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ヌーラを探検にゃん

「にゃあ、思いの外、塀の中は平和にゃんね」

 プリンキピウムの森よりも静かでジープの進行を邪魔する危険な獣も出て来ない。あそこに比べたらこの国の森は大概は静かで安全だ。プリンキピウムの森がヤバいだけか。

「お館様、近くの魔獣の森には魔獣の反応があるのにいま走ってる普通の森の中は何の気配もないにゃん」

 助手席の猫耳が振り返って言った。

「獣がいないにゃん?」

 探査魔法を打たずに聞く。

「にゃあ、少なくとも五〇キロ圏内にはいないにゃんね、いても城壁の外側にゃん」

「魔獣の森の近くを嫌って城壁が作られる前に逃げ出してるのと違うにゃん?」

 猫耳たちから意見が出る。

「そうかもしれないにゃんね」

「にゃあ、きっと越境した魔獣に食べられて絶滅したにゃん」

「それもあるかもしれないにゃんね、獣がいなくても魔獣は居るから油断は禁物にゃん、封じられた大いなる災いが何なのかもわからないにゃん」

「魔獣と違うにゃん?」

「にゃあ、魔獣の森は他にもあるから、魔獣だったにしろ何かもっと理由があるはずにゃん」

「お館様、ここは魔獣の森を探検あるのみにゃん!」

「魔獣の森を突き進むにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 拳を突き上げる猫耳たち。

「おまえら、魔獣の森の探検は城壁の改修とマナゼロの領域が完成してからにゃん、その前に魔獣の大発生とかやらかしたら王国と大公国が滅ぶにゃん」

「にゃあ、それはマズいにゃんね」

「王都は無事でも剥き出しの外縁部がまた犠牲になるにゃん」

「他にもクプレックス州やタンピス州も魔獣に通られたら大被害にゃん、大公国にはウチらの騎士たちもいるにゃん」

「ウチらの騎士たちなら、普通の魔獣には負けないにゃん、それにウチらの仲間と猫耳ゴーレムが大量にいるから大丈夫にゃん」

「魔獣が走り回って被害が出ないのは、オレの領地ぐらいにゃん、後は多かれ少なかれ被害が出るから慎重に事を進めるにゃん」

「「「了解にゃん」」」


 一キロごとに城壁に埋込み型のマナ変換炉を設置して修復と強化を進める。

 城壁の長さが長さな上にジープの車列は時速三〇キロ程度で走ってるので、一周するのにかなりの時間を費やすことになりそうだ。

「「「にゃあ♪」」」

 猫耳たちはジープを止めずにマナ変換炉の設置を競ったり、地面からタイヤを浮かせて走ったりと楽しくキャッキャしてる。

「にゃははは!」

「面白ーい!」

 オレもリーリと一緒にジープのボンネットの上を次から次へと飛び移ったりして、いちばんはしゃいでいた。


 昼食は車を停めずハンバーガーを食べながら作業を続ける。オレもボンネットの上であぐらをかきながら舗装道路を作って行く。

「今日はチーズバーガーが一段と美味しいね」

 顔にケチャップを付けたリーリがご満悦な笑みを浮かべた。

「にゃあ、わかってくれたにゃん?」

「チーズが違うの?」

「そうにゃん、ケラスで捕まえた青色エーテル機関持ちのマダラウシのミルクにゃん」

 元の世界のオレだったらお腹を壊しそうな特濃のミルクが出た。

 修正した青色エーテル機関持ちに共通の人懐っこい性質で、クロウシみたいに命のやり取りをしなくても飼うことができる。

「マコト、そのウシのミルクで作ったソフトクリームはきっと美味しいよね?」

 リーリがオレを上目遣いに見る。

「にゃあ、そうにゃんねソフトクリームも美味しいはずにゃん」

「食べたい」

「わかったにゃん、直ぐに作るにゃん」

「やった!」

 リーリが抱き着いてセーラー服のスカーフにベッチョリとケチャップが付いた。


 オレの格納空間で青色エーテル機関持ちのマダラウシのミルクからソフトクリームを作ってリーリに渡した。

「マコト! スゴいよ! スゴく美味しいよ!」

 ソフトクリームはリーリの大好物のひとつなので感動もひとしおらしい。

「確かにこれは美味しいにゃん」

「傑作にゃん」

 運転席と助手席の猫耳もソフトクリームを舐めてる。オレの格納空間は猫耳たちにも解放してるというかオレと猫耳でひとつの空間をシェアしてると言った方が現実に近いかもしれない。


