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フェルティリータ連合に突入にゃん

 ○フェルティリータ連合 ボース州 上空


「にゃお! 矢が来るにゃん!」

 フェルティリータ連合のボース州の結界をぶち破った途端、領地を守る戦闘ゴーレムからの手厚い歓迎を受けた。

 またしても中国の映画みたいに矢が視界いっぱいに飛んで来る。しかも数はさっきよりもずっと多く視界がすべて矢で埋まる。

「にゃあ! 全部、分解にゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 地上から撃ち出された大量の矢を分解する。

「にゃ?」

 分解したはずの矢がオレたちの防御結界に接触して次々と爆発した。

「みゃあ!」

 被害はなかったがびっくりした。

「分解できないね」

 リーリがオレの顔を覗き込む。

「にゃあ、そうにゃん、分解に失敗したにゃん」

 いくら数が多くても矢の分解なんか失敗するわけないのに。

「分解できないのは矢の中に人が入ってるからなの!」

 ミンクが訴えた。

「にゃ、いくらなんでも矢に人間を詰め込むのは無理があるにゃん」

 だって物干し竿サイズだ。

「そうじゃないの! 人の魂が入ってるの!」

 人の魂?

「魔法で分解できない人の魂にゃん!?」

「その魂なの!」

「にゃあ」

 第二波の矢が数を増して飛来する。この魔力は魂から調達してるのか? オレは矢を放った戦闘ゴーレムたちに視線を向けた。

「にゃ!?」

 いま、何か見えたぞ。


 フェルティリータ連合の大地に見えたのは、これってまさか!?


