お別れにゃん
○州都オパルス 冒険者ギルド前
オレたちは冒険者ギルドを出た。
いよいよキャリーとベルともお別れだ。
「にゃあ、ふたりにはいろいろ世話になったにゃん」
「お世話になったのはこっちだよ」
「そうなのです」
オレたちはそれぞれの魔法馬を出した。
「また会う日まで元気でいるにゃん」
「うん、マコトもだよ!」
「マコト、プリンキピウムに帰る前に州都の図書館に行くといいのです」
「図書館にゃん?」
「マコトの知らない情報がたくさんあるのです」
「にゃあ、わかったにゃん、行ってみるにゃん!」
オレたちはそれぞれ手を振った。
キャリーとベルがいたから何とか冒険者になれたし今日まで人間らしい生活も出来た。
ふたりに出会って無かったら、少なくともこんな自由は無かったはずだ。
でも、これからは独りだ。
「みゃあ」
視界がぼやけたと思ったらオレはちょっと泣いていた。
メンタルがすっかり六歳児だ。
「にゃあ、図書館に行くにゃん」
涙を拭って魔法馬を歩かせる。
図書館の場所は冒険者ギルドの壁に貼ってあった大雑把な地図で把握していた。
○州都オパルス 図書館
図書館は、ギルドからほど近い場所にある。
「立派な建物にゃん」
入口を入ると直ぐに受付があった。
「身分証をお願いします」
オレの勝手なイメージだが、司書っぽい女の人の感じは異世界も共通だった。
「身分証はこれにゃん」
冒険者のカードを見せる。
「入場料をお願いします」
六歳児あたりのツッコミは皆無だ。
「入場料にゃん?」
壁に掲示されてる入場料は大銀貨三枚だった。
「子供料金がないにゃん?」
「ありません」
オレは、唐草模様のがま口から大銀貨三枚を出した。
特に会話もなく中に入れた。
「誰もいないにゃん」
今日の利用者はオレ一人みたいだ。
本を読むところと言うより、本を陳列するところって感じだ。
「本日はどんなご用件でしょう?」
別の司書のお姉さんがやってくる。
「ジャンルは固定せずになるべくいっぱい読みたいにゃん」
「お客様は、魔法は使えますか?」
「にゃあ、それなりに使えるにゃん」
「でしたら本よりも記憶石板がお薦めです」
「記憶石板にゃん?」
「こちらを御覧ください」
ガラスケースに入ってる石板を指し示す。
週刊誌サイズの大きさで厚みは一センチ程度の半透明の茶褐色のプレートが飾ってあった。
「にゃあ、確かに石板にゃん」
「この薄い石板に情報が書き込まれています、魔法が使えるならば簡単に読み取ることが可能です」
「便利にゃんね」
「はい、最新のものから遺跡から出土したものまで数多く取り揃えてございます。ただ利用料がお高くなりますが」
「お高いにゃん?」
お姉さんの説明によると普通の本の利用料が大銀貨一枚で、記憶石板が大銀貨十五枚。
司書のお姉さんによると情報量の違いだとか。
いまの金額でも国内有数の石板数を誇るライブラリにアクセスできることを考えると十分にバーゲンプライスなんだそうだ。
「記憶石板で頼むにゃん」
大銀貨十五枚を払って、記憶石板にアクセスする権利を買った。
「こちらで閲覧下さい」
司書のお姉さんに閲覧用の個室に案内してもらう。
三畳程度の部屋だった。
天板が斜めになった一人用のテーブルと椅子があるだけの殺風景な部屋だ。
テーブルには直径二〇センチ程度の丸くて黒い石が二枚はめ込まれている。
「こちらの丸い二つの石板に手を置いて検索して下さい、閲覧が終わりましたらお声がけください」
お姉さんがオレを残して個室を出て行った。
オレは椅子に飛び乗って座面の高さを勝手に調整する。
両手を黒い石に置いた。
「にゃあ、検索メニューが見えるにゃん」
画面が視界に浮かび上がった。
コマンドモードが使えそうだ。
何故か、使い方はオレの知識の中に存在していた。
「にゃあ、ちゃんと立ち上がったにゃん」
システムそのものの制御が可能になったけど、これって本来、一般の閲覧者が使っていいモノじゃないよね?
