表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/357

ロイヤルファミリーにゃん

 ○王都タリス 城壁内 タリス城 王族居住区


 国王コンスタンティン二世に抱っこされたまま通されたのはロイヤルファミリーの私的空間てヤツだ。

 ゆったりとしたソファーが置かれ、華美な装飾もなく壁も床も大理石みたいな石材が張られていた。

 居心地は良さそうな部屋だが、防御結界がこれでもかっててんこ盛りな上に隅には第一騎士団の騎士と宮廷魔導師が四人ずつ控えている。

 騎士も宮廷魔導師もいずれも四〇代ぐらいの男たちだ。言葉を発することもなく表情も変えず気配を消している。


 本来はオレのような部外者が入れない場所だが、国王が直々に抱っこしての入場なので誰も止められなかった。


 オレはソファーに降ろされロイヤルファミリーを改めて眺める。

 国王に王妃に王太子夫妻とその息子。

 いずれも美男美女に可愛い幼児だ。

 フレデリカのお母さんの第二王妃と第二王子のふたりがこの席には呼ばれてない。

 ちなみに猫耳たちは玉座の間の近くの各貴族に割り当てられてる控えの間で王宮スイーツに舌鼓を打っていた。

 味は上々だと言う情報にリーリもそちらに飛んで行ってしまった。

「ネコちゃん」

「まあ、コリンたら侯爵様がお気に入りみたいね」

 オレに抱き着いてる王孫の姿に王太子妃が笑みを浮かべる。

「我の孫だけに強者の匂いを嗅ぎ取ったのであろう」

 国王がまんざらでもない笑みを浮かべる。

「にゃあ、オレは子供に好かれる質にゃん」

「ネコちゃんはまるで大人みたいね」

 王妃は三〇代に見えるが王太子の歳を見ると四〇代後半か?

