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面会希望にゃん

 ○ケラス州 仮州都ネオケラス 市庁舎 行政代行官執務室


「マコト様!」

 執務室に入った途端、アガサに抱きつかれた。柔らかいけど息が詰まるぞ。

「ぷはっ! にゃあ、心配掛けたにゃん」

「ご無事でなによりです」

 瞳を潤ませた泣き笑いのような表情は、いつものクールな感じのアガサとはちょっと違う一面だ。

「にゃあ、黒幕も退治したからもう大丈夫にゃん」

 跪いてオレを抱き締めてるアガサの頭を撫でてやる。

「父もマコト様に感謝しております、あれだけの魔獣の侵攻をゆるしたのに被害は最小限で済んだと申しておりました」

 アガサの父親はタンピス州の領主ファビウス・ボールディング伯爵だ。今回の魔獣の侵攻で大きな被害を受けている。

「にゃあ、街の中心はメチャメチャだったにゃんよ」

「それでも街道沿いの街の大半は残ったのですから、父から聞いた魔獣の数からすると有り得ないほどの少ない被害です」

「なるべく壊さないようにしたにゃん」

 オートマタは魔獣の上だけを走ったし。

「お気遣い感謝いたします」

 アガサはオレを抱えたままソファーまで運んでくれた。

「にゃあ、それでオレに相談したいことって何にゃん?」

「ケラスへの移民の受け入れに付いてです。アウグルにいる避難民から少なくない数の移民申請が出ています」

「にゃあ、そう言えばアウグルから南への移動禁止はまだ解除してなかったにゃんね」

「南下に関しても冒険者ギルドや幾つもの商会から毎日申請が来ています」

「わかったにゃん、冒険者ギルドと商会関係者は許可して構わないにゃん」

「冒険者ギルドはともかく、商会までも許可してよろしいのですか? 中には悪どい事をしでかす者が混じってると思われますが」

「にゃあ、多少の悪党でも領内で悪さをしない限り構わないにゃん、その代わり馬鹿なことをしでかしたら生きては帰さないにゃん」

 どの世界も営業は大変なのはわかるが、詐欺まがいのヤツまで許容するつもりはない。

「当然です」

「それに良からぬことを企んでる人間は、ネオケラスにたどり着く前に自動的に弾かれる設定になってるにゃん」

「自動的にですか?」

「そうにゃん、境界門や街道の途中にいろいろ仕掛けがしてあるにゃん、それに猫耳たちも監視しているから、そう簡単に悪さは出来ないにゃんよ」

「かしこまりました、通行の許可を出します」

「移民についてはどうにゃん?」

「ネオケラスなら受け入れは可能です、猫耳さんたちが魔導具の大規模な工房を新市街に幾つも建設していますから、人手はいくらあっても困らないでしょうし」

「にゃあ、だったら移民の人選は猫耳たちにやらせるにゃん、無秩序に受け入れても混乱するだけにゃん」

「かしこまりました」

 領地の開発は猫耳たちの好きにやらせてるが、いろいろ面白いことを始めてるようだ。いいことにゃん。

 王都外縁部は無傷だったからこれから戻る人間も多くなるだろうし、最終的にどれほどがケラスに留まってくれるかは未知数だ。



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ネオケラス・オルホフホテル 貴賓室


 次にアイリーン元第二王妃を訪ねた。ネオケラスを見たいとの希望だったのでエイリー拠点からこちらにご案内したのだ。本国の意向もあったりしてな。

 部屋にいたのはアイリーンと侍女に扮している魔法剣士のアナイス・アライスとドミニク・ベルナールのふたり。

 それに本物の側仕えのアネット・フリエル。王国の上級貴族である彼女は間もなく王都に帰す予定だ。

 王都にあるケントルム王国の大使館がアネットがアイリーンの側にいることに難色を示したからだ。

 ここにいないフレデリカと側仕えのイライザ・ベケットは子どもたちのところだ。チビたちもそっちに行ってる。

 イライザに関しては下級貴族出身なので大使館からは物言いは付いてない。貴族や国はメンツとか有っていろいろ面倒くさい。


「無事で何よりだ、マコト殿」

 抱き着かれはしなかったがアイリーンはオレの無事を喜んでくれた。

「にゃあ、もっと丸く収められなかったのは残念にゃん、そこはオレも力不足だったにゃん」

「いや、マコト殿は良くやってくれた、これ以上の結果は望むべくもあるまい」

「にゃあ、そう言って貰えると気が楽になるにゃん」

「マコト殿が気に病むことはない、マコト殿がいなかったらアナトリ王国は間違いなくその大半が魔獣の森に沈んでいただろう」

「にゃあ、上手く行って四分の一ぐらいにゃん、魔獣は森の外に出るといいところ一〇〇〇キロの移動がやっとにゃん」

「一〇〇〇キロ? そうなのか」

「にゃあ、だから今回の侵攻で一気に王都まで届いたかどうかは微妙にゃん、でも、タンピス州とレークトゥス州が魔獣の森に沈んだら、そう遠くないうちに侵攻されたにゃんね」