でもアラートも出ないからいいのかな?
司書のお姉さんも止めに来ないし。
システムのコマンドを使って記憶石板内の情報をオレの中にまとめてコピーする。
禁止されてるわけじゃないよね?
「にゃあ、情報が入ってくるにゃん」
精霊情報体に比べるとわずかだが、ありがたいことに精霊情報体よりずっと新しいオリエーンス連邦時代の情報が大半だった。
連邦は五千年前に滅んでいるが、いまでも現役で使える魔導具が数多く出土している。特に刻印の技術は素晴らしく、その超絶な技巧は現代の刻印をはるかに凌駕するそうだ。
遺跡から出土した魔導具のほうが現代の物よりも高性能というのが、一般的な認識らしい。発掘に熱が入るわけだ。
そしてオリエーンス連邦は、人間の天敵、魔獣を作り出した文明でもある。
残念ながら、ここにある記憶石板に魔獣そのものを作る設計図は無かった。
魔獣は秘匿された軍事情報だったのだろう。
第一そんなものがあるなら現在も狩れているはずだ。
「情報が役に立つかどうかはオレ次第にゃんね」
稀人は?
異界の客人。
強い魔力を持つとしか書かれてない。
オリエーンス連邦時代でも、稀人の存在はおとぎ話の中の存在らしい。
一時間ほど掛けて図書館の所蔵する記憶石板の情報はすべて頭の中に叩き込んだ。
司書のお姉さんに声を掛けて図書館を出た。
○州都オパルス 商業地区
他に用もないし今回はこのまま帰るか。
まだ門が閉まるまで時間が有るから軽く州都を見物して行こう。
魔法馬を走らせ人の多そうな賑やかな場所に向かう。
どうやら商業地区の様だ。
この辺りの建物はプリンキピウムのと似てる。
レンガと木で出来ていた。
それでもちゃんと水洗トイレが普及してるみたいで、プリンキピウムのボットン便所とは違ってる。
人が多いだけ有ってメインストリートは賑わって活気があった。
辺境感丸出しのプリンキピウムとはずいぶん違っている。
パカポコと魔法馬を歩かせる。
「道路を広く作ってあるのはいいにゃんね、にゃあ、横断歩道に信号機があるにゃん、ここだけ日本ぽいにゃん」
何か買おうかと思ったが、この辺りは問屋街みたいで獣の皮を満載した馬車が停まっていたりしている。
獣の皮はそれこそ売るほど持ってる。
問屋街を抜けるとゆったりとして大きな建物が並ぶ官庁街に出た。
こちらは石造りで敷地も大きく入口は守備隊の隊員が固めている。
「そこの子猫ちゃん、良い馬だな、俺に売ってくれないか?」
「にゃ!?」
パープルメタリックの馬に乗ったギャングみたいなおっさんに声を掛けられた。
危なく電撃をぶっ放すところだったにゃん。
「現金で買うぜ」
「残念だけどこれはオレ専用の刻印が組み込んであるから他の人は乗れないにゃん」
「本当かよ、すげえな子猫ちゃん」
「おっちゃんの馬も格好いいにゃん」
「おお、わかってくれるか?」
「金を表面に這わせるのに手間を随分かけたみたいにゃんね、おっちゃんは大金持ちか馬屋にゃんね、その両方にゃん?」
「おお、こいつは参った、正解だ、オレはダリル・アーチャー、『アーチャー魔法馬商会』の会頭をやってる」
「にゃあ、オレはマコト・アマノ、冒険者にゃん」
「冒険者って!? マジか?」
「マジにゃん」
冒険者カードを見せる。
「おお、本当だ! しかも六歳か! こいつは驚いた!」
「オレは強いにゃん」
「そいつはスゴいな、商売は抜きにしてオレの店に遊びに来ないか?」
「にゃあ、少しならいいにゃんよ」
「良し決まった、付いて来てくれ」
○州都オパルス アーチャー魔法馬商会
ダリルのアーチャー魔法馬商会は貴族地区と商業地区の境、いわゆる高級な商業地区の一角にあった。
おお、ちゃんとショールームがある。
原色の魔法馬たちが並んでいた。綺麗にしてあるが新品ではない。
魔法馬ってオレが作った以外に新品はいまだに見てないが、何処かで作られてるんだよね?
