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予言にゃん

 いまのはマジでヤバかったが何とか受け止めた。

「にゃふ~、危なかったにゃん」

 ディオニシスに流したら一瞬でエーテルに還りそうな大きさの魔力だったので、オレの格納空間にそのまま入れた。

「いまの、マコトが飲み込んじゃったんだ」

「マコトはスゴいの」

「にゃあ、オレも格納空間の大きさに我ながら驚かされるにゃん」

 魔獣の森に沈んでる領地を普通に人の住める場所に余裕で改造できるぐらいの魔力を格納した。

「にゃお、それでいまのはいったい何だったにゃん!?」

 巨大な魔力そのものが撃ち込まれたのはわかってる。問題は何でそんなモノをブチかましてくるのか?

「なんだろうね」

 リーリは知らないみたいだ。

「にゃあ、ミンクは知らないにゃん?」

「この感じ天使様だと思うの」

「えっ?」

「にゃ?」

 リーリとオレはミンクを凝視した。

「天使って何にゃん?」

 オレの知ってる天使は頭に輪っかのあって羽根が生えてるのとコックリさんの親戚ぐらいだ。マヨネーズのあれはどうだっけ?

 こっちの精霊情報体と図書館情報体には天使の記載はない。

「ミンク、天使様ってあの天使様なの!?」

 リーリが問いただす。リーリは知ってるみたいだが何か焦ってる。

「ミンクは前に一度だけ会ったことがあるの、その感じと同じなの!」

 ミンクは恐怖におののく。

「もしかして天使様ってヤバいにゃん?」

 オレとしては、コックリさんの親戚ぐらいで勘弁して欲しいのだが。

 次の魔力の塊は直撃ではなくオレたちの防御結界の前方に停止した。触れてないから吸い取ることが出来ない。

「みゃあ、眩しいにゃん!」

 またしても白い光が視界を奪う。

「天使様なの!」

 ミンクが叫んだ。

「にゃあ、天使様って魔力の塊にゃん?」

「そうとも言えるし、違うとも言える、本来あたしたちに干渉しないはずなのに」

 やはりリーリは天使という存在を知っていた。

「思い切り干渉されてるにゃん! オレの防御結界がまるで効いてないにゃん」

「仕方ないの、天使様は完全エーテル体だからどうしようもないの!」

「完全エーテル体にゃん?」

「マコトは知らないの?」

「にゃあ、初めて聞いたにゃん、もしかしてオレには触れないと違うにゃん?」

「触れられないどころか、普通の人間は存在すら感じられないよ」

「にゃあ、オレはなぜかわかるにゃん」

 白い光のなかに何かがいるのはわかる。

「普通の人間は、こんな高度まで上がって来ないよ」

 リーリに突っ込まれた。

「にゃあ、天使様は誰に用事があって現れたにゃん?」

「ミンクは、マコトだと思うの」

「あたしもマコトだと思う」

 妖精たちはオレに天使様を押し付けるつもりだ。

「にゃあ、オレにはまったく心当たりないにゃん、それに用事が済んだらすぐに地上に帰るって説明して欲しいにゃん」

 リーリを摘んで前に突き出す。

「待って! あたし天使様の知り合いじゃないからダメだよ!」

「にゃあ、だったらミンクにゃん? ちょっと天使様に事情を説明して欲しいにゃん」

 ミンクも捕まえて前に突き出した。

「きゃああああ! ミンクはダメなの!」

『慌てるな主よ』

 ディオニシスから声が掛かった。

「みゃ?」

『天使は我の客だ、主にも用はあるらしいが害するのが目的ではないそうだ』

「にゃあ、だったらこの眩しいのを何とかして欲しいにゃん」

『了解だそうだ』

 輝く白い光が収まってそこに現れたのは、白いプレートメイルを装着した猫耳たちと同じくらいの少女。

 長い髪は銀色に輝き、肌は透き通るように白い。瞳はルビーのような赤だ。輪っかと羽根はなかった。

 スレンダーな美少女だが整いすぎた顔は冷たさを感じさせる。

『久しいな、少し見ない間にずいぶんと変わったではないか?』

 天使の声が頭の中に響く。念話に近いがちょっと違う。

『我はいまは、ディオニシスと名乗っておる』

『ディオニシスか、地の底に引っ込んでる陰気な龍よりはマシだが中途半端だ』

 天使はディオニシスに手をかざす。

 マナ変換炉とエーテル機関の魔法式を書き換え、ディオニシスを構成する生きてる金属も入れ替えた。白銀色の身体が光沢のある白く変わる。パールホワイトマイカにゃん。特別色にゃん。

