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開戦四日目にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年一〇月十七日


 ○リーリウム州 廃道脇 猫スフィンクス


 開戦四日目。

 日の出とともにオレたちはドラゴンゴーレム二〇〇体に猫耳四〇〇人が分乗した。

 猫耳ゴーレムは格納空間で連れて行く。

 オレも自分のドラゴンゴーレムを出した。

「にゃあ、飛行コースは指定されてる侵攻ルートをなぞって行くにゃん」

「「「にゃあ!」」」

 フェルティリータ連合は既に昨日から沈黙していた。州都カダルは魔獣により壊滅したらしいとの情報が入ってる。

 停戦は終了したのだが今朝は鉄球攻撃もない。

 昨日の情報では、戦闘ゴーレムが引き返す様な動きは無く、指揮系統がかなり乱れてるという話だ。

 オレたちは当初の進軍計画を変更して一気に戦争を終わらせることにした。魔獣が大発生してはちんたら地上を行く意味は無くなったからだ。

「今日中にフェルティリータの州都カダルに行くにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

「「出発!」なの!」

 リーリとミンクが声を揃えた号令を合図にドラゴンゴーレムが空に舞い上がる。

「にゃあ、高さは五〇メートル程度を維持にゃん、戦闘ゴーレムは発見次第、分解して鹵獲にゃん」

「「「了解にゃん!」」」

 今日中に残りの行程を飛行して一気にフェルティリータの州都カダルを攻める。

 二〇〇体のドラゴンゴーレムは速度を上げた。

 飛行関連の魔法が進化したおかげで音もなく風も巻き起こすことも無い。無論、地上に跡を残すことも無かった。



 ○ニービス州 廃道 上空


 僅かな時間でリーリウム州の境界門の上空を抜け、ニービス州の荒野を飛ぶ。引き続き近くに人家どころか獣もほとんどいない場所だ。

「やっぱりドラゴンゴーレムは速いにゃん」

「速いよね」

「うんなの、とても速くてびっくりなの」

 妖精たちはオレの頭の上でキャラメルソースをビスケットで挟んでチョコでコーティングしたお菓子を食べてる。

 チビたちは猫耳のドラゴンゴーレムに一人ずつ乗せている。付いてきたからには四歳だろうと五歳だろうと働いて貰う。少なくとも自分の身は自分で守って欲しいと言い聞かせてある。

 この速度なら昼過ぎにはアキントゥス州まで進軍しているフェルティリータ連合軍と会敵しそうだ。

 探査魔法を遠慮なく打ち込んで様子を探る。ヤツらも停戦終了と同時に動き出したようで、自領での惨状を顧みること無く進軍を再開していた。

「にゃあ、でも停戦前と様子がちょっと違うにゃんね」

「どうしたの?」

 リーリがオレの頭の上から尋ねた。

「前はもっと人間の反応があったのにいま調べたらほとんど無かったにゃん」

「それってどういうこと?」

「魔力供給役の人間以外はほとんどいなくて、戦闘ゴーレムのみで動いてるみたいにゃん」

 随伴していた魔導師や騎士たちの反応は皆無と言って良かった。魔獣の発生で領地に戻ったのだろうか?

 魔力供給役の人間は意識を失ってる状態だ。こちらは早く解放してやらないとヤバいことになる。


『マコト!』

 カズキから念話が入った。

『にゃあ、どうしたにゃん? 心配しなくても魔獣はアルボラ州から全部押し返したにゃんよ』

『こっちは至って平和だよ、違うんだ、フェルティリータ連合だよ! ボース州からフィークス州への越境を確認した!』

『にゃ? フェルティリータ連合がフィークスに攻め込んだにゃん』

 フィークス州は、今回の侵攻コースが置かれてるアキントゥス州の南に位置する国王派の領地だ。キャサリンの従姉妹であるアドリアナ・マクファーデン侯爵が領主を努めている。

 魔法使いはそれほど多くは抱えてない土地だから優秀な騎士がいても戦闘ゴーレムが相手では苦戦を強いられると思う。

『現在、約五〇〇〇体の戦闘ゴーレムがフィークス州の州都スイコに向かってる。アキントゥス州を進軍していたヤツらもコースを変えて州都ヤキンソスを目指している』

 コースまでは確認してなかったが、単に進軍を再開したわけじゃなかったらしい。

『フェルティリータ連合のヤツらはオレとの戦争をヤメたにゃん?』

『そうなるね、だから約定違反でマコトの暫定勝利が確定したよ』

『なんで暫定にゃん?』

『州都の占領などは自分たちでやれってことだね』

『にゃお』

『問題はフェルティリータ連合の戦闘ゴーレムを動かしているのが、誰なのかわからないってことかな』

『どういうことにゃん?』

『戦闘ゴーレムが夜明け前に勝手に動き出したそうだよ。王都にいるフェルティリータ連合の代表団は停戦終了前に降伏を申し出る予定だったのに先に何者かが戦闘ゴーレムを動かしたらしい』

