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開戦二日目にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年一〇月十五日


 開戦二日目。

「落ちてくる鉄球以外は、いい天気にゃんね」

 毎回反撃されて身ぐるみ剥がされてるのに懲りないヤツらだ。

「にゃあ、直ぐに反撃にゃん!」

 魔法使いを本気で使い潰すつもりなのだろうか?

「お館様、いまの鹵獲品に洗脳系の魔導具が混じってたにゃん」

 猫耳から報告が上がった。

「にゃあ、魔力増強剤に洗脳系の魔導具まであるとなると魔法使いが自分の意志で戦争に参加してるのかも怪しくなって来たにゃんね」

「お館様、これはウチの推測だけど、敵は魔法使いだけを使ってるんじゃないように思えるにゃん」

 元宮廷魔導師でカトリーヌの猫耳リーだ。

「どういうことにゃん?」

「魔力増強剤にゃん、これを使って普通の人間をエーテル機関の様に使う方法があるにゃん」

「マジにゃん?」

「にゃあ、簡単な生活魔法を使える人間をまとめて薬を使うにゃん、そして魔導具を介して魔力を吸い上げると下級の魔導師でも上級魔導師並の魔法が撃てるにゃん」

「にゃお、それはオリエーンス連邦の魔法にゃん?」

「残念ながら現代魔法にゃん、一〇〇〇年前に作られたにゃん」

「現代魔法もエグいのがあるにゃんね」

「にゃあ、そうでも考えないとこの魔力バカ食いの鉄球の雨はおかしいにゃん」

「すると鉄球は直ぐに止めるのがベストにゃんね」

「にゃあ、あくまで推測だけど、やって損はないはずにゃん」

「了解にゃん、今後は即反撃で黙らせるにゃん」

「にゃあ、ウチの予想が当たってたらお館様のおかげで、エーテル機関代わりにされていた人たちも命を落とさなくて済むにゃん」

「オレの手柄じゃないにゃん、皆んなの協力があってできることにゃん」

「にゃあ、お館様が可愛いこと言ってるにゃん」

 リーにいきなり抱っこされた。

「「「にゃあ、ウチも抱っこするにゃん!」」」

 猫耳たちが集まって来た。

『『『オ館様ヲ抱ッコニャン!』』』

 猫耳ゴーレムたちも参戦して朝から思い切り揉みくちゃにされた。

「「「あたしも!」」」

 更にチビたちも加わった。



 ○リーリウム州 廃道


「出発するよ!」

「「「にゃあ!」」」

 リーリの号令でトラックの車列が猫ピラミッドの前を出発する。

 露天風呂があった猫ピラミッドの背中もいまは半透明の天井が覆って滑らかなラインの胴体になっていた。

 手足も尻尾もあるので、いまは寝そべっている巨大な半透明なピンク色の猫のオブジェでピラミッド感は皆無だ。猫ピラミッドは最初からピラミッド感ゼロだったか。

 猫ピラミッドは分解して格納する。

『『『イッテラッシャイニャン!』』』

 トンネル経由で移動してきた二〇〇体ちょっとの猫耳ゴーレムたちが見送ってくれる。

「先に行ってるにゃん!」

 オレはベンチシートに立ち上がって手を振った。

『『『ニャア♪』』』

 朝日を浴びて輝く拠点を後にし、オレたちは戦場を目指す。

 見送ってくれた猫耳ゴーレムたちはまたトンネルでの移動になる。次の野営地で合流する予定だ。

「お館様、今日も八〇〇キロぐらい進むにゃん?」

 運転席の猫耳に聞かれた。

「にゃあ、その位で頼むにゃん」

「了解にゃん」

『全車に告げるにゃん、本日の走行ノルマは八〇〇にゃん、ウチらの命に代えても死守するにゃん!』

 運転席の猫耳が全車に念話を飛ばした。

『『『にゃあ!』』』

「にゃあ、そこまで厳密じゃなくていいにゃん」

「冗談にゃん」

「にゃお、全然そう聞こえないにゃん」


 天気にも恵まれトラックの車列は順調に距離を伸ばす。風景は幻想感のないただのヤブの中を入る。獣はいるようだが車体のデカい一〇〇台のトラックに挑んで来る命知らずの獣はいなかった。プリンキピウムの森の獣とは違う。