「にゃあ! 全部の矢を爆発しないように受け止めるにゃん! それからいったんボース州から引くにゃん!」

「「「了解にゃん!」」」

 防御結界の外側でなるべくショックを与えないようにして受け止めて矢の時間を止める。これで爆発はないはず。

 あっという間にオレたちの防御結界は受け止めた矢でどのドラゴンゴーレムもハリネズミみたいになった。

 突き刺さってないだけマシだが。


 ドラゴンゴーレムを反転させてオレたちはボース州の外に出た。



 ○アキントゥス州 境界近郊 山林


 州の境界を越えると攻撃が一斉に止まる。

 魔法であらかじめそうプログラムされてるのかは不明だが、無駄玉を撃たないでくれるのは幸いだ。

 オレたちはアキントゥス州側の山林の一角にドラゴンゴーレムを消して集まった。足場が悪いがそこは魔法で補っている。

「お館様、ボース州内の戦闘ゴーレムも分解できなかったにゃん」

「にゃあ、州内に残ってるのは越境したゴーレムとは完全に別物みたいにゃんね」

「良く見るとほんの少し形が違うにゃん」

「にゃお、ウチらの探査魔法では戦闘ゴーレムの中身が見えなかったにゃん」

 猫耳たちから報告が上がる。

「にゃあ、お館様、回収した矢を解析したにゃん、魂付きの人間のエーテル器官が移植されてるにゃん」

「人間のエーテル器官にゃん?」

「にゃあ、エーテル器官だけなら分解が可能にゃん、でも今回のは魂を封じ込められてるから、それができなかったにゃん」

 エーテル器官に刻印を施し魂を封じ込めている。完全に禁忌の領域だ。

「にゃお、すると分解できない戦闘ゴーレムも同じにゃんね」

「ゴーレムにもたましいがはいってました」

「いっぱい、はいってました」

 ビッキーとチャスが報告してくれる。精霊魔法系の探査魔法は魂を使った認識阻害の結界を素通り出来るらしい。

「にゃあ、精霊魔法は有効みたいにゃん」

「ウチらも次は精霊魔法をエミュレートするにゃん」

「そうにゃんね、精霊魔法を併用すれば聖魔法で直接送れるはずにゃん」

「おやかたさま、やにはいってたたましいでねこみみちゃんはつくれないの?」

 シアが質問する。

「今回はダメにゃん、エーテル器官の刻印で魂が壊れているから一度天に還す必要があるにゃん」

 天に還った魂は新たな形を作って輪廻するのがこの世界の理だ。神様はいなくなってもルールは残されている。

「ざんねん」

 ニアはがっくり

「おやかたさまのせいまほうで、おくってあげて」

 ノアに頼まれるまでもなくそのつもりだ。

「にゃあ、了解にゃん、矢に仕込まれた魂を送るにゃん」

 精霊魔法をエミュレートして認識阻害の結界をこじ開け、回収した矢の一本一本に仕込まれていたエーテル器官から魂を封じる刻印を消し去り聖魔法で送る。

 解放された魂たちが光の粒子になって天に還った。

「少なくない数の領民が犠牲になってるにゃん」

 回収したすべての矢に魂が宿らせてあった。螺旋を描いて森の木々を飛び越えて天に昇る光の粒子が眩しく見える。

 今回の魂は紛れもなく新しいモノだ。地面に染み込んでいたものでは無かった。フェルティリータ連合内の領地で、忽然と姿を消した家族の行方を発見したのかもしれない。

「にゃあ、お館様、黒幕は矢に聖魔法の対策をしてたにゃん」

 猫耳のひとりが教えてくれる。

「そうだったにゃん? でも、普通に送れたにゃんよ」

「お館様の聖魔法の出力が黒幕の作った防壁を上回って、正常に機能してなかったみたいにゃん、本当は封印を解いても送れないにゃんよ」

「大公国の死霊にアポリト州のグールとオーガの群れ、それにレークトゥスと王都外縁東部と鍛えられたら誰だって自然に上がるにゃん」

「黒幕の自業自得だったにゃん」

「にゃあ、そうなるにゃん」

 この調子で墓穴を掘ってくれると助かるのだが、黒幕はそこまで間抜けではないだろう。単にオレの存在が想定外だっただけだ。オレを認識したいまは行動計画に修正を入れてるはずだ。