『にゃあ、だったらオレたちもお行儀良く指定されたコースを通る必要はないにゃんね?』

『そう、戦争は終わって勝者はマコトに確定したから、ここからは自由にして構わないよ』

『了解にゃん』

「にゃあ! 聞いてのとおりにゃん、ここからは最短を行くにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

「高度は二五〇まで上げるにゃん、念の為、人家は避けて飛ぶにゃんよ」

「「「にゃあ!」」」



 ○ニービス州 上空


 オレを先頭に飛ぶドラゴンゴーレムの群れは進路を北から北寄りの西に変え、高度を上げた。

『にゃあ、戦闘ゴーレムが動いたのなら、オレの時間稼ぎもここまでにゃんね』

 オレはカズキとの念話を続ける。

『ここで近衛でも動かせば、王宮を見直したんだけどね』

『にゃあ、やっぱり近衛軍は王都からは動かないにゃん?』

『籠城作戦みたいだね』

 近衛は対人戦闘が王都に限定されてる王国軍や専守防衛の騎士団と違って国内を自由に動かせるはずなのだが。

 王国軍の新軍は避難民の移送を手伝わせているが、正規軍は騎士団と共に王都防衛に当たってる。魔獣ならともかく近衛まで張り付かせなくても王都防衛の戦力的には問題がないはずなのだが。