 荷台でチビたちが埋もれてるクッションの海が楽しそう。でもオレは助手席で我慢してる。今日はスポンジじゃなくてクッションだ。

「マコトもおいでよ! これ面白いよ!」

「ミンクも楽しいの!」

 リーリとミンクは我慢なんて妖精の辞書にはないので、もうクッションに潜り込んで大騒ぎしてる。

「「「おやかたさま!」」」

「「マコトさま」」

 チビたちもオレを呼ぶ。

 いくら六歳児でも進軍する猫耳四〇〇人と八〇〇体の猫耳ゴーレムの命を預かる総司令官が遊び疲れて寝てしまうなどと失態を繰り返すわけにはいかないのだ。

「にゃ!?」

 オレを抱っこしている猫耳に持ち上げられていた。

「にゃー」

 脇の下から持ち上げられると勝手に声が出る。

「まだ、時間はあるからお館様は遊んでいていいにゃんよ」

「にゃ~!」

 そのまま荷台に放り投げられた。

 ポスっとクッションに埋まる。

「にゃお」

 いくら六歳児のナリとは言え、もと三九歳の新車ディーラーがそうそう我を忘れてクッションで遊ぶなんてことは……。

「にゃ!? これは低反発クッションにゃん!」

 おお、ゆっくりと身体が沈んで行く。

「にゃあ、これは最高にゃん!」

 低反発クッションにどこまでも沈んで行った。



 ○リーリウム州 廃道脇


「お館様、お昼ごはんの時間にゃん」

 またもや猫耳に抱き上げられて目を覚ました。

「にゃ!?」

 午前中から寝てしまった。

「オレとしたことがクッションの魔力に抗えなかったにゃん」

「にゃあ、ウチらも荷台に乗ってた連中は八割やられていたにゃん」

「これなら炬燵にしても同じだったにゃん」

「「「炬燵にゃん?」」」

 猫耳たちは情報だけ与えられてもピンと来ないらしい。

「にゃあ、これにゃん」

 道端に四畳半の畳敷きの小上がりと炬燵を出した。

「靴を脱いで入るにゃん」

 小上がりによじ登って炬燵に入る。

「にゃあ、ふかふかの敷布団もポイントが高いにゃん、それと座椅子代わりにあのクッションを出すと」

 特大ビーズクッションに埋もれるオレ。

「にゃあ、戦争とか超面倒臭くなって来たにゃん」

「お館様が戦う前から厭戦気分満点になってるにゃん」

「ウチも試してみるにゃん」

「「「にゃあ、ウチらもにゃん!」」」

 猫耳たちがぎゅうぎゅうに入って来た。

「このお館様との密着具合は評価に値するにゃん」

「にゃあ、でも、無防備過ぎて落ち着かないにゃん」

「本来、屋外で使うものじゃないから無防備なのは当然にゃん」

「にゃあ、ウチもお館様を抱っこしたいにゃん」

「にゃお、オレの足を引っ張るんじゃないにゃん!」

 炬燵の中を通って向こう側に引っ張り出された。


 天気のいい昼間とあって、まだそこまで寒くなかったので残念ながら炬燵の反応はそれほどでも無かった。



 ○リーリウム州 廃道


 午後はまた助手席に戻ってトラックの車列を出発させる。

 風景は野っ原に変わった。

 土地は何処までも平らでマナの濃度が低いから街を作るには良さそうな場所だが、その他が何も無かった。

 人も居ないし仕事もない。

 かつてこの辺りに大きな街が有ったって言っても誰も信じないだろう。

 精霊情報体の記録では一万年前まで、ここに大都市が有ったのだ。

「にゃあ、ここまで跡形も無くなるものにゃんね」

 一人呟く。

 少しでも何か残ってればと思うのだが、オレの探査魔法には人工物がまったくヒットしなかった。一万年の時を経てるとはいえ、ここまで綺麗に消せるものなのだろうか?