 無視してくれても一向に構わないけど、それもまた楽観的すぎる予想だろう。


「「「お館様!」」」

 フィークス州経由の第二陣の猫耳たちが到着した。ドラゴンゴーレムを消して次々と降りて来る。

「お館様、ただいま到着したにゃん!」

「にゃあ、お疲れにゃん」

 第二陣を率いてきたのは宰相でフェルティリータ連合の盟主だったニエマイア・マクアルパインだったエマだ。

 当然、猫耳の中ではフェルティリータ連合の内情にもっとも明るい。

「フィークス州に侵攻した戦闘ゴーレムはすべて鹵獲したにゃん」

「アドリアナ侯爵も危機一髪だったにゃんね」

「にゃあ、確かに危なかったにゃん、完全に数で圧倒されていたにゃん」

「戦闘ゴーレムはやはり騎士には荷が重いにゃんね」

「確かに近衛の騎士ぐらいぶっ飛んでないと無理にゃん」

「フェルティリータ連合内の戦闘ゴーレムもぶっ飛んでるにゃん」

「にゃあ、ウチもびっくりにゃん」

「エマは、人間の魂を封じ込めたエーテル器官から魔力を引き出す手法があるなんて知っていたにゃん?」

「前世ではウチも知らなかった情報にゃん、お館様の知識の中にも無いにゃん?」

 エマは首を横に振った。

「エーテル器官に魂を封じる魔法はオレも初見にゃん」

「お館様の情報体の二つの中にもないにゃんね」

「軍事機密的な情報なら情報体に入らないにゃん、特に黒幕が使うオリエーンス連邦時代の情報はそうにゃん」

「魂を武器に組み込むなんて許されない冒涜にゃん! しかも我が領の領民を使うとは絶対にブチのめすにゃん」

「「「にゃお!」」」

 第二陣の猫耳たちも怒ってる。

 エーテル器官を他の人間に移植する方法までは確認されてるが、まさか魂を封じ込める技術まであるとは思わなかった。

 それもまた封印図書館がネタの出処なのだろう。

「お館様、ウチらはここにくるまでに一万五千体の戦闘ゴーレムを鹵獲したにゃん」

「にゃあ、オレらもだいたい同じぐらいにゃん」

「するとフェルティリータ連合内に残ってる戦闘ゴーレムは七万前後にゃん、いったいどれほどの魂が使われてるか見当が付かないにゃん」

「人間を電池代わりにしていたのは予想どおりだったにゃん、でも、魂を封じたエーテル器官まではオレも読めなかったにゃん」

 こちらにない電池の概念はオレの知識から共有して、魔力を溜めておく魔導具的な解釈になっている。

「黒幕が魂をエーテル器官に封じ込めたのは、ウチらが使う分解をレジストするためにゃん?」

「たぶんそれは副産物にゃん、主な目的は別にゃん、魂付きのエーテル器官は莫大な魔力を生み出すにゃん、ボース州内の戦闘ゴーレムは魔獣レベルの強さがあるはずにゃん」

「「「魔獣にゃん!?」」」

「それに加えてオレはもっとマズいものを見付けたにゃん、これを見るにゃん」

 オレはフェルティリータ連合の五つの州が描かれた地図を空中に投射する。

「さっきボース州に入ったところで見えたにゃん、街道を使った魔法陣にゃん、レークトゥス州の州都スマクラグで使われていたのと同じ手法にゃん」

 スマクラグは街の中の道路を使って巨大な魔法陣を作り上げている。

「お館様、本当にフェルティリータ連合の街道にそんなモノがあるにゃん?」

 エマがいちばん驚いている。

「にゃあ、本当にゃん、レークトゥス州の魔法陣が州都スマクラグだけだったのに対してフェルティリータ連合の魔法陣は五つの州を隈なくカバーしてるみたいにゃん」

 探査魔法を走らせたから間違いはない。

「予想される魔法陣はこれにゃん」

 地図に街道をなぞった魔法陣を浮かび上がらせた。それはフェルティリータ連合の五つの州全域に広がる。