『にゃあ、敵が遠いのにいまから籠城って意味がないと思うにゃん』

『実は近衛軍から結構な数の兵士が脱走したらしい、それで動くに動けなくなってるみたいだね』

『どのぐらい逃げたにゃん?』

『八〇〇〇ちょっとらしいね』

『にゃあ、ずいぶんと逃げたにゃんね、オレもあの帽子を被るぐらいなら逃げたかもしれないにゃん』

『帽子は関係ないと思うけど、あれは見た目が変だけどなかなか高性能な魔導具だから装備としては悪くないよ』

『じゃあ、何で逃げたにゃん?』

『あそこは一般兵の一部に使い潰すのを前提とした犯罪奴隷を使ってたそうだから、混乱に乗じて逃げたんじゃないかな』

『にゃあ、犯罪奴隷を使っていたにゃんね』

『犯罪奴隷だったら逃げられるとわかれば、普通は逃げちゃうよね』

『そうにゃんね』

 にゃ、そう言えば最近、王都で八〇〇〇ちょっとの犯罪奴隷相当のチンピラを捕まえて魂のブートキャンプに送り込んだ記憶が。

『こんな時にこそ、王宮に動いて欲しかったのに残念にゃん』

『王宮には期待するだけ無駄だよ、アーヴィン様がいくら暗躍しても肝心の国王が動かないからね、法衣貴族と思考レベルが同じらしい』

『宰相がいなくなったのが惜しいにゃんね、アーヴィン様辺りがやれば多少はマシになると思うにゃん』

『ああ、それはあるね、本人は嫌がるだろうけど』

『にゃあ、光景が目に浮かぶにゃん』

『ベストはマコトなんだけど』

『六歳児に一国の宰相をやらせるってどうにゃん? それこそ内乱が発生すると違うにゃん』

『いや、導火線の短い領地ほど貧しくてマコトの小麦が生命線だったりするし、国内でも随一の軍事力を誇るマコト公爵に歯向かうヤツはいないよ』

『オレはまだ公爵じゃないにゃん』

『マコトがフェルティリータ連合に暫定勝利した時点で陞爵しょうしゃくが自動的に決まったみたいだよ』

『にゃお、陞爵までは仕方ないとして宰相は御免にゃん、オレはこの戦争が終わったら冒険の旅に出るにゃん』

『フラグを立ててるところ申し訳ないんだけど、マコトの戦争は既に終わってるし』

『そうだったにゃん、戦闘ゴーレムと魔獣を片付けてさっさとケラスに帰るにゃん』

『うん、それがいいね』


 カズキとの念話の直後にプリンキピウム前衛拠点の猫耳から連絡が入った。

『お館様、プリンキピウム遺跡内部でマナの濃度が急激に上昇してるにゃん、現在、結界の外からマナを吸い出す作業を強化中にゃん!』

『にゃあ、マナの上昇はマズいことが起きる前触れにゃん! 全力でやるにゃん!』

『了解にゃん!』

『にゃあ、プリンキピウム遺跡はぶっ壊しても構わないにゃん! とにかくマナも魔力もすっからかんにするにゃん!』

 遺跡うんたらより猫耳たちの安全第一だ。

『お館様、プリンキピウム遺跡の結界を中和する魔法式が完成したから早速、使ってみるにゃん』

 研究拠点からも念話が入った。

『にゃあ、使うのはいいけどおまえらが破裂したらダメにゃんよ』

『そこは結界で囲うから大丈夫にゃん』

 魂が抜けなければOKではあるが。

『にゃお、オレは猫耳の破裂する姿を見たくないにゃん』

『そこは当たって砕けろにゃん!』

『だから砕けるのは禁止にゃん!』

『にゃあ、もう実験済みだから誰も砕けないにゃん、間もなくプリンキピウム遺跡の防御結界が剥がれるにゃん』

 プリンキピウム前衛拠点の猫耳だ。

『それ実験じゃなくて本番と違うにゃん?』

『ウチらは新しいモノは直ぐ試したいお年頃ぞろいにゃん』

 前は様々だったが、いまの猫耳は全員が同い歳だ。

『お館様、マナの濃度が半端ないにゃん、遺跡の防御結界をこのまま解放したらここまで魔獣の森に沈むレベルにゃん』

『プリンキピウム前衛まで魔獣の森レベルってどんだけマナを放出してるにゃん!? オレたちの結界で囲って外に漏らしちゃダメにゃんよ』

『にゃあ、もうやってるにゃん、マナも吸い取って地下の生産施設が一〇個も出来たにゃん、それでもまだまだ追い付かないにゃん』

『もう、何でも構わないから造るにゃん、それとプリンキピウムには警報を出して森に出てる冒険者を街に呼び戻すにゃん』

 オレの知ってるおっさんどもがマナにやられて天に還られたら寝覚めが悪い。

『了解にゃん、冒険者を回収したらプリンキピウムの街に防御結界を多重起動させるにゃん、おっさんどもは街の近くにいるから直ぐに回収するにゃん』

『多重起動にゃん?』

『にゃあ、防御結界の強化策にゃん、研究拠点で実験済みにゃん、周囲が魔獣に埋まっても平気な強度があるにゃん』

『お館様のおっさんたちも安心にゃん』

『おっさんたちはオレのじゃないにゃんよ』

『にゃあ、これからプリンキピウム遺跡から出るマナでいろいろ造るにゃん』

『ウチらの試算だと地下生産施設を二〇、拠点が二〇、研究拠点が三、最後にホテルを十五棟はイケるにゃん』

