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スマクラグ封印作戦にゃん

『お館様、王宮の中で火災が発生したにゃん、火元は法衣貴族が逃げ込んだ地下都市みたいな場所にゃん』

 マリオンよりも一足先に王都の猫耳から連絡が入った。

『にゃあ、何であんなところで火が出るにゃん?』

 キャンプファイヤーでもやったのか?

『投光器の魔導具が壊れて火を吹いたみたいにゃん、燃え拡がってるみたいにゃん』

『何で魔導師は火を消さないにゃん?』

『にゃあ、どうも王宮内は現在、魔法が使えないみたいにゃん』

『いったい、どういうことにゃん?』

『マナゼロ地帯と同じにゃん、さっきまで絶対防御結界の出力を上げたせいで、王宮周辺のマナが枯渇したにゃん』

『にゃお、どんだけ出力を上げたにゃん?』

『刻印がイカれるほどだからかなりものにゃんね』

『王宮内の火災は、中の人間たちにどうかして貰うしかないにゃん』

 王宮内に直に干渉すると壊れた絶対防御結界の刻印に復旧不能な損傷を与えることになりかねない。

『お館様、いざとなったら突入の許可をお願いにゃん』

『マズい状況にゃん?』

『このままだとマズいことになりそうにゃん』

『近衛の騎士も役に立たないにゃん?』

『お館様、アイツら火の消し方なんて知らないにゃん』

『使えないにゃんね』

『魔導具も沈黙してる状態なので衛士たちも燃えるに任せるしかないみたいにゃん』

『それはマズいにゃんね』

『いまはまだ避難する場所があるから大丈夫にゃん、でも場合によってはどうしようもなくなる可能性があるにゃん』

『わかったにゃん、最悪の事態になる前に介入していいにゃん』

 王宮に穴を空けたらいろいろ面倒なことになりそうだが背に腹は代えられない。

『マコト、その時は革命権の行使を宣言するといい』

 元第二王子エドモンドのミマから念話が入った。

『にゃあ、ドサクサに革命権を行使して王国を乗っ取るとかオレの趣味じゃないにゃん、それ以前に王位に興味は無いにゃん』

『いや、そうじゃなくて、革命権が行使されればマコトのところの猫耳たちには防御結界が効かなくなる』

『王宮に穴を空けなくていいにゃんね』

『そうだ』

『でもその後が面倒なことになるにゃん』

『既に父上は国王としての職務を果たしていない、兄上に譲位していただくのが適当だろう』

『王太子は使えるにゃん?』

『貴族間の調整には長けておられる』

『いまは親政を行う為政者としての能力が問われるにゃん、貴族はいずれも今回の件で多かれ少なかれ被害を受けて国政どころじゃないにゃんよ』

『法衣貴族も蚊帳の外か』

『王宮内の火事ひとつ対処できないようでは話にならないにゃん』

『私としてはマコトが適当だと思うがな』

『オレは今回の件が片付いたら冒険の旅に出るにゃん、王国の存亡には興味が無いにゃん』

『わかった、革命宣言の後のことは私が何とかしよう、多少の罪滅ぼしにはなるかもしれない』

『そうにゃんね、エドモンドが事態を混乱させた罪は重いにゃん』

『わかってる、いまにして思えば軽率な行動だと思ってる』

『にゃあ、頼りにしてるにゃんよ』

 面倒事はミマに押し付けることを決定した。


『お館様、絶対防御結界の刻印がイカレたおかげで、人型魔獣たちは王宮からアポリトにまた意識を向けたにゃん』

 人型魔獣の観測を続けてる研究拠点の総合作戦室から念話が入る。

『それはいい傾向にゃん、砲撃を続けて他に意識を向けないようにするにゃん、そのまま潰しても構わないにゃんよ』

『にゃあ、了解にゃん、勝負を決めるにゃん』

 アポリトの各城塞都市を覆う結界から発射された砲弾が、途切れること無く五体の人型魔獣に降り注ぐ。

 やはり魔獣たちは分解魔法をまとった防御結界で難なく砲弾を消し去る。

『嫌がらせ以上にはならないにゃんね』

『封印結界でマナを吸ってるのに魔力がまったく衰えないのがスゴいにゃん』

『にゃあ、コイツら本当に一〇〇日程度で停まるにゃん?』

『人型魔獣のコアである人工魂が持たないにゃん』

 研究拠点から解説が入った。

 人工魂は人型魔獣の遺した巨大な聖魔石に封じ込められていた。たぶんそれが魔力の源だと思われるが全容はまだ解明できてない。

『にゃあ、お館様に人工魂の最新情報をお知らせにゃん、活動を開始してちょうど一〇〇日あたりで人型魔獣の人工魂は自らの魔力で崩壊するにゃん』

『崩壊って何かヤバそうにゃんね』

『お館様、正解にゃん、大爆発にゃん』

『やっぱりそう来るにゃんね』

『にゃあ、マジで五体も爆発した日には物理的に王国が消し飛ぶにゃん』

『それはまずいにゃん』

『お館様、人型魔獣が王宮に集まったところをまとめて始末した方が良かったと違うにゃん?』

 過激な意見も出る。

『にゃお、王宮内に人型魔獣が潜り込んだら、それはそれでヤバいことになるにゃん、オレたちでも追い切れなくなるにゃん』

『確かにあの城はデカすぎにゃん』

『探す必要は無いにゃん、一〇〇日ほど封じ込めればいいにゃん、そうすれば勝手に吹っ飛ぶにゃん』

『にゃあ、王都が吹っ飛ぶと王国は終わりにゃんね』

「そうにゃんね、王国としての形を喪うにゃん』

『そしてお館様の時代が始まるにゃん』

『『『にゃあ!』』』

 同意する猫耳たち。

『にゃお、おまえらもミマの仲間にゃんね』

『ミマの案は王国の存続にゃん、ウチらは違うにゃん』

『それだとオレが黒幕の仲間みたいになるにゃん』

『黒幕の始末はウチらにお任せにゃん』

『お館様の王国もウチらにお任せにゃん』

 猫耳たちは本気っぽい。

『にゃお、それだとオレが黒幕そのものにゃん』

『実は、お館様が本当の黒幕だったというのもカッコいいにゃん』

 おおおっ!

