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新国王にゃん

 ○王都タリス 城壁内 タリス城 謁見の間


 オレたちは各ルートから王宮の謁見の間の大きな扉の前に集まった。魔法馬を格納するとタイミングを見計らったように扉が開く。

「ケラス州、アリエース州、タウルス州、ゲミニ州、カンケル州、レオ州、ウィルゴ州、アポリト州、ノルド州、ヌーラ州、エクシトマ州、クァルク州、オーリィ州、アブシント州、フェルティリータ州、エクウス州、ボース州、スース州、カペル州の十九領地及び、オルビー領、エイリー領、バデリー領、プリンキピウム領の四領を領有する領主マコト・アマノ公爵様のご入室です」

 謁見の間だけは以前と同じだ。逆にそれが異常に感じられた。

 たくさんの貴族たちが両脇に並び、壁側は近衛軍と騎士団が守りを固めている。

「お進み下さい」

 第一騎士団の騎士に促され進む。

 猫耳たちがオレと天使様の周りを囲んでいる。

『ここにいるのは王宮に逃げ込んだ法衣貴族にゃんね』

『皆んな顔色が悪いにゃん』

『にゃあ、元々こんなものにゃん』

 オレたちは玉座の前に案内された。

「玉座には誰もいないにゃんね」

 オレは小さな声でつぶやく。

 魔力は玉座から感じられるが誰も座っていない。

 完全な疑似餌だったか。まあ、いいだろう黒幕のヤツはオレたちに用事があるから招待したのだ。

「にゃあ、もうちょっと付き合ってやるにゃん」

 天使様がオレの顔を見て小さく頷く。

 何があっても大丈夫だと瞳が語っていた。何かあったら大丈夫じゃなくなるのは間違いなく王都だろう。

『にゃあ、国王を気取って後から出てくる趣向にゃんね』

『黒幕のくせに生意気にゃん』

 本来はここで臣下の礼を取るべきところだが、本物の国王陛下ならともかく黒幕に下げる頭は無い。

「にゃあ! マコト公爵様がかしずくのはハリエット様だけにゃん!」

 猫耳がそう宣言したので、近衛軍と騎士団も特に動きはない。貴族たちもおとなしいものだ。

『「何たる無礼者! つまみ出せ!」とか叫ぶ威勢のいい貴族はいないにゃんね』

『一九の領地と四つの小領地を持つこの国最大の貴族で公爵になったお館様に楯突くバカはいないにゃん』

『しかも革命の実質的首謀者にゃん、大勢が決するまでどいつもこいつも様子見に決まってるにゃん』

『法衣貴族は貴族派じゃないにゃん?』

『違うにゃん、こいつらは日和見にゃん、黒幕が退治されれば、お館様にすり寄って来るにゃん」

『一族の命運が掛かってるから必死になるのはわからないでもないにゃん、でも甘い顔はしないにゃんよ』

『『『にゃあ、当然にゃん!』』』

『悪いことをしたヤツは許さないにゃん、そうでないヤツは考慮するにゃん』

『問答無用で全員処分しない辺りお館様は優しいにゃん』

『『『にゃあ♪』』』


 猫耳たちと念話しているとロイヤルファミリー用の扉が開いた。


 扉から現れたのは装飾華美な儀仗服のような出で立ちの男だった。それでいて貧相な感じがするのは痩せた顔のせいか。

「誰だ?」

 天使様に問い掛けられたがオレも首を横に振った。

「知らない男にゃん」

 面識がある人間では無い。

「例の魔導師じゃないの?」

 リーリの問い掛けにも首を横に振る。

「エドガー・クルシュマンとは髪の色が違っているにゃん、主席魔導師は長い銀髪だったはずにゃん」

 玉座に座った派手な服の男は黒髪を短く刈り込んでいる。

『にゃあ、お館様、ヤツはブルーノ・バインズ近衛軍大尉にゃん』

 猫耳が念話で教えてくれた。

『にゃ、するとヤツが近衛の疫病神にゃん?』

『そうにゃん』

 言われてみると確かに陰気な風貌は疫病神とあだ名したくなる。

