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人型魔獣殲滅作戦にゃん

 ○アポリト州 上空


 かつて公称人口三八万人を誇っていたアポリト州は、いまは見る影もなく人間は誰一人としていないことになってる。

 実際の人口は十五万人を切っていたらしいが。現在は間違いなくゼロだ。先日まではこっそり入り込んでグール化を逃れていた犯罪奴隷相当の犯罪者が三〇人ほどいたが、オレたちが全員とっ捕まえて猫耳化している。

 またグール&オーガ化した火事場泥棒が二五〇体ほどが共食いを免れ生存していたがこれも猫耳化してある。

 以前は聖魔石化するしかなかったが、オレたちもレベルが上がったので、グールだろうがオーガだろうが容赦なく猫耳化することが可能になった。命は無駄にしないのがオレたちのポリシーだ。



 ○アポリト州 ヴェルーフ山脈 山頂 アポリト拠点 発着場


 日没寸前にアポリト州のヴェルーフ山脈の山頂に造られた猫スフィンクス型のアポリト拠点にドラゴンゴーレムが次々と降り立った。

「いつの間に造られたのですか?」

 マリオンが猫スフィンクスの横に造ったドラゴンゴーレム専用の発着場から眺める。

「にゃあ、最近にゃん」

 実際、完成させたのは数日前だ。既にトンネル網が出来上がってるので拠点の設置は簡単だ。

 オレたちだけならばトンネルでの展開でも良かったのだが、王宮の監視役も兼ねていると思しきマリオンに見せるのは時期尚早なので、新たにヴェルーフ山脈に拠点を設けた。

「さあ、中に入るにゃん」

 案内は猫耳ゴーレムに任せた。


『主よ、近隣に魔獣の反応はないようだ』

 アポリトの上空、高度限界よりもはるかに高い場所を飛ぶディオニシスから報告が入った。

『ご苦労にゃん、ディオニシスはどうするにゃん、オレの格納空間に戻るにゃん?』

『我はしばらくここに留まろう、やはり空の居心地は格別だ』

『にゃあ、いいにゃんよ、引き続き上空からの監視を頼むにゃん』

『心得た』


 オレは遠くに見えるカンデイユの街の明かりに目を凝らす。

 巨大土偶に街が壊された為に街灯の光は、中央部分がぽっかりと抜けていた。

「「「お館様にゃん!」」」

「にゃ!?」

 たくさんの猫耳たちが空から降って来た。

「みゃあああ!」

 そしてオレの防御結界にペタンペタンと張り付いた。

「「「にゃあん」」」

 何故か満足そうに鳴く猫耳たち。

「お館様の防御結界は柔らかくて気持ちいいにゃん」

「にゃあ、お館様の愛を感じるにゃん」

「最高の感触にゃん」

 硬かったら怪我するだろう。

「「「にゃあ♪」」」

 さっき猫耳ゴーレムに猫スフィンクスの中に案内させたはずのチビたちまでが円を描いて降って来た。

 子供は教えなくても直ぐに真似をする。

「でも、いつの間に飛んだのか気配を感じ取れなかったにゃん」

 チビたちも楽しそうにオレの防御結界に張り付いていた。

「精霊魔法を四歳児たちも使えるようになったんだね」

 オレの頭の上にリーリが乗っていた。瞬間移動を会得したのか? やはりこれは教えてもらわねば!

