するにゃん、それに王国とも簡単に行き来出来るようにするにゃん」

「小麦を売っていただだけるのですか?」

「にゃあ、フィーニエンスでは毎年のように餓死者が出てるそうにゃんね、そこは改善出来るにゃんよ」

「魔獣の脅威にも食糧難からも解放されれば王国に侵攻する意味はなくなりますが、悪魔の森の領有に関しては、国境線を書き換えるだけに一悶着では済まないかと思われますが」

 グライス魔法軍少将の言葉は現実的だ。

「国境線はそのままで構わないにゃんよ、それにフィーニエンスの宮廷に対しては既に宣戦布告済みにゃん」

「宣戦布告済みであられますか?」

 フィーニエンスに通告したのはどうやら宣戦布告だったようだ。

「にゃあ、宣戦布告をしてから諸君らを保護したにゃん、悪魔の森は賠償金代わりに頂く予定にゃん」

「公爵様は、既に勝利を確信されているようですが、首都の防御結界を割って進撃するのは難しいかと思われますが」

「にゃあ、オレたちに首都の防御結界は効かないにゃん」

「効かない?」

「オレたちは侵略者じゃなくて革命軍だからにゃん」

「革命軍でありますか?」

「王宮の圧政に対して反旗を翻し挙兵した王子の下に馳せ参じたという設定にゃん」

「革命権を行使されると?」

「そうにゃん」

「ですが、フィーニエンスの王子は全員が王宮にいるはずですが」

「にゃあ、それが革命権を持つ王子がもうひとりいるにゃん」

「「「もうひとり?」」」

 フィーニエンスの面々は周囲を見回す。

 そしてひとりに注目する。

「えっ、俺ですか? 俺は違いますよ! ウチの親父は前回の侵攻で戦死してるんですから」

 ヘンゼルは慌てて首を横に振って否定した。

「にゃあ、王子はそっちにゃん」

 マコトはアリを指さした。

「アリ・クルム魔法軍少尉、本名アルトリート、フィーニエンス王家の第二王子、正当な革命権保持者にゃん」


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