 午後は慣れたこともあってジープの速度を上げた。

 オレは相変わらずボンネットに座ってる。時速一二〇キロを超えてるが防御結界のおかげで髪が揺れることもない。


『マコト、私だ』

『にゃあ、ユウカにゃん』

 ブラッドフィールド傭兵団の団長ユウカ・ブラッドフィールドから念話が入った。

『王国軍とカジノを手に入れたそうだな?』

『にゃあ、カジノはともかく王国軍は手に入れてないにゃんよ』

『本当か?』

 念話なのに疑いの眼差しを感じた。

『にゃあ、王国軍の中将になったから、チンピラどもの根性を叩き直してるだけにゃん、まだ実際の戦力にはならないにゃんよ』

『王都では軍事行動の前触れだと噂が流れてるぞ』

『にゃあ、マジにゃん?』

『例の宰相の件で、王国軍でも脅威に感じるのだろう、略奪はお手の物だからな』

『すると騒いでるのは貴族派の領主にゃんね』

『そうだ、自分たちで使えない盗賊まがいのチンピラを寄越しておいて、慌てているのだから滑稽なヤツらだ』

『何か不穏な動きでもあるにゃん?』

『宰相ニエマイア・マクアルパインは、貴族派の中心フェルティリータ連合の盟主だったからな』

 フェルティリータ連合は確か五つの豊かな領地の集まりだ。同盟禁止も上級領地には関係ないらしい。

『にゃあ、それは騒ぐにゃんね』

『王宮のマクアルパイン家の取り扱い方によっては、内戦になりそうだ、そしていま風向きはそっちに向いている』

『にゃあ、いま内戦なんて勘弁して欲しいにゃん』

 オレたちの楽しい冒険を邪魔しないで欲しい。

『聞くところに依ると王宮内では国王派の貴族が強気な発言を繰り返して貴族派を挑発してるらしい、貴族派もフェルティリータ連合を中心に動いてる。マコトも多少のドンパチは覚悟した方がいいぞ』

『ユウカも参戦するにゃん?』

『引き合いが来てるから表向きは調査中にしてる』

『にゃあ、引き受けないにゃん?』

『フェルティリータ連合は、宮廷魔導師並の魔法使いを揃えている上に騎士団は近衛軍と王国軍を超える規模だ、小競り合いを超えた本格的な内戦に発展する可能性が否めない以上、介入するつもりは毛頭ない』

