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今度こそ本当に帰るにゃん

 ○プリンキピウム街道 脇道


「にゃあ」

 街道から脇道にちょっと入り込んで前後左右を眺めた。周囲に誰も居ないのを確認して二頭立ての馬車を出した。

 イートンとジェフリーの幌馬車を参考にしたが、こっちはゴムタイヤっぽいデカいタイヤを履いた下回りは、まんまオレの知ってる魔法車になっている。電子制御ならぬ魔法制御にゃん、幌は付けていない。


 操縦はハンドルとアクセルとブレーキ。オートマなのでクラッチはない。

 更にオレ専用のバケットシートなので尻尾の据わりも完璧だ。

 足元にはオプションの高級カーペットも忘れてないにゃんよ。

 材質はいずれも魔獣由来のモノを使用している。

 精霊情報体と図書館の記憶石板の情報をミックスした知識が、このぶっ飛んだシロモノを実現してる。



 ○プリンキピウム街道


 街道に何食わぬ顔で合流した。この石畳だったら時速一〇〇キロオーバーでぶっ飛ばすことも可能じゃないだろうか?

 とはいえ、まだ州都に近いだけあって交通量はまあまああるので流れは緩やか。他の皆さんのご迷惑になるのでのんびり行く。

「馬車は楽ちんにゃんね」

 バイクと自動車の違い以上に楽ちんだ。


 少し前に荷台が傾いた荷馬車がよろよろ走っている。流石に遅いので距離を詰めて何処かで追い抜くか。

 対向車がいないのを確認してアクセルを踏んだ。馬車を加速させて追い抜く。アクセルのレスポンスはなかなか鋭い。


『……助けて……』


「にゃ?」

 街道脇のヤブの奥から子供の声がした。

 馬車の蹄の音に掻き消されてたぶんオレしか気付いていない。

 探査魔法を打つと街道から外れた空き地に荷馬車が一台停まっていた。

 荷馬車から子供がふたり放り出される。

 御者の男がナタを持って降りてきた。

 どう見てもトラブル発生!

 子供を殺すつもりだ。

「にゃあ!」

 もちろんそんなことはさせないにゃん!

 空き地に向かって馬車ごとヤブに突っ込んだ。

 追い抜いたばかりの荷馬車の御者は驚いていたが本物の馬と違って魔法馬は驚かない。

 正面の邪魔な木々を分解して突っ走る。

「にゃおお!」

 ものの数秒で空き地に飛び出した。

 派手に馬車のテールを横にスライドさせて停めた。

「なっ!」

 ナタを振り上げていた山賊のような風体の男が目を剥いた。

 地面に跪いて抱き合ってるふたりの子供は一人が三~四歳でもう一人が一〇歳ぐらいか、どっちも女の子だ。

 姉妹だろうか?

