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一芝居にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年一〇月十八日


 ○フェルティリータ連合 フェルティリータ州 州都カダル カダルの遺跡前 ロッジ


「あっ、うっ、マコト様ではありませんか?」

「にゃあ、久しぶりにゃん、マリオン」

 翌朝、マリオンはロッジのベッドで目を覚ました。

 いつまでも彫像状態で放置してるわけにも行かないので復活させたのだが、ややこしいことになると困るので元セザール・マクアルパインの猫耳セリと元エドモンドのミマは昨夜のうちに別の地下施設に移動させている。

 ふたりは、喜々としてすぐに分解した五つの遺跡の解析を開始していた。生まれ変わっても根本は変わらない。

 ふたりとも身分という足かせが取れて自由の身になったわけだ。オレの監視下だけど。

「にゃあ、身体はどうにゃん?」

 身体を起こしたマリオンに尋ねた。

「問題ありません、マコト様ここはどこですか? それにエドモンド殿下とセザール教授のお姿が見えませんが」

「場所はカダルの遺跡のすぐ近くにゃん、マリオンたちはオレのロッジの中に収容したにゃん。それから殿下と教授は蘇生できなかったにゃん」

「そうですか、おふたりはダメでしたか」

 がっくりと肩を落とす。

「にゃあ、残念だけど仕方ないにゃん、それに連れ帰ってもどうせふたりとも斬首刑にゃん、国王陛下に息子を処刑させる負担を減らしただけマシにゃん」

「そうですね、マコト様の仰るとおりです」

 複雑な表情だったが頷いた。

「マコト様、私のいた遺跡では何が起こったのですか?」

「にゃあ、マリオンたちのいた遺跡から魔獣が出現したにゃん、カダルの遺跡は魔獣を生み出す魔導具だったにゃんね」

「そう、それです! 思い出して来ました! マコト様のおっしゃるとおりカダルの遺跡は魔獣を生み出す魔導具だったのです!」

 マリオンが興奮してまくしたてる。

「にゃあ、マリオンは何か情報を持っているみたいにゃんね」

「はい、亡くなったはずのエドガー・クルシュマン様にお会いしました、あの方が一連の事件に噛んでおられたのです」

「にゃ、前の主席宮廷魔導師にゃん? オレは死んだと聞いていたにゃん」

「ええ、間違いなくエドガー・クルシュマン様は亡くなられています、ですがお姿を見たのも事実です」

「嫌じゃなかったら、その時のマリオンの記憶をオレに見せて欲しいにゃん」

「私の記憶ですか?」

「にゃあ、少なくとも夢かうつつかはっきりするにゃん、それとも死霊のたぐいなのかもわかるはずにゃん」

「わかりました」

 すでにミマとセリの記憶でエドガー・クルシュマンの姿は確認している。でもマリオンより先に意識を失っていた。

 相変わらず肝心なところで使えないヤツらにゃん。

 マリオンの手を握り、彫像になる寸前の記憶を見せて貰う。


 仮面の魔導具に銀髪の四〇を越えてるはずだが、一〇代でもとおりそうな青年の姿をしている主席宮廷魔導師エドガー・クルシュマンの姿を確認した。

 彼の発したその言葉も。

 ヤツは死霊ではない。

 この明瞭な思考は死霊のものではない。特異種かどうかまではわからないが、己の姿をほとんど実体のように投影する魔力は半端なく強力だ。


「遺跡を発動させる鍵が、オリエーンス帝国皇帝の血とは驚きにゃん」

「私もエドモンド殿下もセザール教授もエドガー・クルシュマンに利用されたようです。マコト様、人型魔獣はどうなりました?」

「にゃあ、オレたちで退治したにゃん」

「退治されたのですか?」

「幸い完全な姿での復活は阻止できたので、オレたちでも何とかなったにゃん」

「そうでしたか、それは良かった」

 天使様や武闘派妖精ミンクの活躍も大きかった。オレは大したことはしていない。

「元主席魔導師のエドガー・クルシュマンが一連の事件の黒幕で決まりにゃんね、マリオンは王宮に戻って報告して欲しいにゃん」

「かしこまりました」

「それと殿下と教授の亡骸も頼むにゃん」

「おふたりに関してはマコト様にもご迷惑を掛けしました。これも私の力不足が引き起こしたことです」

「にゃあ、マリオンは良くやったにゃん、殿下と教授のふたりはエドガー・クルシュマンに誘拐され謀殺されたにゃん」

「ええ、おふたりの名誉を守るにはそれが最良かと」

「知り合いの晒し首を見ないで済んだのは幸いにゃん」

「この後、マコト様はどうされるのですか?」

「にゃあ、まずはフェルティリータ連合領内の混乱を収めるにゃん」

「クーストース遺跡群の残りの遺跡はどうでしょう?」

「フェルティリータ連合にある五つは魔獣ごと排除したにゃん、タンピス州の三つとレークトゥス州の二つは魔獣に侵攻されたままにゃんね、プリンキピウムは現在もマナを抜いてる最中にゃん」

