ブルジェ男爵領サロスにゃん
○帝国暦 二七三〇年一〇月〇八日
魔獣の森の横でテントとか魔獣を挑発してるような行為だったが、何事もなく朝を迎えた。マナ変換炉のせいで魔獣が近付けなかったのが正解か。マナが薄くても平気な魔獣は近くにいなかった。
大いなる災いとやらも姿を現さなかったし。歩き回るモノなのかも不明だが。
猫耳ゴーレムたちはお風呂タイムの後に帰って行ったので、またオレと猫耳たちだけで出発だ。
「今日はウチらがお館様と探検するにゃん」
「「「にゃあ!」」」
猫耳たちも選手交代だった。
「まずは朝ごはんだよ!」
リーリ監修のボリュームたっぷりの朝ごはんをしっかり食べてから次々とジープを再生して乗り込んだ。
猫耳ジープの車列はトラブルも無く城壁の改修とマナ変換炉の設置を続ける。
変化のない単純作業で若干飽きて来た。
「にゃふ~」
オレはボンネットの上でクッションにもたれてあくびをしながら、昨日ユウカが切羽詰った感じで教えてくれた話の内容を反芻する。
黒幕が捕縛されたのに新たに内戦の危機とか王国を取り巻く状況はまったく好転していないどころか、危険な方向に転がっていた。
オレに内戦を停める力なんて無いので、ここは王様に頑張ってもらいたい。お飾りでも出来ることはあるはずだ。
屋敷でふんぞり返ってる貴族がどうなろうと知ったことじゃないが、戦闘員以外の人たちが傷付かないよう努力して欲しいにゃんね。いざとなったら両軍の武器をかっぱらうぐらいはやるかもな。
「お館様、この城壁の向こう側がブルジェ男爵領サロスにゃん」
「この辺りだったにゃんね」
借金のカタに危なく娼館に売られそうになっていたエステル・ブルジェの実家だ。なかなかの僻地にゃん。
「にゃあ、出たら最後、中には入れない魔境にゃんね」
「怪奇現象にゃん」
「お館様、原因がわかったにゃん!」
助手席の猫耳が手を挙げた。
「もうにゃん? 三代前の懸案が瞬殺にゃんね」
「原因はヌーラの城壁から防御結界の一部を拝借したからにゃん、部外者が弾かれるのは当然にゃん、サロスの防御結界の暴走じゃなかったにゃんね」
「にゃあ、せこい上に大胆な真似をするにゃん」
「やらかした本人がちゃんと白状しなかったばかりに三代にわたって苦労したにゃん」
「祖父の因果が孫の代まで祟っているわけにゃん」
「お館様、だったらエステルの話だと宮廷魔導師が調査したはずなのに原因がわからなかったというのも変な話にゃんね」
「確かにヌーラの防御結界を流用したのなら、宮廷魔導師レベルなら一目瞭然のはずにゃん」
「ボンクラの宮廷魔導師が派遣されたにゃん?」
「それか、サロスの人間には教えなかったかのどちらかにゃんね」
「宮廷魔導師は、結界を修正しなかったにゃん?」
「ヌーラの防御結界の中には宮廷魔導師も入れなかったはずだから、サロスの中にも入れなかったはずにゃん」
たぶん、ここ数百年はオレたち以外はヌーラの防御結界の中に入っていない。
「中に入らないでサロスの件を修正するとしたら、ヌーラの防御結界を止めてその間に不正改造された部分を撤去する必要があるにゃん」
「にゃあ、お館様それってものスゴく大掛かりと違うにゃん?」
「そうにゃん、オレたちなら簡単だけど、宮廷魔導師が現代魔法のみでやるとしたらヌーラの防御結界の刻印を一度壊すことになるにゃん」
防御結界に一時停止なんて便利機能はない。
「ヌーラの城壁の刻印を丸ごと造り直しなんて、国庫が吹っ飛ぶような金が掛かるにゃんね」
「にゃあ、バカな一族を救うために刻印の作り直しなんてしないにゃん」
「つまり見捨てたにゃんね」
「にゃあ、オレはエステルの兄貴に会いに行くにゃん、おまえらは探検をこのまま続けて欲しいにゃん」
「「「了解にゃん」」」
『オレにゃん、ブルジェ男爵領サロスに付いて登記情報を役所で調べて欲しいにゃん、たぶん過去には存在していたはずにゃん』
