ニエマイア・マクアルパインにゃん
○帝国暦 二七三〇年一〇月十二日
○旧男爵領 エイリー拠点 地下
日付が変わった頃、オレたちはエイリー拠点の地下にいた。
「準備が出来たにゃんね」
目の前にはヤク中の王都守備隊の一〇人と自称黒幕の宰相ニエマイア・マクアルパイン、それに昨日電撃で仕留めた暗殺系魔法使い五人の入った合計十六箱が並べてある。なかなかバラエティに富んだラインナップだ。
「魂の浄化と修復が完了にゃん」
「「「にゃあ」」」
猫耳たちが頷く。
「にゃあ、おまえら目を覚ますにゃん!」
箱が消え去り、その中を満たしていた液体エーテルも消えて裸の猫耳たちだけが残された。
「「「にゃ?」」」
オレの声に目を覚ました新入りの猫耳たち。
「「「にゃあ、お館様にゃん!」」」
「にゃあ、おまえたちは今日からオレの仲間にゃん」
「「「にゃあ♪」」」
新入り歓迎のオレの抱っこ会が始まると知って、他の拠点にいる猫耳たちまで集まって来る。
入れ代わり立ち代わり二〇〇〇人近い猫耳に抱っこされてるうちに夜が明けた。
新入りを交えてオレたちは朝食を食べながら話し合う。
「拾えたニエマイア・マクアルパインの記憶は全体の七割にゃんね」
「にゃお、お館様、ウチらは何者かに操られていたにゃん?」
元ニエマイア・マクアルパインの猫耳エマが驚きの表情を浮かべた。
「にゃあ、その可能性が非常に高いにゃんね、宰相の記憶がここ一年あやふやなのは、特異種もしくは高位の魔法使いに精神干渉を受けた証拠にゃん」
「ウチは誰にやられたにゃん?」
「にゃあ、拾えた記憶の中にはないにゃんね」
「ウチの記憶には姫様や王太子殿下、それにハリエット様に毒を盛らせた情報がないにゃん、ただ認識はしてたにゃん」
「知ってはいたにゃんね?」
「にゃあ、そうなるにゃん」
「宰相はフェルティリータ連合はエドモンドを使って革命の準備をしてたにゃん?」
「にゃお、まったくの濡れ衣にゃん」
エマは首を横に振った。
「セザールが主導してる可能性は?」
「それもあり得ないにゃん」
また首を横に振って否定した。
「せっかく用意した王宮の仕事を蹴って研究に没頭してるあの遺跡バカが、いまさら権力を求めて革命を画策するなんて悪い冗談にゃん」
エマは肩をすくめた。
「にゃあ、フェルティリータ連合の中の領主たちはどうにゃん?」
「ウチが知る限りそんな馬鹿なことをする人間は居なかったはずにゃん、ただこの一年のことは不確かにゃん」
「フェルティリータ連合と貴族派が力を合わせれば、平時でも革命は可能だったと思うにゃん、それは画策しなかったにゃん?」
「お館様、フェルティリータ連合と貴族派は王国のバランスを取る為に存在するにゃん、国を割る内戦を予防するための予防装置にゃん」
「にゃあ、情報に依ると今回ノリノリの貴族派の領主もいるらしいにゃん、そいつらが精神干渉を受けてる可能性は低いと思われるにゃん」
「一〇〇〇年も経つといろいろ綻びが出るものにゃん」
「にゃあ、それと問題なのは国王の統治能力にゃん、それとエドモンド殿下もこの期に及んで遺跡を掘りに行くとは、流石に想定して無かったにゃん」
「「「にゃお」」」
猫耳たちかもブーイングだ。
「今度会ったらヤツの目の前で遺跡を爆破してやるにゃん」
「「「にゃあ!」」」
「お館様、そもそも今回の件も本来は、もっと早く陛下が近衛軍と騎士団それに宮廷魔導師を率いて打って出るべきだったにゃん」
「そうにゃんね、宰相を捕まえると同時に攻めれば、戦闘ゴーレムの布陣が完成する前にフェルティリータの州都カダルを落とせたかもしれないにゃん」
戦闘ゴーレムが出てきても近接戦闘なら近衛の騎士といい勝負だ。それに宮廷魔導師がいるならいきなり串刺しも無いはず。