 お姉ちゃんらしき子が泣き出した小さな子をしっかり抱き締めてる。

「にゃお、そこまでにゃん!」

 御者台から立ってナタを持つ男に叫んだ。

「はあ、何言ってんだ糞ガキ? 殺すぞ!」

「にゃあ! 子供しか襲えない小物がいきがってるんじゃないにゃん!」

「てめえ、ぶっ殺してやる!」

 ナタを振り上げ駆け寄って来る。

 前なら驚いたかもしれないが、獣を狩りまくった経験の後ではどうってことは無い。

「にゃあ、余罪も有りそうにゃんね」

「てめえも殺してそっちの馬車を頂いてやるぜ!」

「無理にゃんね」

 青い稲妻が走り小汚い服がはじけ飛ぶ。

「ガッ!」

 電撃&分解で素っ裸の山賊風オヤジはその場に仰向けに倒れた。


「にゃあ、大丈夫にゃん?」

 オレは馬車を降りて子供たちに声を掛けた。

 ふたりは頷いた。

「怪我をしたにゃんね、直ぐに治すにゃん」

 馬車から放り出された時の軽い打撲とかすり傷だが治癒魔法を使った。

 痛みが消えてふたりも少し落ち着いた様だ。


「にゃあ、何があったにゃん?」

「プリンキピウム行きの乗合馬車を探してたら、『ただで乗せてやる』って強引に乗せられたんです、そしたらこんなところで降ろされて」

 お姉ちゃんが説明してくれた。

「にゃあ、災難だったにゃんね」

「あの、あなたは」

 まだ涙の跡が残ってるお姉ちゃんが聞いた。

「にゃあ、オレはマコトにゃん、プリンキピウムの冒険者にゃん」

「冒険者なんですか?」

「にゃあ、良く言われるにゃん」

「私はシャンテル・ダッド、こっちは妹のベリルです」

 妹は姉に抱き着いたまま頷いた。

「ふたりは幾つにゃん?」

「わたしは一〇歳です」

「あたしは四歳、ネコちゃんは?」

 オレの読みもなかなかなものだ。

「にゃあ、オレは六歳にゃん、ふたりはプリンキピウムに行くにゃん?」

「プリンキピウムのおばあちゃんのお家に行くの」

 妹のベリルが答えた。

「にゃあ、だったらオレの馬車で送ってやるにゃん」

「プリンキピウムまで、乗せてくれるんですか?」

 お姉ちゃんのシャンテルが聞く。

「にゃあ、オレもプリンキピウムに帰るところだから構わないにゃんよ」

「ネコちゃんもプリンキピウムに行くの?」

 妹のベリルも質問する。

「にゃあ、あっちがオレの本拠地にゃん」

「宿には泊まらないけどそれでいいにゃん?」

「野宿ですか?」

「馬車で寝るにゃん」

「それなら、問題有りません、あのいくらぐらい払えばいいんですか?」

「帰るついでだからお金はいらないにゃん」

「いらないんですか?」

「州都に戻ってそこのオヤジを売っぱらうから問題ないにゃん、心配なら明日の乗合馬車に乗ってもいいにゃんよ」

「いえ、マコトさんはちゃんとした冒険者ですから」

「あたしもネコちゃんと一緒がいい」

「にゃあ、ひとまず州都に逆戻りにゃん」


 縛り上げたフルチンオヤジを乗せた荷馬車を遠隔でコントロールしながら、姉妹を連れて馬車を連ねて州都に戻った。



 ○州都オパルス 城壁門


「お嬢ちゃんが捕まえたのかい?」

 門のところで守備隊の若い隊員さんが対応してくれる。

「にゃあ、そうにゃん」

 冒険者のカードを見せる。

「手続きはここでもできるけどどうする?」

「にゃあ、ここでお願いするにゃん」

 今度は門にある守備隊の詰め所で手続きをする。荷馬車のオヤジは素っ裸のまま引き渡した。

「子供を狙うとは本物のクズだな」

 オヤジは守備隊員にケツを蹴られて引っ立てられた。


 真実の首輪で取り調べた結果、荷馬車のオヤジは地味に高ランクの犯罪者だった。命の値段が安いこの世界だが、罪そのものは軽くない。当然、人権が著しく制限された犯罪奴隷堕ちだ。


 手続きにちょっと時間が掛かるとのことで、城壁門脇の駐車場で待たせて貰うことになった。

「ごめんにゃん、思ったより時間が掛かるみたいにゃん」

 まずはシャンテルとベリルの姉妹に謝罪した。

「いいえ、私たちも寝ちゃってましたから」

 ふたりは、州都に戻る途中から幌を掛けた馬車の荷台で休んで貰っていた。殺され掛かったんだから精神的なショックも大きかったろう。

「うん、寝ちゃった」

 ふたりとも落ち着いた様だ。

「にゃあ、お腹は空いてないにゃん?」

「空いたかも」

 妹のベリルがお腹を押さえた。

「だったら、ご飯にするにゃん」

 荷台に幌は張ったとは言え、州都の城壁門横でいきなり異世界全開の食事は目立ちすぎるので、武装商人のイートンとジェフリーに買って貰った串焼きを模したモノを出す。それとちっちゃいパンと果物のジュース。