「マコト様たちは、領内に越境した魔獣もすべて排除されたのですか?」

「にゃあ、その代わり街はめちゃくちゃにゃん」

「それでも魔獣の森に沈むよりはマシかと」

「そうにゃんね、ずっとマシにゃん」

「タンピス州とレークトゥス州はどうなっているかご存知ですか?」

「フェルティリータ連合とオレが譲り受けた旧貴族派領地からタンピス州とレークトゥス州に流れていた魔獣は止めたにゃん」

 フェルティリータ連合と旧貴族派領地の合計八州からは魔獣の掃討は完了して、猫耳たちは現在は領民の救助活動をしている。

「準備が整い次第、タンピスの魔獣と遺跡はオレたちが処分する予定にゃん」

「タンピスだけなのですか?」

「にゃあ、タンピス領主ファビウス・ボールディング伯爵から直接、魔獣と遺跡の排除の依頼を受けてるにゃん」

「レークトゥスは違うのですか?」

「にゃあ、レークトゥスにはオレたちも困ってるにゃん、遺跡を処分するなら買い上げて欲しいと言われてるにゃん、それに魔獣一匹あたりの価格も設定されてるにゃん」

「えっ、買い上げですか?」

 マリオンは目をパチクリさせる。

「にゃあ、オレとしては金を払ってまでレークトゥスを救済するつもりは無いにゃん、おかげで交渉は難航中にゃん」

「レークトゥスの領主様がそうおっしゃってるのですか?」

「にゃあ、レークトゥス州の領主コルネーユ・ピサロ伯爵とは連絡が取れないので、王都にある彼の屋敷に猫耳を派遣してるにゃん」

「妥当だと思います」

「王都駐在の家令がレークトゥス領内で活動するには、金を払わないとダメの一点張りで話にならないにゃん」

「いかにもレークトゥス人という感じですが、実際にやられると困りますね」

 レークトゥスの人間は金に汚いのは王国の常識だがちょっと度を越してる。

「にゃあ、埒が明かないので、王都にいるはずの領主の次女のロマーヌを探してる最中にゃん」

「王宮は救援に動いて無いのでしょうか?」

「にゃあ、城壁の外に王国軍を展開して守りを固めてるみたいにゃんね、王宮内のことはオレもわからないにゃん」

 タンピスの避難民はオレが引き受けてるし、王宮は特に何をしてくれるわけでもない。余計なことをするより引込もってくれている方が平和かもな。

「王宮内のことは私が調べてみます、エドモンド殿下とセザール教授についても先に報告させていただきます」

「了解にゃん」

 マリオンは少し離れて通信の魔導具で連絡を入れる。

 宮廷魔導師でも念話じゃないみたいだ。オレも各地の猫耳たちと連絡を取った。


『にゃあ、各地状況はどうにゃん?』

『こちら研究拠点にゃん、人型魔獣の聖魔石が間もなく解析が完了するにゃん』

『解析が終わったら連絡を頼むにゃん』

『了解にゃん』

『こちらプリンキピウムの森拠点にゃん、越境した魔獣はすべて排除したにゃん、お館様、オートマタはどうするにゃん?』

『引き続きウィルゴとケラスの魔獣の森に展開させてできる限り魔獣を狩るにゃん』

『にゃあ、ウィルゴも三割がマナゼロになってるにゃん』

 これまで手付かずだったウィルゴは今回プリンキピウムの森に大量発生した魔獣の供給源になっていた。

『ウィルゴの魔獣は徹底的に叩くにゃん、それとケラスにゃんね』

『にゃあ、ケラスにも大発生の芽が隠れてるにゃん』

『ケラスはデカいからオートマタを必要なだけ量産していいにゃんよ』

『ケラスにいる魔獣どもにもお館様の恐ろしさをエーテル機関に刻んでやるにゃん』

 オレはそんなに恐ろしくないのだが。

『いまだエドガー・クルシュマンが何処かで息を潜めてることを考えると危険は今のうちに摘み取るのが安全にゃん』

『にゃあ、了解にゃん、各拠点にも連絡を入れて連携して進めるにゃん』

『頼んだにゃん』

『お館様、こちら王都拠点にゃん』

『どうしたにゃん?』

『タリス城の上空に空中刻印を確認したにゃん、内容は解析中にゃん』

『にゃ、空中刻印にゃん?』

『タリス城を囲んで二四個が浮かんでるにゃん、色は白でいままで見たことのないタイプにゃんね』

 これまでオレが見たことのある空中刻印は黒だ。

『了解にゃん』

 王宮上空に空中刻印が現れたということは、次のターゲットは王都タリスか?