「よおダリル、ずいぶんと可愛いお客さんを連れて来たな」
「にゃ、ジャックにゃん?」
ショールームから、身奇麗な商人の格好をしたジャックが出て来た。
「でもこっちはスキンヘッドのままにゃん」
「子猫ちゃん、ジャックを知ってるのか?」
ダリルがオレに訊く。
「にゃあ、プリンキピウムで世話になったにゃん」
「プリンキピウムなら間違いない、ジャックはオレの双子の弟なんだ」
「にゃあ!」
「こいつはドナルド・ベイチュ、ここの副会頭だ」
「マコト・アマノにゃん、冒険者にゃん」
「おお、そうかすげーな」
「そういや子猫ちゃんの冒険者カードはプリンキピウムの発行だったな」
「にゃあ、オレはあっちが拠点にゃん」
「本当は、ジャックがお嬢ちゃんの世話になってるんじゃないのか?」
「にゃあ、そんなことないにゃん」
「ドナルド、子猫ちゃんの馬を見てみろよ」
「この大きさは軍用か? いや、もっと大きいぞ、しかもまるで新品だ、お嬢ちゃん、馬に触ってもいいか?」
「いいにゃんよ」
オレは馬を降りた。
「ヤバいなこれは、ただの軍用じゃないぞ」
「だろう? おまえさんにも見て貰いたくて嬢ちゃんに来て貰ったんだ」
「ああ、恩に着るぜ」
ジャックの兄貴は魔法馬オタクらしい。
「お嬢ちゃん、乗ってもいいか?」
「にゃあ、いいにゃんよ、でも、スピードの出し過ぎは注意にゃん」
「だろうな、こいつは半端無く速そうだ」
ドナルドはオレの魔法馬に跨がり走り出した。
「あまり遠くに行くなよ!」
「わかってる!」
あっという間に見えなくなった。見えなくてもオレには何処に居るかわかる。
「ヤツが走ってる間、子猫ちゃんにはウチの馬を見せてやるぜ」
「にゃあ、それは楽しみにゃん」
○州都オパルス アーチャー魔法馬商会 ショールーム
オレはダリルに案内されてショールームに入った。
傷一つない綺麗な魔法馬が並んでいる。
どれも彫刻のような繊細な作りだ。
「いい馬にゃん」
「子猫ちゃんの馬には敵わないが、刻印の打ち直し回数も少ないぜ」
プリンキピウムや街道で見たボロボロの魔法馬とは全く異なる存在だ。
例えるならあっちは廃車寸前の軽トラで、こっちは整備の行き届いた年代物のスーパーカーだ。
「にゃあ、刻印の打ち直しが多いとどうなるにゃん?」
「刻印の内容がぶれて、本来の性能が出せなくなる、それで最後は自壊して終わりだ」
「にゃあ、魔法馬の複雑な刻印を打ち直しなんて気が遠くなるにゃん」
オレなら時間を巻き戻す方が簡単だ。
「もしかして子猫ちゃんは魔法使いかい?」
「そうにゃん」
「それなら六歳で冒険者も納得だ」
「状態のいい馬は希少にゃんね」
「ああ、魔法馬の工房では半年に一頭作れれば早い方だからな、どうしても質の落ちる中古を扱わざるを得ないのさ」
「にゃあ、これはいい中古にゃん」
ショールームから工房に抜ける。
いまは磨きを掛けたり刻印の打ち直しが行われていた。
打ち直しはまるで神主さんの神事みたいだ。
どれも丁寧に仕事をしている。
富裕層向けの商売をしてるみたいだからかなり気を使ってるのだろう。
「オレのコレクションはこっちだ」
工房からさらに奥に進む。
「にゃあ」
○州都オパルス アーチャー魔法馬商会 倉庫
倉庫に魔法馬が並べてあった。
「どうだ、なかなかのもんだろう?」
「スゴいにゃん」
ダリルご自慢のコレクションは、どれも綺麗に修復された魔法馬だ。
カスタムの方向性はオレの感性と違ってるけどな。
胴が長いのはストレッチリムジンだろうか?