王都拠点に念話を送った。
『こちら王都拠点にゃん、お館様はサロスの新情報を掴んだにゃん?』
タイミング良く王都拠点から念話が入った。
『にゃあ、そんなところにゃん、オレはこれからサロスに入るにゃん』
『了解にゃん、登記情報を確認次第、お館様に連絡を入れるにゃん』
『よろしく頼むにゃん』
○サロス領 境界門
オレとリーリは探検隊と別れて護衛の猫耳を三人だけを連れてトンネル経由でブルジェ男爵領サロスの境界門の前に猫耳ジープを乗り付けた。
「にゃあ、ご当主モーリス・ブルジェ殿に面会したいにゃん、こちらはマコト・アマノ侯爵様にゃん」
運転席の猫耳が結界の向こう側にいる門番らしき若者に声を掛けた。
おお、レザーアーマーを素肌に装着してる! ジャック以来ふたり目だ。
「にゃあ、よろしくにゃん」
オレは助手席から立ち上がった。
「こ、侯爵様であらせられますか!? 直ちに主に取り次ぎますので少々お待ち下され!」
随分と古風な言い回しだ。
「にゃあ、ここを通して貰えばオレたちが屋敷まで行くにゃん」
「されど、結界に阻まれます故、何人も領内に人は入ること叶わず、通るはモノだけでござります」
「にゃあ、問題ないにゃん、オレらは通れるにゃん」
『ニャア』
「猫耳ジープも大丈夫って言ってるにゃん」
「左様でございますか?」
戸惑いの表情を浮かべるレザーアーマーの兄ちゃん。
「入るにゃん」
猫耳ジープで開かれたまま朽ちた境界門に通り抜けた。
ヌーラの防御結界なので、マスター登録されてるオレたちは難なく男爵領に入れる。
「おおお、こ、これは何でござるか!」
「にゃあ、ジャックくん、とにかく案内を頼むにゃん」
「拙者、ジャックじゃなくてピエール・ブルジェでござります」
「ブルジェ一族にゃん?」
服装が残念だが、よく見るとエステルに似た美形だ。親戚なんだろう。
「拙者、当家の家老を拝命しておりまする」
家老が門番を兼ねてる辺りで男爵家の窮状が見て取れた。
「にゃあ、それは話が早いにゃん、オレたちはエステルに頼まれて男爵領を見に来たにゃん」
「おお、エステル様でござるか!」
「にゃあ」
「では、当家主にご案内つかまつります、前を走るご無礼お許し下され!」
ピエールはボロボロの魔法馬に飛び乗った。
「ちゃんと走るにゃん?」
猫耳のつぶやきに思わずうなずいた。これまで動いてる魔法馬の中でダントツのポンコツだ。首が斜めってるし。
「おお、意外と走るもんだね」
リーリも感心していた。
○サロス領 ブルジェ男爵邸
ブルジェ男爵の屋敷は古いがなかなか立派だった。
「お館様! お館様! お客人でござる!」
オレたちを応接室に案内するとピエールは主人を呼びに行った。
「何事だやかましい! 当家に客人などあるわけなかろう」
麦わら帽子に野良着姿の美形が入って来た。
「にゃあ、お邪魔してるにゃん」
「おおおっ!」
そんなに驚かなくてもいいと思うにゃん。
「大変ご無礼つかまつった」
男爵家当主のモーリス・ブルジェに土下座する勢いで謝られた。
「にゃあ、いきなり押し掛けたのはオレたちにゃん」
家老と当主の時代劇の様な言葉遣いは三代に渡って鎖国していたからだろうか? その割にエステルは普通の言葉遣いだったけど。
ブルジェ男爵家の情報はエステルに聞いた以外ほとんど持ってない。盗賊にも商会にも相手にされてない忘れ去られた土地だから調べようもなかった。
「にゃあ、まずはエステルの無事をお伝えするにゃん、いまオレのところに預かってるにゃん」
「エステルは元気にやっておりますか?」
「にゃあ、元気にゃんよ」
娼館に売っぱらったのにエステルのことはそれほど心配してない様だ。
まるで王都に留学にでも出した様な雰囲気だが。
「にゃあ、それとサロスの隣のヌーラの領主になったから挨拶に来たにゃん」
「侯爵様自らご足労頂き恐縮至極でございます、されどいかにして当家の結界をお通りになられたのでしょうか?」