 ここでいったい何があったのだろう。

 想像を超える大規模な魔法が発動されたのだろうか?

 消された?

 それとも自ら消し去った?

 興味は尽きない。


『マコト、いま大丈夫?』

 アルボラの領主カズキ・ベルティから念話が入った。

『にゃあ、大丈夫にゃんよ、そっちの情勢はどうにゃん?』

『こっちは距離があるからね、特に変わりはないよ、ユウカの情報だけど王都はかなりドタバタしてるみたいだね』

『近くで戦争が始まったんだから仕方ないにゃん』

『いや、それよりも魔獣大発生の噂が広がってるんだよ。それを引き起こしかけた王宮の対応のマズさも囁かれてるみたいだね』

『にゃあ、魔獣大発生の危機は去ったわけじゃないにゃんよ、これからが頑張りどころと違うにゃん』

『どうなんだろう、情報が集まってる割に王宮はいまだにまったく動こうとしないから、焦れてる地方の貴族も多いみたいだよ』

『戦争中だからと違うにゃん?』

『王宮も魔獣が現れた三つの州のいずれも戦争の当事者じゃないよね、だから言い訳には使えないんじゃないかな』

『言われてみるとそうにゃんね、にゃあ、法衣貴族の群れている王宮はともかく王様の腰が重いのはどうしてにゃん?』

『権力を使うことを恐れてるんだろうね、自分の判断一つで多くの人の運命が変わってしまうのだから』

『にゃあ、いろいろ考えてるにゃんね』

『それはボクの想像であって、実際は貴族派の領地を救済するつもりは、最初から無いんじゃないかな? 実質的な統治権を失ってるに等しいわけだし』

『にゃお、それも有りそうにゃん』

『それで何もしなかったら事態は悪化するだけなのにね、アーヴィン様にも困ったものだよ、動かすのはマコトじゃなくて国王だろうに』

『にゃあ、今回の戦争に関してはオレが言い出したことにゃん』

『いや、そこまで事態を悪くした責任は否めないよ、いくら敵が狡猾だったとは言え、何も対策を立てなかったのは完全な失策だよ』

『そうにゃんね』

『今回の件、王室の権威の失墜に加えて、自らの手で強力な対抗勢力を作ってしまったのが痛いね』

『貴族派の他にまだ何かあるにゃん?』

『マコト派だよ、このところ一気に影響力を増してるよ』

『にゃお、オレはマコト派なんて作った憶えはないにゃん』

 猫耳たちがそんなことを言ってはいたが。

『マコトがそう言ったところで既に派閥は形成されてるんだよ、でも問題はそこじゃないんだ』

『にゃ?』

『十五領地の領有でマコトには革命権が与えられるんだよ』

『にゃあ、オレの領地はギリギリ十四にゃんよ、だから問題ないにゃん』

『ついさっきまではね』

『にゃ?』

『クァルク州、オーリィ州、アブシント州の州都が魔獣の侵攻で落ちたそうだ』

 その情報まではまだ入って来ていない。

『州都が落ちたにゃん?』

『そう、いずれの領主一族も脱出する間も無く居城と運命を共にしたそうだ』

『にゃお』

『現在、クァルク州、オーリィ州、アブシント州は領有者無しの状態になってる』

『待っていればそのうち魔獣も森に帰ると違うにゃん?』

『マコト、それ本気で言ってる?』

『にゃあ、かなり希望的な観測にゃん』

『あれは間違いなく近いうちに魔獣の森に沈むね』

『飛び地じゃ済まないにゃんね』

 まさか魔獣が州都の防御結界を破るとこまで侵攻していたとは。反乱軍とやりあってる場所だけでは済まなかったか。

『二〇万人以上の難民が予想される中、フェルティリータ連合は境界を接する境界門を閉鎖したそうだ』

『何でにゃん?』

『理由は反乱分子の流入阻止だよ、隣接してる他の貴族派の領地もこれに倣う方針の様だ。本音は食糧事情の更なる悪化を恐れたんだろうね』

『酷いにゃんね』

『いや、ボクだって同じ状況なら同じ措置を取るよ、他領の人間の為に自領の人間を犠牲にするなんて有り得ないから、しかも反乱を起こした連中ではね』

『ごめんにゃん、オレも考え無しだったにゃん』

『いや、マコトはいいんだよ、受け入れてもちゃんと養える力を持ってるんだから』

『にゃあ』

『それで、マコトの領地ヌーラの一部がアブシント州に隣接してるよね?』

『にゃあ、地図上ではそうなるにゃん』

 実際はヌーラの緩衝地帯とアブシント州も森が接してるだけで、境界門に続く道すら存在しない。境界門も在るはずなのだが、たぶん杭すら無いんじゃないか?