「にゃあ、都合が悪い時は六歳児になるにゃん」

「マコト、早速だが我らの中に毒を盛られてる者はいるか?」

 国王に尋ねられる。

「にゃあ、拝見するにゃん」


 ロイヤルファミリーを見渡す。探査するまでもなくすぐにわかった。


「王太子殿下の身体に時限式の毒が仕込まれてるにゃん」

 噂では彫像病を発病しているという話だったがそれはデマらしい。

 しかし、彫像病とは無縁ではないようだ。

「もう一人、毒ではないけどコリン殿下のエーテル器官に彫像病の高い発症リスクがあるにゃんね、だぶんあと二~三年で発症するにゃん」

「ふむ、やはりそうか、マコトには王太子の毒の除去は可能か?」

 また国王が尋ねる。

「にゃあ、大丈夫にゃんよ」

「マコト、コリンは治せるのか?」

 王太子も息子のことを聞いた。

「にゃあ、そちらも問題ないにゃん」

「そうか、では頼む」

 国王はホッとして息を吐いた。

 宮廷魔導師たちは微動だにしない。つまりオレが王太子と王孫に魔法を使ってもOKということなのだろう。

「にゃあ」


 治癒の光で部屋を満たす。


 オレにとっては、解毒もエーテル器官の治療もそう難しいものではない。

「ついでに全員のエーテル器官を綺麗にしたにゃん、魔力の通りが良くなってるはずにゃん」

「マコト、私とコリンはもう治ったのか?」

 王太子は自分の身体を見回す。

「にゃあ、オレに訊くよりもそこの宮廷魔導師のおっちゃんに確かめて貰うといいにゃんよ、ずっと鑑定してたからわかるはずにゃん」

 オレはいちばん偉そうな魔導師を見た。たぶん高位の治癒師だ。

「どうなのだバルタザール?」

 オレが見た宮廷魔導師が前に出た。偉そうなだけあって四人の魔導師の中でいちばん魔力が強い。たぶん見た目とは違う年齢だ。

「お答え申し上げます、王太子殿下の毒は完全に消えております、コリン殿下もエーテル器官の影が嘘のように消えておりました」

 報告するとまた元に位置に戻った。

「バルタザール、マコトの腕はどうだ?」

「奇跡の御業と言っても過言ではないと思われます、わたくしには到底、真似の出来ぬ魔法にございます」

「にゃあ、褒め過ぎにゃん」

「お初にお目に掛かります侯爵様、私は事実を申したまでのこと、せめて陞爵前に出会えていれば私の後を託しましたのに惜しいことをいたしました」

 国王専属の治癒師とか勘弁して。

「にゃあ、田舎者のオレには王宮勤めは無理にゃん」

 根がこっちの人間じゃないのでお城勤めに価値を見いだせない。オレは森を魔法馬で走り回るのが性に合っている。

「マコト、王太子に盛られた毒の種類はわかるか?」

「毒の種類は虫系にゃん、時限式の魔法も含めてフレデリカ王女殿下に使われたのとまったく同じモノにゃん」

「虫か、ケラスには毒を持った虫が多いと聞くが」

 国王は意外と物知りだ。

「にゃあ、ケラスの虫ではないにゃんね、あれは強過ぎて自然死は装えないにゃん」

「どうだ、バルタザール?」

 国王は宮廷魔導師に問い掛けた。

「マコト様の言葉通り、虫の毒ではございますがケラスの虫の毒ではございません、ニエマイア殿が証言したのは法術省より持ち出した別の毒でございます」

 法術省は宮廷魔導師が所属する省庁だ。大臣は宮廷魔導師ではないので主席魔導師の方が権限が上だったりする。

「また法術省か」

 国王は苦笑いを浮かべる。

「この度の外縁部での不始末もアヤツらのせいであったな」

「はい、功を焦った者どもは既に処分してございます」

 王都外縁東部のスラム地区崩壊にも関係してたらしい。例の第三位の宮廷魔導師のやらかしたことだろうか。

「いずれにしろ、マコト様がいなければ完璧な解毒はあり得なかったかと」

「ニエマイアが、エドガーを使って仕掛けた毒なだけはあるか」

「はい、我らには手に余るシロモノにございます」

 オレの見立てを疑わなかったのは、既に宰相の証言からここにいるバルタザールを始めとする魔導師が見当を付けていたからか。

 ニエマイア・マクアルパインとエドガー・クルシュマン、宰相と主席魔導師のタッグなら小細工をしなくても何でも出来たと思うのだが。

「にゃあ、その主席魔導師に解毒させなかったにゃん?」

「主席魔導師エドガー・クルシュマンは先月、賊に襲われて死んでいる、ニエマイアの手の者の仕業だ」

「にゃお、口封じにゃんね」

「マコトが居なかったら私もフレデリカも毒から逃れることが出来ずにそう遠くない時期に天に還っていたわけか」

「そのとおりでございます」

 王太子の問いにバルタザールはこうべを垂れる。

 優秀な治癒師が揃っている宮中で倒れたなら、王太子は一命を取り留めた可能性はある。ただ王になるのは無理な状態になるか。

 宰相が目指した王室の安寧は、王太子とフレデリカを排除してより御しやすい王族を王位に付けることだったそうだが、王宮内の貴族を黙らせた方がより安定するような気がするぞ。

「重ね重ねマコトには世話になった、感謝する」

 ロイヤルファミリーに頭を下げられる。

「にゃあ、たまたまにゃん」

「それでだ、マコトに二つほど頼みがある」

 国王が切り出した。

「にゃ?」

 まだ何かあるのか?