「ただ、魔獣の発生はなんとも言えないにゃん」
「にゃあ、そうにゃんね、魔獣を引き寄せるはっきりとした条件がわからない以上、どうしようもないにゃん」
「結局、陛下は手をこまねいて六歳児のお館様の尻馬に乗ったにゃん、これは後に大きな影響をもたらすにゃん」
エマが断言した。
「影響にゃん?」
「お館様がフェルティリータ連合との戦争に勝利すれば、戦後形成される最大派閥マコト派が王国を動かすことになるにゃん」
「にゃ?」
「お館様、フレーメン反応を起こしても事態は変わらないにゃん」
「にゃお」
「少なく見積もって国王派と中立派のうち七割、貴族派は中核のフェルティリータ連合を押さえられてしまうので八割がマコト派になるにゃん」
「本当に少なく見積もってるにゃん?」
「にゃあ、既に王国の三分の一の地域では、お館様の小麦無しでは立ち行かない状態にゃん」
「にゃ、状況はそこまで酷いにゃん?」
「お館様が基準にしている降臨の地アルボラ州は、カズキ・ベルティ伯爵が身銭を切って小麦を安価で領内に流通させてる特別な場所にゃん」
「にゃあ、確かにアルボラが普通だと思ってたにゃん、しかも小麦は質の割にちょっと高いと思ってたにゃん」
「領民のためにそこまで身銭を切る領主はそんなにいないにゃん、そもそもお金がないにゃん」
「にゃあ、そういうものにゃんね」
「その上を行くのがお館様にゃん、他の領地にも小麦の値段を安く流通させてくれたお陰で今年は餓死者が出ないで済んでる領地が多いにゃん」
「にゃお、王国でも毎年餓死者が出てたにゃんね」
もうちょっとマシかと思っていたが、どうやらオレが思っていた以上に行き詰まってる領地があったようだ。
「貴族派の中でも国王はともかくお館様と事を構えることを躊躇してる領主は少なくないはずにゃん」
「そこまで酷いにゃん?」
「にゃあ、特にここ数年、国内の農業は不作続きの上に獣の被害が増してるにゃん、魔獣の被害も実は近年大きな被害を出してるにゃん」
「にゃお、魔獣の被害はあったにゃんね」
「辺境の村が全滅しても王宮にまで情報が上がるのに何ヶ月も掛かるにゃん、それに魔獣の被害は基本的に隠蔽されるから一般市民はまず知りようがないにゃん」
「隠蔽されるにゃん?」
「昔から、王国軍に来られると困るから隠蔽するにゃん、あいつらが来たら被害が拡大するというのが世間の常識にゃん」
「昔からにゃん?」
「にゃあ、そうにゃん、実は昔からにゃん、正規軍の一部がまともになったのはここ一〇年てところにゃん、それ以前は丸ごと新軍みたいなものだったにゃん」
元宰相ニエマイア・マクアルパインだったエマの証言だから間違いない。
「以前の王国軍はそんなモノだったにゃんね」
「駐屯地にいる七万のうち五万人は日々の仕事が土木作業だったにゃん、道路や城壁の補修に駆り出されていたにゃん、その上がりが王国軍の主な収入にゃん」
「以前はキャリーとベルぐらい使える兵士はいなかったにゃん?」
「お館様のお友だちのキャリーとベルは特務中隊のエリート隊員にゃん。あれは対人戦闘ではこの国でもトップクラスにゃん」
「にゃ、ふたりはエリートだったにゃん?」
「そうじゃなかったらあの歳の小娘が自分の銃を持てるわけがないにゃん、それに長期休暇でプリンキピウムで狩りが出来る腕前にゃん、冒険者のランクだとBぐらいになるはずにゃん」
「にゃあ、銃はクレア少尉から安く譲ってもらったと聞いたから納得してたにゃん」
確かに中古でもまともな銃は大金貨一枚は下らない。弾が出ないのでも大銀貨四~五枚する。
「でも、対人戦闘にゃんね」
「それを言ったらお館様、王国軍は昔から対魔獣のまともな訓練なんてやってないにゃんよ」