『ほう、これなら魔力の供給を受けずとも飛べるか』

 レーザーからマナを作り出す必要もない。魔力バカ食いの燃費の悪さが劇的に改善されていた。

 いずれもオレの知らない魔法式だ。これは研究の価値アリだ。

『『『……』』』

 オレと繋がってる猫耳たちも無言でうなずいている。

『そして、おまえがマコトか?』

 天使の赤い瞳がオレに向けられた。

「そうにゃん」

 天使がオレに近づく。

『我は西方監視者、予言の成就を確認した』

「西方監視者で、予言にゃん?」

『猫の耳に尻尾を付けた童女が空より墜ちる、その稀人の名はマコト』

 まるでキャリーとベルに聞いたおとぎ話の一節だ。

 オレの名前は無かったが。

「予言はオレの名前まで言い当ててるにゃん?」

『そうだ』

「何のための予言にゃん?」

『予言に理由などない』

「世界を救うとか、滅ぼすとかそういうのじゃないにゃんね?」

『マコトの好きにすればいい』

「にゃあ」

 魔王を倒せとか変なクエストを吹っかけられなくて良かった。

 それからオレを抱き上げた。

「にゃ?」

 触れなかったんじゃないのか?

「我が名はアルマ、西方監視者アルマだ」

 念話じゃなくて普通の声になった。

「にゃあ、天使アルマにゃんね」

「決めたぞ、我はマコトの守護天使となろう」

「にゃ、オレの守護天使にゃん?」

 何故に!?

「ダメか?」

 天使アルマがシュンとした。

「にゃあ、ダメじゃないにゃんよ、天使様に守って貰えるのはうれしいにゃん、でも西方監視者の仕事はいいにゃん?」

 なんか責任の重そうな仕事だが。

「問題ない、我のいる場所は関係ない」

「にゃあ、それならいいにゃん? それとオレの友だちや仲間も一緒に守ってくれるとうれしいにゃん」

「承知した、造作もないことだ」

「にゃあ、リーリとミンクも守ってくれるそうにゃん」

 アルマを怖がっていたリーリとミンクが潜り込んでいたオレのセーラー服の胸元から顔を出した。

「あたしはリーリだよ!」

「ミンクなの」

 味方になってくれたことで安心したようだ。

「マコトは妖精を連れているのだな、そちらのミンクとやらは以前に会ったことがあるな」

「お久しぶりなの」

「息災でなによりだ」

「天使様もお元気そうなの」

『主よ、そろそろいいのではないか?』

 ディオニシスから声が掛った。

「にゃあ、そうにゃんね、ここで止まって欲しいにゃん」

 フェルティリータ連合の五州とその大地に描かれた魔法陣がすべて見渡せた。

 この距離を以てしても各遺跡のヤバさがひしひしと伝わってくる。

 限界は間近に迫っていた。

「焼き払うのか?」

 天使アルマはこともなげに物騒なことをいう。

「にゃあ、魔法陣を書き換えるだけにゃん、それから魔獣と戦闘ゴーレムを各個撃破するにゃん」

「それも面白そうだ」

 戦略的に面白いのか単純に愉快なのかはわからないが天使様も興味をもったらしい。

「魔法陣の書き換えが完了したらオレたちもフェルティリータの州都カダルに突入するにゃん」

『心得た』

「始めるにゃん、猫耳たちも準備よろしくにゃん!」

『『『にゃあ!』』』

 猫耳たちの返事を聞いてオレはフェルティリータ連合に描かれた魔法陣の書き換え準備に入る。

 既に書き換えの内容は検証を終えているから後は実行するだけだ。


「にゃあ、一気に書き換えるにゃん!」


 オレは眼下に広がるフェルティリータ連合の大地に魔力を走らせフラッシュさせる。住民たちも眩しいとは思うが、ちょっとだけ我慢して欲しい。魔法馬は影響を受けないから交通事故は無いと思う。