「四歳児たちも精霊魔法が使えるようになったにゃん?」

「そうみたいだね」

「精霊魔法は普通の人間には無理じゃなかったにゃん?」

「ちっちゃいうちならエーテル器官の精霊魔法を司る部分を解放出来るみたいだね、実際、解放しちゃってるし」

「人間のエーテル器官はもともと精霊魔法が使えるようになってるにゃん?」

「そうみたいだね、普通の人はオフになってるけど」

「するとそこをオンすると誰でも精霊魔法が使えるにゃん?」

「知識がないと使えないと思うよ」

「知識がある人間のスイッチをオンにすればいいにゃん?」

「たぶんね、スイッチをイジる技術は失われたけどマコトたちなら出来るか」

「もしかして、普通の人間を魔法使いにも出来るにゃん?」

「出来るんじゃない?」

「にゃあ、オレたちも人間のエーテル器官の研究はそこまでやってなかったにゃん、というかぜんぜんわからなかったにゃん」

「じっくり研究すればいいの」

 ミンクもオレの頭に乗っていた。

「にゃあ、それとオレは瞬間移動の魔法もマスターしたいにゃん」

「瞬間移動?」

 リーリが首を傾げる。

「にゃあ、いまだって何処かからオレの頭の上に移動して来たと違うにゃん?」

「瞬間じゃないの」

 ミンクが否定した。

「違うにゃん?」

「瞬間じゃなくて空間圧縮魔法の応用だよ、間にある空間を全部圧縮して一気に飛び越えるんだよ」

「全部、圧縮するにゃん?」

「そうだよ」

「障害物はどうするにゃん?」

「飛び越えるんだよ」

「そうなの、跳び越えるの」

「それって瞬間移動と何が違うにゃん?」

「マコトの言ってる瞬間移動ってエーテルの入れ替えのことでしょう? 魂は入れ替え出来ないよ」

「そうにゃん?」

「魂は面倒臭いの」

「にゃあ、確かに面倒臭いにゃんね、だったら空間を圧縮して飛び越える方法を教えて欲しいにゃん」

「いいよ、気合を入れて飛び越えればいいんだよ」

「にゃ?」

「気合が重要なの、天使様もそう言ってたの」

「にゃあ、気合にゃんね」

 うん、ぜんぜんわからないにゃん。



 ○アポリト州 ヴェルーフ山脈 山頂 アポリト拠点 食堂


 天使のアルマは食堂にいた。

「このウシの丸焼きは控えめに言っても最高だ」

 天使様はオレと同じセーラー服を着ていた。

「にゃあ、気に入ってもらえたなら幸いにゃん、丸焼きはテンションが上がるから、今回は毎回出してるにゃん」

「明日の戦いに備えるわけか」

「そうにゃん、明日で人型魔獣とは決着を付けるつもりにゃん」

「てんしさま、こっちのからあげも美味しいよ!」

「おお、そうか」

「タルタルソースをかけるとしこうのあじだよ」

「おおお」

 チビたちが天使様のお世話係になっていた。

「最高だよね」

「最高なの」

 リーリとミンクもチビたちに唐揚げを取り分けて貰っていた。

「おやかたさまにもあげる」

「にゃあ、ありがとうにゃん」

 チビたちはオレにも取り分けてくれた。



 ○アポリト州 ヴェルーフ山脈 山頂 アポリト拠点 ゲストルーム


 マリオンは、与えられたゲストルームでベッドに転がっていた。驚きの連続で疲れ果てていたがそこは自分でウォッシュの魔法で洗い流した。

 いまは各方面に念話を入れて情報を収集している。

「王宮内の動きがさっぱりですね」

 この情勢なら仕方がない面もあるが、王国存亡の危機に早々に籠城を始めるのはいかがなものか。

「気になるのは、既に隔離されてるはずなのに王宮内に近衛の騎士たちが出入りしている点ですね」

 隔離状態になった王宮に出入りは不可能なはずなのにだ。

「しかも汚れ仕事専門のブルーノ・バインズ大尉の中隊ですから穏やかじゃありませんね」

 その痩せた陰気な風貌から死神の二つ名を持つ彼は、暗殺を得意とする。他の騎士たちからは蛇蝎のごとく嫌われてるが、その実力は単騎でもかなりのものらしい。

 しかもブルーノ・バインズ大尉の中隊は近衛の騎士の中では特異な連携を重視した戦術を駆使するので王国最強の騎士とも言えた。

 マリオンは友人の近衛の騎士から情報を仕入れていた。死神中隊が何やらコソコソ動いてると。王命で動いているとの噂だが何処まで本当か友人も怪しんでいた。

「日頃の行いが悪いと良くは言われませんね」

 マリオンも彼らが結界を出入りしている理由までは掴めなかった。

「彼らは全員が敵に回すと面倒な魔法騎士ですからね、こんな時ぐらいおとなしくしていてくれると私としても助かるのですが」

 問題はブルーノ・バインズ大尉なら自身が黒幕に取って代わろうとするぐらいのことはやりそうな人間だということだ。

 ブルーノ・バインズ大尉はかなり上位の魔法使いでもあった。

「これ以上、事態を複雑にして欲しくはないのですが、大尉ならエドガー・クルシュマン様を殺せたかもしれませんね」

 ひとりで誰に聞かせるでもなくつぶやいた。



 ○帝国暦 二七三〇年一〇月十九日


 ○アポリト州 ヴェルーフ山脈 山頂 アポリト拠点 頭の上


『開始にゃん!』

『『『にゃあ!』』』

 オレたちは夜明けとともにアポリト州の州都を除く四つの城塞都市を結界で覆い、その中で高出力の魔法を発生させた。

『お館様、予定どおりカンデイユ、レーグラ、リュンクス、フェーレスの各城塞都市の封印と魔力発生を確認にゃん』

 オレはヴェルーフ山脈の猫スフィンクスの頭の上で研究拠点の総合作戦室から報告を受けた。


 アポリト州の各城塞都市は、これまでの研究と調査の結果、街全体が人間をグールやオーガに作り変える装置になっていることが判明していた。

 下手に修正するよりは消してしまった方が安全で安上がりなので、人型魔獣の囮にはぴったりだ。

 ちなみに大公国と国境を接してる州都スプレームスは、当初グールやオーガに作り変える装置とは時代的に無縁と思われていたが、実は地下にピザ生地魔獣が眠っていたのだった。これがオリジナルだったのかも。