『王宮に何か動きはあるにゃん?』

『にゃあ、戒厳令に加えて城壁内には昼間も外出禁止令が出たにゃん、城壁の門が閉ざされて外縁部との通行ができなくなったにゃん、にゃあ、それとアイリーン様とフレデリカ様に王宮から迎えが来たにゃん』

『にゃ、それはいつ頃にゃん?』

『つい三〇分ほど前にゃん、王族は王宮内に篭るように王命が下ったにゃん、併せて近衛軍が入城したにゃん』

『本気で籠城するにゃんね』

『にゃあ、絶対防御結界が臨戦フェイズに入って空がオレンジ色になったにゃん、おかげで貴族街がざわついてるにゃん』

『にゃあ、それはすごいにゃんね、城壁内に魔獣の反応は無いにゃん?』

『少なくとも王都近辺に魔獣も魔獣の子宮も反応は無いにゃん』

 王都の地下には魔法蟻のトンネルが張り巡らされており、この監視網があれば活性化した魔獣がいればすぐにわかる。

『引き続き監視を頼むにゃん』

『にゃあ、王都拠点、了解にゃん』

『研究拠点は空中刻印の解析も頼むにゃん』

『研究拠点、了解にゃん、ケラス、ウィルゴ、ノルドの研究拠点も稼働を開始したから四倍の速さで解析するにゃん』

『にゃあ、聖魔石の解析と並行して頼むにゃん』

『お任せにゃん』


 それからカズキにも連絡を入れる。

『にゃあ、オレにゃん』

『ああ、マコトか、どうやら無事みたいだね』

『にゃあ、こちらは問題ないにゃん』

『そうか、良かった』

『黒幕の正体を掴んだにゃん』

『カダルの城にいたのかい?』

『そこからも証拠は出たにゃん』

 カダルの城の領主専用の通信の魔導具を調べていた元ニエマイア・マクアルパインの猫耳エマが王宮からの通信を確認し、使用していた人物も今朝方に特定した。

『エドガー・クルシュマンにゃん』

『マコト、それって死んだ主席宮廷魔導師だよね』

『そうにゃん、死んだことになってるにゃん』

『生きていたんだ』

『ひとつ情報があるにゃん、未確認だけどたぶん当たりにゃん』

『いったいなんだい?』

『エドガー・クルシュマンは転生者にゃん』

『彼も転生者だったのか』

『まず間違いないにゃん』

『まったくわからなかったよ』

『にゃあ、ヤツはこっちの人間として生まれてるにゃん、だから転生者としての自覚があったかどうかは不明にゃん』

『こっちの人間として生まれた?』

『にゃあ、転生には二つのルートがあるにゃん、こちらの人間に生まれ変わる場合とオレたちみたいに突然この世界に姿を現す場合にゃん』

『なるほど、エドガー・クルシュマンの場合、前者だったわけか』

『そうにゃん、両親も健在のはずにゃん』

『こっちの人間として生まれたとしても転生者は転生者か、相手にしたら厄介なのは目に見えるよ』

『危なくなったら逃げるのがオススメにゃん、オレもいざとなったら逃げるにゃん』

『それでマコト、エドガー・クルシュマンの行方は?』

『にゃあ、わからないにゃん、カダルの城にもいなかったにゃん』

『すると戒厳令下の王都かな?』

『王宮上空に空中刻印が出たから、それの解析が済めば見当はつけられそうにゃん』

『空中刻印ならボクのところにも情報は来てるよ、それはタリス城の完全封鎖の結界じゃないかな? 以前に宮廷魔導師から聞いたことがあるよ』

『にゃあ、王様の命令で起動した刻印なら問題はないにゃんね』

『でも、最終防衛用結界だよ、タリス城内が外界から完全隔離されるわけだから、いよいよ王宮は今回の件を完全にマコトに丸投げだよ』

『にゃ、オレは面倒ごとを押し付けられたにゃん?』

『貴族派の多くの州で食料が底を突いてるみたいなんだ。フェルティリータ連合は事実上崩壊したし、次に救援が可能な王宮が動かないとなると困ったことになりそうだよ』

『にゃあ、まだ冬になってないのにもうマズいにゃん?』

『今年も不作だったからね、景気良く収獲してるのは大公国のマコトの領地だけだと思うよ』

『不作とは聞いてるにゃん、でも、今年はなんとかなるとも聞いていたにゃん』

『例年であればそうなんだけど、今回の騒動でマコトの小麦以外が軒並み売り渋られるようになったらしくてね』