「にゃ?」
「特務中隊は拠点制圧、一般兵は対騎士用の戦闘訓練にゃん、王国軍には魔獣を狩るノウハウも実力も無いにゃん」
「にゃあ、王国軍憲章は完全に無視にゃん?」
「あんなものを信用している領主は誰もいないにゃん、陛下の一存で簡単に書き換えられるにゃん」
「聞いてた話より簡単そうにゃん」
「実は既に書き換えられてるにゃん、いつでも公布できる状態にゃん」
「にゃあ、そうだったにゃんね」
「改革を強行したいまは亡き王弟クリフォード・ベッドフォード公爵も狙いは王権の強化だったにゃん」
「ハリエットのお父さんにゃんね、エマが暗殺したにゃん?」
「にゃー! ウチじゃないにゃん! あの頃は誰にも操られてないにゃん、主席魔導師のエドガー・クルシュマンを初め、近衛の騎士まで投入して調査したにゃん、でも暗殺を臭わせる証拠は何も見付からなかったにゃん」
エマは思い切り否定した。
「その主席魔導師の犯行と違うにゃん?」
「にゃお、それはないにゃん、エドガーはクリフォード様の親友で国軍の改革にも協力していたにゃん、暗殺する動機がないにゃん」
「にゃあ、その時点でエドガー・クルシュマンが操られていたらどうにゃん?」
「ウチらではどうすることも出来なかったにゃん」
「それもまた可能性の一つにゃん、もしくは別の宮廷魔導師にゃんね」
「宮廷魔導師限定にゃん?」
「ハリエット様のエーテル器官を直に細工した痕跡から見ても、尋常じゃない力を持った魔法使いが絡んでるのは間違いないにゃん、例えば文官が強い外向きの魔力を持ってたら怪しまれたはずにゃん」
「王宮に参内している魔法使いは、一括して宮廷魔導師にまとめられてるにゃん、魔法使いなら宮廷魔導師にゃん」
「にゃあ、オレたちが探査したところ王宮内の宮廷魔導師の中にそれらしい人物はいなかったにゃん、実行犯は既に王宮には居ない可能性が高いにゃん」
王宮内で探査魔法を遠慮なしに何度か打ってるが、黒幕に相応しい魔力を持つ人間は探り当てる事ができなかった。代わりに封印図書館の場所は特定したけどな。
「ウチが捕まる前に姿を消したにゃんね」
「実は一人怪しいのがいるにゃん」
「にゃ?」
「次席宮廷魔導師マリオン・カーターにゃん」
「にゃお、お館様、まさか彼が黒幕にゃん!?」
「エドモンドがセザールに連れ出されたことを報告した後に消息を断ったにゃん、いまはエドモンドと共に所在不明にゃん」
「にゃお」
「まずはフェルティリータ連合に乗り込んで特異種がいるのかいないのか確認するにゃん、エドモンドとマリオンも操られて無ければ保護するにゃん」
「お館様、敵が強すぎたらどうするにゃん?」
「にゃあ、戦闘ゴーレムや武器をかっぱらえるだけかっぱらって逃げるにゃん、その後は領地に戻って籠城にゃん」
「了解にゃん、総力戦はやらないにゃん?」
「にゃお、やるならオレと黒幕がサシで勝負にゃん、その方が話が早いにゃん」
「「「それは許可できないにゃん!」」」
「にゃ」
猫耳たちに反対された。
「わかったにゃん、無茶はしないにゃん」
「「「にゃー」」」
黒幕を特定しても情報無しで突っ込むのは危険か。
「にゃあ、それで旧男爵領に潜入していた魔法使いにゃんね、全員が宮廷魔導師だったとは驚きにゃん」
「にゃあ、宮廷魔導師と言っても宮廷からの命令で動いているのはほんの一部にゃん、ほとんどはウチらみたいに個別に仕事を請け負うにゃん」
元魔法使いの新入り猫耳のルナが代表して答えた。
「今回の仕事は破壊工作にゃん?」
「にゃあ、潜入と暗殺にゃん、ウチらは汚れ仕事が専門にゃん」
「暗殺のターゲットはオレにゃん?」