 間違って人型魔獣が引き寄せられると困るので昨夜のうちに先に処理している。


『にゃあ、続けて次のフェーズに入るにゃん、タンピス州とレークトゥス州のクーストース遺跡群の五つからマナを吸い上げるにゃん』

『『『了解にゃん!』』』


 タンピス州

 ・パピリオ

 ・アピス

 ・セルペンス


 レークトゥス州

 ・プラティヌム

 ・ラピス


 五つの遺跡の近くで待機していた猫耳たちが、オレの指示を受け封印結界の魔法式を書き換え内部のマナの分解を開始した。

『これで人型魔獣が目を覚ますにゃんね』

『今度はほとんど完成形になったにゃん』

『にゃあ、仕方ないにゃん、一度にやったら周囲の被害が半端ないにゃん』

『お館様は優しいにゃん』

『にゃあ、オレの選択が裏目に出ないことを祈るにゃん』

『大丈夫にゃん、お館様の選択は間違ってないにゃん、ウチらが証明するにゃん』

『無理はダメにゃんよ』

 何が正解だったのかは今日中に答えが出るはずだ。一つ間違えば今回の選択を一生後悔することになる。

『これで遺跡の中身が動いてないのはプリンキピウムの遺跡だけになったにゃんね』

『にゃあ、あちらはいまのところ変化なしにゃん』

 同じクーストース遺跡群でもプリンキピウム遺跡では、早い時期からマナを抜きまくってるせいか、いまだ魔獣の生成が始まっていなかった。

 それでいて分解が出来ない、人工魂は生成されていないはずなのに分解が効かず格納が出来なかった。

『こっちが落ち着くまでは、プリンキピウムの遺跡は現状維持でマナ変換炉代わりにゃんね』

『にゃあ、ウチらもこのまま解析を進めるにゃん』

 プリンキピウムの遺跡に詰めてる猫耳からも念話が入った。

『安全第一で頼むにゃん』


 マナを抜き始めて二時間ほど経過したところで五つの遺跡に動きがあった。今回も同時期に生成された五体がシンクロしているみたいだ。

『お館様、人型魔獣の孵化が始まったみたいにゃん』

『にゃあ、近くにいる猫耳は分解の射程圏外まで退避にゃん、アポリト州の各城塞都市は魔力上げるにゃん』

『『『にゃあ!』』』


 孵化の反応から一〇分後、五つの遺跡を覆っていた土砂が分解されて消えた。オレたちは魔導具を介して五体の魔獣を観察する。

『出て来たにゃん』

 魔獣はいずれも遺跡の穴から浮かび上がる様に外に出た。

 動きは五体とも判で押したように同一だ。

『これが完成された状態の人型魔獣にゃんね』

 いずれも黒い空中刻印で構成されているのは以前のモノと変わらないが、刻印の密度が段違いに濃くなっていた。

『お館様、いずれの魔獣にも封印結界の追随を確認したにゃん』

 人型魔獣はオレたちが施した封印結界の中にいた。

 封印結界は肉眼では見えないが透明なシャボン玉の泡の様なもので人型魔獣を包み込んでおり引き続きマナを吸収して分解を続けている。

 いまの機能はそれだけだが。

『いい感じにゃん、いずれの魔獣もアポリト方面を見てるにゃん』

『にゃあ、そのままこっちに来てくれると助かるにゃん』

 アポリト州内の四つの城塞都市はいずれも人型魔獣好みのかなりの量の魔力を放出して惹きつけている。

『すんなり釣り針に引っ掛かってくれればウチらもハッピーにゃん』

『そうにゃんね』