『にゃ、一瞬オレも同意しそうになったにゃん、でも、黒幕の魔導師みたいにイカれてないにゃん』

『にゃあ、そうにゃんね、お館様は心優しき子猫ちゃんにゃん』

『『『にゃあ♪』』』

 同意の鳴き声を上げる猫耳たち。


『お館様、王宮内で動きがあったみたいにゃん、詳しくはマリオンから聞けると思うにゃん』

 王都の猫耳から報告が入った。

『にゃあ』

 マリオンを見るとちょうど念話を終えたところだった。

「マコト様、王宮内の火災は鎮火に向かってるようです」

「にゃあ、それは良かったにゃん、魔法が使える様になったにゃん?」

「いえ、魔法はまだですが、陛下が戦闘ゴーレムの封印を解いて消火に当たらせたようです」

「にゃ? 王宮にも戦闘ゴーレムなんてあったにゃん」

「そのようです、私も知りませんでしたが、かなりの数を保有されていたようです」

「にゃあ、だったらもっと早く使って欲しかったにゃんね」

『『『にゃあ』』』

 猫耳たちからも同意の鳴き声が上がった。

「王都に攻め込まれて初めて使われることになってたのではないでしょうか?」

「王都だけじゃなく王国を守るために使って欲しかったにゃん」

「そうですね、でも今回の魔獣には間に合ったのではありませんか?」

「にゃあ、そうにゃんね、王宮の中ではいい勝負をするかもしれないにゃんね」

 王宮内の人間は全滅かも知れないけどな。

『お館様、王宮内の戦闘ゴーレムがわかったにゃん、身長五メートルの人型みたいにゃん、現在可動してるのは五〇体にゃん』

『カズキのところの戦闘ゴーレムよりは小さいにゃんね、それと数がショボいにゃん』

 カズキが密かに保有している戦闘ゴーレムは身長二〇メートルの人が乗れそうな巨大ロボット型だ。

 男のロマンにゃん。

『にゃあ、数に関しては稼働してない個体はカウントされてないにゃん、だから実際の保有数は不明にゃん、調べるにゃん』

『後回しでいいにゃん、今回の件にはもう間に合わないにゃん』

『お館様の仰るとおりにゃん、投入の時期を逸した感があるにゃんね、国王が先頭に立って出ると言った時に出し惜しみしなければ良かったにゃん』

『そうにゃんね、国王の権威もうなぎ登りになったはずなのに残念にゃん、戦闘ゴーレムを出してればオレが戦争を始めなくても時間は稼げたにゃん』

「マコト様、人型魔獣の動きはどうでしょう?」

 マリオンに質問される。

「にゃあ、魔獣の意識はアポリトの城塞都市に向いてるみたいにゃん、でも、大きな動きはないにゃん」

「するとまだ周囲を探ってるのかもしれませんね」

「にゃあ、魔獣のくせに慎重なヤツにゃん」

「それだけ油断のならない相手ということです、マコト様、レークトゥスの州都スマクラグの様子はいかがですか?」

「にゃあ、ここから見た限り最終防御結界はそのままにゃん」

「それはマズいのではないですか?」

「にゃあ、さっきまでの王宮ほどじゃないにしても強い魔力を排出してるからちょっとヤバいにゃんね、距離も近いからついでに襲われるかもしれないにゃんね」

「やはりそうなりますか」

「マリオンもスマクラグに念話は送れないにゃん?」

「はい、何度も試したのですが最終防御結界を抜けることは出来ませんでした」

「にゃあ、融通が効かないのも不便にゃん」

「そうですね、スマクラグの最終防御結界は王都の絶対防御結界の原形と言われてますし、大規模な改修も入ってませんからピサロ家の初代様が造られたままの性能を維持されてると思われます」