『だったら拠点と地下生産施設はウィルゴと旧貴族派領地、それと旧男爵領に重点配置にゃん、研究拠点はケラス、ウィルゴ、ノルドに配置、ホテルは何処でもいいにゃん』

『人の来ないところでもいいにゃん?』

『にゃあ、この際、構わないにゃん』

『お館様、オートマタも追加で四〇〇万体作るにゃん』

『にゃあ、これからフェルティリータで魔獣を始末するからガンガン作っていいにゃんよ』

『了解にゃん、ガンガン行くにゃん!』

『『『……』』』

 次は魔法蟻たちからだ。

『にゃあ、フェルティリータ連合各州に向けてトンネルにゃんね、了解にゃん、そっちもガンガン掘っていいにゃん』

『『『……!』』』

 魔法蟻たちの口をカチカチが伝わる。

『こちらエイリー拠点にゃん、追加の猫耳とドラゴンゴーレムを出すにゃん、数は第一陣と同じドラゴンゴーレム二〇〇体に猫耳四〇〇人にゃん』

 旧男爵領で今回の戦争の本陣だったエイリー拠点から念話が飛んだ。

『了解にゃん、第二陣はフィークス州に越境した戦闘ゴーレムの始末を頼むにゃん』

『にゃあ、ルートは王都とリアンティス州を抜けてフィークス州で戦闘ゴーレムを鹵獲するにゃん、その後ボース州の境界門でお館様たちと合流にゃん』

『了解にゃん、王都拠点は上空を通過予定の王宮、リアンティス州、フィークス州に通達を頼むにゃん』

 間違って撃たれると面倒くさい。

『王都拠点了解にゃん!』

『にゃあ、皆んな頼んだにゃん!』

 オレは猫耳に猫耳ゴーレムそして魔法蟻の全員に声を掛けた。


「マコト、何かミンクが感じ取ったみたいだよ」

 リーリがオレの眼の前でホバリングして、しょんぼりしてるミンクを指差した。

「ミンクは何を感じ取ったにゃん?」

 オレの問い掛けにうつむいていたミンクが顔を上げた。目に涙をためてる。

「エドモンドが息をしてないの」

「息をしてないにゃん? にゃあ、それはいつからにゃん」

「ミンクもさっき気が付いたの」

「わかったにゃん、カダルに着いたら直ぐにエドモンドを探すにゃん」

「うんなの、お願いなの」

 各方面に迷惑を掛けまくりの王子だが、ミンクには大切な存在らしい。

 最期まで迷惑掛け通しなのもある意味スゴいが、それでもいなければいないでちょっと寂しい。

 見付けたら遺跡に棲み着かないようにちゃんと送ってやらないとな。


『にゃあ、こちらマコトにゃん』

『おお、マコト殿!』

 アキントゥス州の領主、エドワーズ・アンヴィル侯爵に念話を入れた。国王派貴族と念話の回線を開いていたのはここに来て役に立った。

『にゃあ、間もなく州都ヤキンソスの上空に到達するにゃん、オレたちは戦闘ゴーレムだけを始末するから後のことはよろしく頼むにゃん』

『マコト殿、やはり戦闘ゴーレムはかなり手強いぞ、我が騎士たちも死者こそ出していないが負傷者多数で城壁の中に押し込まれている』

 アキントゥス州の練度の高い騎士でも歯が立たないらしい。

『普通に戦うとそうにゃんね、オレはなるべく戦わないで済ませるにゃん、それと急いでるから用事が済んだらそのままお暇するにゃん』

『了解した、我が騎士に伝えることがお有りなら申し付けていただきたい』

『にゃあ、空から行くから間違えて撃たないで欲しいにゃん』

『空からとは!?』

『にゃあ、ドラゴンゴーレムにゃん、間違っても撃っちゃダメにゃんよ』

『ドラゴンゴーレム!? マコト殿はとんでもないモノをお持ちだ、了解した、直ぐに我が騎士に伝達しよう』

『にゃあ、後片付けが大変だと思うけど頑張って欲しいにゃん、では騎士団方面の連絡よろしくにゃん!』



 ○アキントゥス州 上空


 念話を終了したところで本来のルートであるニービス州をショートカットしてアキントゥス州上空に入った。

 境界門は通らず結界をそのまま突破する。大公国みたいなドギツい結界ではないので中和は簡単だ。

「にゃあ、このままアキントゥスの州都ヤキンソスを目指すにゃん!」

 風の魔法を使って猫耳全員に声を届けた。

「「「了解にゃん!」」」

 猫耳たちから声が帰って来た。


 州都ヤキンソスに向かう間、今度はフィークス州の領主、アドリアナ・マクファーデン侯爵に念話を入れた。

『ネコちゃん、忘れないでいてくれてたのね』

『にゃあ、忘れたりしないにゃん、状況はどうにゃん?』

『昨夜、境界門の結界が破られて戦闘ゴーレムに侵入されたの、ネコちゃんのアドバイスで街道を通れなくしたけど、予想以上の数で押し切られてしまったわ』

『状況は良くないにゃんね』

『それでも一気に州都までは来てないから助かってる』

『にゃあ、オレのところから援軍を送ったからもうちょっとの辛抱にゃん』

『ありがとう、でも明日の朝まで州都はもたないと思う、だから無理はしないで』

『にゃあ、そんなに時間は掛からずに到着するから大丈夫にゃん』

『大丈夫って言われても』