 その閃光の一瞬で戦闘ゴーレムが無限湧きする魔法陣を書き換えた。

「にゃあ! 書き換え完了にゃん!」

『『『にゃあ!』』』

 これで戦闘ゴーレムの無限湧きなんてむちゃくちゃは無くなった。

「次に聖魔法をお見舞するにゃん!」

 フェルティリータ連合内のすべての戦闘ゴーレムに対して精霊魔法のオプション付きの聖魔法の雷をくれてやる。

 各地で青いフラッシュが連続しその後、粒子の様な魂の光があふれた。解放された魂の光は螺旋を描き天に昇る。

「聖魔法も完了にゃん」

 魔力の供給源を失った戦闘ゴーレムはもはやガラクタ同然のはず。

『にゃあ! お館様、無理をしすぎにゃん!』

『無理はダメにゃん!』

『魔力を使いすぎにゃん!』

 地上というか、地下トンネルに潜伏中の猫耳たちから声が上がった。

『にゃあ、いまのオレなら魔力が有り余ってるから多少の無理はどうってことないから心配無用にゃん』

 猫耳たちに念話を送った。

『だからって、調子に乗っちゃダメにゃん!』

『そうにゃん!』

『『『ダメにゃん!』』』

 ……怒られたにゃん。

 それでも戦闘ゴーレムや矢に取り込まれた魂を天に還した。戦闘ゴーレムは機能を停止し次々と倒れた。

『ウチらも一気に行くにゃん!』

『『『にゃあ!』』』

 フェルティリータ連合内の戦闘ゴーレム無限湧き魔法陣の書き換え完了と同時に猫耳たちが地下トンネルから地上に飛び出した。

『にゃあ、お館様、マジで聖魔法をフェルティリータ連合全域に打ったにゃんね』

『魂の抜けた戦闘ゴーレムはいただきにゃん!』

『にゃあ! まとめて鹵獲にゃん!』

 フェルティリータ連合内の各地に現れた猫耳たちが動けなくなった戦闘ゴーレムを次々と鹵獲する。


「にゃあ! オレたちもカダルに行くにゃん!」

 オレたちを乗せたディオニシスごとフェルティリータ州の州都カダルまで空間圧縮魔法を使って一気に移動した。



 ○フェルティリータ連合 上空


『にゃあ! オートマタを一万騎を再生にゃん!』

『こっちも一万騎行くにゃん!』

『にゃあ! こっちもにゃん!』

 身長三メートルの鉄の巨人が、更に巨大な鉄の馬に乗った状態で出現する。わずか数分の間にフェルティリータ連合内に一〇〇〇万騎が再生された。

 鉄の騎士は遺跡に取り付いた魔獣に襲いかかる。それと同時に形成されつつあった魔獣の道も鉄の騎士の狩場になった。


『地上での移動は危険にゃん! 避難民は地下に収容するにゃん!』

『魔法蟻を増産にゃん!』

『地下都市を造りまくりにゃん!』

 逃げられなかった領民を急遽造り上げた地下都市に収容する。

『にゃあ、騎士団と守備隊とチンピラどもは誘導に協力するにゃん!』

 フェルティリータ連合内の犯罪ギルドの洗脳浸透率は約八割にまで達成していた。

「にゃあ、慌てなくても収容人数には余裕があるから大丈夫にゃんよ!」

 新たに造られた地下都市は複数が隣接しており巨大都市のような様相になってる。


『各遺跡からのマナぶっこ抜きも急ぐにゃん!』

『『『了解にゃん!』』』

 オレの指示に猫耳たちが声をそろえる。

 クーストース遺跡群に分類されるフェルティリータ州内の五つの遺跡にも猫耳たちが到達した。

 オートマタと猫耳ゴーレムに魔獣の排除を任せて猫耳たちは遺跡の防御結界の中和作業とマナの回収を開始する。

 プリンキピウム遺跡の手法を踏襲しつつより効率を上げた。

『にゃあ、このマナの濃度はヤバいにゃん、プリンキピウム遺跡の倍以上にゃん! 液状化しそうにゃん!』

『こっちは倍以上吸い取るにゃん!』

『マナは地下都市増強に回すにゃん!』

『皆んな頑張るにゃん!』

『『『にゃあ!』』』


 猫耳たちはフェルティリータ連合内の各州都にある領主の居城にも侵入する。既に敗戦が決定しており組織的な抵抗は無かった。

 居城に配置されていた戦闘ゴーレムもすべて鹵獲される。