すると足の短いのはシャコタンで長いのはハイリフトか?
「にゃあ、六本足もいるにゃんね」
「速度を競った時代に作られたものだ、確かに速いが製造コストが三頭分掛かったらしくて直ぐに廃れたらしいぜ」
「にゃあ」
「記録には八本足まで作られたそうだぞ」
スレイプニルにゃんね。
図書館で仕入れたばかりの知識によれば耐久性に難が有ったようで実用には至らなかったらしい。
「こっちの馬は完全に壊れてるにゃん」
壊れた馬の残骸だった。
「ああ、こいつは親父の馬だ、かなり古いものだったが乗り味は最高だったぜ、いまはご覧のとおりの有り様だけどな」
刻印の打ち直しも限界が来て自壊したらしい。
「にゃあ、これなら直せないこともないにゃんね」
「マジかい、子猫ちゃん?」
「にゃあ、刻印の打ち直しじゃなければ他の魔法使いの仕事を取ったことにはならないにゃん?」
「ああ、問題ない、自壊した魔法馬を直せる魔法使いはいないぜ」
「にゃあ、それなら安心にゃん、ただカスタム部分は消え去って本来の形に戻るにゃんよ」
「ああ、そいつは問題ない」
「わかったにゃん」
魔法馬の残骸を分解して時間を巻き戻す。
「出来たにゃん」
「もうか!?」
白く透き通る魔法馬を残骸が有った場所に再生する。
スラリとした競走馬のフォルムを持った綺麗な馬だ。
「おおお! これがそうなのか! あの馬の本来の姿なのか!?」
ダリルは顎が外れんばかりに驚いていた。
「そうにゃん、魔獣由来の材質を原料に作られたみたいにゃんね」
「そいつはまたとんでもない高級品だ」
ダリルはペタペタと馬に触れる。
「間違いない手触りは同じだ、おい、誰か親父を連れて来てくれ!」
ダリルの声に遠巻きに見ていた工房のスタッフが何人か走り出した。
「子猫ちゃん、その魔法ヤバいな」
「にゃあ、細かいことは秘密で頼むにゃんよ」
「おお、わかったぜ」
車いすに乗せられた爺さんが連れて来られた。すっかり衰弱してるようだ。
「見てくれ、親父の馬だ」
「おおお、直してくれたのか?」
「こっちの子猫ちゃんが魔法で修復してくれたんだ」
「こいつは俺が初めて手に入れた魔法馬だ、もっと汚かったが、そうかこんなに綺麗にして貰えたか」
手を伸ばして修復された魔法馬に触れ涙を流す。
「最期にいいものを見せてくれた、感謝するぞ」
そして静かに……。
「にゃああ!」
オレは慌てて天に召されそうになった爺さんを治療する。
加齢のダメージと衰弱の原因とも言える疾患を治す。
治療というより修復だ。
「子猫ちゃん、治癒魔法も使えるのか?」
ダリルがまた驚いてる。
「にゃあ、緊急時だけにゃん」
青い治癒の光が消えると痩せこけていた爺さんの身体が大きくなり青白かった皮膚に血の気が戻った。
「親父、大丈夫なのか?」
「おお、身体が動くぞ」
爺さんは車いすから立ち上がって自分の身体を確かめる。
「おいダリル、俺は馬に乗るぞ」
「本気か、親父!?」
「いつまた身体が動かなくなるかわからねえんだ、いまのうちに乗るしかないだろう」
「子猫ちゃん、親父がそんなこと言ってるけど大丈夫なのか?」
「にゃあ、無理をしなければ死ぬまで身体は動くから慌てることはないにゃん、まだ病み上がりなんだから直ぐに戻って来るにゃんよ」
