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王国軍総司令部にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年一〇月〇三日


 ○王都タリス 城壁内 貴族街 上級地区 人喰い大公の館 車寄せ


 翌日、オレの館にエラが時間ピッタリに迎えに来てくれた。

「皆様、おはようございます、ロマーヌ様はどうされました?」

「にゃあ、ロマーヌは一足先に大学に行ったにゃん、軍隊蜂の件をレポートにまとめるらしいにゃん」

「お忙しいですね」

「准教授の仕事だから仕方ないそうにゃん」

 一〇代で准教授とか天才少女だったか。

「私たちもマコトとエラさんと一緒に行けば良いんだよね?」

 キャリーが質問する。

「にゃあ、オレはそう聞いてるにゃん」

「総司令部なんて行ったことがないので緊張なのです」

「にゃあ、ベルは行ったことがないにゃん?」

「普通、一般兵卒は行かないよ、用事がないもん」

 キャリーも行ったことがないらしい。

「そういうモノにゃんね」

 オレも車を売っていたがメーカーの本社には行ったことがない。近くにある研修センターには何度か行ったけど。


 ジープ二台に運転手と護衛役の猫耳四人も連れて屋敷を出発した。


 留守番の猫耳たちには荒れ放題の庭の整備を頼んである。庭には月光草を植える予定だ。地下ではトンネルを使ってやってきた猫耳たちが王都拠点の強化とトンネル網の構築に従事している。