 ただし人型魔獣が魔力よりも好きな人間の反応が近くにあるのが厄介だ。遺跡のあるタンピス州とレークトゥス州はいずれも王国内で最大の都市である王都に近い。

 それにレークトゥスに至っては州都スマクラグが健在だ。あの結界の中もかなりの人間がいる。

『五体が連帯して索敵してるにゃん』

『にゃあ、お館様、王都とスマクラグに気付かれたっぽいにゃん』

 王都もレークトゥスの州都も防御結界が何処まで人型魔獣の分解魔法に有効か未知数だ。出来れば性能試験は実戦以外でやって欲しい。

『にゃあ、無理やりにでもこっちに集中させるにゃん』

『お館様、目標の城塞都市から砲弾でもぶっ放してみるにゃん?』

『ナイスアイデアにゃん』

『各城塞都市の結界から人型魔獣に向けて、本気の空中刻印破壊魔法式を載せた砲弾を発射するにゃん』

 砲弾は魔獣の胴体ほどの大きさがある半エーテル体だ。こちらは既に設計を終えているのでいつでも撃てる。

『いいにゃんね、これで仕留められたらラッキーにゃん』

 人型魔獣を迎撃する砲弾は州の境を超える長距離は想定してなかったが対応は可能だ。

『『『発射にゃん!』』』

 四つの城塞都市から砲弾が音もなく発射された。半エーテル体の砲弾は高度限界ギリギリの高さを飛んで行った。

 問題はなさそうだ、そうと決まればやることは一つだ。

『連続で発射にゃん!』

『『『にゃあ!』』』

 各城塞都市から連続して砲弾が発射された。


 一分も掛からず最初の砲弾が人型魔獣に着弾する。しかしその身体に触れる寸前に跡形もなく消え去った。


『初弾、いずれも分解されたにゃん』

 撃ち出された砲弾はいずれも魔獣たちに次々と着弾直前に分解された。

 それでも砲弾に仕込んだ魔法式は消されること無く人型魔獣の表面に張り付いた。空中刻印の黒い帯が燃え上がる。

『効いてるにゃん?』

『ダメにゃん、火は直ぐに消えたにゃん』

『にゃあ、空中刻印の再生は前回は無かった機能にゃん』

「死角の少なさは流石に完成形だね」

 リーリがオレの頭に乗る。

「にゃあ、これも想定内にゃん」

 砲弾は連続して人型魔獣たちに降り注ぐ。完全に分解できない魔法式が表面を焼いてるがいくらも力を削いでない。

『効いて無くても十分に嫌がらせになってるにゃん』

『お館様、砲撃が効いて魔獣の注意はどれもアポリトに向いたにゃん』

『その調子でどんどん行くにゃん!』

 魔獣は降り注ぐ砲弾に慣れたのか徐々に離れた位置から消去し始めた。余裕すら感じられる。

『にゃあ、もっと撃つにゃん!』

 人型魔獣が砲弾を消しても直ぐに次が到達する。しかも狙いは正確無比だ。オレたちもかなり本気で撃ち込んでるが、分解魔法を飽和させるには程遠くぜんぜん無理っぽい。

『にゃあ、これだけ誘ってるんだから、さっさとこっちに来るにゃん!』

『お館様、ヤツらはまだ王都に興味があるにゃん』

『にゃ!? どういうことにゃん! 王都の絶対防御結界は、いまになってかなりの魔力を垂れ流してるにゃん、これじゃアポリトの城塞都市の仕掛けが霞むにゃん』

 オレたちが王都よりも強い魔力が出てる様に偽装したのに、作戦を開始してから魔力を増すとか何を考えてるんだ。

 王都の人間も宮廷魔導師を介してこの状況を見てるはずなのだが。人型魔獣が魔力に反応してるのがわからないのか?