『にゃお、本気の内戦なんかやらかしたら国が滅ぶにゃんよ』

『だろうな、私も危なくなったら仲間を引き連れてカズキのところかマコトのところに行くつもりなのだ』

『にゃあ、オレのところはいつでも構わないにゃんよ』

『助かる、候補のひとつに入れさせて貰おう』

『内戦の流れは停められないにゃん?』

『国王が動かない限り無理だろう』

『調停は王様の仕事にゃんね』

『期待はしないほうがいい、国王が近衛を率いて戦ったのは一〇〇〇年も前の話だ、いまはそんな力はない』

『専制ではないにゃんね』

『表向きは絶対王権なのだが、ここ数百年は王宮内での実質的な合議制になってる、国王の独断では国は動かない』

『にゃあ、今回は宰相の失脚で王宮内のパワーバランスが崩れたにゃんね』

『そういうことだ、これを機に国王派は貴族派をやり込めるつもりだ』

『オレは武力衝突に手を貸さないにゃんよ』

『それで頼む。国王派は、ニエマイア・マクアルパインがひとり消えたところで貴族派との戦力差は変わらないという状況が見えてない』

『にゃあ、本当に危ない状況にゃんね』

『マコトなら直に国王派の貴族と会う機会もあるだろう、出来るなら上手くやってくれ、私はこの国が結構気に入ってるんだ、無くなると困る』

『にゃあ、オレだってそうにゃん、わかったにゃん、やれることはやるにゃん』

『頼む』

『にゃあ、ユウカにひとつ聞きたいことがあるにゃん、王宮の隔離区画の廊下が埋められていたにゃん、何か知らないにゃん?』

『埋められていた?』

『にゃあ、廊下が全部コンクリートみたいなモノで埋まってるにゃん、しかもご丁寧に簡単に分解出来ないようになってるにゃん』

『隔離区間を本当に隔離したのか? わかった調べてみよう』

『にゃあ、頼んだにゃん』

 ユウカからキナ臭い情報を貰って念話を終えた。


「にゃあ、お館様、魔獣の気配が近いにゃん」

 相変わらず獣の反応は特異種を含めてまったく無かったが、その代わり魔獣の気配は直ぐそこにあった。

「魔獣の森が近いからいても不思議はないにゃん、ヤツらは隠し玉が多いから気を付けるにゃんよ」

「了解にゃん」

「お館様、この先はマナの濃度も濃いしマナ変換炉を五〇〇メートル間隔で置いて行くのはどうにゃん」

「そうにゃんね、マナの濃いところは変換炉をどっさり設置してカラカラになるまでぶち抜いてやるといいにゃん」

「にゃあ、だったら一〇〇メートル間隔にゃん!」

「「「にゃあ!」」」


 ほんの数百メートルの位置にあった魔獣の反応がマナの濃度の変化を敏感に感じ取ったのか森の奥に移動を開始した。

「にゃあ、効いてるにゃん」

 探査魔法で魔獣の位置を確認する。

「マナが少なくても活動できる魔獣もいるから気を付けるにゃん」

「にゃあ、ウチらに抜かりはないにゃん」

「お館様、ヌーラから魔獣が越境した記録は残ってないから、そのタイプは居ない可能性もあるにゃん」

「人がいない僻地だから記録は当てにしない方がいいにゃんよ」

「にゃあ、それもそうにゃんね」

「手入れされていた東側なら人がいないことも無いので多少の参考にはなるにゃん」

「問題は魔獣よりも城壁で封じ込めた大いなる災いにゃん」

「にゃあ、そうにゃんね」

 オレは深くうなずいた。

 複雑怪奇な城壁の古い刻印を調査中だが、いまのところこれといったヒントは得られていない。

「何もないのにこんな城壁を作るわけがないから、何かヤバいモノが有るのは間違いないにゃん」

 それが何なのか、見当がつかない。

「にゃあ、ここから魔獣の森を掠めるから気を抜いちゃダメにゃんよ」

「ボンネットであぐらをかいてるお館様が言っても説得力がないにゃん」

「にゃあん」


 猫耳に指摘されたとおり午後もジープのボンネットに座ってあぐらをかいているわけだが、探査魔法は抜かりなく飛ばしているので、オレ的にはセーフだと思う。


「にゃあ、全車停止にゃん!」

 オレは手を挙げてジープの車列を停車させた。

「五〇〇メートル先の魔獣の森の中に人影があるにゃん」

「「「にゃ!?」」」

 猫耳たちがオレの指差した方向を見る。無論、肉眼ではヤブが邪魔をして見通せない。

「お館様、まさか人型魔獣にゃん?」

 人形魔獣は、魔獣の中でも超やばい存在らしい。あくまでおとぎ話の中での話だが。

「違うにゃん、魔獣の反応じゃないにゃん、ただ形しか読み取れないにゃん」

「普通に人間とは違うにゃん?」

「魔獣が無反応だからたぶん違うにゃん」

 人間ならもれなく魔獣が寄ってくる。