 大公国にも繋いで大量の物資を迅速に移動させることが可能になった。とは言っても各拠点では物資の生産も行われているので、主に猫耳たちの移動用になっていた。



 ○王都タリス 城壁内 貴族街 上級地区


「貴族街の上級地区ってこんな感じだったんだね」

「まさかこんなところに足を踏み入れるとは想像もしなかったのです」

 キャリーとベルは感慨深げに貴族街の風景を眺める。

「マコトのおかげだね」

「おかげなのです」

「にゃあ、キャリーとベルがここに来たのは、ふたりの力があってからこそにゃん」

 キャリーとベルの実力があったからこそ、プリンキピウムの森で出会えたし、王都で再会できたのだ。

「キャリーとベルは、ここに住みたいとは思わないのですか?」

 エラが問い掛ける。

「それは難しい質問ですね」

「国軍に入る前だったら、帰りたくないと泣き付いたかもしれないのです」

「そうだね、国軍に入って仲間が出来ちゃったからね」

「にゃあ、キャリーとベルはいい仲間に恵まれているにゃんね」

「マコトだって猫耳さんたちに囲まれているでしょう?」

「猫耳は、オレの家族みたいなものにゃん」

「信用できる仲間がいるのはいいことなのです」

「同感にゃん」

「あっ、でもね、住むのは無くても、たまに遊びに来るのは全然OKだから」

「まったく問題ないのです」

「オレのところはいつでも大歓迎にゃん、今度は小隊の皆んなを連れて遊びに来て欲しいにゃん」

「「「にゃあ、ウチらも歓迎するにゃん」」」

 猫耳たちが声を揃えた。

「それとエラはキャリーとベルの情報をあちこち流しちゃダメにゃんよ」

「勿論、心得ています、私の実家もマコト様と敵対するほど愚かではありませんから」

「にゃあ、頼むにゃん」

「やだなーマコトもエラさんも、私たちは自分のことは自分で守れるから大丈夫だよ」

「自己防衛は基本中の基本なのです」

 キャリーとベルはニコっと笑った。



 ○王都タリス 城壁内 市街地


 ジープは貴族街の門を抜けて王都タリスの官庁街に向かう。パステルピンクの猫耳ジープは王都であっても魔法車が珍しい存在なので良く目立った。

「にゃあ、何処ぞのバカ貴族みたいにいきなりジープを寄越せとか襲ってくるヤツがいなくて、意外と退屈にゃんね」

 かつての大公国ほどの面白貴族は王都にはいないらしい。

「王都の治安は悪くないよ、特に城壁内の昼間は安全かな」

「夜は安全じゃないにゃん?」

「うん、盗賊が出るし、それにマコトの屋敷のほど強烈じゃないけど悪霊も出るから遅い時間に出歩くのは危ないよ」

「それ以前に守備隊にしょっ引かれるのです」

 キャリーとベルが教えてくれる。

「城壁内は夜間の外出は禁止にゃん?」

「夜間というより未明なのです、日付が変わってからの四時間は外出禁止なのです」

「にゃあ、夜明けまでじゃないにゃんね」

「夜明けだと季節ごとに変わるので現実的では無いのです」

 意外と近代的な感じがすると言ったら失礼か。

「城壁の外はどうにゃん?」

「何でも有りなのです、盗賊と賞金稼ぎに通り魔と精霊とか毎晩賑やかなのです」

「それと国軍の兵士だね」

「パトロールでもしてるにゃん?」

「違うのです、盗賊の真似事をやっている輩がいるのです」

「にゃあ、そう言えばそういうのもいたにゃんね、まだいるにゃん?」

「前回マコトが捕まえた魔法馬泥棒は、不良隊員のほんの一部なのです、犯罪ギルドが食い込んでいるという噂もあるのです」

「にゃあ、まだまだ厄介な問題があるにゃんね」



 ○王都タリス 城壁内 官庁街


 キャリーとベルと話し込んでいる間に猫耳ジープは官庁街に入り込んだ。

「にゃあ、これまたデカい建物ばかりにゃんね」

「大きいね」

「私たちには無縁の場所なのです」

 オレとキャリーとベルはお上りさん状態。

「美味しいものは無さそうだね」

 リーリにブレはない。

 王都の官庁街はオパルスの官庁街を更に大きくした感じだ。一国の中心なだけはある。



 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 前


「王都の中心ですからね、あの灰色の建物が王国軍の総司令部になります」

 エラが教えてくれる。

「にゃあ、他に比べると随分と小さくてボロいにゃん」

 敷地は他と同じぐらいだが、大きく立派な建物に囲まれてるせいで余計に見劣りしていた。

「そうだね」

 オレの頭の上でリーリも頷く。

「私はノーコメント」

「私もなのです」

 キャリーとベルは横を向いた。

 貧乏所帯に相応しい建物と言えなくもないが、もうちょっとどうにかならなかったのだろうか?

「諸侯軍を統合するはるか以前から使ってる建物ですから手狭なのは仕方有りません」

 エラが詳しいのか、それとも巷の常識なのかは知らない。猫耳たちの前世はいずれも興味が無かったようで情報は無かった。

「にゃあ、あんなにちっちゃいと納品するにしても魔法馬を二〇〇〇頭を置く場所は何処にもなさそうにゃんね」

 庭に置くのだろうか?