「お館様、これはオリエーンス連邦時代の魔法陣にゃん?」

「そうにゃんね、これは戦闘ゴーレムと対になってる魔法陣にゃん」

「お館様、この魔法陣、これはまさか戦闘ゴーレムの無限供給にゃん?」

 猫耳のひとりが魔法陣の中の魔法式を読み取った。

「にゃあ、そうにゃん、この魔法陣の中では戦闘ゴーレムの無限供給と無限修復がされるにゃん」

「にゃお、それって無敵状態にゃん?」

「そうにゃん、この魔法陣の中にいる限り戦闘ゴーレムは無敵にゃん」

「にゃあ、だったら無限供給の魔法陣が飽和するまで戦闘ゴーレムを破壊するにゃん」

「それは悪手にゃん」

「何でダメにゃん?」

「下手に戦闘ゴーレムを壊すと新しく湧き出したゴーレムに領民の魂とエーテル器官を奪われる危険性があるからにゃん」

「にゃお、そうにゃん、魂は再生されないから新しいモノが必要になるにゃん、間違いなく犠牲者が増えるにゃん」

「街道にこんな危険なものが隠されてるとは思いも寄らなかったにゃん」

 エマがうなだれる。領地だった場所の秘密を知りかなりのショックを受けていた。

「お館様、魔法陣を壊さないことには中にいる戦闘ゴーレムはいくらでも湧いて出るにゃんね?」

「にゃあ、そういうことにゃん、下手に攻めると戦闘ゴーレムまで大発生で取り返しの付かないことになるにゃん」

「お館様、ウチらは、かなり難しい対応を迫られてるにゃんね」

「そのとおりにゃん」

 領民を助けようとしても下手を打てば、戦闘ゴーレムの無限湧きでフェルティリータ連合内の領民が死滅する。

 地面にボコっと穴が空いて魔法蟻が顔を出した。

『……』

 口をカチカチさせる。

「にゃあ、フェルティリータ連合のそれぞれの州都までトンネルを掘ったにゃんね」

『……』

「増員にゃんね、わかったにゃん」

 魔法蟻がトンネルに戻っていった。

「決めたにゃん、おまえらは魔法蟻のトンネルでフェルティリータ連合内に侵入して、魔法蟻の再生を頼むにゃん」

「お館様はどうするにゃん?」

「オレは、ドラゴンのディオニシスを使って高高度からフェルティリータ連合内の結界を一気に書き換えるにゃん」

「にゃ、お館様は高度限界を超える気にゃん?」

「ダメにゃん、危険過ぎてウチらは許可できないにゃん!」

「ここからは書き換えられないにゃん?」

「にゃあ、あの魔法陣は一気に処理したいにゃん、それには実物を見ながらが手っ取り早いにゃん」

「高度限界を超えたらレーザーで撃たれるにゃんよ」

「にゃあ、ディオニシスの燃料に変換するから平気にゃん」

「わかったにゃん、ウチらも行くにゃん」

「にゃあ、おまえらは危ないからダメにゃん」

「にゃお! 危ないところにお館様ひとりをやるわけにはいかないにゃん!」

「「「そうにゃん!」」」

「みゃあ、絶対にダメにゃん!」

「「「みゃあ!」」」

 ひとりが泣き出したら皆んな泣いてしまった。

「にゃあ、おまえらはおまえらのできることをやるにゃん、オレが魔法陣を書き換えたら戦闘ゴーレムに植え付けられた魂を聖魔法で送るにゃん、それとオートマタの再生と魔獣の排除、それに遺跡にゃん」

「クーストース遺跡群にゃん?」

「そうにゃん、フェルティリータ州にはカダルも含めると五つもあるにゃん。プリンキピウム遺跡と同等と考えたら早急にマナを抜く必要があるにゃん」

 高濃度で莫大な量のマナが遺跡から漏れたらそれこそ大惨事だ。

「「「にゃあ」」」

「それに問題の黒幕がまだ特定すらされてないにゃん、そいつを倒す前にオレが死ぬとか絶対にありえないにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちは涙を拭いた。