「人型魔獣はどうだ?」

「にゃあ、あれは魔獣の森を造らないタイプにゃん、でも何もかも分解するから厄介にゃんよ、人型魔獣はマジでヤバいにゃん」

「国土が魔獣の森に沈まなくともアナトリ王国は滅んだわけだ」

「そうにゃんね、否定はしないにゃん」

 人型魔獣は耐久性に欠陥があるが王国を壊すぐらいの起動時間が確保されてる。それに最後は派手に自爆する。始末に負えないヤツだ。

「似た仕掛けが無いかケントルムでも調査を開始したらしい」

「にゃあ、用心は必要にゃん」

「同感だ、マコト殿は何か知らないか?」

「そうにゃんね、今回の事件で使われた禁呪はすべてオリエーンス連邦時代最後期のモノにゃん、だから東方大陸でも同じ時代の遺跡を調べるといいにゃん」

「オリエーンス連邦最後期か」

「オレはケントルム王国がある東方大陸の先史文明に関するちゃんとした情報を持ってないにゃん」

 ちゃんとしてない情報だったらオパルスの図書館で仕入れた『超古代文明の謎』とか『超古代文明は実在した!?』みたいなのは持ってる。

 精霊情報体に至っては、西方大陸以外の情報がスパッと欠落してるので当時の東方大陸がどうなってるのかさっぱりだ。

 オリエーンス連邦時代の叡智を収めた図書館情報体も似た感じで、当時の東方大陸と更に続く南方大陸は小国群によって構成されていた。

「オリエーンス連邦時代の東方大陸は、小国群が群雄割拠していたはずだ」

「にゃあ」

 図書館情報体のネタと一致している。

「その中にオリエーンス連邦と対をなす勢力はあるにゃん?」

 あのバカみたいな規模の禁呪の仕掛けのことを考えるとオリエーンス連邦と敵対する何かがあったのではないだろうか? 残念ながらその辺りの情報もまったくなかった。

「専門家では無いからハッキリしたことは言えないが、通説では小国群の大半がいずれもオリエーンス連邦の支配下にあったとされてる」

 植民地に近い状態だろうか? その辺りの詳しい資料も持ち合わせていない。有るとしたら王宮の普通の図書館辺りかな。

「植民地が反乱を起こして独立なんてのも珍しくは無いにゃんね」

「反乱軍に対する最後の備えか」

「それで、あのイカれた仕掛けを残したのかもしれないにゃん」

「策としては最悪だが」

「そうにゃんね、いずれにしろオリエーンス連邦の息が掛かっていたなら、似た何かが在ってもおかしくはないにゃんね」

「やはりそうなるか」

「にゃあ、オリエーンス連邦の遺跡があるなら、優先して調べるのがいいにゃん」

「本国に伝えておこう」

「にゃあ、アイリーン様は本当にケントルムに帰るにゃん?」

「マコト殿のところは居心地がいいが、いつまでも留まるわけにはいくまい、やはり我ら親子の居場所はケントルムだ」

 生まれ故郷がいいというのもわかる。

「わかったにゃん、気が変わったら残ってくれても構わないにゃん」

「いや、既に本国から迎えが出たらしい」

「これから冬にゃんよ」

「問題ない、迎えが到着する頃には春になっているはずだ、それで迎えの者たちがここまで来る許可が欲しい、マコト殿に挨拶がしたいそうだ」

「了解にゃん」

 オレがグランキエ大トンネルまでアイリーン一行を運べば期間はもっと短縮出来るのだがそれは駄目なのだろう。

「にゃあ、近い内にオレの領地だけを通って行けるルートも完成するにゃん、そこを通ると早いにゃんよ」

「マコト殿の領地なら安全だな」

「にゃあ、保証するにゃん」

「マコト殿はもう領地の再建に手を付けてるのだな」

「冬が本格化する前に道路は新しくするつもりにゃん、復興をするにも安全な道路は重要にゃん」

「確かに」

 実際にはトンネルの整備が最優先だが部外者には秘密だ。