鞍を付けてやる。
「純正の販売店オプションにゃん」
「おお、感謝するぞ、子猫ちゃん!」
爺さんは馬に跨ると颯爽と倉庫から走り去った。
「にゃあ、爺さんに酒はほどほどにしないとまた車いすに逆戻りすると伝えて欲しいにゃん」
「わかった、親父も車いすには懲りてるだろうから、言うことは聞くだろう」
○州都オパルス アーチャー魔法馬商会 裏庭
倉庫を出ると裏に朽ち果てた魔法馬が山になってた。
「にゃあ、これはもう使えないにゃん?」
「ああ、完全に砕けてるからな、でも子猫ちゃんなら直せるのか?」
「やってみないとわからないにゃん」
「どの道、俺たちじゃどうしようもないから、欲しかったらやるぜ」
「にゃあ、だったらこっちの一山を貰うにゃん」
積み上げられた魔法馬の残骸を一山もらって分解した。
「おい、いま親父さんが馬に乗って走ってるのを見たが、治ったのか?」
試乗を終えたらしいドナルドが駆け込んで来た。
「子猫ちゃんが親父も馬も直してくれた」
「マジか!?」
「ああ、子猫ちゃんは凄腕の魔法使いだ」
「そうだったのか、ありがとうな子猫ちゃん、オレとジャックにとってもダリルの親父さんは、かけがえのない恩人なんだ」
「照れるぜ」
「おまえが照れるな」
ダリルにツッコミを入れるドナルド。
「それで、子猫ちゃんの馬はどうなんだ?」
「あいつらに見付かったら問答無用で徴発されるレベルだ、子猫ちゃんも無事では済まないだろうな」
「マジか」
「残念ながら俺たちが手を出していいレベルじゃない。ただ、乗り心地は最高だ、もし買えるなら全財産突っ込んでもいい」
「しょうがないにゃんね、ジャックには世話になってるからドナルドに一頭やるにゃん、ただしこれは他人には譲渡も貸すこともできないにゃんよ」
馬を出す。
「おおおお!」
「いいのか子猫ちゃん? こいつの全財産て大したことないぞ」
大仰に驚くダリル。
「金は取らないにゃんよ」
「しかしそれでは」
「にゃあ、使わない時は専用の格納空間に仕舞うにゃん、やり方はもうわかってるはずにゃん、その馬はもうドナルドの一部にゃん」
「ああ、わかる、わかるぜ、俺はもう他の馬は乗らない」
「馬を貰うのはいいが、あいつらに目を付けられないように注意しろ、おまえが下手を打ったら子猫ちゃんに迷惑が掛かるんだぞ」
「わかっている拷問されたってしゃべらねえよ、潔く天に還るさ」
「にゃあ、もしものときは全部喋っていいにゃんよ、オレはそんなに弱くないにゃん」
「まあ、そうだろうな」
ダリルが肩をすくめた。
「ダリルも欲しいにゃん?」
「ああ、喉から手が出そうなぐらい欲しいがヤメておこう、ドナルドみたいにそいつに首ったけになったら、他のお馬ちゃんたちが嫉妬しそうだからな」
「わかったにゃん、にゃあ、オレはそろそろ帰るにゃん」
「「いまからか?」」
おっさん二人が声を揃えた。
「にゃあ、まだ門が閉まる前には出られるにゃん」
この時間なら、まだ門の外に出られるはずだ。
「おい、でも直ぐに暗くなるぞ」
「にゃあ、野営するから問題ないにゃん、また来るにゃん!」
「ああ、ちゃんと礼もしたいから、是非来てくれ!」
「待ってるぞ!」
オレはアーチャー魔法馬商会の二人に見送られ、急いでオパルスの城壁門に向かった。