『にゃあ、空から行くにゃん』

『空?』

『にゃあ、ドラゴンゴーレムを使ってるからあと数時間で到着にゃん』

『空を飛んで来るの?』

『そうにゃん、戦闘ゴーレムはオレたちに任せてくれていいにゃん』



 ○アキントゥス州 州都ヤキンソス 上空


 昼過ぎ、ドラゴンゴーレムはアキントゥス州の州都ヤキンソス上空に達した。

「アンヴィル侯爵から聞いたとおりフェルティリータの戦闘ゴーレムが州都を包囲してるにゃんね」

 アキントゥスの三万の騎士は冬期戦闘や森林戦に特化されてるので、今回の州都防衛戦はかなり苦戦していた。

 森林地帯で戦闘ゴーレムの足止めが出来れば良かったのだが、やはり数に押されて進軍を許したらしい。

 何にしても戦闘ゴーレムが相手では魔法使いじゃない限り分が悪い。いくら優秀な騎士でも射程距離が違いすぎた。

 戦闘ゴーレムの放った矢は軽く一〇キロを超えて飛んでいた。

 更に矢に魔法が載ってるとそれこそ魔力次第でどこまでも飛ぶ。燃費が悪いからそこまで飛ばしたりはしない様だが、それでも上限の性能を超えている。

 これで森林での戦闘じゃなかったらアキントゥスの騎士団は全滅の憂き目に遭っていただろう。怪我人は複数出たが、死者は出さずに州都まで退却出来たのは地形に助けられたところが大きい。

 それでもまだ州都内に入り込まれてないだけアキントゥス側の騎士は優秀だ。更に数が少ない魔法使いを効率的に運用して飛来する矢から州都を守っていた。

「このまま突っ込んでヤキンソスの外周を左回りに旋回、戦闘ゴーレムを片っ端から分解して鹵獲するにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 肉眼でヤキンソスの城壁を捉えた。

「にゃあ、戦闘ゴーレムの矢が来るにゃん!」

 人間ではとても飛ばせない物干し竿みたいな大きさの矢が中国の映画みたいな勢いで大量に飛んで来る。

 回避不能の弾幕だ。矢だけど。

「にゃあ!」

 ドラゴンゴーレムの群れに到達する前に全部分解した。

「鹵獲開始にゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 ヤキンソスを囲んでいた戦闘ゴーレムを旋回しながらすべて消し去った。

 約三千の人馬型の戦闘ゴーレムが次々と消滅し、その後に魔力供給の電池代わりにされていた人たちが次々と地面に落ちて転がる。いずれも戦闘ゴーレムに下げられたバッグに突っ込まれていた人たちだ。

 戦闘ゴーレム一体に五人ほど繋がれており約一五〇〇〇の人たちがヤキンソスの城壁を囲むように倒れた。仮死状態だったが戦闘ゴーレムから解放されたので間もなく目を覚ますはずだ。

「にゃあ、後は頼んだにゃん」

 一周半してヤキンソスから離脱した。


 戦闘ゴーレム一〇万体のうち鹵獲したのは三〇〇〇体、かなりの数がフェルティリータに続く道の途中で動けなくなっていた。

 いずれも魔力切れを起こしていたので難なく鹵獲する。

 後発の猫耳たちの報告でもフィークス州に越境した戦闘ゴーレムも半数が脱落したようだ。

 魔力供給役の人たちは悪いけど置き去りにする。こちらも直ぐに目を覚ますだろうし、魔力を吸われているとは言え、まだ身体も動くはずだ。



 ○アキントゥス州 境界近郊 上空


『にゃあ、こちらマコト・アマノ侯爵にゃん、フェルティリータ連合内の全領民に告げるにゃん』

 いよいよフェルティリータ連合の一つボース州が間近に迫ったところで、オレは風の魔法に声を乗せて連合の各州に飛ばした。

『これより、オレたちは上空より入り魔獣の討伐と戦闘ゴーレムの鹵獲を行うにゃん、魔獣の討伐にはオートマタを使用するにゃん、大きいけど慌てる必要はないにゃん』

 鉄の馬に乗る鉄の巨人が大量に現れたら誰だって驚くので、先にオートマタのイメージを飛ばす。

『避難民はクァルク州、オーリィ州、アブシント州及びヌーラ州で受け入れるにゃん、フェルティリータ連合の騎士と守備隊は、これより領内に入る猫耳の指示に従い領民の保護と治安維持に務めるにゃん』

 それともう一点。

『フェルティリータ連合内の貴族階級は、現時点をもってオレの支配下に入るにゃん、貴族の特権は廃止するので納得がいかないなら領外に出て構わないにゃん、にゃあ、もし戦うなら、こちらも容赦しないにゃんよ』

 大公国ほどではないが、不逮捕特権や初夜権などとんでも特権はすべて廃止だ。

 すでに改革の草案は出来ているが、今回の事件でどれほどの被害が出てるか正直わからない。

『にゃあ、領民全員は悪いようにはしないからもう少しだけ頑張って欲しいにゃん』


 最後にそう締めくくってフェルティリータ連合、ボース州に突入した。


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