「盗賊も狩ってるにゃんよ、今後ケントルム王国との交易を充実させる為にも沿線の安全は重要にゃん」

「我が国との交易を充実?」

「にゃあ、本格的に小麦を売るにゃん」

「小麦か」

「そうにゃん、状況も落ち着いたから量を増やす予定にゃん」

「感謝する、マコト殿」

「にゃあ、これは商売だからお礼は不要にゃんよ、それより冬を避けたとはいえ大トンネルを通る旅にフレデリカ様を連れて行って大丈夫にゃん?」

「年中極寒の大トンネルに季節の概念はない、それに我々は乗客として運ばれるだけだからフレデリカであっても問題はないと思う」

「アーヴィン様は過酷な旅とおっしゃっていたにゃん」

「自分で移動する商人や冒険者の話ではないだろうか?」

「にゃあ、そうにゃん、商人だったにゃん」

「商人は荷もあるから、大商会でもかなり苦労するようだ」

「それは大変にゃんね」

「グランキエ大トンネルはそこを支配する一族に払うものを払えば、そこそこ快適に向こう側に運んでくれる」

「金がモノを言うにゃんね」

「それが彼ら、古くからグランキエ大トンネルに住むタルス一族の仕事なのだから仕方あるまい。その金で代々トンネルの維持管理を行っているそうだ」

「にゃあ、悪さをしてないなら問題ないにゃん」

「たまにぼったくるけどな」

「その辺りはグランキエの領主として一度、きっちり挨拶をする必要ありにゃんね」

「礼儀知らずだが、仕事はする連中だから大目に見てやってくれ」

「にゃあ、いきなり喧嘩はしないから大丈夫にゃん」

「多少は構わないが、やりすぎない様に頼む、通れなくなると大変だからな」

「にゃあ、大丈夫にゃん」

 多分な。

「マコト殿、今回の件、我が父も感謝していた。機会があったらケントルムにも遊びに来て欲しいそうだ」

 アイリーンの父親はケントルム王国の国王だ。

「にゃあ、オレも行ってみたいにゃんね」

「私も歓迎するぞ、王都フリソスに来る際には声を掛けて欲しい」

「是非そうさせてもらうにゃん」

 東方大陸には西方大陸にはない面白いものがあるかもしれない。

「アイリーン様、東方大陸の小国家群より前の時代ってどうなってるにゃん? 遺跡とかあるにゃん」

「小国家群の前?」

「西方大陸で言うとオリエーンス神聖帝国の時代にゃん」

「不明のはずだ、遺跡も見付かってはおらず国があったかも不明だ」

「にゃあ、謎にゃんね」

「マコト殿こそ何か知ってるんじゃないのか?」

「そうにゃんね、かつて東方大陸に七神教皇国という国が在ったという話はオパルスの図書館で見たことがあるにゃん」

『超古代文明は実在した!?』って本だけどな。古代世界を支配した超国家という見出しで。

「七神教皇国か?」

 アイリーンは苦笑いを浮かべる。

「かなり荒唐無稽な内容だが、ケントルムでは信じてる人間が多い、我が国の創世神話と関係があるからな」

「夢のある内容にゃん」

「気を使わなくて構わないぞ、マコト殿」


 オリエーンス神聖帝国よりも古い四万年ほど昔、世界を支配した七神教皇国は、神の下僕として人々に多くのモノをもたらした。

 言葉を伝え、魔法を伝え、街を造り国を作ったとされている。

 空を飛ぶ船を持ち世界を駆け巡り多くの奇跡を残したが、ある日、忽然と消え去った。


「我が国の建国神話は、始祖が七神教の教皇より啓示を受け挙兵する下りがある」

「時代に隔たりがあるにゃんね」

「そこは神話だからな」

 気にしたら負けか。

「にゃあ、一夜にして消えるとか滅び方も派手にゃん」

 アトランティスと違って海に沈んだわけでも、神様の怒りをかって星が降って来たわけでも無い。

 すでに神様はこの世界から立ち去っていた頃だろうし。

「大規模な分解魔法なら説明が付かないこともないにゃん」