「マリオン、王都のバカどもにオレたちの邪魔をしないよう言って欲しいにゃん! せっかく人型魔獣をアポリトに呼び寄せてるのにあんなに魔力を垂れ流したら王都に行くにゃんよ」

 後ろに控えるマリオンに苦情を述べた。

「いましがたの王宮の中からの情報によれば、どうやら人型魔獣の姿を確認した貴族たちが恐慌状態らしく、魔導師たちに結界の強化を命じたようです」

 レークトゥス州の州都スマクラグの最終防御結界と違ってちょっとしたコツは要るが念話も通信の魔導具も通じる。

「にゃあ、魔力の垂れ流しは逆効果なので直ぐに止めさせるにゃん! ただでさえ城壁内には人が多いにゃん、魔力までアポリトの城塞都市を上回ったら間違いなく人型魔獣が王宮に行くにゃんよ」

「わかりました、直ぐに呼びかけます」

「人型魔獣の分解魔法は半端ないから急いだ方がいいにゃんよ、外縁部の人たちは既に避難してるから直接、王宮が狙われるにゃん」

 タンピス州の人々の避難の後、王都の外縁部の人々にも避難を呼びかけたのだ。戦争が終わって旧男爵領に受け入れられるようになったおかげで、避難希望者の大半は昨夜のうちに移動を終えている。

 いま王都の人口は城壁内がいちばん多い。城壁内の人々は扉が締め切られてる為に逃げるに逃げ出せないでいる。安全なはずの王都の城壁内がこのままだといちばん危険な場所になりかねない。

「城門も解放した方がいいにゃんよ、いまの城壁内にいるのはかなり危険にゃん」

「そうですね、城壁内に人型魔獣に侵攻されたら逃げ場がありませんね、王宮内に入れてくれるわけでもありませんし」

「にゃあ、いちばんいいのは誰もいないところに逃げることにゃん」

 新軍のヤツらも既に旧男爵領に移動させてる。城門が開いたら正規軍も出してくれるようにハリエットに伝えてある。

「マコト様のお屋敷は大丈夫なのですか?」

「にゃあ、上級地区は人口密度が低いから大丈夫にゃん」

 それにいざとなったらトンネルだ。


 屋敷にはキャリーとベルの小隊の他に王宮に逃げなかったご近所さんが避難してる。王弟コーネリアス大公の一家もだ。

 大公は総司令として近衛軍司令部に詰めており、家族をオレのところの離れに使用人ともども保護している。

 猫耳たちが気を利かして金ピカにしようとしたら、テレーザに「マジでヤメて」と真顔で止められていた。


「マコト様、絶対防御結界の出力が落ちています、どうやら刻印の一部が崩壊したようです」

 マリオンが報告してくれる。

「にゃあ、それは助かるにゃん、でもそんなに簡単に壊れて大丈夫にゃん?」

「大丈夫ではないはずですが」

 マリオンも困り顔だ。

 タンピス州の領主ファビウス・ボールディング伯爵の言っていた『絶対防御結界は、二〇〇年前の大改修以来、構造的欠陥を抱えている』という噂は本当だったか。

『お館様、ウチらも王都の絶対防御結界の出力が落ちたのを確認したにゃん』

 王都の屋敷にいる猫耳から報告が入った。

『煙も出てるにゃん、お城の中で何かあったみたいにゃんね』

『煙とは穏やかじゃないにゃんね』

「マリオン、王宮から煙出てるけど何かわからないにゃん?」

「煙ですか? 確認します」

 マリオンが念話を飛ばした。


 この一大事に王宮に逃げた貴族どもは何をやってるんだ?


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