「第二王妃を暫くマコトの屋敷で預かって貰いたい」

「にゃあ、フレデリカ王女殿下のお母さんにゃんね」

「そうだ、まだ謀反人の息の掛かった人間が残ってる可能性がないとは言い切れん、魔導師に守らせているが、あ奴らの中に協力者がいないとも限らぬ」

「わかったにゃん」

「既にドゥーガルドがマコトの屋敷に送っている、それにフレデリカも王都に呼び戻しているので同じく預かって欲しい」

「承ったにゃん」

 オレの屋敷なら猫耳たちがいるから安心だ。

『聞いたにゃん? 警戒を密にするにゃん』

 屋敷にいる猫耳たちに念話を飛ばした。

『『『了解にゃん』』』

「昨日やっとアーヴィンに連絡が付いてな、あの者の指示でもある」

「にゃあ」

「相応の対価を払おう、例のものをここに」

 国王が命じると扉が開き、ドラキュラ伯爵じゃなくて財務省財務管理局次長のベルンハルト・ヘルメルが入室した。

 ベルンハルトは記憶石板を国王の側仕えに渡し、側仕えが国王に渡す。何か面倒くさいがこれでも相当簡略化されてるようだ。

「マコトに領地をひとつ下げ渡そう」

 国王から記憶石板を渡された。

「エクシトマ州にゃん?」

 記憶石板はエクシトマ州の権利証だった。

「知っているか?」

「にゃあ、確か王国の西海岸線をすべて含む広大な魔獣の森で、オリエーンス帝国の廃帝都エクシトマがあると言われてる土地だったはずにゃん」

 オリエーンス帝国はオリエーンス連邦が滅んだ後、現在から約二五〇〇年前に成立した現文明に直接繋がる大帝国だ。一〇〇〇年ほど前に魔獣の森の増殖で現在の国家に分裂したが、いずれも帝国の一部であるという立ち位置は崩していない。