「にゃあ、簡単にゃん、サロスの防御結界はヌーラの防御結界をちょろまかして流用してるにゃん」
「な、なんと当家の防御結界がでございますか、それは本当でございますか?」
「その証拠にオレたちが簡単に通り抜けてここにいるにゃん」
「他領の防御結界をちょろまかすなど、そんなことができるのですか?」
「防御結界を外部から消したり削ったりするのは難しいにゃん、でも、拡げるのはさほど難しくないみたいにゃんね」
元に戻すのは大変だけど。
「それを当家が勝手にやったと申されるのですか?」
「ヌーラの前領主である大公家が、ただでさえ金の掛かる防御結界を伸ばしてまで嫌がらせするとは思えないにゃんよ、それなら難癖を付けて潰す方が簡単にゃん」
「確かにその通りかと」
「にゃあ、この問題の迅速な解決には細工の有無の確認がいちばんにゃん」
○サロス領 境界線
ジープと二頭のボロボロの魔法馬でサロスとヌーラの境界線に向かった。
小さいと言ってもど田舎の男爵領だけあって、地図上ではプリンキピウムの一〇倍ほどの面積がある。
元はほぼ全域が農地だったらしいがいまは荒れるに任せている様だ。
荒涼とした風景はエステルから聞いた領民二〇〇人すら本当に居るのか怪しく感じさせる。
ネオケラスだって公称三〇〇〇人が実際には一五〇人だったし。
「にゃあ、ヌーラに越境してるにゃん」
ヌーラの城壁までサロスの塀が伸ばされていた。地面の土が赤茶けた色に変わるので測量するまでもなくわかる。
「そうなのですか?」
「にゃあ、ヌーラは城壁から外周二〇〇メートルが緩衝地帯として空けてあるにゃん」
「お館様、ここに境界石が埋まってるにゃん」
猫耳の一人が塀の一点を指差す。
「にゃあ、ちょうど二〇〇メートルぐらいの位置にゃんね、故意の越境は宣戦布告行為になるにゃんよ」
「お、お待ち下され、当家にそのような意図はございませぬ! ここは拙者の首でお納め下され!」
ピエールは切腹しそうな勢いだが、そんな作法はないようだ。
「わかってるにゃん、やらかしたのは三代前と聞いてるにゃん、何か言い残してないにゃん?」
「『魔導師に騙された』と申していたと亡き父から聞いております」
「防御結界を張った魔導師にゃん?」
「そうでありましょう」
「にゃあ、越境部分はヌーラの結界の影響を受けてるにゃん」
塀を触ると風化したコンクリートブロックみたいにボロボロ崩れる。
「お館様、刻印を発見にゃん」
刻印はヌーラの城壁と交わってる角の部分に建てられた金持ちの庭にある石灯籠みたいな高さ二メートルほどの石塔に隠されていた。
「物理障壁もヌーラの城壁を利用とか徹底してるにゃんね」
「まさか、これがヌーラの城壁だったとは」
いまさらながら絶句するモーリス。
「生まれる前からこうなっていたのでは、疑問に思わないのも仕方ないにゃん」
続けて石塔を検分する。
「これが結界を拡げる刻印にゃんね、にゃあ、これには自動修復が付いてるにゃん、やっつけ仕事に見えるのに凝ってるにゃんね」
認識阻害の刻印まで付与されていたので、まずはそれを壊した。
「こんなモノが前から有ったのですか!?」
「そうにゃん」
「まったく気付きませんでした」
突如、目の前の視界に現れた石塔に愕然とするモーリス。
「にゃあ、お館様、この刻印の魔法式はオリエーンス連邦の形式にゃんね」
「そうみたいにゃんね、これを作った魔法使いはかなりの使い手にゃん」
そして他人の迷惑を顧みず勝手に実験をするあたり、カロロス・ダリを特異種にした魔法使いを彷彿とさせた。
これだけでは同一人物かどうかは判定できないが。
「結界を張った魔導師については何か知ってるにゃん?」
「伝わっているのは『旅の魔導師』の一言だけで、実際に見たのも先々代様お一人のみと聞いております」
「にゃお、かなり怪しいにゃんね、三代前は誰かに恨まれていたと違うにゃん?」