「にゃあ、こんなところに普通の人間がいる方が怖いにゃん」

「手ぶらみたいにゃんね」

 猫耳たちも探査魔法を打つ。

「身長三メートルは、人間にしてはちょっと大きいにゃん」

「ゴーレムと違うにゃん?」

「オレたちの知ってるゴーレムの反応とも違うにゃん、森の精霊でもないにゃん」

 人間の形以外はまったくわからない状態だ。

「リーリはわかるにゃん?」

 胸元から顔だけ出してるリーリに聞く。

「たぶん、危ないモノじゃないと思うよ」

「にゃあ、これは近付いて確かめるしかないにゃんね」

 オレはボンネットから腰を浮かした。

「お館様、ひとりで見に行くつもりにゃん?」

「にゃあ、逃げ足を考えるといつものようにオレ一人が最適にゃん」

「「「それはダメにゃん!」」」

 全員にダメ出しされた。

「みゃう」


 猫耳たちに押し切られて全員で見に行くことになった。

 目の前の壁のように生い茂った灌木をまとめて引き抜いて消し去りジープの通れる道を作る。

『にゃあ、ここからは念話で行くにゃん』

『『『了解にゃん』』』

『防御結界最大にゃん、何か有ったら城壁側に逃げるにゃんよ』

『『『にゃあ』』』

『何があっても命に代えてもお館様をお守りするにゃん!』

『『『当然にゃん!』』』

『にゃお、おまえら、勝手に死んだら魂を煉獄の炎で炙ってもう一回、地獄のブートキャンプにゃん』

『『『にゃあ♪』』』

「そこは喜ぶところじゃないにゃん!」

『『『お館様、声が出てるにゃん』』』

『にゃお、これは失敬したにゃん』

『気付かれたにゃん、こっちに来るにゃん』

 身長三メートルの巨人がこっちに向かって歩いて来る。

 走ってはいないが大きいからかなり速い。

『にゃあ、こうなったらオレが話を付けるにゃん!』

 ボンネットであぐらをかいていたオレが立ち上がった。

『このまま進むにゃん』

『『『にゃあ!』』』

『ゆっくりにゃんよ』



 ○ヌーラ州 城壁内 魔獣の森


 灌木の壁を抜け魔獣の森の領域に入った。

 マナの濃度が跳ね上がったが、オレたちも負けずにマナ変換炉も設置して吸いまくる。

『普通の魔獣の森にゃんね』

 巨木と下草、赤茶けた土、オレの知ってる魔獣の森の風景だ。

『お館様、攻撃してもいいにゃん?』

『にゃあ、相手が攻撃してくるまで手を出しちゃダメにゃん』

『魔獣でもにゃん?』

『にゃあ、魔獣ならなおさらにゃん』

『水棲人ぐらい理性的なら問題ないけど本物の人型の魔獣だったらヤバいにゃんね』

『グールやオーガでさえ面倒くさいのに純粋な魔獣なんて考えたくもないにゃん』

『お館様、大公国に埋まっていた赤ちゃんじゃない純粋な人型の魔獣なんているにゃん?』

『にゃあ、人型はいまのところは未確認にゃん』

 研究拠点から念話が飛んだ。

『でも、居ない証拠もないにゃん、最悪の魔獣という伝承だけが残ってるにゃん』

『魔獣関係はまだわからないことばかりにゃんね』

『にゃあ、少なくとも今回は赤青緑いずれのエーテル機関の反応もないから、魔獣の類とは違うと思うにゃん』

『この距離でも正体不明にゃん』

 既に人影まで二〇〇メートルを切ってる。

 オレたちの眼ならばこの距離でも捉えられるはずなのだが、その姿がはっきりしない。

『認識阻害の結界が張られてるわけじゃないにゃん、でもただの葉っぱしか見えないにゃんね』

『にゃあ、動いてるのはわかるから認識阻害にしても中途半端にゃん』

『ここで停車するにゃん! 全車直ぐに逃げられるように向きを変えるにゃん』

『『『了解にゃん』』』

 一〇〇メートルを切ったところで車を停めターンして前後を入れ替えた。


『間もなく来るにゃん』


 ガザガサ音を立てて現れたのは、全身に蔦の絡みついた巨人だった。

「にゃあ、まんま葉っぱだらけだったにゃん」

 身長三メートルの巨人も立ち止まった。

 攻撃してくる感じは、いまのところ無さそうだ。

 じっとこっちを見てる感じがする。

『異常アリマセン』

 念話を送って来た。

『にゃあ、了解にゃん』

 巨人は用事を終えたとばかりにくるっと回れ右して森の中に戻ろうとした。

『にゃあ、待つにゃん』

 巨人は立ち止まりこちらを向いた。

『綺麗にするから待つにゃん』

 オレは巨人に絡まった蔦を消し去りウォッシュした。

「「「にゃ!?」」」

 現れたのは金属のボディと外殻の一部が脱落して中で動いてる機械だ。

「にゃあ、これはオートマタにゃんね」

 図書館情報体にあるものと同一ではないがこれと似た記録がある。オートマタで間違いないだろう。