「にゃあ、王都の絶対防御結界はやはり性能が落ちてるにゃんね」

「強力な防御結界は平時には不便な代物ですから」

「それで改修と称して壊したにゃんね」

「王都は長らく平和でしたからね、宮廷魔導師すらこの国が魔獣の森に沈み掛けてる事実から目を逸らしていましたから」

「にゃあ、目を逸らすのは構わないけど後の人が困ることはしないで欲しかったにゃんね」

「マコト様、スマクラグはどうされます?」

「にゃあ、意思疎通が計れないことにはどうしようもないにゃん、もしかしたら人型魔獣の分解魔法が効かないかもしれないにゃん」

「そんなことがありえますか?」

「にゃあ、まず無いにゃんね」

「やはりそうですか」

「悪いけど、オレたちは勝手に引きこもってるヤツらの為にこれ以上の危険を犯したくないにゃん」

「結界に関しては、たぶん魔獣に反応して自動的に展開されたのだと思います、王都の絶対防御結界も以前はそうだと聞いています」

「そうにゃん?」

「州都の防御結界の方式としては珍しくない方式です、スマクラグほど強力な防御結界ではありませんが」

「にゃあ、普通の魔獣なら有りにゃんね、でも今回はまずかったにゃん」

「まったくです、念話まで通じないとあっては領内の指揮が取れません」

 魔獣が領内に侵攻した瞬間、領地の大半を見捨てて州都に籠城する方法も理解できなくもない。

 それだけ魔獣は人類にとって絶望的な存在なのだ。

 スマクラグの最終防御結界は今回に限っては完全な悪手だけどな。

「「「おやかたさま!」」」

 チビたちがぞろぞろやって来た。

「あたしたちにいいかんがえがあるの!」

 シアが手を上げて発言した。

「にゃ?」

「まじゅうがくるまえにけっかいでスマクラグをおおえばいいの!」

 続けてニアが発言した。

「スマクラグを結界で覆うにゃん?」

「そうすればまりょくがそとにもれないよ」

 ノアが締めくくる。

「出来るにゃん?」

「できます、わたしたちのせいれいまほうならまじゅうにもきづかれません」

 ビッキーが説明してくれる。

「しかし、あなたたちに州都を丸ごと封じ込めるなんて可能なのですか?」

 マリオンから物言いが入る。

「もんだいありません、わたしたちならできます」

 チャスが請け負った。

「「「できるよ!」」」

 四歳児も声をそろえる。

「わかったにゃん、おまえらに任せるにゃん、でもオレの指示には従ってもらうにゃんよ」

「「「はい!」」」


 チビたちはそれぞれ補助役の猫耳ゴーレムと一緒にドラゴンゴーレムに乗ってレークトゥスの州都スマクラグに向けて飛び立った。


『にゃあ、アルマ、聞こえてるにゃん』

『聞こえてるぞ』

 オレはアルマに念話を入れた。

『アルマにお願いがあるにゃん、チビたちを守って欲しいにゃん』

「我が守らずとも、あの子たちは十分に強かろう?」

 突然現れた天使アルマに後ろから抱きかかえられた。いまは甲冑姿になっている。

「にゃあ、保険にゃん、危なくなるまでは見守って欲しいにゃん」

「いいだろう」

 次の瞬間、アルマは自らが出した白銀のドラゴンゴーレムの背中に移動していた。リーリみたいに仁王立ちしてる。

「あの子たちのことは我に任せるがいい」

 そのまま飛び去った。

「マコト様、いまの方は?」

 マリオンは呆気にとられていたが我に返った。

「にゃあ、親戚のお姉さんみたいなものにゃん」