 小さいテーブルを出してそこに並べた。

「どうぞにゃん」

 シャンテルとベリルに勧めた。

「いいんですか?」

 シャンテルが聞く。

「にゃあ、いいにゃんよ、遠慮しなくていいにゃん」

「美味しい!」

 ベリルが串焼きに齧り付いた。

「それは良かったにゃん」

 肉はその辺りで売ってる獣の肉だが、柔らかくなるように処理してウルフソルトで仕上げてある。

「本当に美味しいです」

 シャンテルの舌にも合った様だ。

「甘いくて美味しいね、お姉ちゃん」

「うん、美味しいね」

 森の木の実で作ったジュースも好評だ。


 串焼きとパンのご飯を終えたシャンテルとベリルはまた眠そうにしていたので、クッションを勧めて身体を休めて貰った。


 それから暫くして捕まえたオヤジの精算が終わった。中年だけあって残念ながら犯罪奴隷としては高くは売れなかった。

 この前の半額の金貨五枚だ。

 しかしプラスして報奨金が金貨三枚と馬と馬車の現物が貰えるから収支は悪くない。それに犯罪者ランクに応じた討伐ポイントも付くし。


 門を出るのは、またしても夕方になってしまった。



 ○プリンキピウム街道


 パカポコと夕暮れの街道をプリンキピウムに向けて走る。御者台にはオレとシャンテルでベリルを挟んで座っている。

 並んで座れる様にバケットシートからベンチシートに取り替えた。

「ネコちゃんの馬車は速いね」

 ベリルはあのオヤジの馬車と比べているのだろう。

「この時間は他の馬車が少ないからちょっとだけ飛ばせるにゃん」

 本当はこの三倍は出せるけど、まったく交通量が無いわけじゃないからちょっと速いぐらいに留めておく。

 プリンキピウムへの帰り道、結局ひとりで旅をしたのって、ほとんど無いような気がするが、旅は道連れ世は情けにゃん。

「マコトさん、野営はどの辺りでするんですか?」

 シャンテルがキョロキョロしている。

 街道脇の野営地を素通りしたから不思議に思ったのだろう。

「にゃあ、もうちょっとだけ先にゃん、野営といってもゆっくり出来るし安全だから安心していいにゃんよ」

「ネコちゃんの馬車すごいもんね」

 ベリルは馬車の荷台で寝ると思っているようだ。

「直ぐにわかるにゃん」

 一昨日の野営に使ったヤブの中の野っ原が近付いて来た。

 周囲に馬車なし。

「にゃあ、到着にゃん」

 一旦、馬車を停めてからヤブに向ける。

「ちょっとヤブに入るにゃん」

 魔法でヤブの草木を避けて馬車のまま乗り入れる。

「「わぁ」」

 シャンテルとベリルは目を丸くする。

 俺だけなら速度を落とさず突っ込んでたところだけどな。



 ○プリンキピウム街道脇 ロッジ


 ヤブに囲まれた野っ原でまずは馬車を仕舞った。念の為、認識阻害の結界は使わずに防御結界のみを張る。

「ここで野営するんですね」

「暗くて怖いね」

 ベリルがシャンテルに抱き着いた。

「にゃあ、大丈夫にゃん」

 野っ原の真ん中にロッジを再生した。

「「……!」」

 シャンテルとベリルはビクっとなった。

「夜は、これを使うにゃん」

 精霊情報体のレシピを使って作った探検用のロッジは、シャンテルとベリルの目には奇異に映ったかも。

 平屋の円形の建物で壁の半分がガラスみたいな透明素材なんて建物は州都でも見掛け無かったからな。

「マコトさんは、普通の冒険者じゃないですよね?」

「スゴい、お家が出て来た!」

「オレは魔法がメインの冒険者にゃん」

「魔法使いですか?」

「にゃあ」

「これってネコちゃんのお家?」

「にゃあ、そんなところにゃん、まずはお風呂にゃん」

「お風呂もあるんですか?」

「あるにゃんよ、こんな所に突っ立ってるとオオカミが来るにゃん」

 ふたりをロッジの中に招き入れた。

「ここで靴を脱ぐにゃん」

 入口のウォッシュだけでも綺麗になったが服と靴は補修が必要だ。