「にゃあ、駐屯地みたいに立体駐馬場を作らせるつもりにゃん? 司令部より立派になっても知らないにゃんよ」

「地下の倉庫は大きいと聞いてますから心配ご無用かと」

「司令部の地下に倉庫が有るにゃん?」

 面倒臭くても約束したから二〇〇〇頭の納品はやらなくてはいけない。王国軍にしたら、まだまだ足りないみたいだから仕方ないか。

 それでも魔獣との交戦能力を持つにはもう暫く掛かりそうだ。馬だし。銃すらろくに無いらしいが武器はハリエットたちでどうにかしてくれ。

 だいたい犯罪ギルドの息が掛かっていて、オレの領地で略奪をやらかすかもしれないヤツらに武器までは貸せないぞ。



 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 車寄せ


 ジープを司令部の車寄せに停めると衛兵よりも早くダリア・アシュモア中佐が階段を駆け下りて来た。ここの建物は土台だけが立派だ。

「お待ち申し上げていました、マコト中将閣下!」

 ビシっと敬礼した。

「にゃあ、オレが中将って冗談じゃなかったにゃん?」

 中将って将軍の位だぞ。王族ならともかく六歳児が中将ってどう考えてもおかしいだろう。

「既に辞令は発行しております」

 マジだった。

 キャリーとベルも『うわ~』って顔で引いてる。

「にゃあ、せめて普通の話し方で頼むにゃん、閣下も無しにゃん」

「了解です、こちらにどうぞ、キャリーとベルの両名も一緒に」

「「はい」」

 キャリーとベルはびしっと敬礼した。ふたりとも凛々しくてカッコ可愛いにゃん。

 オレたちは入口の衛兵に敬礼されて司令部に入った。



 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 ロビー


「賑やかにゃんね」

 ロビーは人であふれていた。

「商人たちです」

 エラがぼそっと教えてくれた。

「王国軍が昨日の作戦で莫大な利権を手にしたのを知って、おこぼれにあずかろうと夜討ち朝駆けの一環です」

 ダリアが解説してくれる。

「営業も大変にゃん、オレも苦労したにゃん」

「マコト様も商売をされていたんですか?」

「にゃあ、昔の話にゃんよ」

「はあ」

 そんなに前じゃないけどな。オレたちはコソコソと奥に進んだ。



 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 副司令執務室


 商人たちでごった返すロビーを抜けオレたちが案内されたのは副司令の執務室だ。

 弟とくりそつなドゥーガルド・オルホフ少将がいる。

「よう、マコト閣下」

「にゃあ、オレをマジで中将に任官とかどういう了見にゃん?」

 キャリーとベルは敬礼してオレの後ろに立った。

 猫耳たちは扉を固める。

「冗談でもなんでもないんで階級は受け取ってくれ、マコトが軍属じゃないと金銭関連がいろいろ厄介になる」

「王国軍評議員会副議長じゃダメにゃん?」

「ここに来て財務省がダメを出して来やがった、名誉職では軍属には認めないそうだ」

「にゃあ、わかったにゃん、それは了解にゃん」

「じゃあ、カードを貸してくれ」

 魔導具のプレートに翳すとオレの冒険者カードに王国軍中将の情報が記載される。

 もう冒険者カードじゃないみたいだ。

「もしかして司令部の一部がオレの屋敷に引っ越して来るのも本気にゃん?」

「そうしたいところだが、あの地区は基本的に上級貴族しか入れないから無理だと王都守備隊からダメを出された」

 本気で検討していたらしい。

 困った軍隊にゃん。

「にゃあ、だったらこっちを増築する他ないにゃんね」

「だろうな、マコトのおかげでやっと増築の計画を立てられる」

「オレが建て直してやってもいいにゃん、ざっくり探索したところ、元々はずっと大きな建物だったみたいにゃん」

 ここの建物は土台だけが立派だったからな、魔法を使わなくてもわかる。

「いったいいつ調べたんだ?」

「にゃあ、いまにゃん、不似合いなほど立派な土台を見たのと地下にある大きな倉庫のことを聞いていたからピンと来たにゃん」

「ああ、何百年か前の政変で上モノが壊されたって話は聞いたことがある、マコトに頼むとして期間はどれぐらい有れば足りる?」

「にゃあ、土台が当時の遺構みたいだからそれを元に魔導具はお任せで、ざっくり復元していいなら、直ぐにできるにゃんよ」

「直ぐってどれぐらいだ、二~三ヶ月か?」

「副司令、いくらなんでもそれは短すぎます」

 ダリアが呆れ顔だ。

「じゃあ、二年か?」

「にゃあ、この場合、三分ちょっとってところにゃん」

「「「にゃあ」」」

 後ろに控えてる猫耳たちも頷いた。

 キャリーとベルは頷いている。

「昨日の浄化と聖魔法で五分も掛かってないわけだから、三分も有りえるか」

「マコトだからね」

 ここぞとばかりにリーリが主張する。

「まったくもってその通りだ、頼んでいいかマコト?」

「にゃあ、いいにゃんよ、まずは全員、敷地の外に出て貰うにゃん、その前に各部屋に番号を割り振ってくれると戻る時に便利にゃんよ」

「わかった、今日中に総司令に許可を貰ってやっておこう、ダリア中佐頼んだぞ」

「かしこまりました」

「では、魔法馬の納品を頼む」