「そうにゃん、お館様がターゲットにゃん、お館様が死ぬと今回の紛争はフェルティリータ連合が勝利するにゃん」
「にゃお、暗殺は有りにゃん?」
「バレばければ有効にゃん、例えウチらを捕まえても雇い主を知らないから、勝利を無効化は出来ないにゃん」
「つまりルナも知らないにゃんね」
「みゃお、申し訳ないにゃん」
「仕方ないにゃん、クライアントはフェルティリータ連合の関係者で決まりと違うにゃん?」
「にゃあ、これはなんとも言えないにゃん、お館様の登場で既得権益を失った貴族や商会は多いにゃん」
「「「にゃお、潰すにゃん」」」
猫耳たちがルナの言葉に声を揃えた。
「ルナたちを仲間に加えたおかげで、宮廷魔導師の裏の顔が見えて来たのは収穫だったにゃん」
「にゃお、その点ウチらは何の情報も持って無いにゃん」
今回確保した元王都守備隊員の猫耳ナナだ。
「全員が魔力増強剤でほぼ廃人では仕方ないにゃん」
猫耳たちが記憶の抜き出しを試みたが、ほとんどすくい取ることは出来なかった。いずれもゆすりたかりの常習犯のチンピラ隊員だったので、思想的な背景も無く、騙されて暗殺犯に仕立てられたのだろう。
「薬の使い方と暗示、それにエーテル器官に刻んだ爆裂の刻印と術者の隠蔽と高位の魔導師が絡んでいるのは間違いないにゃん、それが読み取れただけでも収穫にゃん」
『『『ニャア♪ オ館様トオ風呂ニャン』』』
猫耳ゴーレムに抱き上げられた。
「にゃあ、次は猫耳ゴーレムとお風呂に入る会なので、これで失礼するにゃん」
「「「にゃあ」」」
○旧男爵領 エイリー拠点 厨房
猫耳ゴーレムとのお風呂会の後は、リーリを頭に乗せて拠点の厨房でお昼ご飯作りに勤しんでる。
『お館様、こちら研究拠点にゃん』
『にゃあ、お疲れにゃん、オレにゃん』
手を動かしながら念話する。
『各拠点の防御結界の更新終わったにゃん』
『にゃあ、お疲れにゃん』
『奇襲に備えて、大公国の拠点も含めて強化してるにゃん、特に式神対策にも万全を期してるにゃん』
『にゃあ、間違ってもオレたちの騎士たちやプリンキピウムの人たちに被害が出ないようにして欲しいにゃん』
『猫耳と猫耳ゴーレムを派遣してるから魔獣が現れても対応可能にゃん』
『にゃあ、頼んだにゃん』
念話をしながらフライパンを操って卵焼きを作り続ける。
「マコト、味見してもいい?」
「にゃあ、いいにゃんよ、掛けるのはケチャップでいいにゃん?」
「うん、それでいいよ」
リーリの為に卵焼きを皿に載せてケチャップを掛けてあげる。ちなみにケチャップとウスターソースは猫耳たちが商会に卸している。かなりの人気商品らしい。
「美味しそうだね」
「にゃあ、美味しいと思うにゃん」
妖精はスプーンを魔法で操って口に運ぶ。
「美味しい! 卵焼きのおいしさ再発見だよ!」
「ミンクも美味しいの」
「……にゃ?」
リーリの隣にもう一人妖精がいた。
「にゃあ、そこにいるのはリーリの友だちにゃん?」
「この娘は、ミンクだよ、この前、王宮で久し振りに会ったから連れて来ちゃった」
「ミンクなの」
リーリの後ろに隠れて顔だけ出して、もじもじしながら自己紹介してくれる。リーリより小さくて幼い感じがした。着てるのは白いワンピースだ。
「にゃあ、オレはマコトにゃん」
「ミンクは知ってるの」
「マコト、ミンクも一緒にいていい?」
「にゃあ、いいにゃんよ、歓迎するにゃん」
「ありがとうなの」
ミンクは、はにかんだ笑みを浮かべた。
「にゃあ、ミンクは王宮に住んでいたにゃん?」
「そうなの、ミンクの好きな美味しい物があるの」
「マコトのところに来たのは正解だよ、王宮より美味しいものがいっぱいあるよ」
「にゃあ、ビュッフェに行って確かめて来るといいにゃん」