 ブルーノ・バインズ近衛軍大尉こそ黒幕ではないのかというマリオンの予測を猫耳を介して聞いてはいたが、オレも取り合ってはいなかった。

『にゃあ、マジでこいつが黒幕にゃん?』

『違うにゃん、自分のことを黒幕だと思い込んでる可愛そうなヤツにゃん』

『その可能性は否定できないにゃん』

『『『にゃあ』』』

 ブルーノ・バインズに対する猫耳たちの評価は低い。

「どういうこと、黒幕じゃないの?」

「ミンクもわからないの」

 妖精たちもわからない。

「普通の人間では無さそうだ」

 天使アルマは不快なモノを見たように目を背けた。

「にゃあ、天使様はわかるにゃんね」

「あの手の顔の人間は普通じゃない」

「「「にゃあ、天使様の仰るとおりにゃん」」」

 猫耳たちが同意した。

 顔かよ。


「話は済んだかね、公爵?」

 玉座に座ったブルーノ・バインズがオレに問い掛けた。

「にゃあ、済んだにゃん、ところで国王陛下はどうしたにゃん?」

「前国王なら私に王位を譲られて退位された、今後は王宮の外で静かに暮したいそうだ、公爵が引き取られてはいかがかな?」

「それは構わないにゃん」

「では、そのように取り図ろう」

「そんなことより革命権を持たない者が王位を得るのは現王国の仕組みの中では無理と違うにゃん?」

「私の父は先々代の国王の庶子でね、多少強引であることは認めるが血筋は問題ないらしい、こうして玉座に座れるのだから」

 玉座が魔導具なのはわかる。

『その辺りはどうにゃん?』

 片っ端から王宮の内部をスキャンしたデータを解析してる研究拠点の猫耳に訊く。

『あの玉座は本当の王以外は座れないみたいにゃんね』

 どうやら王位に付いた者しか座れない仕掛けが施してあるらしい。

『すると王位はブルーノ・バインズに正式に譲位されたにゃん?』

『にゃあ、そう考えていいみたいにゃん、マリオンの予想が大正解だったにゃん』

『マリオンは優秀にゃん』

 オレは玉座に座った男を見上げた。

「単刀直入に訊くにゃん、オレの前にいる現国王ブルーノ・バインズ陛下が一連の事件を起こした黒幕にゃん?」

「私が黒幕か? なるほどそうとも言えるし、違うとも言える」

 愉快そうな笑み浮かべる国王となった男。

「どういうことにゃん?」

「事件の大半は死んだエドガー・クルシュマン主席魔導師の仕業だ、私はその後の仕上げをしたに過ぎない」

「共犯にゃん?」

「エドガー・クルシュマンでは玉座には座れない」

「最初から殺す予定だったにゃん?」

「いかんせん人間の身体はもろくて弱い、誰が手を下すまでもなく生きながらえることは出来なかったろう」

「どういうことにゃん?」

「言葉のままだ、転生者の肉体を以てしても力のすべてを使うことは出来ない。そうでなくても強力な魔力は肉体と精神を崩壊させる。ましてやこちらで生まれた者ならなおさらだ」

 チンピラでも殺せるぐらい弱っていたということか。

「にゃあ、バカみたいに大きな魔法を打つからそうなるにゃん、カズキみたいに覗き見ぐらいに止めておけばいいにゃん」

「なるほど、それはいい」

「それでブルーノ・バインズ国王陛下は転生者にゃん?」

「公爵はどう思いか?」

「オレの見たところ転生者じゃないにゃんね、でも魔力の質は転生者に良く似てるにゃん」

「ほう」

 感心したような声を上げるブルーノ・バインズ新国王。

「にゃあ、その魔力の出処がわからないにゃん」

 認識阻害の結界が張ってあり身体の中が見えない。

「普通の魔法で見えないなら精霊魔法で見たら?」

 リーリが頭の上からアドバイスしてくれた。

「にゃあ、その手があったにゃんね」

 チビたちは使えるが、精霊魔法は普通の人間には使えない魔法だ。

 オレは専用のエーテル器官をエミュレートしてブルーノ・バインズを見る。

「にゃ!?」

 何だこれは?