「お姉ちゃん、綺麗になったよ」

「本当だ、服も身体も綺麗になってる、いまの魔法ですか?」

「そうにゃん」

 地下のお風呂場に案内する。

「お風呂はこっちにゃん」

 オレも使い方を教える傍ら、一緒に入ることにした。

 既にお湯張りはOK状態。

 ふたりをじゃぶじゃぶと洗って風呂に入れる。

「気持ちいいね、お姉ちゃん」

「うん、気持ちいい」

「にゃあ、シャンテルとベリルはどうしてふたりだけでプリンキピウムのおばあちゃんちに行くにゃん?」

 子供がふたりだけで旅をするのは、こっちでも普通はないようだから訳ありなのは間違いない。

「お母さんが死んじゃったから、お家を出ないといけなくて」

 姉のシャンテルが事情を説明した。

「母親が亡くなって直ぐに追い出すなんて酷い大家にゃん」

「それは違うの、大家さんは好きなだけいていいって言ってくれたし、おばあちゃんにも手紙を書いてくれたし」

「にゃあ、悪い人じゃ無さそうにゃんね」

「大家のおばちゃんはいい人だよ」

「世の中、いい人もいっぱいいるけど悪い人もいっぱいいるから気を付けるにゃん」

「うん、マコトさんの言うこといまは良くわかります」

「あたしもわかるよ!」

 あんな経験をしたら、いまなら身にしみてわかるか。

「にゃあ、ふたりのことは、オレがおばあちゃんちまで責任を持って届けるから安心していいにゃん」

「マコトさんは、どうして親切にしてくれるんですか?」

 シャンテルがじっと俺を見る

「にゃあ、オレも他の人に助けて貰ったからにゃん、だからオレも同じことをしているだけにゃん」

 オレを助けてくれたキャリーとベルの顔を思い浮かべる。

「わたしも困ってる人がいたら助けられる様になりたいです」

 シャンテルが呟く。

「わたしもなる!」

 ベリルは強く叫んだ。

「にゃあ、慌てなくていいにゃん、いい人と悪いヤツの見分けが付くようになってからでも遅くないにゃん」

 それに経費はあのオヤジが身を持って払ってくれているしな。


 風呂から上がって夕食を食べるとふたりとも直ぐに寝てしまった。


 オレは、格納空間で前回と今日の戦利品を洗浄と修復をした。

 途中で拾った馬と荷馬車の馬も綺麗に修復する。

 武器も衣料品も魔法馬も売るほどストック出来た。

 綺麗にしたが、どれも作りがいまいちだったのでオレが作り直す。


 眠くなるまで続けてからオレはリビングに敷いた布団に潜り込む。

 今夜は、近衛軍の行軍はないようだ。



 ○帝国暦 二七三〇年〇四月二七日


 翌朝、ふたりは溜まった疲れが出たのか、体調が思わしくないようだ。身体を重そうにしている。

「今日は天気がいまいちだし、明日の出発にするにゃん」

 雲が厚く小雨が明け方からぱらついていた。

「いいのですか?」

「にゃあ、二~三日休んでもオレの馬車は乗合馬車より早く着くにゃん」

「わかりました」

 魔法で微熱を癒してはいるが、こんな時は身体を休めるのがいちばんだ。

 サンドイッチの朝食の後はのんびりして貰う。

 ソファーにもたれてふたりとも寝てしまった。

 オレは、地下の工房にこもって馬車や銃の改造に勤しんだ。


 お昼ごはんはサラダとパスタ。

 あまり食べ慣れないものを出すのもなんなのでと思いつつもクリームパスタを出してみる。

 ふたりともおいしそうに食べてくれた。

 オレたちはスクリーンに街道の様子を映して眺める。

 外の雨が強くなって馬車も馬も人も通らなくなった。

「この雨では途中で足止めされてましたね」

「にゃあ、そうにゃん」

 防御結界に守られたオレの馬車なら雨でも濡れることはないけど、わざわざ走らせる必要もない。

「にゃう」

 嫌な感じがした。

 空気が重苦しくなり防御結界の外の気温が下がったのがわかる。

 尻尾にビリビリ来た。

 巨木群まで距離があるのに精霊か?