『王宮からの要請なんだけど、マコトのところで難民を受け入れて欲しいそうだ、城壁の中は無理だろうから緩衝地帯にテントでも張ってくれればいいよ』

『にゃあ、緩衝地帯は防御結界も無いから危ないにゃん、それならちょっと距離があるけど州都で預かるにゃん』

『ヌーラの州都ってこと?』

『そうにゃん、サロスのことにゃん』

『サロスって誰も入れない旧男爵領のことかい?』

『にゃあ、よく知ってたにゃんね』

『怪談好きにはわりと有名だよ』

『怪談扱いにゃんね』

『こっちの怪談は全部本当の話だから』

『それも怖いにゃん』

『つまり、サロスは入れるわけ?』

『にゃあ、結界を解いたから入れるにゃん、城壁の外にあって便利だからヌーラの州都にすることに決めたにゃん』

『ああ、あそこも一応ヌーラだったね』

『そうにゃん、区画整理も終わったから二〇万でも三〇万でもイケるにゃん』

『ではクァルク州、オーリィ州、アブシント州の領有をマコトに移すよ』

『にゃ!? だから何でそうなるにゃん?』

 エマに根回しは許可したが領有までは聞いてない。

『戦争のせいだよ、マコトのところの猫耳が一人でも越境するとフェルティリータ連合から攻撃できるんだ』

『にゃあ、それは知ってるにゃん、つまりオレが領有するとそれがなくなるにゃん?』

『そういうこと、マコトだって救助に入った猫耳の娘が殺されたりしたら後悔するだろう?』

『にゃあ、そんなことをされたらフェルティリータ連合ごと魔獣の森に沈めるにゃん』

『だから人類の為だよ、マコトだって魔獣の大発生を阻止するつもりだったんじゃないの?』

『にゃあ、そうだったにゃん』

 危なく目的を忘れるところだった。

『戦争中はクァルク州、オーリィ州、アブシント州とフェルティリータ連合間は不可侵になるから、マコトもそっちから攻撃しちゃダメだからね』

『にゃあ、わかったにゃん』

『では、現時点を以てクァルク州、オーリィ州、アブシント州はマコトの領地になったよ、これで公爵に陞爵も時間の問題だね』

『ちょ、ちょっと待つにゃん、何でオレが公爵になるにゃん!?』

 公爵ってめちゃくちゃ高い地位のはずだ。ぽっと出の六歳児が授爵じゅしゃくする地位ではない。

 最初の騎士の位からしてそうだが。

『革命権の所有者は王子王女以外は、自動的に公爵になるんだよ』

『にゃお、そんなルール初めて知ったにゃん』

『普通は知らないよね』

『にゃあ、普通は革命権なんて持たないにゃん』

『これから通信の魔導具でクァルク州、オーリィ州、アブシント州の三州の領民にヌーラに向かうように指示を出すよ』

『にゃあ、わかったにゃん、こっちも受け入れの準備をするにゃん』

 それを目的でエマも動いていたはずなのだが、余計な革命権だの公爵に陞爵しょうしゃくだの抱き合わせで押し付けられてしまった。

『ところで何でカズキが仕切ってるにゃん?』

『アーヴィン様に頼まれたんだよ、中立派に分類されてるボクならあちこちに連絡を入れても波風は立たないからね』

『オレが革命権持ちの公爵になったら、余計に王宮の法衣貴族に警戒されるにゃんね』

『そこは心配いらないと思うよ、法衣貴族の中にもマコト派に擦り寄りたいヤツらがたくさんいるからね』

『オレにすり寄るにゃん?』

『当然だよ、マコトの力を知れば断然、優良株だってわかるからね、いまの時期マコトと敵対してるようでは貴族としての資質に欠けてると言わざるを得ないな』

『随分と手厳しいにゃんね』