「ビュッフェなの?」
「美味しい物がいっぱいあるところだよ!」
「リーリが連れて行ってあげるといいにゃん」
「そうだね! 行くよ、ミンク!」
「うんなの」
リーリはミンクの手を取ると食堂に向かって飛んで行った。
「にゃあ、妖精がふたりいるなんて初めて見たにゃん」
「お館様、引きが強いにゃん」
猫耳たちが寄って来た。
「にゃあ、オレじゃなくてリーリが連れて来たにゃん」
「妖精が妖精を呼ぶなんて聞いたことがないにゃん」
「事実は小説より奇なりにゃん」
「にゃあ、お館様は難しい言葉を知ってるにゃん」
「おまえらだって知ってるはずにゃんよ」
「にゃあ、言われてみると知ってたにゃん、本当は知らないのに実は知ってるのは不思議な感覚にゃん」
「いまのうちだけにゃん」
『お館様、こちらプリンキピウム遺跡観測班にゃん』
プリンキピウム遺跡を監視してる猫耳から念話が入った。
『どうしたにゃん?』
『先ほど遺跡が封印されたにゃん』
『陛下の命令通りにしたにゃんね』
プリンキピウムの遺跡に関しては、元ニエマイア・マクアルパインのエマの記憶にもないので封印しておくのが最善と思われる。
『それがどうも様子がおかしいにゃん』
『どうしたにゃん?』
『王都から派遣された宮廷魔導師たちが慌ててるにゃん』
『何が有ったにゃん?』
『ここからわかるのは、遺跡の防御結界の質が変わったってことにゃん』
『魔導師たちが慌てているってことは、意図していた封印とはかなり違う結果になったっにゃんね?』
『完全排除系の結界になったにゃん、これは遺跡そのものの結界にゃん、にゃあ、魔導師がしくじって起動させたみたいにゃん』
『すると遺跡に誰も入れなくなったってことにゃん?』
『にゃあ、どうもそれっぽいにゃん、にゃ、魔導師のひとりが遺跡に干渉して弾けたにゃん』
視界を共有したところ弾けたと言うか爆発だ。
宮廷魔導師が爆発した。
『跡形もなく消し飛んだにゃん、魂の回収も無理なレベルにゃん、にゃ、もうひとり弾けたにゃん、結界が拡がってるっぽいにゃん』
『オリエーンス連邦系の呪法にゃん、観測班はオパルス前衛拠点まで後退にゃん! 距離を開けての監視に切り替えにゃん!』
『『『了解にゃん!』』』
ただちに観察班の猫耳たちが引き上げる。
これはカズキにも知らせておくべきか。
『にゃあ、オレにゃん』
カズキに念話を飛ばした。
『マコト! いきなり戦争だなんて何やってるんだよ!?』
開口一番いきなりカズキに文句を言われたにゃん。
『そうは言っても、貴族派が攻めてくるのを止めるにはこれぐらいしか思いつかなかったにゃん』
『たしかに貴族派は戦争の準備を進めてるけど、だからってマコトが先頭を切って始めなくてもいいんじゃないかな?』
『にゃあ、オレもそう思うにゃん、でも大規模な内戦は魔獣の大発生を誘発する可能性を否めないにゃん』
『魔獣の大発生ってなに!?』
『にゃあ、なんでカズキが知らないにゃん? オパルスの図書館にも三〇〇年前の領地間戦争で魔獣が大量発生した詳細があったはずにゃんよ』
『いや、ボクは図書館の本に全部は目を通してるわけじゃないから』
『にゃお、だったらちゃんとカズキも確認するにゃん、ユウカだって知ってるはずにゃんよ』
『ユウカは情報屋でもあるから、ボクを一緒にしちゃダメだよ』
『のんびり構えてるにゃんね、実際に大発生が起こったらアルボラだって無事という保証は何処にも無いにゃんよ』
『わかった確認します』
『それとカズキも貴族派の動きがわかるなら教えて欲しいにゃん』
『うん、そっちも調べてみるよ』
『にゃあ、それでここからが本題にゃん』
『えっ、まだ何か有るの!?』
『プリンキピウムの遺跡のことにゃん』