「そう、マコトの大公国の領地ドクサ州にも隣接している」

「にゃあ、そんなデカい土地を下げ渡してもいいにゃん?」

 王宮の直轄領よりオレの支配地域の方が大きくなるにゃんよ。大部分が廃領だけどな。

「問題はあるまい、また支度金として大金貨一〇〇〇枚を付ける」

 続いて台車に乗った木箱が運び込まれた。こちらが本来の報酬だろう。金だけだと格好が着かないってところか。

「にゃあ、ありがたく頂戴するにゃん」

 木箱を格納空間に仕舞った。

「エクシトマ州は生きてる州にゃんね」

「そうだ、王宮の直轄領なので書類上は生きた状態になっている、州都のエクシトマが何処にあるのかわからぬままだがな」

 廃帝都エクシトマをそのまま州都に指定してあるのだ。実際、誰ひとり常駐しているわけでもないのでそれでいいのだろう。


『……』

 大公国にいる魔法蟻から念話が入った。

『にゃあ、エクシトマ州にトンネルの試し掘りをするにゃんね』

 オレの領地は廃領だった場所も含めて魔法蟻がトンネルの試し掘りを進めていた。

『……』

『仲間の増産にゃんね』

『……』

『二万匹にゃんね、そっちにいる猫耳に再生させるにゃん』

『にゃあ、こちらプロトポロス拠点、了解にゃん』

『頼んだにゃん』

『『『……』』』

 魔法蟻たちが口をカチカチさせて右前脚を掲げた。


「もうひとつの頼みだが、おお、やっと来た様だ」

 また扉が開いた。

「緊急な要件とは何事です!?」

 地味な印象の王太子と違って金髪碧眼で国王に良く似た美形、歳は一〇代後半に見える男子だ。

「エドモンド、おまえに紹介したい娘がいる、マコト侯爵だ」

 エドモンドは第二王子の名前だ。

 事前に集めた情報に依ると今年二七歳のはず。若く見えるのは強い魔力を持ってる証拠だが、内向きなので魔法使いではない。

「にゃあ、マコト・アマノにゃん」

 王孫に抱き着かれてるのでペコリと頭だけ下げる。

「おお、そなたがマコトか!?」

 第二王子はオレに近付くといきなり持ち上げた。高い高い状態だ。

「にゃー」

 ぶらんとなるとオレは自然と声が出る。

「マリオンの言葉どおり、まるで稀人だ」

 あちこち観察された挙句、耳に息を吹きかけられる。

「にゃあ、くすぐったいからダメにゃん!」

「なるほど」

 王子じゃ無かったらぶっ飛ばしていたところだ。

「おじうえ、ネコちゃんをかえしてください!」

「おお、これは済まない」

 コリンに抗議されてオレを元の場所に戻した。

 またコリンがピタッと抱き着く。

「兄上、マコトをコリンの婚約者にするのですか? 人見知りするコリンにしては珍しく懐いてますね」

「マコト侯爵は十四の領地、いやいまは十五州を所有する大貴族で富豪だ」

「私もマコトの活躍ぶりは聞いております」

「にゃあ、持ってる土地は広いけどほとんど無人にゃん」

「マコトの大公国の領地で生産する上質な小麦が、王都にも大量に入って値を安く安定させていると聞く、それだけの生産力があるのなら人が少なくても問題はあるまい」

 国王は、オレのことを知ってるようだ。

「小麦も作っているのですか?」

「そうだ」

 逆に第二王子は何も知らないらしい。

「豊かな領地を持つ国王派の当主と将来国王のコリンも結婚はマズいですね、貴族派が騒ぎそうです」

「そうであろうな、ただマコトは王国軍の中将でもあるから、抗議するのもそれ相応の覚悟が必要であろうな」

「にゃあ、王国軍はそんなに強くないにゃんよ」

「卿の諸侯軍は近衛をしのぐと聞くぞ」

 本当によく調べてるにゃん。

「あの父上、本当にマコトをコリンの后にするのですか?」

「いや、カズキと同郷と言えばおまえもわかるだろう?」

「やはり本物の稀人!?」

「詳しいのはおまえであろう?」

「ええ、たぶん」

「それでだマコト、こいつを卿のところで引き取っては貰えぬか?」

「オレがエドモンド殿下を引き取るにゃん?」

「父上、私をモノの様に扱うのはどうかと思いますが?」

 国王に抗議するエドモンド。

「エドモンド、ニエマイアがおまえを次の国王に据える計画を立てていたのです、本来なら連座すべきところを陛下は温情を掛けて下さったのですよ」

「母上、何ですかそれは!?」

「ニエマイアが私を暗殺しようとしたのだよ、欲をかいてフレデリカとハリエットにまで手に掛けようとしたから露呈したのだ」

 王太子が説明する。

「何故、私が兄上の代わりになるのです?」

 首を傾げる第二王子。

「おまえは遺跡を与えておけば御しやすいと思われてたのであろう」

 オレも国王の意見に賛成だ。

「そんな父上」

「違うのですかエドモンド?」

 王妃が冷たい調子で言い放つ。

「い、いえ、違いません、母上」

 実家に寄生してる独身の次男を両親が追い出しに掛かってるわけだ。

「そこでだマコト、最初は婿にとも考えたのだが、将来おまえが子を生せばコリンを危うくするだろう」

「にゃ?」