「あまり考えたくない可能性だな」

「同感にゃん」

「七神教皇国が実在したとしても二万年前に成立したオリエーンス神聖帝国の前か」

「大昔にゃん」

 そもそも世間一般ではオリエーンス神聖帝国でさえ眉唾ものだ。

 それにふたつの情報体に何も記録が無い時点で後世の創作の可能性が大きくなる。

「実は七神教皇国について一点、引っ掛かるところがあるのだ」

「引っ掛かるにゃん?」

「我が国の王室に伝わる伝承に外には知られていない一節がある、それは七神教皇国の教皇に関するものなのだが」

「にゃ?」

「七神教皇国の教皇は不老不死の黒髪の少女なのだそうだ」


 アイリーンから聞いた七神教皇国の教皇の話はなかなかエキサイティングだった。

『教皇が転生者だとしたら、荒唐無稽なお伽噺が一気に現実味を帯びるにゃん』

『にゃあ、新たな研究テーマが出来たにゃんね』

『これは現地調査が必要にゃん』

『それはあるにゃん』

『古代世界を支配したなら、この西方大陸に何か痕跡があっても良さそうにゃん』

 猫耳たちも念話で意見を交わす。

『昔のことなら天使様たちに尋ねるのも有りにゃんね』

『にゃあ、ナイスアイデアにゃん』


 そんなわけで天使様や妖精たちに七神教皇国に付いて訊くことにした。



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス 領主公邸 リビング


 ネオケラス全体に超強力な防御結界が張り巡らしてくれた天使アルマたち一行は、いま領主官邸の猫ピラミッドでくつろいでいる。三人にとっては朝飯前のことなのだ。

「七神教皇国?」

 天使アルマは首を傾げた。

「にゃあ、知ってることがあったら教えて欲しいにゃん」

「七神教皇国とは何だ?」

「みゃあ」

 まさかここに来て本物のお伽噺だったとは!?

「天使様、マコトが言ってるのは聖七神教会のことだと思うの」

 ミンクが助言してくれた。

「ああ、北方か」

 天使アルマは得心した表情を浮かべた。

「ホッポウにゃん?」

「そうだ、聖七神教会なら北方管理者の管轄だ」

「にゃあ、すると七神教皇国は消えて無くなったわけじゃないにゃんね」

「マコトが言うそれが聖七神教会なら一度も消えたことは無いぞ」

「本当にあったにゃんね」

「知らなかったのか?」

 不思議そうな顔をする天使様。

「にゃあ、知らなかったにゃん、しかもオリエーンス神聖帝国より古い文明にゃん、興奮するなというのは無理な話にゃん」

「「「古い?」」」

 天使様たちは怪訝な表情を浮かべた。

「マコト、聖七神教会はそんなに古くないよ、出来たのは今から四千年ぐらい前だよ」

 リーリが答えてくれた。

「にゃ!? 四千年前にゃん? 四万年前と違うにゃん」

「それは盛り過ぎなの」

 ミンクに指摘された。

「にゃお、オリエーンス神聖帝国の前どころか、オリエーンス連邦の後だったとは、ヤラれたにゃん」

「まあね」

 何故かリーリが胸を張る。

「四千年前でも古いと言えば古いが、びっくりするほどでも無いにゃんね」

 逆にケントルム王国の建国神話の整合性が取れる。

「にゃあ、オレの持ってる二つの情報体に全く記載がなかったわけにゃん、時代が後では記録されてるわけがないにゃん」

 目の前に生き証人がいるのだから時代に間違いは無い。

「聖七神教会の遺跡は無いにゃん?」

「全部、持って行ったからな」

「にゃ、持って行ったにゃん?」

「だから何も残ってない」

 天使様の言葉にオレの理解が追い付かない。

「街ごと移動したにゃん?」

「そんなところだ」

 おかげで後世の人間は話を盛り放題で信憑性の欠片もなくなった。それが一日で消えた真相か?

