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決戦! 人型魔獣にゃん

 いちばん近い人型魔獣はほんの数キロの移動でスマクラグを分解魔法の射程に収める。まるでチビたちが来るのを待って動き出したかのようだ。オレたちはまんまとノセられたのかもしれない。


『にゃあ、チビたちは即時撤退にゃん!』

『『『はい!』』』

 チビたちは直ぐにアポリト州の方向にドラゴンゴーレムを向ける。いずれも申し分ない加速だ。

「にゃああ、ダメにゃん、魔獣のほうが速いにゃん」

 いまにも分解魔法の射程圏内に入る。

『天使アルマ! チビたちを頼むにゃん! ディオニシス! 人型魔獣を攻撃にゃん!』


『『任せよ!』』


 アルマはチビたちの乗ったドラゴンゴーレムごと人型魔獣の射程外に引き寄せた。一瞬で安全圏に移動する。

 誰もいなくなった空間に人型魔獣の分解魔法が打たれた。やはり救援に入ったチビたちを先に始末するつもりだったか。

「魔獣のくせに頭を使うとは生意気にゃん」

『まったくだ』

 オレの言葉に同意したディオニシスの放った熱線が五体の人型魔獣を貫く。高高度にいるディオニシスは二つの州でバラけて飛ぶ人型魔獣を一度に射程に収めていた。

 飛行を開始したばかりの人型魔獣はいずれも体勢を崩し炎を吹き上げる。これまでの表面を焦がしただけの砲弾に載せた魔法式とはダメージのレベルが違う。

「やったにゃん?」

「まだだよ!」

 リーリがオレの頭の上で仁王立ちだ。

 リーリの言葉どおりに魔獣たちは直ぐに体勢を戻し飛行する。燃えてはいるが炎はみるみる小さくなった。

「修復が早いね」

「にゃあ、元々が空中刻印の塊だから貫通してもどうってことないみたいにゃん」

 いずれの魔獣にも大した足止めにもならなかったが、直近のヤツにチビたちを追撃されずに済んだので攻撃は成功だ。

『お館様、スマクラグに向かってるのは近くにいる一体だけにゃん、残りはまっすぐアポリト州に向いてるにゃん』

 研究拠点の猫耳の念話が届く。

『にゃあ、だったら四体は計画どおりにそれぞれ城塞都市におびき寄せるにゃん、スマクラグに向かってるヤツはオレが相手をするにゃん』

『『『了解にゃん!』』』



 ○レークトゥス州 州都スマクラグ郊外 上空


 オレは空間圧縮魔法を連発してスマクラグ郊外の上空に達した。


 そこで初めてドラゴンゴーレムを再生する。空中での機動はドラゴンゴーレムが数段上だ。


「にゃあ、最終防御結界は効かなかったにゃんね」

 スマクラグの一部が消えて無くなっている。五分の一ほどが完全な更地になり分解魔法をレジスト出来なかった最終防御結界は丸ごと消し飛んでいた。

「道路の石畳まで剥がすとは徹底してるにゃん」

 そして裸の人たちが転がってる。

「人間だけ分解されてないの」

 ミンクがオレの頭の上から身を乗り出して地上を眺めた。

「にゃあ、チビたちの魔法が効いたみたいにゃん」

「人間だけを防御結界で覆ったんだね、気絶はしてるけどちゃんと生きてるから合格でいいかな」

 リーリが合格を出した。試験か?