「すぐに始めるにゃんよ、おまえたちは魔法蟻とトンネルを整備しながらフェルティリータ連合内の地下で待機にゃん、オレが巨大魔法陣を弄ったらすぐに行動開始にゃん」

「「「了解にゃん!」」」


 猫耳たちはそれぞれ自分の乗る魔法蟻を再生してトンネルに降りていった。その前に全員に抱っこされたけどな。

 チビたちも猫耳に任せた。いくらディオニシスが大きくても高度限界を超える上空へは連れて行けない。

「にゃあ、リーリとミンクはどうするにゃん?」

 妖精はその点は無問題だ。

「ミンクはマコトと一緒に行くの」

 先に答えたのはミンクだった。ちょっと意外な気がした。

「魔法陣を書き換えればエドモンドを早く見つけられると思うの」

「にゃあ、そうにゃんね」

「あたしも当然行くよ! 空の高いところなんて危なくてマコトひとりじゃ行かせられないからね!」

 リーリも同行を申し出てくれた。

「ディオニシスも一緒だから危なくはないにゃんよ、それに丸腰でのスカイダイビングも経験済みにゃん」

「ダメダメ、あたしが行かなきゃ始まらないよ!」

「わかったにゃん、ふたりともオレと一緒に行くにゃん」



 ○アキントゥス州 境界近郊 上空


 オレは魔法蟻の穴に蓋をするとリーリとミンクを頭に乗せて飛翔した。


 地上でディオニシスを出したら目立ちすぎる。それにすぐにレーザーで魔力をチャージできた方が都合がいい。

『にゃあ、ディオニシスも頼むにゃんよ』

 格納空間の魔法龍ディオニシスに語りかけた。

『我に任せるが良い、それに高く飛ぶのは楽しみだ』

『にゃあ、楽しく行くにゃん』

 ダメだったら逃げ帰るまでだ。オレは死ぬつもりなど最初から毛頭ない。


 オレひとりの力で高度限界に迫る三〇〇メートル近くまで上がった。ボース州は見えてるがまだまだ高度が足りてない。

「あとちょっとで高度限界だよ!」

 リーリが教えてくれた。

「にゃあ、了解にゃん! ディオニシス出番にゃん!」


『任せよ!』


 全身を生きてる金属で構成された全長二〇〇メートル超えの魔法龍が姿を現す。オレたちはディオニシスの頭に乗った。

「高度限界を超えるにゃん!」

『おぅ!』

 防御結界の多重掛けで周囲の空間が歪む。空の上なので多少のムチャは問題なしだ。

 ディオニシスが飛翔し一気に高度限界を超えた。

 赤い光の筋がすぐに魔法龍に到達する。

「にゃあ、相変わらずどこで監視してるのかもわからないのにいい仕事をしてるにゃんね」

 赤いレーザーは、防御結界でマナに変換してディオニシスに送り込む。ディオニシスのマナ変換炉が濃厚な魔力を作り出す。

『高度限界の神のいかずちが我に力を与えてくれるとは面白い趣向だ』

「にゃあ、レーザーのこと神の雷っていうにゃんね」

「昔はそういってたね」

 リーリが教えてくれた。

「どのぐらい昔にゃん?」

「ずっと昔」

「いまの人間は飛ばないから神の雷を知らないの」

「にゃあ、飛翔の魔法を使える人間も高度限界の近くまでは飛ばないにゃん」

 それ以前に自由に飛び回ってるヤツなんて大公国の大公陛下と宮廷魔導師たちしか知らない。高度もいいところ一〇〇メートルあるかないか。

 赤いレーザーが次々とディオニシスを包む防御結界に殺到するがすべて魔力に変換して再利用する。

『力がみなぎるぞ、主よ!』

「にゃあ、いいことにゃん」

 魔力を大量に消費して高度を順調に上げる。

 地平線の丸みがはっきりと見える。それでもフェルティリータ連合のすべてを見渡すのにはまだ足りない。

 テレビで見た宇宙ステーションの映像ほど高くなくても大丈夫かな?

「にゃ?」

 赤い光が頭上から降り注いだ。

「にゃあ、今度は上から来たにゃん!」

「へえ、上からも撃ってくるんだね」

「ミンクも初めて知ったの」

 リーリとミンクも知らなかった。

 魔力を補充できるのはありがたい。レーザーの出力が上がってるのが少々気になるが、まだ微々たる問題だ。

「リーリとミンクはもっと高いところに上がったことあるにゃん?」

「無いよ」

「ミンクにも用事がない場所なの」

「にゃあ、それもそうにゃんね」

 するとこの先どうなるかは昇ってみてのお楽しみか?

「まだまだ足りないね」

 リーリが地上を見下ろす。雲がかかってるがオレたちの眼には関係ない。

「やっと半分てところにゃん」

 上を見れば降り注ぐ赤い光と暗い宇宙。きれいだけど防御結界が無かったら黒焦げになって死んでる。

「ディオニシスは大丈夫にゃん?」

『問題ない、心がおどるとはこのことであろう』

「にゃあ、それはなによりにゃん、オレもテコ入れするにゃん」

 ディオニシスの飛翔の魔法に重ね掛けする。

『おお、これはいいぞ、かなり楽になった』

「にゃあ、こういう場所では協力が大事にゃん」

「あたしもそう思うよ」

 リーリが腕を組んでうなずいた。

「おなか空いたね」

「にゃあ」

 猫耳たちが悲痛な思いでオレを送り出してくれたのが気恥ずかしいぐらい平和だ。

 リーリのリクエストに応えておやつの時間にする。

 猫耳ゴーレムの作ってくれたイチゴのショートケーキを分けて紅茶を入れた。

 出力の上がった赤い光が次々と着弾するのがうざいが仕方ない、その程度の認識でいられるのは平和な証拠だ。

「にゃあ、こうして見るとフェルティリータ州がいちばんヤバそうにゃんね」

 上空からでも異常な力が点在してるのがわかる。

「クーストース遺跡群だね、マナの濃さが半端ないよ」

「かなり危ない状態なの」

 妖精たちも危険を感じ取っていた。

 どの遺跡もまるで破裂寸前の風船のようだ。

 これを仕掛けたのが転生者なのか特異種なのか知らないが、魔獣の森が欲しいなら、わざわざ作らないでいくらでもあるんだからそっちに行けと言いたい。


 いよいよフェルティリータ連合の九割程度の土地がオレの眼下に広がってる。


「にゃあ、もうちょっとにゃん」

 ディオニシスは絶好調だし魔法陣を弄ること自体もほんの数秒でいける。

「後は遺跡を壊して魔獣を処分して黒幕を探し出してぶっ飛ばすにゃん。にゃお、まだやることがいっぱい残ってるにゃん」

「簡単じゃないよ」

「にゃあ、わかってるにゃん」

「マコト、ダメなの!」

「にゃ!?」

 ミンクが叫んだ直後、頭上から巨大としか形容のしようがない魔力の塊が撃ち込まれた。視界が白い輝きで塗り潰された。


「みゃああああ!!」


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