「にゃあ、空を飛ぶ船はどうにゃん? これって本当にあったにゃん」

 空飛ぶ船ぐらいは現実であって欲しい。

「船だったらいまでもたまに空を飛んでるよ」

 リーリが天井を指差す。

「にゃ、マジにゃん!?」

「マジなの」

 ミンクも頷く。

「にゃお、オレはまったく気付かなかったにゃん」

 一度たりとて気配すら感じ取ったことは無かった。

「あれは大地と空の間を航行するから見えなくても仕方あるまい」

 天使様がフォローしてくれる。

「にゃあ、オレの知らないテクノロジーにゃん」

「世の中、わからないことの方が多いんだから気にすることはないよ」

 リーリがオレの頭に乗って慰めてくれる。

「それはそうにゃんね」

 聖七神教会についてはもう一点確かめたいことがあった。

「天使様、聖七神教会の教皇はオレと同じ稀人と違うにゃん?」

「いや、マコトとは違う」

 天使アルマは首を横に振った。

「にゃあ、だったら転生者にゃん?」

「確かに北方は元転生者だ」

「にゃ、元転生者ってことはいまは違うにゃん?」

「マコト、北方監視者ということは天使様だよ」

 リーリが教えてくれる。

「にゃあ、転生者が教皇で天使様にゃん?」

「そういうことだ」

 転生者が天使になる? 何があったらそんなことになるのやら。

「教皇が天使様なら、空飛ぶ船の性能も納得にゃん」

「そうなのか?」

 天使アルマがキョトンとする。

「にゃあ、天使様と同等の力があるなら何でもありにゃん」

 それこそ船だって天に浮いてしまう。

「敵に回られたらかなり不味い相手にゃんね」

「マコトは北方と敵対する予定でもあるのか?」

 天使アルマがオレの顔を覗き込んだ。

「にゃあ、それはまったく無いにゃん、オレは誰とでも仲良くやりたい派にゃん」

「それは良かった、北方からマコトを紹介しろとせっつかれていたのだ、いま思い出した」

「北方監視者の天使様はオレに興味があるにゃん?」

「ふふふ、北方にはいろいろ自慢したからな、ふぅ~美味しい」

 天使アルマは得意げだ。それからソフトクリームを舐めてとろける。


 その頃、猫耳たちは大騒ぎだった。

『にゃあ! 聖七神教会にゃん! 王宮と魔法大学の図書館を片っ端から調べるにゃん!』

『北方監視者ということは極地に聖七神教会はあるにゃん!?』

『直ぐに超長距離の探査魔法を打って確認にゃん!』

『上空にいるディオニシスにも警戒を密にして貰うにゃん!』

 北方監視者の天使と事を構えるつもりは無いが、オレたちより上位の魔法力を持つと思われる転生者の存在は正直怖い。

 人間から天使になるなんてどう考えても普通じゃないし。

『極地は氷と魔獣ばっかりにゃん、魔獣の森の雪原版にゃん』

『人工物も見当たらないにゃん』

『天使だけあって何処に隠れてるかわからないにゃん』

『極地の上空と違うにゃん?』

『にゃあ! まったく反応がないにゃん!』

『いったい何処にゃん!?』

『高度過ぎる認識阻害にゃん』

 猫耳たちの焦りが伝わる。

『たぶん、認識阻害じゃないにゃんね、オレたちの見えない場所にいるにゃん』

 天使様から聞いた空飛ぶ船が航行する場所。

『大地と空の間にゃん?』

『にゃあ、きっとそれが正解にゃんね』


「マコト、北方からの伝言が入った、『エクシトマで会おう』とのことだ」

 天使アルマが北方監視者の伝言を伝えてくれる。

「もしかして廃帝都のエクシトマのことにゃん?」

「エクシトマと言えばマコトはわかると言っていたぞ」

 思い当たるのは、魔獣の森に沈んでいるエクシトマ州の何処かにあるオリエーンス帝国の廃帝都エクシトマだけだ。

 それだって『在るらしい』ぐらいの根拠の薄い伝承に過ぎない。

「廃帝都エクシトマとは、いきなり難易度の高い場所をご指定にゃん」

「マコトなら容易かろう、それにエクシトマには面白いモノがあるぞ」

「面白いモノにゃん?」

「ああ、面白いものだ」

「それはすぐに探さないといけないにゃんね」

『『『にゃあ!』』』

 猫耳たちもやる気満々だ。

『マコト、私に任せろ!』

 それ以上にミマがやる気だった。


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