「何か見えたかね、公爵?」

「体内に二一個の人工エーテル器官と一つの魔石を埋め込んでるにゃんね』

 魔石はエーテル機関のこと。

 それに格納空間に封印図書館を見つけた。

 やはり黒幕が所有していたか。

「人間をヤメたにゃん?」

「これだけやっても元の身体の魔力には達しないがね」

 苦笑いのように口元を歪める。

「元の身体にゃん?」

『そう、ケイジ・カーターまたの名をスズガ・ケイジ、公爵と同じ転生者だ』

「スズガ・ケイジにゃん!?」

 オレがカズキとユウカから受け取った映像にある人物とは似ても見つかないが、彼の口から出たのは紛れもなく日本語だった。

 しかもネイティブな。

「にゃあ、スズガ・ケイジは死んだはずにゃん」

 カズキとユウカが間違いなくスズガ・ケイジを討っている、それは間違いのない。

「そう、スズガ・ケイジの肉体は滅んだ」

「肉体だけが滅んだにゃん?」

「公爵は理解が早いようだ」

 エーテル器官を持つ人間の記憶を移すのは、宮廷魔導師しかも上位の者となればそう難しい仕事ではない。

 以前、オレが爆発と特異種化から助けた第三騎士団の娘たちがそれだ。本人が知らぬ間に記憶と人格を移植されていた。

「にゃあ、死ぬ前に記憶を移していたにゃんね」

「いや、そうではない」

 オレの仮説を首を横に振って否定するブルーノ・バインズ。

「にゃ、違うにゃん?」

「良く見てみるがいい」

 彼の体内にある二一個の人工エーテル器官には記憶が埋め込まれてるモノは一つもなかった。

 エーテル機関も同様だ。こちらも一人分の記憶を埋め込むのは造作も無いことだがオーバースペックもいいところだ。

「記憶を受け継いだだけでは同一の人間とは言えない、それは偽りの人格だ」

「にゃあ、そうにゃんね」

「おかげで、手間は掛かったがね、私は不老不死とも言える肉体を手に入れた」

「ケイジ・カーターは、禁呪の行使のため五年に亘って約三〇〇人の子供を殺したそうにゃんね」

ちまたでは、妻を復活させるために狂った末の所業とされてるようだね」

「違うということにゃん?」

「妻の魂は天に還った、復活させるなど不可能だ」

「にゃあ、そうにゃん」

 オレは頷いた。

 その間もケイジ・カーターことスズガ・ケイジが、いったい何をやったのか猫耳も含めて全力で考察する。

 約三〇〇人の子供を犠牲にして成り立つ禁呪。

 この三〇〇もの命はいったい何に使われたか?