「はあ、かなり横暴な人間だったと伝え聞いております」
「にゃあ、それとケチと違うにゃん?」
「吝嗇の噂は耳にしたことがございます」
「にゃあ、きっと旅の魔導師に『領地が増える上に防御結界もタダで賄える』と騙されたにゃん」
「侯爵様、結界を解いていただくことは可能でごいますか?」
「にゃあ、もちろんにゃん、いまヌーラの防御結界を強化してる最中だったから間に合ったのは不幸中の幸いにゃん」
このままヌーラの防御結界が力を増せばサロスの人間は無事では済まなかった。
「いいにゃんよ」
「「「にゃあ」」」
オレは猫耳に合図して電撃で石塔を破壊させた。
「にゃあ、これで余計な結界は消えたにゃん」
外から風が流れ込んで来た。
「おお、雰囲気が変わったでござる!」
「にゃあ、そうにゃんね」
『お館様、国土省国土管理局境界監視室は、男爵領の越境を結界が暴走した年から把握済みだったにゃん』
役所に調査に出向いてる猫耳から連絡が入った。
『役所の割に仕事が早かったにゃんね』
『ちょうど刻印の打ち直しの時期だから立会いの宮廷魔導師がいたにゃん、領地を横領した罪でブルジェ男爵家は即刻取り潰されてるにゃん』
『にゃあ、するとここは男爵領じゃないにゃん?』
『サロスは既にヌーラに併合されてるにゃん』
『にゃ!? でも、ヌーラは領民ゼロと違うにゃん?』
『ブルジェの人たちは、領民じゃなくて盗賊の類にカウントされてるにゃん、だから領民はゼロにゃん』
『にゃあ、何でブルジェ男爵は知らないにゃん?』
『そんなはずはないにゃん、記録によれば退去命令書が毎年出てるにゃん』
『確認するにゃん』
「にゃあ、いま重要な情報が届いたにゃん、王宮から毎年手紙が届いていたはずにゃん、見てないにゃん?」
「手紙ですか? ええ、大事に保管してございます」
「にゃあ、もしかして読んでないにゃん?」
「残念ながら領内に文字を読める者がおりませんので」
「にゃー」
「侯爵様、いかがされされました?」
「にゃあ、ブルジェ男爵家は結界の暴走した年に取り潰されて消滅してるにゃん、毎年届いていた手紙は退去命令書にゃん」
「お、お待ち下さい、では毎年王宮に支払ってる税は?」
「にゃあ、誰に払ったにゃん?」
「商人でござる、結界が暴走する以前から代々当家に出入りしていた信用の置ける者でござる」
ピエールが代わって答えた。
「もしかしてエステルを王都に連れて行った商人にゃん?」
「はい、王宮に参内すれば今後の税は免除されると」
「にゃあ、やっぱりエステルが娼館に売られたのは知らなかったにゃんね」
モーリスがのんきに構えていたわけだ。
「お、お待ち下さい! エステルは王宮に入ったのではないのですか!?」
「違うにゃん」
「エステル様が苦海に沈まれたとは! おお、なんたることか!?」
ピエールが天を仰ぐ。
「にゃあ、心配しなくても沈む前にオレのところで預かったにゃん、最初にそう言ったはずにゃん」
「ああ、そうでありました、侯爵様には我が妹を救っていただき感謝いたします。しかし何故そのようなことに」
『にゃあ、エステルを連れ出した自称商人は犯罪ギルド所属の詐欺師の一族にゃん、犯罪奴隷に堕ちた娼館の元主人からいま聞き出したにゃん』
カジノ「オーディアール」のオーナーだったギスラン・オーディアール、現在は猫耳のギスから念話が入った。
娼館の元主人から確認を取ってくれた様だ。
「残念ながらそいつらは商人じゃなくて犯罪ギルドの一味だったにゃん」
「な、なんと、あの者たちが!」
「にゃあ、ふたりは本当に男爵家が取り潰されたことを知らなかったにゃん?」
モーリスとピエールを見た。
「以前そのような事を言う者がいたのは事実でござる、祖父も父も何を戯言と取り合わなかったのでござるが、まさか本当であったとは」
ピエールはがっくりと肩を落とした。
「確かに当家の耳にも入っておりました。家臣の具申に耳を貸さず甘言を信じ込んだ我ら三代の責任です」