「ウチらも初めて見たにゃん」

 オートマタはロボットとゴーレムの中間の様な存在だ。

「お館様、このオートマタが大いなる災いにゃん?」

「にゃあ、これは違うと思うにゃん」

「大いなる災いになるほどの性能は無さそうだね」

 リーリも観察する。

「にゃあ、このオートマタの刻印はまるで芸術品にゃん、気が遠くなる数が使われてるにゃん」

「お館様、どうするにゃん?」

「にゃあ、もちろん分解して詳しく調査するにゃん」

 オートマタを分解して格納した。

 格納空間の中でオートマタのシステムに介入する。

 システムはプリンキピウムの森で手に入れたドラゴンに良く似ていた。

 オートマタのシステムを書き換えて空欄になっていたマスターをオレに変更した。

 プログラムされた命令を読み取る。

「にゃあ、このオートマタの仕事は研究所の維持管理みたいにゃん」

「「「研究所にゃん!?」」」

「にゃあ、お館様、これは行くしかないにゃん!」

「「「にゃあ、当然にゃん!」」」

「そうにゃんね、せっかく情報を仕入れたからには行くしかないにゃん」


 全体を修復しエーテル機関を突っ込んでオートマタを再生する。


 鏡面仕上げのプレートアーマーをまとった騎士の様な外観のオートマタが姿を現す。

 近衛の甲冑に比べるとシルエットはスリムだ。

 かなりデカいけど。

 材質を生きてる金属に交換してあるので運動性も防御力も上がってるはずだ。

 ぼくのかんがえたさいきょうオートマタだ。

「にゃあ、レーザー砲まで追加されてるにゃん、お館様は戦争でもするにゃん?」

「内戦が始まったら使うにゃんね」

「使わないにゃん、使わないけどロボットにはビームとロケッツパンチは必須にゃん」

「そういうものにゃんね」

「様式美にゃん」

 オレはジープからオートマタの肩に飛び乗った。

「にゃあ、研究所まで案内を頼むにゃん」

『カシコマリマシタ』

 オートマタはオレを乗せたまま森の奥に向かって歩き出した。

「へえ、これは面白いね」

 リーリも興味深そうにオートマタをあちこち見てる。

 オートマタの後を猫耳たちが道路を作りマナ変換炉を埋め込みながら続く。

 道路は魔獣除けの結界を施し、同時にマナも吸いまくる魔獣にとっては嫌がらせの様な仕様だ。

 巨大な芋虫みたいなシルエットの反応がオレたちから遠ざかって行く。

 無駄な血を流さないことはいいことだ。

「にゃあ、お館様、ウチらもオートマタに乗りたいにゃん!」

「「「にゃあ、乗りたいにゃん」」」

 猫耳たちがおねだりする。

「にゃあ、いいにゃんよ」

 同じ型のオートマタを猫耳の人数分出した。五台のジープに三人ずつ乗っていたので一五台のオートマタが追加される。

 猫耳たちはオートマタに肩車して貰うのがしっくり来る様だ。

 オレの乗ったオートマタの後を三列に並んだオートマタが続く。

 金属製の巨人の行進する様は傍からみたら怖いかも。


 森の奥に進むこと三〇キロ地点でオートマタの足が止まった。


「にゃあ、これってクレーターと違うにゃん?」

 研究拠点のクレーターほどではないが、それでも直径二〇〇メートル、深い場所で三〇メートルはありそうな大きな窪地だった。

 深くえぐられた土地は木々が生い茂ってるが地形は残っていた。

「にゃあ、ここに研究所があったにゃん?」

『ココガ研究所デス』

 オートマタがオレの問い掛けにハッキリ答えた。

「にゃあ、お館様、昔ここに研究拠点と似たようなモノが有ったにゃん?」

「見た感じだと研究拠点よりは普通の大きさにゃんね」

「研究所の復元は可能にゃん?」

「にゃあ、研究所は木っ端微塵みたいだからいまのオレたちの魔力では無理にゃん、内部までは再現できないにゃん」

 無に帰した研究所を元に戻す魔法式を実行する演算能力が足りない。

「いまはこのまま保存した方がいいにゃんね、土に潜る系の魔獣に荒らされたら余計に復元が難しくなるにゃん」

「にゃあ、物理障壁と防御結界で囲うのがいいにゃん」

「「「にゃあ」」」

 少し下がってクレーターを三重に囲む物理障壁を作り全体を防御結界でくるんだ。

「復元が可能になるまではこうして保存するにゃん」

「お館様、研究所がいつ頃の頃のものかわかるにゃん?」

「にゃあ、オートマタを復元した感じでは、オリエーンス連邦の滅亡前後と考えられるにゃん」

「カイザル湖の管理局がロストしたのと同じ頃にゃん?」

「にゃあ、そうなるにゃんね」

「お館様は、研究所の爆発は城壁の建設より古いということで間違いないにゃん?」