「我々はマコト・アマノ公爵様の配下にゃん! 既に戦争の勝敗は決してるにゃん! 無駄な抵抗はやめて投降するにゃん!」

 猫耳が声を上げた。

「にゃあ、これ以降の戦闘行為は処罰の対象となるにゃん!」

「犯罪奴隷堕ちが嫌ならおとなしく投降するにゃん!」

 猫耳たちの説得に兵士たちが次々と投降する。最初から戦争をやってる自覚もないようだった。



 ○フェルティリータ連合 フェルティリータ州 州都カダル 上空


「にゃあ! 到着にゃん!」

 カダルの日没が迫った上空に巨大な竜が姿を現した。その白い身体は夕日を浴びてあかね色に染まっていた。

「ディオニシスは認識阻害を展開してフェルティリータ連合上空の高度限界より上を好きに飛んでていいにゃんよ」

『了解した』

 巨竜の姿が消え、オレたちとアルマは空に飛び出した。



 ○フェルティリータ連合 フェルティリータ州 州都カダル カダルの遺跡前


 既に地上では猫耳とオートマタがフェルティリータ連合内の占領を完了していた。いまは魔獣の追撃と遺跡からのマナの回収を急いでる。

 オレたちはアルマと一緒にカダルの遺跡前に降り立った。かつては豪奢な貴族街だったが魔獣に入り込まれたいまは見る影もない。

 すり鉢状にえぐれ底に坑道らしき空間が見えてる。プリンキピウム遺跡より浅い場所にあるみたいだ。

「「「お館様、お疲れ様にゃん!」」」

 猫耳たちが集まって来る。

「状況はどうにゃん?」

「カダル市内の魔獣の排除はほぼ完了にゃん、現在は領民の避難と遺跡からのマナの回収、それに居城の占領を行ってるにゃん」

 目の前のカダルの遺跡をずらりとマナ変換炉が取り囲んでいた。

「黒幕は発見できてないにゃんね?」

「にゃあ、それらしい人間は見付かってないにゃん、遺跡近辺には死んでる魔導師が吊るされていた以外に人影はないにゃん」

「死んでる魔導師にゃん?」

「にゃあ、戦闘ゴーレムに随行したはずのヤツにゃん、城にいた騎士から証言を取ったにゃん、なんでこんなところに吊るされてるか誰もわからないみたいにゃん」

「遺跡の前に吊るされていたにゃん?」

「そうにゃん、腕をくくられてるから自殺ではないにゃんね、明らかに他殺にゃん」

『にゃあ、お館様、魔導師の死体だったらアクティラの遺跡にも吊るされていたにゃん、こいつも戦闘ゴーレムの随行員だったはずにゃん』

 クーストース遺跡群のアクティラの遺跡を押さえた猫耳から念話が入った。

『コルウス遺跡もそうにゃん、同じく吊るされてるにゃん』

『にゃあ、レプスとタルバの遺跡はどうにゃん?』

 フェルティリータ州内にあるクーストース遺跡群の残り二つの遺跡にも問い合わせた。

『こちらレプスにゃん、こっちにも死体があったにゃん、瓦礫に埋もれていたけど確かに吊られた痕があるにゃん』

『タルバ遺跡も瓦礫の下で発見したにゃん、すごい顔で死んでるにゃんよ、それとエーテル器官が砕けてるにゃん』

『エーテル器官が砕けてるにゃん、各所どうにゃん?』

『お館様、カダルの死体もエーテル器官が砕けてるにゃん』

『アクティラのも同じにゃん』

『コルウスも同じにゃん』

『レプスは頭部が潰れてるのでハッキリしないにゃん、にゃあ、確かにエーテル器官は砕けてるにゃんね』

『にゃあ、生きたままエーテル器官が砕けると透明感があるにゃん、死後は白くなるにゃんよ』

『レプスは生前に砕けてるにゃん』

『にゃあ、カダルのエーテル器官には生活反応ありにゃんね、他はどうにゃん?』

「アクティラも生活反応ありにゃん』

『コルウスも半透明だから生活反応ありにゃん』

『タルバも生活反応ありにゃん』

『どれも吊るされて生きたままエーテル器官を砕かれたにゃんね、全員分を確認してみるにゃん』

 オレは五つの遺跡で見つかった五人の魔導師の遺体を同時に検証する。

 五人の遺体を擬似的にオレの中で時間を巻き戻す。

 エーテル器官が砕けた時間に何が起こったか?