「にゃあ、耳を塞がれたに等しい状況では仕方ない部分もあるにゃん」
領民たちは真実を知って逃げ出したのだ。
先々代が慕われていたとは言えない領主では、領民の流出も当然だ。
『にゃあ、境界監視室に旧ブルジェ男爵領サロスは結界を解いてオレが掌握したと報告して欲しいにゃん』
『了解にゃん』
「ひとまず手続きは完了にゃん」
「侯爵様、何とぞ退去まで数日ご猶予をお許し下さい」
モーリスが土下座する。
「にゃあ、モーリスは何処かに行くにゃん?」
「当家は遥か昔に取り潰されたのであれば領地払いは必然かと」
「にゃあ、モーリスとピエールは何も悪いことはしてないにゃん、だから今日からヌーラの領民になってもらうにゃん」
「我らがヌーラの領民にでありますか?」
「にゃあ、知ってのとおり魔獣の森を封じ込めたヌーラの城壁の中は使えないから、サロスをヌーラの州都にするにゃん」
「この地を州都にでござりますか?」
「ピエールは嫌にゃん?」
「め、滅相もございません、ただ何もない不毛の地ゆえ、街も一から作らねばならないではないかと」
「にゃあ、問題ないにゃん、嫌じゃなかったらふたりにも手伝って欲しいにゃん」
「もちろん、全霊を以てお手伝いさせていただきます」
「拙者もこの身が朽ち果てるまでご奉公いたします」
「そこまで気張らなくていいにゃん」
「お館様、本来の境界で簡易の防御結界を張るにゃん」
猫耳たちは既にスタンバイOKだ。
「了解にゃん、モーリスとピエールは屋敷まで戻るといいにゃん」
ふたりが戻った後にはみ出し部分の塀の消去を行った。
「にゃあ、ヌーラの防御結界の修正を頼むにゃん」
第三者の干渉はすべて弾かなくてはならない。
『こちら研究拠点にゃん、防御結界の修正が完了にゃん、これは全員に適用させるにゃん』
『にゃあ、オレたちの防御結界も修正するにゃん?』
『ウチらはオリエーンス神聖帝国式の魔法をベースにしているから大丈夫にゃん、でも使わないとも限らないので不具合はすべて潰すにゃん』
『了解にゃん、準備が整い次第、魔法式の情報を書き換える開始にゃん』
『『『にゃあ!』』』
ヌーラの防御結界が更新され、同時に簡易の防御結界がサロスを覆った。
「サロスは特に遺跡とかはないみたいにゃんね」
「にゃあ、マナが安定して獣がいないだけでも住みやすい場所にゃん」
「州都のデザインは任せるにゃん」
「了解にゃん」
「塀は城壁に作り直して、後は街道を整備にゃん」
「「「にゃあ」」」
『お館様、ドゥーガルド少将が近いうちに会いたいそうにゃん』
王都の屋敷から念話が入った。
『にゃあ、オレに何の用事にゃん?』
『国軍の大演習に付いてにゃん』
『蜂に襲われて中止になったのかと思ったらやるにゃんね』
『にゃあ、お金も入ったのでやる気が漲ってるにゃん』
内戦の危機が囁かれてるこの時期に大演習とか、副司令は貴族派を挑発するつもりなのだろうか?
現状の練度では貴族派の連中をホッとさせる材料にしかならないか。それとも貴族派をやる気にさせて先に手を出させる心理作戦とか。
『わかったにゃん、三日後の午前中に行くと伝えて欲しいにゃん』
何も考えて無かったら説教な。
『それと王都の外縁に作ったウチらの銀行に襲撃計画が持ち上がってるにゃん』
『にゃ?』
『カジノを奪われた上に娼館まで潰されてシノギが減った犯罪ギルドの逆恨みにゃん』
『にゃあ、悪いヤツらはとっ捕まえていいにゃんよ、人手が足りないからちょうどいいにゃん』
『だったら、ついでにノクティスとオクルサスの王都支部も潰すにゃん?』
どちらも王国では一、二を争う規模の犯罪ギルドだ。
『にゃあ、許可するにゃん』
『了解にゃん、明日仕掛けるにゃん』
『にゃあ、面白そうにゃんね、オレも行くにゃん!』
『『『にゃあ!』』』
オレはリーリを連れて地下トンネル経由で夜の内に王都の拠点に戻った。