「それ以前にエドモンドでは、王家からの嫌がらせとも取られかねん、そう取る貴族も少なくはあるまい」

「父上、いくらなんでそれは酷く有りませんか?」

 憮然とした表情で抗議する第二王子。

「エドモンド、おまえが世間でなんと呼ばれてるか知ってるのですか?」

 王妃から詰問されるエドモンド。

「王家の穴掘り王子ですか?」

「実際には王家の尻掘り王子だよ」

 王太子がきっぱりと言う。なるほどそっち方面にゃんね。オレは別に否定しないにゃんよ。

「兄上、私は至ってノーマルですよ!」

「だが世間はそうは思ってない、その歳まで妻を娶らず、愛人すらいない」

「兄上、それは私が遺跡の研究に忙しいからであって、妻になる女性にも失礼かと思い断っただけで……」

 意外と自分のことを知って気配りが出来る青年らしい。学者バカだけど。

「そんなことは言い訳にはなりません」

 王妃に怒られてしゅんとする第二王子。

「おまえの従者を探す時の苦労、息子を汚されてなるものかと謀反を起こそうとした家が有ったほどだぞ」

 国王は少々、げんなりしてる。

 庶民はその手のことに寛容だが上位貴族はそうでもないらしい。いろいろ面倒くさいヤツらだ。

「それは知りませんでした。それでボクのところには女性騎士が来ることになったのですね」

 更にしょんぼりするエドモンド。悪気があったわけでは無いのは皆わかっている。悪気が無いだけにこの手の人間は始末が悪いのだが。

「どんまいにゃん」

「すまないがマコト、難ありだがしばらく卿のところに置いてやってくれ、遺跡の一つも与えれば大人しくしてるはずだ」

「父上、確かにそうですが……」

 否定しないのかエドモンド。

「にゃあ、遺跡はまだ見付けてないけど、土地だけは広いからあると思うにゃん、でも、いつになるかは見当が付かないにゃんね」

「確かにマコトの領地なら確実にあるだろう、何なら私が探してもいい」

「そこは好きにしていいにゃん」

 いまオレたちが見付けた遺跡は、部外者には公開できないので悪しからずだ。

「わかったマコト、私はキミのところに行こう、ただ荷造りに数日待ってくれないだろうか?」

「慌てなくていいにゃん、それに引っ越しならまるごと何でも運べるから荷造りの必要はないにゃん」

「そうか、では友人や知人に挨拶をして準備が整ったら手紙でも出せばいいのか?」

「にゃあ、王都のオレの屋敷に使いを出してくれればいいにゃん」

「わかった、そして領内で遺跡が見付かったら調査をさせてくれるんだな」

「にゃあ、好きにしていいにゃん」

「それと私は手元不如意なのだが」

「遺跡を掘るのは、オレの猫耳が手伝うからお金は掛からないにゃんよ」

 ついでに危ないお宝は先に回収するけどな。

「マコトたちは強力な魔法があるのだったな、そうすると犯罪奴隷は少なくて済む」

「犯罪奴隷は使わなくても大丈夫にゃん」

「そうか、それに越したことはないから助かる」

 学者バカでも意外と人命に対してちゃんとしてるのは好感が持てる。

「にゃあ、プリンキピウムの遺跡は最後まで掘らないにゃん? オレとしては知行地が近いあっちを先にどうにかして欲しいにゃん」

「ああ、宰相が中心になって王宮の金をかなりつぎ込んでいたクーストース遺跡群の一つか?」

 国王はプリンキピウムの遺跡をあまり快く思って無いみたいだ。

「どうなんだエドモンド?」

 王太子も第二王子に問い掛けた。

「父上、兄上、プリンキピウムの遺跡を始めとするクーストース遺跡群はいずれも生きてるのです、慎重に事を進めなくてはなりません」

「にゃあ、生きてるなら鮮度が良いうちに掘り返して、エドモンド殿下の力で終わらせて欲しいにゃん」

「残念ながらボクはアドバイザーでしかないんだ、計画は宰相殿が行っている、次に呼ばれるのは開封の時あたりだ」

「にゃあ、遺跡を開封するにゃん?」

「封じられた遺跡を開ける手続きだよ、実作業は魔法使いの仕事なので実作業にボクの出る幕はないんだけど、下準備があるからね」

「にゃあ、そうにゃん」

 プリンキピウムの遺跡は再起動したのにまだ開封する様なことが残ってるのだろうか?

「にゃあ、いずれにしても急いだ方がいいにゃん、中途半端な状態で放っておくのは良くないにゃん」

「無論だ、宰相と首席が最善を尽くすと約束してくれたから、問題はない」

「宰相と首席にゃん?」

 自信たっぷりに言われたから、思わず聞き返してしまった。

「エドモンド、おまえは何を聞いていた?」

 眉間に指を置く国王。

「何でしょう父上?」

「おふたりとも遺跡の叡智を復活させ、この国の人々をより豊かにする事を願っていたのです。私もそのお考えに賛同しておりますが」

「お題目は素晴らしいが、ニエマイアが今回の謀反人であるのだぞ、ちゃんと話を聞いていたのか?」

 国王が呆れ顔をする。

 自分を玉座に祭り上げようとした謀反人を褒め称えているのだ。それがどういうことなのか想像できないのか?