『子供を殺しても得るものはないにゃんよ』

『大人の犯罪奴隷よりも安価に集められる上に管理も適当にできるにゃん』

『殺してもバレないにゃん』

『にゃあ、ケイジ・カーターみたいに三〇〇人とか殺さなければまずバレないにゃん』

『すると大人でも子供でも違いがないものを利用した可能性があるにゃんね』

『エーテル器官にゃん?』

『アレは魔法使いの素養がないと大人子供にかかわらず、あまり再利用には向いてないにゃんよ』

『誰のモノでもあまり違いがないのは心臓にゃん、心臓は禁呪の贄に使われるにゃん』

『にゃあ、その禁呪は迷信系にゃん』

 心臓を刻んで魔力をどうこう出来るならそんな簡単なことはない。

『オリエーンス連邦の魔法なら魂にゃん』

『にゃあ、実際に黒幕はフェルティリータ連合の戦闘ゴーレムで使ってるにゃん』

『魂からの魔力の取り出しにゃんね』

『にゃあ、魂を使い潰す定番の禁呪にゃん』

『その膨大な魔力でやらかしたのが、記憶も何もかも別人に移す魔法だったにゃんね』


「にゃあ、転生したにゃんね」

 猫耳たちと考察の上にたどり着いた結論を口にした。

「そう、公爵にはおわかりいただけたようだ」

 ブルーノ・バインズはオレの答えに満足したらしい。

「でも、転生にしては時期が短すぎるにゃん」

 ケイジ・カーターの没年が二〇年前だから三〇を過ぎてるブルーノ・バインズでは計算が合わない。同じ時間軸に同じ魂を持つ者がふたりいることになる。

「それを可能にする魔法があるのだ。消費する魔力が膨大なのが難点だがね」

「にゃあ、だから子供の魂を使ったにゃんね」

「公爵は一つ考え違いをしている」

「にゃ?」

「私が最初に転生したのは、このブルーノ・バインズではない」

「エドガー・クルシュマンにゃん?」

「ご明察」

 これもまた計算が合わない。同時代に並行して魂を同じくする人間が三人いたことになる。

 それは本当に可能なのだろうか?