「わかったにゃん」



 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 地下倉庫


「ここに頼む」

 薄暗くカビ臭い階段を降りて司令自ら案内してくれた地下倉庫は、魔法馬二〇〇〇頭を余裕で収容できる大きさだ。

「その前にちょっと綺麗にするにゃん」

 カビ臭いしホコリが溜まっていたので倉庫全体をウオッシュした。お馬さんは変なところには置けないにゃん。

「にゃあ、ところでそっちにいる三〇頭の魔法馬は何にゃん?」

「ああ、そいつらは刻印の打ち直しが出来なくなった廃棄予定の馬だ、長年働いてくれたから自壊までは雨風に当たらない場所に置いてやってるんだ」

 確かに足にヒビが入っている。

「にゃあ、だったらその三〇頭も二〇〇〇頭と一緒に再生するにゃん」

「この状態から打ち直しが出来るのか?」

「にゃあ、打ち直しはやらないにゃん」

 刻印師の飯のタネを奪うつもりはない。

「二〇〇〇頭と仕様を合わせて再生するにゃん」

「そうか、できるなら頼む」

「にゃあ、まずはそこの三〇頭、続けて二〇〇〇頭を再生するにゃん」

 この程度は、猫耳の手を借りなくても可能だ。


「にゃあ!」


 二〇〇〇頭+再生された三〇頭が地下倉庫に並んだ。

「これで納品完了にゃん」

「お、おう」

 副司令が口を開けたままうなずいた。

「おい、数を確認しろ!」

 それからハッとして部下に指示を出した。

「「「は、はい!」」」

 若い兵士たちが魔法馬に駆け寄った。

「相変わらずマコトの魔法は凄いのです」

「うん、昨日も凄かったけど今日のも凄いね」

 ベルとキャリーが感心する。

「にゃあ、大したこと無いにゃん」

 危なくふたりにもっと良いところを見せたくなったが自重する。

「マコトは再生の魔法も使えるのか?」

 そこにハリエットが護衛を引き連れてやって来た。

「にゃあ、使えるにゃん」

「では王国軍の他の魔法馬と馬車も再生して貰うか」

「にゃあ、刻印の打ち直しで回復する状態ならオレは触らないにゃん、再生するのは打ち直しが出来なくなった個体だけにゃん」

「変なところだけ律儀だな」

「司令部の建物はどうするにゃん?」

「その件は了解した、間もなく準備が終わるから直ぐにやってくれていい」

「直ぐにやるにゃん?」

「早ければ早い方がいい、何かとクチバシを突っ込みたいヤツらが多いからな」

「にゃあ、了解にゃん」



 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 前


 王国軍司令部の前の通りが人であふれていた。

「本当に直ぐにやるんだ」

「驚きの速さなのです」

 オレもキャリーとベルと同意見だ。

 ロビーから事情を知らされずに追い出された商人たちは口々に不平を述べてる。それでも衛兵に直接文句を言うヤツはいなかった。

 司令部勤めの王国軍関係者も事情の説明がされてないので、これから何が起こるのかわからずいずれも戸惑いの表情を見せている。


「司令部内の退室完了です!」


 伝令の兵士から報告が入った。合計で二〇三〇頭の魔法馬を再生と納品をした十五分後には総司令部の建物から全員を追い出して準備を完了させた。

 荷物はそのまま新しい場所に移す予定なので人間だけ外に出したのだ。

「にゃあ、やるにゃん」

 今度は猫耳たちの手を借りる。

 既に念話で打ち合わせは済だ。

「「「にゃあ!」」」


 司令部の中の荷物を一旦すべて格納し、元の貧相で小さな建物を分解する。

 次いでかつて存在した本来の王国軍司令部を再生した。

 先史文明の遺跡のように凝った造りをしているわけじゃないし、完全再現でもないので簡単だ。むしろやり過ぎない様にしないとな。

「「「おおおお!」」」

 沿道から驚きの声が上がる。

「元々は他の庁舎と似たような意匠の建物だったんだな」

「これが本来の形か、なるほど前よりしっくり来る」

 副司令と総司令が新しくなった司令部を見上げている。

 石造りの重厚な建物は王国軍の司令部が置かれても恥ずかしくない造りだ。

 後は荷物を元の番号の場所に戻して終了した。

 場所はかつて割り振られていた部屋割りを当てはめて配置した。案内板も作ったので迷うことはないだろう。


「「「うおお!」」」

 総司令部に入ろうとして派手にスパークして素っ裸で倒れる人間が数名。

「マコトの結界だね」

「結界なのです」

 キャリーとベルは直ぐにわかったみたいだ。

「逮捕にゃん」

「「「にゃあ」」」

 入れなかった職員と商人を猫耳に逮捕させた。

「マコト、これはあれか?」

 ハリエットが問い掛ける。

「にゃあ、新しく張った防御結界に引っ掛かったにゃん、王国軍に明確な悪意を持ってるヤツを弾いたにゃん」

「おい、マコトそれは本当か?」

 ドゥーガルド副司令が声を潜めた。

「後は真実の首輪を使って尋問するだけでペラペラ喋ってくれるにゃんよ」

「お、おう」

 猫耳が縛り上げた男たちを憲兵に引き渡した。



 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 副司令執務室


 オレたちは副司令の新しくなった執務室に戻った。ハリエットは司令部内を見て回るそうだ。