「お、お待ち下さい父上、あのニエマイアとは宰相のニエマイアなのですか?」

「宰相のニエマイアに決まってる」

 国王がイラっとしている。

「エドモンド、プリンキピウムを初めとする宰相が発掘を進めていたクーストース遺跡群の全てを閉鎖する」

「父上、せめて次の開封だけでもお願いします」

 まだ食い下がる第二王子。

「ならぬ、首席宮廷魔導師エドガー・クルシュマンも先月死んだのだぞ、それでどうやって開封する?」

「ちょ、ちょっと待って下さい! 主席殿が死んだのですか!?」

 知らなかったみたいだ。

 主席魔導師が殺されたって大事件じゃないのか?

「にゃあ、プリンキピウム遺跡に来ていた仮面の魔導師ってその首席魔導師だったにゃん?」

「プリンキピウムの遺跡にいた仮面の魔導師なら主席殿で間違いない」

 首席魔導師ならあのえげつない結界を張る力量も納得だ。

「エドモンド、ニエマイアの息が掛かったクーストース遺跡群には暫く近付かぬことだ、いくら父上でもその方をかばいきれなくなるぞ」

 王太子が言い含める。

「……わかりました、申し訳ございません」

 やっとのこと首の皮一枚で連座を免れてることに気付いたらしい。

 だからと言ってプリンキピウム遺跡もいま封印とか中途半端な措置はヤメて欲しいのだが。

「すまぬがマコト、この遺跡バカのことを頼む」

「わかったにゃん、暫く預かるにゃん」

 遺跡の知識は相当あるので、その辺りは役に立ってくれるだろう。

「もうモノ扱いで構いません」


 流石の遺跡バカも思うところがあったらしい。



 ○王都タリス 城壁内 タリス城 領主控室


 オレも猫耳たちのいる控えの間に案内され、馬車の準備が出来るまでそこで休憩してから帰ることになっていた。帰りもこっ恥ずかしい金ピカの馬車が送ってくれるそうだ。


 オレはソファーに寝転んで猫耳のリーに膝枕をして貰いながらギリギリまで絞った探査魔法を打った。

 感覚が城内に広がる。

 オレが探している封印図書館の大体の場所は宮廷魔導師だった元カトリーヌのリーの記憶から割り出していた。

『にゃあ、久し振りの王宮はどうにゃん?』

 リーにいま思考同調で探査魔法の結果を見せている。会話は盗聴を防止するために念話を使う。

『ウチがいた頃よりも人が少ないにゃん』

『城内が薄暗いのは昔からにゃん?』

『にゃあ、それは昔からにゃん、ウチがいた当時からオリジナルの刻印の打ち直しを研究してるけど、いまだに上手くいかないみたいにゃんね』

『にゃあ、わざと複雑にしてるのかと思うほど凝っているから仕方ないにゃん』

 そのまま廊下を封印図書館があるとされる隔離区間に向かって進む。

 侵入防止用の結界が幾重にも張られているが、いまのオレは針の穴ほどの隙間があれば先に探査魔法を飛ばすことが可能だ。


『これは、行き止まりにゃんね』

『隔離区間へ通じる廊下が埋められてるにゃん』

 リーの記憶では隔離区間に枝分かれする丁字路がいまはただのL字の一本道になっていた。

『廊下が埋められたのは最近みたいにゃんね』

 偽装は完璧だが、城壁並みの防御結界とか仕込んでるせいでオレたちからすると逆に目立って見えた。

『この先に封印図書館があるにゃんね』

『そう噂されてるにゃん、ただこの先の隔離区間は迷路のようになってるから偽装の封印図書館に行くのも骨にゃん』

『問題はこの壁にゃんね、ご苦労なことにどうやら隔離区間の廊下を全部埋めたみたいにゃんね、しかも簡単に分解できないように隙間を細かく挟んでるにゃん』

 オレには効かない小細工だけどな。

『にゃあ、お館様どうするにゃん?』

『今日のところは時間が無いから撤退するにゃん、下手に長居すると見張りに見つかるにゃん』

 城内には監視業務に特化した防犯カメラみたいな魔導師が配置されていた。専業だけにあなどれない能力を持っている。


 控えの間にイーニアスが迎えに来たのでオレたちは、また長い廊下を歩いて金ピカの馬車に戻った。

 次の参内はジープだな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