「ビッキーとチャスだけ違う魔法だったの」

 ミンクはチビたちの使った魔法の違いも見分けていた。

「そうにゃん、ビッキーとチャスには精霊魔法の防御結界を使って貰ったにゃん、でも、この手が効くのは始めのうちだけにゃんね」

 身体を守るのがやっとで服までは手が回らなかった。許せスマクラグの市民よ、悪いのは人型魔獣を復活させた黒幕だ。

「にゃあ、いくら精霊魔法でも何度も分解魔法を打たれては効果を維持できないにゃんね」

「もう一発でアウトかな」

「間違いないの」

「オレが前に出るにゃん」

 肉眼だとヤツはまだ豆粒の大きさだが、オレのことをしっかり認識してる。

「ヤツにロックオンされたにゃん」

 スマクラグの最終防御結界以上の魔力を放出すれば嫌でも目に付くか。

 更に距離を詰めて魔獣が撃つ分解魔法の標的をオレとドラゴンゴーレムに限定させる。

 魔獣は遅れて登場し膨大な魔力を放出してるオレを警戒してか、侵攻を中断してホバリングした。

「分解魔法を撃って来ないね」

「様子見なの」

「にゃあ、どうせならもう少し待って欲しいにゃん」

 もうちょっとスマクラグから離れておきたい。流れ弾で消滅とかは絶対に避けたいところだ。


 ヤツは魔法を撃つこと無くオレたちの乗ったドラゴンゴーレムの接近を許した。


「マコト、ぶっ飛ばしちゃったら?」

「そうにゃんね」

 いきなり魔法を撃ち込むと自動的に反撃されるので、まずは人型魔獣が地上に現れる前から仕込んでいた封印結界の出力を上げた。

 全身を包んだ封印結界がホバリング中の魔獣からこれまでと桁違いの魔力を吸い取ってエーテルに戻して大気に放出する。

「おお、効いてるね」

「グラグラしてるの」

 ホバリングの高度が少しずつ落ちていた。

 ヤツは背中に羽根を生やしてるが羽ばたいて飛んでるわけではない。人型魔獣は空中刻印で出来てるため、重さは有って無いようなものだ。羽根にはエーテルからマナを作り出すための刻印が展開されている。

「にゃあ、いまは羽根から魔力が逆流してるにゃん」

「でも、油断しちゃダメなの、分解魔法を撃って来るの!」

 ミンクが人型魔獣の魔法を事前に察知した。


 次の瞬間、オレの防御結界が分解された。


「にゃあ!」

 分解魔法の対策は力押しだ。

 一気にオレが張った二万層の防御結界が分解された。

「人型魔獣の分解魔法は半端ないにゃん、途切れずに重ね掛けして来るにゃん」

「人間には撃てない魔法だね」

「魔獣の魔法は基本的に人間には無理なの」

 リーリとミンクと喋ってる間にもオレの防御結界は追加する端から分解される。魔獣も魔法の出力を上げて毎秒二〇万層とか、普通だったら二〇万回も分解されてる数字だ。

「相変わらずマコトの魔法もスゴいね」

「魔獣のそれを上回ってるの」

「にゃあ、空中刻印野郎なんかには負けないにゃん!」

 分解される数よりも再生させる数が多ければオレの防御結界は破れない。いつもの分解魔法対策だが最も有効だった。

「にゃははは、オレを消せなくて焦ってるにゃんね?」

 かなりの魔力を吸い取られた人型魔獣は、ここに来て空中刻印の速度を増す。刻印の黒い帯はまるで体内を流れる血液のようだ。そしてそれは起動される魔法式の数の増加を意味する。