「ああ、それでドラゴンゴーレムに変わった乗り方をしてるんですね」

 納得した表情で頷くマリオン。納得するポイントはそこかよ。


『お館様、王宮内の火災は鎮火したみたいにゃん、戦闘ゴーレムも活動を停止したにゃん』

 王都の猫耳から報告が入った。

『にゃあ、それなら一安心にゃん』

『引き続き監視を頼むにゃん』

『了解にゃん』


「マコト様、どうやら王宮の火災は収まったようです」

 遅れてマリオンからも情報が入った。

「少しだけですが魔法も使えるようになったみたいです」

「にゃあ、それはいいにゃんね」

「ただ、損傷した絶対防御結界の修復には手間取りそうだとのことです、防御能力の大幅な低下は避けられないようです」

「人型魔獣に対しては効果が期待できない上に逆に引き寄せるから、そのままにしておくのがオススメにゃん」

「そうですね、いずれにしろ修復には半年は掛かりますから、いま直ぐに出力を上げることは出来ないでしょう」

「にゃあ、魔獣から防御するはずの結界が魔獣を呼んでるなんて皮肉な話にゃん」

「人型魔獣はそれを狙って調整されてるのですね」

「そうかもしれないにゃん」

 実際には防御されていない人口密集地帯を狙って調整してあると思われる。先史文明の防御結界は魔力を外にお漏らししたりはしない。

「マコト様、城門が開かれたようです、城壁に取り残された人たちに避難の許可が下りたそうです」

「にゃあ、それは良かったにゃん」

「王宮から王都市民のマコト様の領地への避難の許可を求めてます」

「了解にゃん、対応させるにゃん」

 念話で猫耳たちに指示した。

 旧男爵領とケラスでの受け入れになる。オレの領地の防御結界は魔力も情報もお漏らししないから人型魔獣を呼び寄せることはない。

「王宮はどうにゃん?」

「引き続き籠城を続けるようです」

「それでよく王都の城門を開ける気になったにゃんね」

「人間の多さが人型魔獣を引き寄せるという情報を提供しましたから」

「にゃあ、自分たちが優先にゃんね」

「王国を守るためには仕方のない選択です」

「国民のいない国は滅ぶにゃんよ」

「そうですね」


『お館様、チビたちがレークトゥスの州都スマクラグ上空に到着したにゃん』

 チビたちに付いて行った猫耳から報告が入った。

『にゃあ、偉い早いにゃんね』

『天使様のおかげにゃん』

『流石にゃん』

 チビたちは五体のドラゴンゴーレムをスマクラグの上空で旋回させる。

『高度限界に気を付けるにゃんよ』

 チビたちに念話を入れた。

『『『はい!』』』

『だいじょうぶ!』

『『『はじめる!』』』

『けっかいてんかい!』

『『『てんかい!』』』

 精霊魔法由来の封印結界がスマクラグの街を覆う。上手く行ったみたいだ。魔力の遮断を確認した。

『じょうたいかくにん!』

『『『もんだいなし!』』』

 チビたちは危なげなく任務を完了した。


『お館様! 人型魔獣に動き有りにゃん! 侵攻目標スマクラグにゃん!』

 研究拠点の総合作戦室から声が上がった。

 五体の人型魔獣が背中から黒い翼を広げ空に浮かびスマクラグに向く。

『にゃあ! オレも確認したにゃん!』



 ○アポリト州 上空


 オレは地面を蹴ってジャンプすると同時に空間圧縮魔法を使った。


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