『事実だよ、貴族はある意味プリンキピウムの森よりも危険な場所にいるからね』

『王宮は随分と危険にゃんね』

『獣と違って人間は欲深いからね、ああ、それからこれは未確認情報だけど、フェルティリータ連合内でも魔獣の被害が出てるらしいよ』

『にゃ、マジにゃん? 連合の領内に魔獣の森は無かったはずにゃん』

『情報によると遺跡の発掘現場が襲われたらしいから、魔獣を掘り出したんじゃないかな? 珍しい事例ではないよ』

『にゃお』

 確かに遺跡に魔獣がいるのは珍しい事案じゃない。

 発掘中の遺跡周辺は部外者の立ち入りが厳しく禁止されており、犯罪ギルドの情報網では把握できない事案だ。

『それと関係あるのか不明だけど、フェルティリータ連合は本日の日没から十七日の日の出までの休戦を打診してきてるよ』

『にゃあ、本当に魔獣かどうかはともかく、不測の事態が発生しているにゃんね』

『ああ、間違いないね、マコトはどうする?』

『にゃあ、休戦は何が禁止になるにゃん?』

『進軍と戦闘行為だね、それ以外の陣の構築や補給は自由だよ』

『了解にゃん、こちらも受け入れるにゃん』

『わかった、また連絡を入れるよ』

『にゃあ、わかったにゃん』

 念話を終了する。


「カズキと念話しただけで領地が増えたにゃん」

「お館様が公爵様とは大出世にゃん」

「まだ決定じゃないにゃん、それに全然嬉しくないにゃん、エマの根回しが効きすぎてるにゃん」

「にゃあ、魔獣の森に沈みかけの領地と領民全部ではそうにゃんね」

「公爵になったら面倒事が増えまくりそうにゃん」

『お館様、ウチも聞いたにゃん』

 王都の拠点にいるエマから念話が入った。

『にゃあ、領地とかはウチも予想外だったにゃん』

『オレの領地になったから、すぐに行動を開始していいにゃんよ』

『お館様には感謝にゃん』

『オレたちが介入するんだから、被害は最小限に抑えて欲しいにゃん』

『最善を尽くすにゃん、まずはアブシント州とヌーラの境界からサロスまでの道路の整備と避難民の受け入れを開始するにゃん』

『頼むにゃん』

『準備は既に整ってるにゃん』

『クァルク州、オーリィ州、アブシント州の守備隊と騎士団の人間にも領主権限で協力を要請するといいにゃん』

『お館様、逃げない人間はどうするにゃん?』

『好きにさせていいにゃん』

『犯罪奴隷はどうするにゃん?』

『回収して魂の浄化にゃん』

『犯罪奴隷に相当する犯罪者はどうするにゃん?』

『オレたちの管理下にある犯罪ギルドの構成員以外は同じく回収にゃん』

『にゃあ、かしこまりにゃん』

『お館様、魔獣は退治していいにゃん?』

 別の猫耳からも念話が入った。

『にゃあ、魔獣は見つけ次第、殲滅するにゃん、クァルク州、オーリィ州、アブシント州それぞれのマナの濃度にも注意にゃん』

『了解にゃん!』

『ピンポイントで魔獣が州都を襲った理由も知りたいにゃんね』

『にゃあ、それは時間が掛かりそうにゃん』

 エマが返事をする。

『合わせて調査も頼むにゃん』

『了解にゃん』

『『『……』』』

 魔法蟻たちからも念話が入った。

『にゃあ、トンネルにゃん?』

 魔法蟻たちはヌーラ経由でクァルク州、オーリィ州、アブシント州の各州都に向けてトンネルを掘りたいらしい。

『了解にゃん、トンネルの防御結界は魔獣の森並みで行くにゃんよ』

『『『……』』』

 魔法蟻たちが右前脚を挙げて口をカチカチさせた。


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