「魔獣も本気を出して来たね」

「重ね掛けがてんこ盛りなの」

「にゃあ、そうみたいにゃんね」

 オレも妖精たちと魔獣を見つめてるうちに空中刻印を巡る魔力の動きが見えるようになった。

 それとともに多重起動している分解魔法の魔法式が読み取れた。これは単なる重ね掛けと違って完全な多重起動だ。

「にゃあ、人型魔獣の分解魔法が強力なのは異常な数の多重起動にあったにゃん、その一つ一つはごく普通の分解魔法だったにゃん」

「それでも強力なことには変わりないんじゃない?」

「もちろんにゃん、でもオレの防御結界は抜けないにゃん、この程度は全部レジスト出来るにゃん」

「マコトは確かに分解魔法をレジストしてるの、でも魔獣はもっと起動数を上げれるの、油断は命取りなの」

「心配しなくても最悪の魔獣相手に油断なんてしないにゃん」

 シャレにならない数の分解魔法を秒間三〇万を超える数で多重起動させていた。人型魔獣を構成する空中刻印の動きが激しくなりところどころ火花が散っている。

「にゃあ、分解魔法の起動数がまだ上がるみたいにゃん」

 起動数が秒間五〇万に迫る勢いだ。

「魔獣もかなり無理してるみたいだね」

 リーリの言葉どおり人型魔獣の空中刻印が壊れ始めていた。

「これは一〇〇日を待たずに人工魂が持たない感じにゃん」

「それどころか、このままだともう直ぐ爆発するの」

 分解魔法の多重起動は秒間八〇万を超えた辺りから空中刻印がほつれ始めた。

「にゃあ、封印結界に聖魔法を付加するにゃん」

 聖魔法の青い光が人型魔獣を包み込む。

 空中刻印が白く書き換わる。

「効いてるみたいだね」

「にゃあ」


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』


 人型魔獣が頭に手をやり咆哮する。

「にゃ!?」

 魔獣の身体が変化する。

「大きくなってるの!」

「にゃあ、ここにきて巨大化とはやってくれるにゃん」

 地上に足が届くまでに大きくなりその姿はスケルトンに変化した。身長二〇〇メートル超えの聖魔法の青い光を帯びた白と黒の入り混じった巨大な全身骨格だ。顔を上げ両手を広げた。

「自爆前に巨大化する仕様みたいだね」

「刻印が自爆の魔法式に変わったの!」

「にゃあ」

 聖魔法に侵されるのに抵抗して、それまでの分解の魔法式から自爆の魔法式に空中刻印が書き換わる。

「ちょっとマズいにゃんね」

「うん、マズいね」

 自爆されたら直撃のスマクラグどころか王都にまで被害が及ぶぞ。途中にいる避難中の人々もただでは済まない。

 スマクラグから出来るだけ遠ざけたのにこの近くにはチャドとかいる。自爆しなくても流れ弾で死ぬぞ。



 ○レークトゥス州 州都スマクラグ郊外


「うぉ! マジか!?」

 チャドはマコトから貰った魔法馬の上で声を上げた。マコトと別れてから州都スマクラグを目指していたのだが、その目前で人型魔獣に出くわしたのだった。

「団長、ここは危険です! せめてスマクラグまで進んで下さい!」

 騎士が叫ぶ。

「おまえらは先に行け! あのデカブツをマコトが止めてるんだ、最後まで見届けるのが俺の義務だろ」

「では、我々も」

「おまえらまで無理に付き合わなくていいんだぞ」

「いえ、マコト様で止められないなら、何処に隠れようと無駄でしょうから」

「それは言えてるか、でも、今回は流石にマコトでも無理っぽいよな」

「有り得ない大きさですし」

「ああ、何なんだあのデカブツは、本当に魔獣なのか?」

「魔獣の個体差は千差万別と言われていますから」

「それにしてもあれは無いだろう」

 しみじみつぶやく。

 かなり距離があるが、巨大ドクロの常識はずれの大きさは肉眼で確認した。反対にマコトの乗ったドラゴンゴーレムは遠見の魔導具、いわいる望遠鏡でやっと確認できる大きさだ。

 実際にはもっと大きな魔獣はいくらでも存在するが、魔獣の森に潜らない普通の人間の目に触れることはなく、研究者でもない限り知られてはいない。



 ○レークトゥス州 州都スマクラグ郊外 上空


「自爆させるのはマズいにゃんね、だからといってオレの結界で全部封じ込められるか自信がないにゃん」

「そうだね、無理だと思うよ」

「無理なの」

 妖精ふたりは首を横に振った。

 リーリとミンクの見立ては間違いないだろうし、オレ自身も無理だと確信してる。

「これは爆発させないほうがいいね」

「リーリは簡単に言ってくれるにゃんね、でもそうするしか無さそうにゃん」

 このまま手をこまねいて爆発させるわけにはいかない。爆発させないためにはどうするのがいいか?