 いや、ビリビリ具合が違ってる。

 何か別のものだ。

「にゃあ、ふたりはベッドでお昼寝するといいにゃん」

「はい、そうします、行くよベリル」

「うん」

 妹はもう眠そうだ。

 シャンテルとベリルがベッドルームに降りて行った。

 ロッジの防御結界を更に重ね掛けする。

 霊的防御の強化だ。

 オレは街道の様子を映し出したスクリーンを凝視する。

「にゃあ、ふたりには見られずに済んだにゃん」

 プリンキピウムの方向から街道をぞろぞろと歩く人影が近付いて来る。

「にゃお、人間じゃないにゃん」

 半透明の人影は、全員ボロをまとった傷だらけの男たちだ。でも生きてはいない。

「まるでゾンビにゃんね」

 額に紋章が彫られているから犯罪奴隷か?

 遺跡の発掘で使い潰された犯罪奴隷たちが怨霊になって州都に向かってる。人間の精気に引き寄せられているのだろうか?

 州都の防御結界を超えることは出来ないと思うが、このまま見過ごすのはマズいか。州都はともかく街道沿いの村々がそれほどきっちり守られているとも思えないからな。

 半透明の怨霊たちは、呪詛の言葉を吐き身体を揺らしながら周囲の亡霊を引き寄せつつ進む。

 運悪くこの群れに飲み込まれるとただでは済まないと思う。命を落としかねない。雨じゃ無かったら被害が半端なかったろう。

「止めた方が良さそうにゃんね」

 オレは雨の降りしきる外に出た。



 ○プリンキピウム街道


 魔法馬に乗って街道に出た。

「止まるにゃん」

 怨霊たちが足を止めた。

『『『……』』』

 これはオレの声ではなく魔力に反応した。

「お前らはオレが送ってやるから、悪さをするんじゃないにゃん」

 怨霊を取り囲むように聖魔法を発動させた。

「にゃあ!」

 怨霊たちが光に包まれる。

 それぞれが五〇ほどいた怨霊は人の形を取り戻す。

 そして寂しげな笑みを浮かべ片手をちょっと上げた。

 すべてのしがらみから開放された人々は光の粒子になって天に昇った。

 雨の中でも綺麗だ。

 聖魔法ってかなり使える。

「にゃあ、そんなに古い怨霊じゃなかったにゃんね、方向からしてプリンキピウム遺跡で潰した犯罪奴隷で間違い無さそうにゃん」

 遺跡の発掘の方法なんて精霊情報体にも図書館の記憶石板にも無かったが、状況証拠が雄弁に物語っている。

 だからって余計なことに首を突っ込むつもりはない。

 怨霊は残らず天に還り、雨は降り続いてるが重苦しい空気は消えた。

 仕事は終わったのでオレはロッジに戻った。



 ○プリンキピウム街道脇 ロッジ


 ロッジに戻って暫くするとシャンテルとベリルが起きて来た。

 お昼寝するとちょっと元気になったにゃんね。

 部屋にこもっていても退屈するだけなので、二人には絵本を出してやった。記憶石板にあったお話と絵を紙の本に作り変えたモノだ。

 お姉ちゃんのシャンテルはちゃんと字が読めた。流石に妹のベリルは読めないのでお姉ちゃんが読んであげるみたいだ。偉いにゃんね。


 それからは三人でのんびりまったり過ごして、おやつに夕食にお風呂、そしてまた絵本を少し読んで、おネムの時間になった。


 シャンテルとベリルが寝室に行った後は、工房でアーチャー魔法馬商会で貰った魔法馬のジャンクを修復する。

「にゃ?」

 魔法馬じゃない破片が混ざっていた。

「これは、魔法鶏にゃん」

 修復して再生すると褐色のガラス細工みたいな鶏が動き出す。

 そしてポコッと卵を産んだ。

「にゃあ」

 それともう一つ魔法馬じゃないモノが混ざっていた。

「これはゴーレムにゃん?」

 再生されたそれは身長一八〇程度で、真っ白でデフォルメされたデッサン人形みたいな形をしてた。

 こんなものですら現在ではロストテクノロジーに分類されているっぽい、たぶん新規には生産されていないのではないだろうか。

 魔法鶏とゴーレムにエーテル機関を移植してみた。

 うん、相性がいいし性能が一気に上るにゃんね、これでアーティファクト級の遺物に進化したわけだ。

「悪くないにゃん」

 満足したオレはリビングに戻って布団に転がった。


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