「にゃあ、なんでそんな面倒くさい転生をしたにゃん?」

「無論、玉座に座るためだ」

「にゃあ、ケイジ・カーターではダメだったにゃん?」

「公爵、物事には順番というものがあるのだよ」

 小さい子に言い含める口調だ。

「順番にゃんね、だから大公国から始めたわけにゃん?」

「そう、大規模な実験は大公国から始めた」

「付き合わされる方はたまったものじゃないにゃんね」

「仕方あるまい、事件には被験者が必要なのだ」

 勝手な言い分だがサイコパス野郎に説教しても始まらないか。

「にゃあ、それで玉座に座らないと出来ない実験があるにゃんね?」

「そう、最後の実験と言っていい、この身体は早くも限界でね、この実験でちょうど役目を終える」

「にゃあ、最後の実験ならロクでもないことにゃんね?」

「かつて不完全ながら一度発動されたことがあったようだ」

「どんな魔法にゃん?」

「人間のすべてを消し去る魔法だ、魂すら残らない静寂な世界が訪れる」

「にゃあ、人間じゃなくて魔獣を消すのではダメにゃん?」

「残念ながら人間の天敵として造られた魔獣には何の効果もない、純粋に人だけを消し去る美しい魔法だ」

「にゃお、オレにはわからない美的感覚にゃん」

「私もわかり合おうなんて思ってはいない、むしろこの造られた世界を守ろうとする公爵の姿が不思議でならない」

「造られた世界にゃん?」

「ここは七神によって造られた世界、何もかもが造り物の世界だ」

「にゃあ、それを言ったら元の世界だってほとんど人間が作ったモノにゃんよ」

「確かにそうだが」

 愉快そうな顔は本気で議論する気がない証拠だ。

「ここは大地も空もすべてが造り物だ」

「神様が造った世界だから好きに壊していいという理屈は通らないにゃんよ」

「公爵は何も知らないようだ」

「そうにゃんね、誰が世界を造ったかなんてオレには興味がないにゃん」

「公爵にそれを伝える時間もないのが私としても残念だよ」

「にゃあ、最後の実験とやらを始めるにゃんね?」

「そう、最後の実験には公爵たちにも力を貸してもらうとしよう」

 ブルーノ・バインズが玉座から立ち上がる。

 顔つきが変わっていた。

 魂の隠蔽をヤメたのだ。

 そこにいるのはスズガ・ケイジ、日本人の青年の姿だ。


 床にオレンジ色に輝く魔法陣が広がる。


「公爵、我らも無に帰ろうではないか」

 スズガ・ケイジは右手を挙げる。

 彼が二〇年の歳月と三つの肉体を使って作り上げた最後の禁呪だ。

「にゃあ、そのお誘いはお断りするにゃん」

 起動した魔法式を猫耳たちと解析すると同時に隔離を開始した。

 王都そして王宮をブロックごとに分ける。

 最も厳重に隔離するのはもちろん謁見の間だ。謁見の間は貴族と騎士それに近衛など細かく区切ってある。

 スズガ・ケイジは人間を使い勝手のいい魔力電池にしか思ってない。人当たりのいい好人物だが実はサイコパスなんてそう珍しい設定ではない。

 スズガ・ケイジは隔離と封印を続けるオレを愉快そうに見る。

 その余裕はオレたちの対抗策は既に織り込み済みなのだろう。あがいてる姿が彼の目には滑稽に映ってるのかもしれない。


「……っ」


 だが、余裕の笑みが戸惑いに変わった。

 どうやら自分の魔力が王宮に仕掛けた刻印から隔離されていることに気付いたらしい。

「にゃあ、どうしたにゃん?」

 スズガ・ケイジはオレの頭の上を見る。

「なるほど、精霊魔法か」

「惜しいにゃんね」

 彼を隔離してるのはリーリとミンクの妖精魔法だ。スズガ・ケイジがブルーノ・バインズの身体に幾つ人工エーテル器官やエーテル機関を埋め込もうともベースが人間である以上、妖精魔法は察知できない。

「まさかここに来て邪魔されるとは思ってもみなかったよ。最後の最後に本気を出さなくてはいけないとは実に面白い」

 結界内の魔力が膨れ上がる。

「にゃあ、オレも転生者の大先輩であるスズガ・ケイジの本気を見られるのは僥倖にゃん」

「それは幸いだ」


 スズガ・ケイジの身体が膨れ上がり弾けた。


 いや、正確には空中刻印となってほぐれた。

「「「ひっ!」」」

 新国王の変化に我に返った貴族たちが謁見の間から逃げ出す。

 騎士たちは戸惑い近衛は剣を抜いてオレたちに向けたので素っ裸で転がってもらった。

「人型魔獣にゃんね」

 違いは空中刻印の色が赤いということだ。

 結界を抜けられないせいで、頭が天井につかえてる。バカみたいに高い天井だがここはあくまで人間用だ。

「にゃあ、これが本気にゃん?」

 人間が魔獣に変化したのは驚きだが、人型魔獣の攻略法は既に完成しているのでオレの脅威にはならない。

「マコト、こいつ根っこを伸ばして王宮の刻印に接触しようとしてる」

「にゃ、妖精魔法の隔離でもダメにゃん!?」

「そうなの、結界を溶かしてるの!」

「にゃお」

 王宮の刻印に接触されると不完全とは言え、人間を消し去る魔法が発動する可能性が高い。少なくとも王都はやられる。

「結局、直にボコるしかなさそうにゃんね」

「そうだな、それがいいだろう」

 天使アルマは頷く。

「にゃあ、行くにゃん!」


「「「マコト!」」」


 謁見の間の開け放たれた扉から飛び込むように駆け込んできた男女。

「間に合ったね」

「どうだ?」

「大丈夫です」

「そうね、希望はあるんじゃない?」

 カズキとユウカそれにマリオンとテレーザの四人だった。

「にゃ?」

「転生者の不始末は転生者であるボクらが片を付けるべきだと思ってね」

「この事態は二〇年前の私のヘマが原因だからな」

「親の不始末なら仕方ありません」

「この世界、結構気に入ってるんです、それに娘を傷つけたヤツを許せるほど私の心は広くありませんから」

 そして遅れて入って来るひとりの少女。

「主席殿と決着を着けるのに私だけ蚊帳の外は酷いんじゃないかな?」

 今日は戦闘服ではなく中学の時の制服に似たブレザー姿だ。

 他の四人が誰?みたいな顔をする。

「にゃあ、エドモンド殿下の中身だったミマ・キサラギにゃん、ヤツは中途半端な転生者だったにゃん」

 オレが説明を加えた。

「「「エドモンド殿下!?」」」

「皆には要らぬ苦労を掛けたことを謝罪する、今後は一考古学者としてやって行くつもりだ。その為にも主席殿にはここで完全に退場していただく」

 変態王子を続けられるより少女考古学者の方が被害は少ないとたぶん皆んなは思ってることだろう。

「生きておられたのですね」

 マリオンが笑みを浮かべた。こいつはいいヤツなのだ。

「中途半端だがな」

「にゃあ、時間が無いからミマの話は後回しにゃん」

 全員が頷く。


 妖精魔法で造った結界を溶かせるのは想定外だったが、オレたちの結界も粘りに粘ってるのでまだ王宮に仕掛けられた刻印には達してなかった。


「にゃあ、援護を頼むにゃん!」


 オレは元スズガ・ケイジだった人型魔獣に突っ込んだ。


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