「ヤツの空中刻印の魔法式を書き換えるにゃん」

「それは悪くない手なの」

「でも、どうやって書き換えるの?」

「にゃあ、これで書き換えの魔法式を撃ち込むにゃん」

 オレが取り出したのは対魔獣用に強化したガトリングガンだ。

「弾丸に爆発の魔法式を無効化する刻印を仕込んだにゃん、後はこれを撃ち込めばいいだけにゃん」

 オレはトリガーを引いた。

 無防備に両腕を広げてる巨大ドクロにガトリングガンが火を吹く。火薬は使って無いが聖魔法で弾丸をくるんでるので青い火花が散ってる様に見えるのだ。

「おお、ちゃんと効いてる」

 弾丸は巨大ドクロの防御結界を突き抜けてその身体を構成する空中刻印に着弾、爆発の魔法式が燃え上がる。直ぐ消されるがガトリングガンから繰り出される弾丸はそれを上回る速さで青い炎を吹き上げた。

 無防備に晒された肋骨が一本燃え落ちた。

「いい調子だね」

「にゃあ」

 ドラゴンゴーレムで巨大ドクロの周りを旋回して弾丸を撃ち込み続ける。いまごろになって腕でガードするが遅い。

 腕の肘の部分で青い爆発が起こりその先が欠落する。落ちた腕は地面に達する前に四散して消えた。

「再生してるの!」

 ミンクが叫んだ。

「にゃあ、大丈夫にゃん、いくら再生しても書き換わるにゃん」

 撃ち込まれた弾丸に仕込まれた聖魔法の刻印がまるでウイルスの様に人型魔獣の身体を蝕む。

 ドクロは大きく口を開くが声は出ない。

「自爆するみたいだね」

「にゃ!? ちょっと早くないにゃん?」

「少しでも大きな損害を与えるつもりみたいなの」

「にゃあ、仕事に忠実な姿勢は嫌いじゃないにゃん、だったらオレも全力で応えるだけにゃん」

 オレはガトリングガンを格納した。

「マコト何をするつもり!」

「にゃあ、オレが直接乗り込んでヤツの魔法式を書き換えるにゃん」

「危険なの!」

「自爆されたら一緒にゃん!」

 オレは、妖精たちを頭から降ろすとドラゴンゴーレムの背中を蹴って巨大ドクロに飛び込んだ。



 ○レークトゥス州 州都スマクラグ郊外


「おい、マコト! マジか!?」

 様子を見守っていたチャドが叫んだ。

「何でそんなところに飛び込む!?」

『兄様! いまどうなってますの!? 人型魔獣にスマクラグが襲われてます! 至急お逃げ下さいませ!」

 下の妹から通信の魔導具で連絡が入った

『ロマーヌか? 人型魔獣ならいまマコトが止めてくれてる』

『マコト様が!?』

『いま、巨大化した魔獣の中に飛び込んだ』

『どういうことですか!?』

『魔獣と刺し違えてでも倒すつもりなんだろう』

『兄様! 六歳のマコト様に何をやらせてるんですか!?』

『俺がやらせたんじゃねえよ』

『黙って見てたなら同じです』

『遠見の魔導具で見てたんだ、止められるわけねぇだろう、近くにいたら俺だって止めたっていうの』

『でも、兄様ではマコト様の代わりは務まりませんわね』

『当たり前だ! マコトがしくじれば俺もスマクラグも無事では済まないだろう、後のことは頼んだぞ』

『はい、パメラ姉様にすべてお任せしますからご安心下さい』

『……確かにその方が安心だ』

『いまは、そんなことよりマコト様の映像を送って下さいませ』

『おまえな……いや、いつもどおりで逆に安心した、いいだろう、最後まで見届けてやってくれ』



 ○レークトゥス州 州都スマクラグ郊外 人型魔獣内


 いまはドクロと化した人型魔獣のがらんどうの胸の中に飛び込んだ。全身がピリピリするのは、オレも分解魔法をレジストするのに大量の魔力を消費しているからだ。

 それでもアルマからもらった魔力が残ってるからぜんぜん余裕だ。

「にゃあ」

 そう言えばアルマからの魔力の塊はオレの格納空間に流し込んだ。

「だったら、人型魔獣の魔法も格納できると違うにゃん?」

 疑問は直ぐに実験して解明だ。

 魔獣は腹の中のオレを消化しようと慌てて分解魔法を多重起動させた。おかげで自爆は一時中断らしく爆発までの時間が引き伸ばされる。