『それだったら、今日辺り近衛が中心になって撤収作業をしてるはずだけど』
『にゃあ、どうも上手く行ってないみたいにゃんよ』
『誰かが小細工したってこと?』
『にゃー、誰かというより遺跡そのものだと思うにゃん、防御結界が人の侵入を拒んでるみたいにゃん』
『プリンキピウムはマコトの知行地なんだから、どうにかしてよ』
『にゃお、遺跡はオレの管轄じゃなくて王宮にゃん、今回の戦争の欲しい物リストにも入ってないにゃん』
『そこはマコトが可愛くおねだりすれば国王もくれるんじゃない?』
『にゃお、なんでそんなに遺跡をオレに押し付けたがるにゃん?』
『いやあ、実はプリンキピウム遺跡は発掘が始まる前にこっそり潜ってるんだよ、武器どころか金目のものが一切ない割に防御関連のトラップがスゴくてね、とんだハズレ遺跡だよ』
『にゃ、マジにゃん?』
『マジもマジ、ダンジョンみたいな通路の先に有るのは高さが軽く一〇〇メートルはある円錐状の大きな地下空間だけで金貨一枚落ちてなかったよ』
『その地下空間がお宝と違うにゃん?』
『確かに地下の深い場所の頑丈で大きな空間だけど、お宝と言うほどでもないんじゃないかな、使いようがないし』
『にゃあ、何の目的で作ったのかはわからなかったにゃん?』
『防御結界の厳重さからすると金庫辺りかな? 中身が綺麗サッパリ無くなってるから廃棄された金庫かもね』
『随分と使い勝手の悪い金庫にゃん』
『ただの地下空間だからね』
『にゃあ、元宰相の言ってた「世界を変える」って言うお題目は何だったにゃん?』
『いや、そんなの王宮から金を引っ張る方便に決まってるよ、あの防御結界を見たら誰だって浮足立つよね』
『にゃあ、するとエドモンド王子もまんまと遺跡に騙されたにゃん?』
『殿下はいい人なんだけど遺跡が絡むと理性のタガが外れると言うか、思考停止するんだよね、今回の件だってそれだし』
既にエドモンド出奔の情報は既に掴んでいる様だ。
『にゃお、エドモンド王子と一緒に逃げた魔導師が一連の黒幕と違うにゃん?』
『え~マリオンがかい?』
『そうにゃん、宮廷魔導師のマリオン・カーターにゃん、かなり怪しいにゃん』
『いや、彼はボクの息子のような存在だから、断じてそれはないよ』
『にゃあ、でも完全なシロにはならないにゃん』
『確かに殿下に同行したのはマズかったね、本当は切り捨てるべきなのに彼は優しいからね、友人を見捨てられなかったのだと思うよ』
『友だちは選ばないとダメにゃん』
『殿下のこともなるべくなら助けて欲しいな』
『オレは殺したりしないにゃんよ、助けるか助けないかの判断は国王の仕事にゃん、でもそのまま連れ帰ったら良くて縛り首にゃん』
『だよね、そうなっちゃうよね』
『カズキが匿うなら連れて来るにゃんよ』
『わかった、預かるよ、ウチの発掘主任にするから』
『うけたまわったにゃん』
ビュッフェを食い荒らした妖精ふたりにイチゴっぽい果物を使ったケーキを一ホール出してあげる。
「リーリとミンクにデザートにゃん」
「「わあ!」」
ケーキにダイブしそうな勢いで飛び付いた。
「美味しい! マコト! このケーキ最高だよ!」
「とても美味しいの、ミンクもうれしいの」
リーリもミンクも喜んでくれたみたいだ。
「マコトのところは最高でしょう?」
「うんなの、リーリちゃんの言ってたとおりなの」
ふたりはおしゃべりしながらどんどんケーキを詰め込んでいく。
自分では思い切り大きく作ったつもりなのだがあっという間にぺろりだった。
「「おかわり!」なの!」
リーリとミンクが声を揃えた。
「にゃあ」
『マコト、いまいいか?』
転生仲間のユウカ・ブラッドフィールドから念話が入った。