『売り渋りにゃん?』

『ボクのところはマコトのおかげでまったく影響がないけど』

 カズキの領地アルボラ州には小麦以外の食料品も卸してる。

『にゃあ、それは他の領地の人たちには悪いことをしたにゃん』

『マコトのせいじゃないさ、それに小麦の件で多くの人たちが感謝しているよ、小麦のおかげで餓死者は出ないで済んでるわけだから』

『本当に底を突いてるにゃんね』

『マコトのことをこの国を救う天使だと崇めてる人たちもいるらしいよ、それもかなりの数が」

『にゃあ、天使様はちゃんと別にいるにゃん』

『そうなの?』

『そうにゃん』

 天使のアルマ様はリーリとミンクと一緒に食べ歩きの最中だ。今朝はプリンキピウムのホテルで朝食を食べたらしい。

 いまはオパルスでホットケーキを食べてる。瞬間移動の魔法を今度オレに教えて欲しいにゃん。

『にゃあ、小麦以外の食料品もいろいろ卸すようにするにゃん、オレのところから流れれば売り惜しみの意味がなくなるにゃん』

 便利なベイクウェル商会を使えば王国内に食料を流すことはそれほど難しくない。売り惜しみをした商会は損害がでるかもしれないがオレの知ったこっちゃない。

『それで頼むよ、食料が不足すると国が乱れるからね』

『にゃあ、各州はもっと魔法を食料生産に振り向ける必要があるにゃん』

『そうだね、でもマコトのところみたいに生産するのは無理だよ』

『オレのところほどじゃなくても不作はかなりカバーできたはずにゃん』

『それも貧乏領地だと難しいよ、魔法使い自体がいないから』

『にゃお、根本的なところに問題があったにゃんね』

『その辺りはエドガー・クルシュマンの件が落ち着いたら王宮の連中に考えさせればいいさ、マコトはもう公爵様なんだからこれ以上の人気は国を危うくするよ』

『にゃあ、エドガー・クルシュマンが何処にいるかわからない状況では、いつになったら落ち着くかわからないにゃん』

『それもそうだったね、既に王国は危うい状態だったか』

『にゃあ、エドガー・クルシュマンの目的が人類の滅亡じゃないことを祈るにゃん』

『本当、人類の滅亡とか誰得なのは勘弁して欲しいよね』

『そうじゃないにしても間違いなくヤツは何かデカい魔法の仕込み中にゃん、意味もなく大虐殺とか有りそうにゃん』

『うん、ありそうだね』

『早くヤツを捕まえるのが先決にゃん』

『エドガー・クルシュマンの件はわかったよ、ボクも全力を上げて追ってみるよ、何かわかったら連絡する』

『にゃあ、無理のない範囲で頼むにゃん』

『なに、こっちの世界はマコトより長いんだ、相手が誰であれ上手くやるよ』


 カズキとの念話の後は、各地の猫耳に食料流通の指示を出してから最後に王都の城壁内にいるキャリーとベルに連絡を入れた。

『にゃあ、オレにゃん』

『ああ、マコト良かった、無事だったんだね』

『ホッとしたのです』

 ふたりが無事なのはわかっていたがオレもホッとした。

『こっちは、まだ片付いてないけどそっちはどうにゃん?』

 キャリーとベルの所属する小隊はアイリーン第二王妃の護衛を命じられてオレの王都の屋敷の敷地内にいる。

『アイリーン様とフレデリカ様が王城に戻られたから、私たちも駐屯地に戻ろうと思ったんだけど外出禁止令と城壁の門の閉鎖があって動くに動けないんだよ』

『もうしばらくマコトのお屋敷の離れを借りるのです』

『どうせなら小隊の他の隊員たちと一緒に屋敷の中でくつろいでいてもいいにゃんよ、護衛対象のアイリーン様もいないから問題ないにゃん』

『お屋敷の中か』

『見張り以外はお屋敷の中でも問題は無いのです』

『結界が張ってあるから庭に出なくても敵襲は直ぐにわかるにゃん』

『城壁内でわざわざ私たちを襲うヤツもいないと思うけど』

『にゃあ、キャリーとベルはオレの友だちにゃん、ターゲットとしては十分すぎる価値があるにゃん』

『マコトの友だちってだけで?』

『にゃあ、黒幕エドガー・クルシュマンには価値があるにゃん』