「実験開始にゃん」

 魔獣が多重起動させた分解魔法をオレの格納空間に取り込んだ。レジストすることなくそのまま流し込めた。

「にゃあ、実験は成功にゃん」

 分解の魔法が取り込めることがわかったら次は、空中刻印の中で急激に増してる自爆の魔法式を誘引して取り込む。

 魔法式を分解する刻印は簡単にレジストされたが、魔法式をそのまま吸引されることはまったく想定されてなかったらしい。抵抗されることなく格納される。

 そして魔法式の流れてない空中刻印は封印結界に載せられた聖魔法の光に耐えれず霧散して消える。

「どんどんいただくにゃん」

 人型魔獣の空中刻印の中を流れる魔法式を内容を問わず魔力ごと吸い込んだ。


『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……』


 魔力を根こそぎ剥がされた巨大ドクロは聖魔法を防御できなくなり力ないうめき声を漏らし消滅した。

 約三トンの聖魔石を残して。



 ○レークトゥス州 州都スマクラグ郊外 上空


「マコト、考えたね」

「お見事なの」

 リーリとミンクがオレの頭に乗っていた。

「にゃあ、今回はさすがにやばかったにゃん」

 ドラゴンゴーレムを呼び寄せて背中に降り立つ。


「「「おやかたさま!」」」

「「マコトさま!」」

 そしてチビたちがまた空から降って来た。



 ○帝国暦 二七三〇年一〇月二〇日


 日の出前の時刻。


 残りの四体の人型魔獣たちは、予定どおりおびき寄せられたアポリト州のそれぞれの城塞都市で、息を吹き返した古い仕掛けに絡め取られていた。

『『『捕獲したにゃん!』』』

 各城塞都市から報告が入る。魔獣を捕らえる先史文明の仕掛けは人型魔獣にも効いていた。

『にゃあ、お疲れにゃん』

 人型魔獣にいずれの城塞都市も分解されなかったのは猫耳たちが防御結界を張っていたからだ。オレが身体を張って集めた情報を元に防御結界の多重起動から格納空間方式に変更されてる。

『こちらレーグラにゃん、人型魔獣から魔力を吸い出してるにゃん、巨大化なんておいたはウチらが許さないにゃん』

 レーグラはアポリトの東に位置する城塞都市でケラスに近い。

『にゃあ、リュンクスも魔力の吸い出しを開始したにゃん、魔獣は完全に動けなくしてあるにゃん』

 リュンクスは南に位置する城塞都市で最もアルボラ州に近い。ここを抜かれるとカズキがシャレにならない事態に陥るが今回は大丈夫そうだ。

『フェーレスも人型魔獣を捕まえたにゃん、魔法ごと魔力をチュウチュウにゃん』

 フェーレスは北に位置するレークトゥスに近い城塞都市だ。

『にゃあ、カンデイユもちゃんと機能してるにゃん』

 カンデイユはアポリトの副州都だった城塞都市で、大公国に隣接する州都スプレームスとヴェルーフ山脈の中間に位置する。領主の居城があった場所は例の超巨大土偶のせいでいまは大穴が空いてるが魔獣を捕らえる機能はちゃんと生きていた。

 各城塞都市から魔力を流すパイプラインは、厄介な仕掛けから魔法蟻たちがつなぎ直して捨てることなくオレたちが頂戴している。異世界でもエコは重要にゃん。

『お館様の情報を元に封印結界を改造したおかげで、最悪の魔獣がただのマナ変換炉になったにゃん』

『にゃあ、コイツらにはしばらくこのまま働いてもらうにゃん』

『『『にゃあ』』』


 人型魔獣どもは封印結界で完全に封じた後、そのまま城塞都市ごと地下に沈めてしばらくは超強力なマナ変換炉として運用することになった。



 ○アポリト州 ヴェルーフ山脈 山頂 アポリト拠点 発着場


「マコト様、お話が」

 ヴェルーフ山脈に築いたアポリト拠点の猫スフィンクスに戻ったところでマリオンに呼ばれた。

「にゃ?」

「極秘の情報です、ハリエット様が逮捕されたようです」

 小声で耳打ちした。


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