『魔導師のエーテル器官に刻印が刻まれてるにゃん』

『『『にゃ?』』』

 魔導師は吊るされる直前、エーテル器官が砕けそこから空中刻印が湧き出した。

 空中刻印の魔法式はループするだけのもの。

 これは以前、プリンキピウム遺跡の遺跡で観測した叫び声に載った魔法式に似てる。

『にゃあ、前はわからなかったけど今回は解けたにゃん』

 猫耳たちと繋がってるのと収集した魔獣のエーテル機関の解析数が積み上がったおかげだと思う。

『にゃ、お館様どういうことにゃん?』

『にゃあ、ループしている魔法式そのものが魔獣を集める命令だったにゃん』

『お館様、プリンキピウムの遺跡の声は魔獣じゃなくて特異種が集まったにゃんよ』

『にゃあ、いまならわかるにゃん、あれは今回の大発生を起こした命令だったにゃん、移動の時間指定がされているから、かなり前から仕込まれていたにゃん」

『特異種の移動は関係なかったにゃんね?』

『にゃあ、そうにゃん、特異種はまた別の方法だったはずにゃん』

『魔獣に直接命令できるとか悪夢にゃん』

『そう悲観することもないにゃん、魔法式を解析したオレたちも魔獣を呼べるにゃん、それに魔獣避けの刻印は本来これの応用だったはずにゃん』

『ウチらはもっと精度の高い魔獣避けの刻印が作れるにゃんね』

『そういうことにゃん、魔獣に有効な命令がどれぐらいわかるかは今後の研究次第にゃん』

 オレたちが念話で話し合ってる横を通り抜けて、天使アルマが中和作業の進む遺跡の防御結界に近付いた。

「にゃあ、天使様そこは危ないにゃん」

 リーリとミンクがビビるほどの存在が、遺跡の防御結界ごときでどうこうなるとは思えないが注意した。

「確かに危険なものだ、まだ残ってたとはな」

 遺跡に向かって嫌悪の表情を見せる。

「にゃ、天使様は何か知ってるにゃん?」

「これは魔獣の子宮だ」

 また知らない言葉だ。

「にゃあ、初耳にゃん」

「言葉どおりの魔獣を造り出す魔導具だ」

「この遺跡が新しい魔獣を造り出すにゃん?」

「いや、ここでは魔獣の魔石からは生まれない特異ランクの魔獣が造られる」

「特異ランクにゃん?」

「マコトたちが見たことがある魔獣は通常ランクだ」

「にゃあ、アレで通常にゃん?」

 かなりとんでもないヤツがいたがアレでも通常か。

「にゃあ、するとオレたちは特異ランクの魔獣を見たことが無いにゃんね?」

「現存していないから仕方あるまい」

「現在はいない魔獣にゃん?」

「そうだ」

「にゃあ、どうしていないにゃん?」

「無理のある構造だから身体が長くもたない。増やすにも魔獣の子宮がいる。更にいえば魔獣の子宮は使い捨てだ」

「効率の悪い魔獣にゃんね」

「その代わり強力な魔法を操る、人間の魔法使いでは相手になるまい」

「魔獣が自壊するまで逃げ回れば勝ちにゃんね」

「結果として前回は何とか人間が生き延びた、数が少なかったのが幸いしたのだろう、たった一体だけだったからな」

「一体にゃん?」

「一体だ」

「にゃお、クーストース遺跡群は全部で十一もあるにゃん」

 かなりヤバいぞ。

「にゃあ、そんな厄介なのは生まれないに限るにゃん、遺跡からマナも魔力もカラカラになるまでぶっこ抜くにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちも声を上げ、隙間なく置かれたマナ変換炉も唸りを上げる。おかげで地下都市みたいのがあちこちに出来たぞ。

 どうしてくれる!

「マズいぞ」

 天使アルマは難しい顔をする。

「にゃ、どうかしたにゃん?」

「何かが生まれたようだ」

「にゃああ!」

「ああ、これは他も間に合わなかったみたいだね」

 リーリが教えてくれる。

「にゃお、猫耳はマナ変換炉を回収して退避にゃん!」

「お館様も早く退避するにゃん!」

 猫耳に声を掛けられる。

「にゃあ、オレは生まれたての魔獣を退治して攻略法を見付けるにゃん!」

「「「危険にゃん!」」」

「心配要らないよ! マコトは稀人だからね!」

 リーリが猫耳たちに言った。

「にゃあ、オレは誰よりも逃げ足が速いから心配無用にゃん」


 騒ぐ猫耳たちをトンネルに押し込んでから、カダルの遺跡全体をオレの封印結界に閉じ込めた。

 続けて遠隔で残りの四つアクティラ、コルウス、レプス、タルバの遺跡も結界でくくった。これで勝手に暴れられないはずだ。

 結界が効けばだが。

「三人はどうするにゃん?」

 リーリにミンクそれに天使アルマに問い掛けた。

「あたしはマコトといっしょにいるよ!」

 リーリが最初に答えた。

「ミンクもなの!」

「我もマコトの戦いぶりを見届けよう」

「にゃあ、了解にゃん」


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