「にゃあ、そうにゃんね、研究所の爆発の方が城壁よりずっと古いにゃん」

「そうなると大いなる災いは、研究所ではないにゃんね?」

「にゃあ、そうなるにゃん」

「それにこの状態では、災いの起こし様がないにゃん」

「大いなる災いは別のものにゃん」

「にゃあ、大したことのない災いに万里の長城の様な城壁を築くはずがないにゃん、油断しないで探検を続けるにゃんよ」

「「「にゃあ!」」」



 ○ヌーラ州 城壁内


 オートマタを格納してまた猫耳ジープに乗って探検を再開した。


「お館様、魔獣は狩らなくていいにゃん?」

「にゃあ、襲って来ない限り今回は無視にゃん、魔獣よりも探検を優先にゃん」

 車列は研究所跡地までの枝道を城壁にまで戻った。

 ここからまた舗装道を作りながらマナ変換炉の設置を行う。

 オレはまたしてもボンネットの上に陣取ってオートマタ用の魔法馬の設計を開始した。

 八本足の馬をベースに鎧をまとった姿にして大きさをオートマタに合わせた。

 材質は生きてる金属を使用する。

 当然、魔法馬よりもロボット寄りなのでレーザー砲完備。

 マナ変換炉を四発搭載して出力も十分だ。

 併せてオートマタにもマナ変換炉を二発埋め込む。

 専用の小銃も装備して鎧蛇なら一発で沈められる。

「にゃあ、やっぱりお館様は戦争でもするにゃん?」

「諸侯軍をちゃんとしてなかったので、これを使うにゃん」

「王宮がざわつきそうにゃん」

「にゃあ、微妙な時期だからしばらくは研究拠点で魔獣相手に運用実験にゃん」

「人間相手には使わないにゃん?」

「にゃあ、脅かすのにはいいにゃんね」

「間違いなく逃げるにゃん」

「精神を弄らなくても強烈なトラウマを植え付けられそうにゃん」


『にゃあ、設計が終わったから研究拠点で再生して運用実験を行って欲しいにゃん』

 研究拠点に念話を飛ばした。

『こちら研究拠点にゃん、了解にゃん、最初は一〇〇騎からでいいにゃん?』

『にゃあ、問題ないにゃん』

『ウチらのこれまでの攻撃パターンをベースに運用経験を積み増しつつ機体の数を増やすにゃん』

『にゃあ、それで頼むにゃん』


「お館様は、魔獣相手に戦争にゃんね」

「にゃあ、まだ戦争はしないにゃんよ、下手を打って大発生でもされたら目も当てられないにゃん」

「お館様、魔獣以上に数を揃えれば勝てるにゃん」

「にゃあ、それにはまだアレが足りないにゃん」

「魔力炉にゃん?」

 魔力炉は、オリエーンス神聖帝国の文明を支えたその名の通り魔力を生み出す発電機みたいなもの。

 その魔力を生み出す能力は凄まじいの一言だ。

「にゃあ、準備が整う前に拙速な行動は命取りにゃん」

「反省にゃん」

「アウルムにはあるかも知れないにゃんね」

「にゃあ、そうにゃんね、いまのところ最有力候補にゃん」

 ケラス州の旧州都アウルムはいまだに魔獣が死ぬ濃度のマナを生み出している。

「お館様、クーストース遺跡群はどうにゃん?」

「あれはオリエーンス連邦時代の遺跡だから、時代が違ってるにゃん」

「世界を変える遺跡なら、それぐらいは欲しいのに使えないにゃんね」

「にゃあ、刻印を新しく作る技術すら稚拙な現代人にオリエーンス連邦の人たちが再現できなかった技術を扱えるとは到底思えないにゃん」

「お館様は何が入ってると思うにゃん?」

「にゃあ、間違いなく武器にゃん、宰相はたぶんクーストース遺跡群に関する記憶石板を手に入れるはずにゃん」

「遺跡バカの第二王子を旗印に発掘した武器を使って王宮を乗っ取るつもりだったにゃんね」

「にゃあ、遺跡バカは早々に始末して宰相の縁者が王位に着くぐらいのシナリオは書いてたと思うにゃん」

「お館様、クーストース遺跡群からウチらを脅かす武器が出たらどうするにゃん?」

「にゃあ、その時は根こそぎかっぱらうにゃん」

「ウチもお館様に賛成にゃん」

「「「にゃあ、賛成にゃん!」」」

「でも、遺跡は封鎖されるから何も掘り出されずに終わりそうにゃん」

「にゃあ、ウチらもそれが平和でいちばんいいと思うにゃん」


 夜はテントを設営したが、猫耳ゴーレムたちがやって来て直ぐ横に大きな露天風呂を作った。


『『『オ館様トオ風呂ニャン』』』

『『『オ風呂ニャン』』』

『『『ニャア♪』』』


 魔獣の森の直ぐ横で猫耳ゴーレムとのお風呂タイムも乙なものだ。

「風呂上がりのソフトクリームは最高だね」

 リーリもご満悦だった。


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