『エドガー・クルシュマン、聞いたことがあるのです』

『主席宮廷魔導師にゃん』

『この前、殺された人だ』

『にゃあ、生存は確認済みで現在、所在不明にゃん』

『とんでもない機密情報なのです』

『にゃあ、それはないにゃん』

『上に報告しちゃってもいい?』

『構わないにゃん』

『報告しても外出禁止令のせいで動きようが無いのです』

『王国軍の兵士でもダメにゃん?』

『自由に動けるのは近衛軍と王都守備隊だけだよ』

『近衛群は王宮に入ったから実質、王都守備隊だけが監視業務に当たってるのです、例外は認められないのです』

『にゃあ、それでキャリーとベルの小隊も国軍の総司令部にも行けないにゃんね』

『そうなんだよ』

『居心地はマコトのところのほうが格段にいいので好都合ではあるのです』

『庭は防御結界の中だから出歩いても問題ないにゃん、そこからは出ないことをオススメするにゃん』

『どうせ外出禁止令でお屋敷の敷地の外には出られないけどね』

『不便かもしれないけど、しばらく我慢にゃん』

『マコトのお屋敷で不便を感じるようでは駐屯地ではやって行けないのです』

『それよりここに慣れちゃうと後が怖いかも』

『にゃあ、庭で身体を動かすといいにゃん』

『それぐらいはしないとね』


 続けて大公国の面々にも警報を出した。念話を終える頃にはマリオンも連絡を終えて戻って来た。

「マコト様、どうやら王都の城壁内には暫く戻れないようです」

「にゃあ、次席魔導師のマリオンでも入れないにゃん?」

「絶対防御結界が臨戦フェイズに入ると門は自動的に閉ざされます。遅れれば身分や役職は関係なく締め出されますから私も入れません」

「それは不便にゃんね」

「仕方ありません、例外を作って通り抜けられては結界が無意味になりますから」

「城壁の門は、いつまで閉じられるにゃん?」

「臨戦フェイズが解かれるまでです」

「にゃあ、するとマリオンはいつ職場に戻れるかわからないにゃんね」

「そうなります。報告は済ませましたので、ここからはマコト様のお手伝いをさせていただけないでしょうか?」

「にゃあ、オレは構わないにゃん、ただこれから移動するにゃん」

「タンピスに行かれるのですね」

「そうにゃん」

「お邪魔はしませんから私もお連れ下さい」

「危ないにゃんよ」

「自分の身は自分で守れますから、お心配は不要です」

「わかったにゃん」

「ありがとうございます」

「にゃあ、マリオンに聞きたいことがあるにゃん」

「何でしょう?」

「レークトゥスの領主一家の誰かと連絡が付かないにゃん?」

「ピサロ家の方々ですか?」

「にゃあ、王都の外出禁止令のせいでオレの知ってる領主の次女のロマーヌは捕まえられなかったにゃん」

 大学の寮に戻ってなかった。

 いったい何処にいるのかさっぱりわからない。

「マコト様たちが救援活動をするのにレークトゥスがお金を要求するのは、実のところ救援を遠回しに断っているのではありませんか?」

「にゃあ、それは思ってもみなかったにゃん」

 言われてみれば、救援されるのに金を要求とかあり得ない話だ。レークトゥスなら自前のゴツい刻印があるから何とかなるのかも。この前の蜂でいいようにされたから体制を改めたのだろう。

「いくらレークトゥス人でも非常識なまではセコくはないですよ、ピサロ家には知り合いがいますので、いまからもっとわかりやすくご説明するように言っておきます」

「頼むにゃん、おかげで余計な時間を取られたにゃん」

 マリオンはまたちょっと離れて通信の魔導具を使った。

 そして何故か直ぐに慌てて戻ってきた。

「マコト様! レークトゥスとして救援を要請するそうです! どうやら家令は本気でお金を要求してたみたいですね、すぐに解任するみたいですが」

 マリオンも呆れぎみ。

「にゃあ、レークトゥスの人間は少し価値観を変えた方がいいにゃん」

「同感です」

 マリオンは深く頷いた。


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