「マコトは明日、王宮な」

 簡単に告げるドゥーガルドのおっちゃん。

「「おお」」

 キャリーとベルが声を漏らす。

「にゃ、何でオレが王宮に行くにゃん?」

「王宮にて陞爵の儀が行われる」

 エラがアーヴィン様のもとに戻ることになって、ドゥーガルド副司令がオレの新しいマネージャーになったみたいだ。

「その途中に一件、封印区画の解放をやって欲しいそうだ、これは陞爵の手数料みたいなものだな」

「賄賂にゃん?」

「いや、財務省が押さえてる土地だから誰かのポケットに直接入ることはない、利権は有ると思うが」

「面倒くさいにゃんね」

「そう言うな、王国軍派の上流貴族がもう一人いるといないとでは大違いなんだ」

 勝手に国王派にされてるのに追加で王国軍派になったらしい。

「六歳児に期待すぎにゃん」

「マコトのお陰で死にかけていた王国軍が息を吹き返したんだ、期待するなって言う方が無理だ」

「にゃあ、王国軍が息を吹き返すのはいいにゃん、でもオレ個人は困るにゃん」

「何か問題でもあるのか?」

「ひとつあるにゃん」

「何だ?」

「目立つと近衛軍に目を付けられそうで嫌にゃん」

「ああ、近衛か? 一度、騎士共と手合わせしてノシてやればいいだろう、すぐにおとなしくなるぞ」

 副司令は他人事モードだ。

「にゃお、簡単に言うにゃんね、アーティファクトの剣を振り回すヤツらと手合わせなんてごめんにゃん」

 人殺しの技を日々鍛錬してる人間に近付きたくない。

「しかしな、脳筋集団だから倒す以外に言うことを聞かせる方法はないぞ」

「にゃあ、庶民出身のオレなんか相手にしないで上級貴族だけで遊んでればいいと思うにゃん」

「いや、強者を身分を理由に無視は有り得ない、ヤツらは常に強者を求めてる、身分には頓着しない点では逆に付き合いやすいぞ」

「にゃあ、オレは強くないにゃんよ」

「その返しは無理だろう、六二体のグールをひとりで倒したんだろう? しかも上位種に堕ちた近衛の騎士まで」

「たまたまにゃん」

「こう言っちゃ何だが、六二体のグールだったら王国軍だったら数千の犠牲が出てた案件だぞ、だろ?」

 ドゥーガルド副司令はキャリーとベルに問い掛ける。

「一方的に狩られますね」

「本当に全滅するのです」

 キャリーとベルに関してはオレの魔法馬の防御結界でグールやオーガごときでは傷つけることは出来ないにゃん。

「にゃお、オレが強いんじゃなくて王国軍が弱すぎるにゃん」

「確かにそれはあるが」

「にゃあ、とにかくオレは人間相手に戦いたくないにゃん、盗賊ならいざ知らず、近衛軍の騎士なんか間違って殺したら絶対に面倒くさいことになるにゃん」

「マコトは負けないよね」

「負けないのです」

「そうはいっても、アーティファクトの剣を持つグールの上位種に近衛の騎士が五人殺されたらしいからな、そいつもマコトが始末したんだろう?」

「にゃお、誰がバラしたにゃん」

「オパルスの冒険者だろう? ピガズィに同行した冒険者が詳細に教えてくれたらしいぞ」

「にゃー、冒険者ギルドは口止めしたけど、冒険者には口止めして無かったにゃん」

「やっちゃったね」

「やっちゃったのです」

 キャリーとベルが哀れみの眼差しをオレに向ける。

「そういうことだから、ヤツらがマコトと手合わせする機会を待ち望んでるのは間違いない、つまり王国軍以前に既に目は付けられていたわけだ」

「にゃ~闇討ちされそうにゃん」

「いや、それはないから安心しろ、六歳児を闇討ちなんて自分たちが弱いと言ってる様なものだ」

「にゃぅ、だからって正々堂々来られても困るにゃん」

「まあ、勢い余って殺しても構わんから、一回シメてやれ、それで解決だ」

「にゃ~お」


 ○王都タリス 城壁内 官庁街 王国軍総司令部 ロビー


「キャリーとベルは駐屯地に戻るにゃん?」

 キャリーとベルは午前中のうちに駐屯地に戻らないといけないらしい。

 中将だからこのまま留め置くことも可能だが、オレの都合でふたりを振り回したくはなかった。

「私たちももっとマコトと居たかったけど小隊の皆んなが待ってるから」

「訓練に穴は空けられないのです」

 とにかくキャリーとベルには、以前と同じように話してくれるに頼んである。友だちに敬語を使われるなんて嫌すぎる。

「そうにゃんね、これは小隊の皆んなにお土産にゃん」

 お菓子をベルの格納空間に送った。

「ありがとうなのです」

「またね、マコト」

「にゃあ、オレも屋敷に帰るからついでに駐屯地まで送って行くにゃん」

「駐屯地には総司令部から定期連絡の馬車が出てるから大丈夫だよ」

「マコトは、総司令部でのお仕事を続けて欲しいのです」

 キャリーとベルは副司令に遠慮してる。仕事なんかおっちゃんにやらせればいい、そこまでは面倒を見きれない。

「おお、駐屯地か、いいんじゃないか? ついでに兵隊どもに中将就任の挨拶をしてやってくれ」

 ドゥーガルド・オルホフ副司令がいいことを思い付いた顔をした。

「にゃ?」


 キャリーとベルを駐屯地に送るついでに何故か、王国軍の兵士たちに挨拶させられることになった。


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